ルフィが心情的に不憫な表現があるかもしません。
絶対的正義の名の元に、海に蔓延る悪─海賊─を駆逐すべく力を蓄えるのが
政府直属の海上治安維持組織、海軍本部。
己の正義を掲げ、己の力を奮う。
悪を許さず、力無き人を守る。
「だから……俺はァ!」
そんな海軍本部に属する為に、海兵育成学校という場所があった。
そこにいる1人の少年は、少しばかり──否、かなり浮いた存在だ。
海軍の制服に不似合いな麦わら帽子を被り、教官と喧嘩をしている少年。
歳、僅か13にして成績トップ。
さっぱりとした性格で周囲からは好かれる。
「だから俺は海賊になるんだって!」
「お前はまだそんな事を言うかモンキー・D・ルフィ!」
そんな彼の一番の問題点、それは海賊志望の海兵だということだった。
「なんべん言ったらわかるんだお前は!所属したい上司の名前を書けって言ってるだろうが!!」
「教官、俺は海賊になるって言ってるんだからいい加減認めてくれよぉ〜…」
「海兵の育成所におって諦めるべきなのはお前の方だアホ!」
だらん、と机に顔を突っ伏してルフィが呟く。
「悪魔の実の能力者で覇気も使える人材を早々手放すわけにはいくか!」
「そこを何とか!じいちゃんにバレないように俺を海賊にしてください!」
「無理だ」
そんな殺生な…、と呻きながら頭を抱える。ルフィという少年は、少々集団行動や規律を守るという事が苦手な様で問題視されている点がある。
「大体どうしてそんなに海賊に拘るんだ…自由が良いなら冒険家でもいいじゃないか」
「冒険かぁ〜、おっもしろいよな」
「おっとこれは意外にも好印象。どうだ?海兵がどーーーーっっっしても嫌なら冒険家を推すぞ?」
「だが断る!」
「だーーー…また失敗した」
教官はいつまでも折れない教え子に思わず天を仰ぐ。ルフィは被ってた麦わら帽子をクルクルと回しながら口を開いた。
「海賊は俺のルーツなんだ」
「ルーツだぁ?」
「おう!海賊〝麦わら〟のルフィは俺にとっての始まりで終わりだ。海兵もいいと思ったんだけどよ……俺兄ちゃん相手にしたくないし。それに、海賊じゃないってのがどうにもムズムズするんだよなぁ」
「ルフィ、お前の兄貴は海賊だったのか?」
「もう少しでな!」
にっしっしっ、と歯を見せて笑うルフィに毒気を抜かれる。意味が全く分からん、と背もたれに体重をかけて教官は深いため息を吐いた。
「なんだそりゃ」
「じゃあよぉ、教官。」
「んあ?」
「例えば俺が『こいつは未来で白ひげのおっさん殺すから今ここで倒す!』って四皇の仲間に喧嘩売ったらどうなる?」
「そんなモンスグに戦争になるだろうが!俺はテメェを全力で止める!」
「だから海兵は無理だ!諦めてください!」
「にゃろ……!」
自由が一番だー!と大声を上げて笑うルフィに頭を痛くする教官。又の名を
──コンコン
「……なんだ」
波頭の仁王は声を変えた。
先程までルフィを相手にしていた疲れきった声ではなく、どこか威厳を感じさせる様な声だった。
「時間です。そろそろ……」
「チッ…分かった、すぐ行く。──ともかくルフィ、俺が適当に決めてもいいんだな?」
「ん?おう!教官に任せる!」
「言質は取ったぞ?」
決してこの男、無能という訳でもやる気がない理由でもない。
自身にも部下にも苛烈で厳格なその生き様はまさに海軍の鑑、二つ名に恥じぬ精強さを持ち合わせている。
彼の咆哮は体をすくみ上がらせ、仲間を鼓舞する。
戦いの最前線で筋骨隆々の体格を生かし大佐にまで上り詰め、今はシャボンディ諸島の66番
波頭とは本来波が盛り上がった頂を意味する。まさに打ち付ける波の如く海賊を一掃している。
そんな彼にも心を許してしまった部下とも言えない男が未だに飄々としているルフィだ。
『自由に生きよう!』
出会い頭でそう言われた言葉に目をカッぴらいた。
この少年はいつも自由に拘る。
規律を守るのが海軍という組織、そこに自由を持ち出すとはなんとも異質。
ルフィの祖父を聞きある意味納得する所もあったが、やはり少し自由の意味が違っていた、と判断する。
時々、とても遠い目をするのだ。
その目はまるで世界全てを見通す様な目で、思わず背中がゾクリと震えた。
「もう1度言っておくがもうお前は訓練兵じゃない。ましてや下積みの雑用でもない。一端の海兵になるんだ、海賊になるなどという目標は──捨てろ」
教官の意地だけで戦闘訓練をしているがもはやその必要は無いと判断する。
「教官、今まで教えてくれてありがとな!」
にっかりと笑った少年に思わず目を細める。眩しい、とても。
だが気付いていた、ルフィは発言を取り消しなどしなかった事に。
「本部推薦だがいつでも66番
「ん!」
いくつもの海賊を相手にしてきた波頭の仁王は悟る。きっと自分では彼には敵わないだろう、と。
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ルフィは幼い頃から何かおかしな感覚を感じていた。
フーシャ村で育った。
覚えがある頃から自分は泳げないと思っていた。
シャンクスに会った。
海賊には憧れていたのに口から「仲間にしてくれ」という言葉は出なかった。
ヤソップに会った。
やっぱり鼻が短いなと思った。
何故そんな事を思ったのか、なぜそんな気持ちに陥ったのか、首を傾げるだけ傾げてみたがモヤモヤと『ナニカ』が渦巻くだけだ。
山賊にバカにされた。
ムッ、としたけど笑い飛ばせるシャンクスが凄いと思った。
悪魔の実を食べてしまった。
あぁこの感覚だ、と嬉しくて舞い上がった。
シャンクスの腕が食べられた。
泣いた。自分のせいで、と思う事と同時にシャンクスならアイツくらい簡単に倒せるだろと責めた。
別れが来た。
「付いて来るか?」と聞かれたが「俺には仲間がいる」と答えた。
その仲間が、一体誰なのか分からない。
でもその時シャンクスはとても悲しそうな顔をしていたのを覚えている。「いつかきっと返しに来い──立派な大人になってな」と言われて、麦わら帽子の感覚を確かめた。
山賊に預けられた。
山賊が嫌いだとは思えなかった。
エースに唾を吐かれた。
顔を見ると、とても心臓が苦しくなって涙が出た。エースはフンと鼻を鳴らすだけだったけどその日の内に追いかけた。
サボと出会った。
また心臓が苦しくなった。3人でいる事がとても嬉しくなった。
兄弟盃を交わした。
思わず「大人になっても一緒に呑むんだ!」と宣言した。
兄2人は当たり前だろと笑ってくれたけど、どうしようも無く不安に駆られて。無性に力をつけなければと考えた。このままじゃ死んでしまう!と。
じいちゃんがやって来た。
「俺に力をください!」って頭を下げるとみんなビックリして時々一緒にやって来る海兵の奴らと組手をさせてもらった。
海兵の中にスモーカーという男がいた。
「ケムリン!」と思わず叫んだ。迷惑そうに顔を歪められた。
訓練した。
兄2人と共に屈強な兵士相手に戦った。自分がボロ負けだったけど、何故かこの海兵は弱いと感じた。
見た事も無い海兵ばかりだったのにケムリンに異様に懐く姿に全員首をかしげていた。自分でもどうしてだろう何故だろうと考えたけど答えは出なかった。
サボが攫われた。
ドクリと心臓が嫌な音を立てた。何かが始まる。そんな気がした。
周りが火に囲まれた。
エースは火傷しないから、と安心した所でふと気が付いた。なんで火傷しないと思ったんだ?と。
サボをただ待ってた。
悪魔に心臓を握りしめられてる様な気分だった。
サボが死んだと言われた。
沢山泣いた。喉が切れても目が腫れてもずっとずっと泣いた。
熱が引かなくて意識がボヤボヤして死ぬって思った。エースが手を握りしめて「俺は死なない、生きるから、ルフィ、戻ってこい」って言ってくれたけど、嘘だ!と叫んでまた倒れた。
海軍に引き取られた。
ずっと熱が引かなくてじいちゃんが迎えに来てくれた。ちゃんとした医者に見せるって。
フワフワする足で甲板に出た。
海風を浴びて、息を大きく吸い込んで、地平線を眺めた。
海が呼んでる。
俺を呼ぶ声がする。
懐かしい。
とても遠い記憶が蘇る。
──二度と負けねェから!
──この船の航海士は誰!?
──俺には8000人の部下がいる!
──サニー号に…帰りたい!
──こんなに楽しいの初めてだ!
──もう1度仲間と呼んでくれますか!?
──生ぎたいッ!
──今まで大切にしてくれて…ありがとう
──ん〜〜〜!!スーーパーーー!
──私!生きてて良かった!
──失った物ばかり数えるな!
「俺には仲間がいたよ……」
ポツリと呟いた言葉は──波に飲まれた。
シリアスも書けるんだぞって言うことを自己主張するためのルフィ逆行無双小説。