海賊の海兵【完結】   作:恋音

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かつての友は陸の上。

 

 精神面でかなり弱くなっていたルフィにとって日々身体を動かすことは何よりのストレス発散となっていたそんな日々。

 ルフィのデビュー戦はある日唐突に現れた。

 

「モーガン、モーガン」

「なんだよルフィ副指揮官、気ィ抜いてると死ぬぞ」

「俺達特に何もやってないけどいいのか?」

「……指揮官が、軍艦の将たる人物が、そうそう簡単に動くわけにはいかねぇだろ」

 

 モーガン軍曹を指揮官、ルフィ伍長を副指揮官として巡回の最中、敵船を発見したのだ。

 現在シェルズタウンには将校が2人しか居ない。平和な海である東の海では将校が存在する必要性がそうそう無いため平均的な数だろう。

 よって、巡回は将校なしの指揮官のみで編成される事が多く、その任を任されたのがモーガンとルフィの2人だった。

 

「モーガン軍曹、いつでも開戦可能です」

「よし……敵は『クロネコ海賊団』!夜戦で見えにくいかもしれねぇが──」

 

 忠告をしようとした途中、一人の男の悲鳴と肉を切り裂く音が甲板から聞こえる。

 続いて船を破壊する甲高い音と、さらに続く悲鳴。

 

 ……もうとっくに戦いが始まっていた。

 

「(見えない敵だと…!? 一体どこに)」

 

 ──ギュリンッ! ガガガ…!

 

 ギリ、と拳を握り締めたが右からも左からも聞こえる悲鳴と音にモーガンは思わず尻後んでしまう。

 

「……全員自分の身を守る事を第一に考えろ!」

 

 隣にいたルフィがそう叫ぶ。

 

 ルフィには見えていた。

 

「っ…!」

 

「に、っししっ!捕まえた」

 

 明るい声で言ったルフィはクロネコ海賊団の船長、百計のクロの右手を掴んでいた。

 手に付けた独特の鋭い武器がモーガンの目の前で止まっている。ここまで接近を許してしまった、そして死にかけていた事に冷や汗をかいてしまった。

 

 動きを止められたクロはまさかという顔をしてルフィを見ている。

 

「…何故、反応できる」

 

 他の海兵を見れば分かるように自分の姿は見えない程早く動けていた、と思っていたのに。たった一人の子供に止められてしまった事に驚いていた。

 

「遅いから」

 

 ルフィは思ったことをストレートに言った。

 ピキッとクロの顔に青筋が浮かんだが現状止められてしまっているので強く出れない。偶然だと言い聞かせ睨む。

 

「後気配がモロバレ、それと風が動いた」

 

 続けられた言葉に船上の者全てが理解に苦しんだ。

 しかし実感することになる。この男が赤犬の推薦で本部から派遣されたという事実に。

 

 

 

「……あ、思い出した」

 

 ルフィの持つ記憶とクロの姿が重なる。

 この男の事を、思い出した。

 

「悪執事」

「……は?」

「お前ウソップの奥様の所の執事だろ」

 

 海賊に向かって執事と言い始めたルフィに全員の視線が向く。よく分からん、と。

 

「ほら、催眠術師が……えっと、ワン、ツー、ジャンボ!とかって言ってチャクラム使う」

「ジャンゴだ」

「それだそれ、そいつの所の船長」

 

 思い出した思い出した、と頷くが腕は決して離さない。そしてゾッとする笑みを浮かべた。

 

「海から逃げ出した海賊だ」

 

 全身の力を振り絞ってクロはルフィから距離を取る。

 一番の敵がこの男だ、と。そして今までで一番の強敵だと感じ取ってしまった。

 

 そのルフィはぴょんぴょんと跳ねながら動ける準備をしていた。余裕の表れか、それとも…。

 

「カヤ奥様の所に行くつもりなのか?」

 

 カヤ奥様、というのが誰か分からないがクロは心から焦った。何もかも計画がバレている。

 

 本来ならばここで『百計のクロ』を殺して『クラハドール』になり、行き倒れとして資産家の子供に助けて貰う予定だった。海賊を辞めるつもりだったのだ。

 

「お前はここで絶対倒すよ、負ける気がしねぇ」

 

 何故か殺気立つルフィ。誰もが息を呑んだ、月に照らされて見えた眼光が怒りを帯びていた事に。

 

「……〝杓死〟」

「遅い!」

 

 筋肉に力を溜める少しのタイムラグ、その隙にルフィは殴りかかった。

 

 ──ドッ!

 

 たった1回殴られただけで百計のクロは簡単に沈んでしまった。彼は東の海(イーストブルー)で名を馳せる1500万の賞金首だというのに、呆気なく、倒されてしまったのだ。

 

「おお?もう終わりか?おっかしいなぁ…もっと苦戦した様な気がしたんだけど……んん?昔はどうだっけ?」

 

 記憶を思い出そうとするが不必要な事を忘れていく頭では細かく覚えちゃ居ない。なんせ生まれる前、前世の人生の前半期で起こったたった一夜の話だ。百計のクロの存在を覚えていたこと自体奇跡に等しい。

 首を傾げながらクロの武装を解除していく。

 

 他は覚えてるのになぁ…。

 

『俺はこの村に君臨する()()()()を率いるウソップ!人々は俺を称え更に称え〝我が船長〟キャプテン・ウソップと呼ぶ!』

『この1件をウソにする!それがウソツキとして!俺の通す筋ってもんだ!』

 

 肩を組み陽気に唄いながら笑い合う親友。

 村を想ってウソツキになった。

 

『一緒に旅してきた仲間を見殺しにする気か!』

 

 メリー号を、休ませ(一緒にい)たくて喧嘩した。

 

『最後まで迷惑かけたな…。俺はこの一味を、やめる』

 

 初めて船長がこんなにも重いと実感した、俺の友。

 離れた分だけ居ない存在に吐くほど嫌気が生まれた。一緒に馬鹿をやる友が居ないのはとても寂しい。虚しい。

 

「モーガン、どうすればいい?あっちの船倒すか?」

「え、あ、おう。任せたわ」

「うっし、いっちょやるか」

 

 モーガンは未だに混乱した頭でルフィの質問に答える。するとルフィは腕をグルグル回して。

 

「〝ロケット〟」

 

 相手の船に向かって飛び乗った。

 その腕をゴムのように伸ばして。

 

「う、……そだろ!?」

 

 思わずといった様子で飛んでいったルフィを見る。

 

 ──あんなのまるで悪魔の実の能力者!

「伸び、た…?」

「噂に聞くあの悪魔の実シリーズの何かを食ってやがったに違いねぇ!」

「化け物かよ…!」

 

 多勢相手に無双するルフィを遠目で見ながら船に乗る兵士が口々に畏怖の言葉を漏らす。

 

「お前ら、絶対敵わない等という弱音は吐くなよ。高みを目指す事を辞めた時点で弱卒だ。頭撃って自害するつもりでいろ」

「は、はい」

 

 決してあの戦いを見逃してやるものか、とモーガンは視線を逸らさずに兵士達に注意をした。そう言われた彼らはゴクリと唾を飲んで返事をする。

 今は誰も敵わない。だがいつかは敵うはずだ。

 

「化け物上等…幸いな事に敵じゃねェからな」

 

 決して動かさない視線。

 モーガンはその顔に獰猛な笑みを浮かべた。




シロップ村の原作をぶち破りましたー!やったね!
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