「ん…ぅ…」
ナミが目を覚ますと見慣れた天井が目に入った。
「あ、おはようナミ」
「ノジコ……」
「ゲンさん、呼んできてもいいよ」
「分かった」
義姉であるノジコの声と父代わりのゲンゾウの声が耳に入りナミは頭痛のする重たい頭を押さえながらのっそりと起き上がる。
ドタバタとゲンゾウが外に向かって行ったのを黙って見送りながらボーッとする頭で考えた。
──夢…?
「夢じゃないよ」
その思考をまるで読んだかの様にノジコがナミに語りかけた。
「アーロン一味は倒された。もう自由さ」
ノジコがナミに微笑むとナミは泣きそうに顔をくしゃりと歪める。どうしたのか、と聞こうとするとナミはポツリと呟いた。
「私の努力は無駄だったの……?」
ナミは支配されてからアーロン一味に入り、村を買い取る為に村人に嫌われてもひたすら血を滲ませながら金貨を盗んできた。呆気なく他所の人間が倒した事に無力な自分がする意味は有ったのかと。
「あるよ」
「え…?」
その声にバッと顔を上げる。
すると外からガヤガヤと騒音が聞こえて何事かとナミはノジコを再び見た。
「ナミ!」
「ナミちゃん…っ!」
「ナミぃ!」
「え、え、え?」
涙を目に溜めながら今までナミに冷たく当たっていた村人達が飛び込んできたのだ。ナミは目を白黒させる。
「なっちゃん…ありがとうね」
「おばさん……」
「ナミが頑張ってくれてたから俺達は今迄我慢できた」
「おじさん…?」
「ナミ、お前が村を買い戻そうとしてた事。村の大人は全員知っておるぞ」
村人を連れてきたゲンゾウはハッキリそう伝えた。
「うそ…だって……ノジコしか知らなくて……」
「アンタが昔言ってくれた時からみーんな知ってたんだ。冷たく当たってたのはアンタがいつでも逃げ出しても構わない様にそうしてたんだよ」
「なんで…そんな事したの…ッ、私は村の人たち皆好きだから!でも、全然お金貯めれなくて…!もっと早く貯めれたらこんなに苦しまなくてすんだのに!どうして私を逃がそうとなんか!」
「ナミが大事だからだ」
「ッ!」
ゲンゾウはナミの肩を、アーロン一味の刺青が入った肩を抱き寄せて頭を撫でた。
「よーく頑張ってくれたな。ありがとうナミ」
「ゲンさん…っ!私怖かった!痛かった!」
「あぁ、頑張ったな」
「待たせてごめんね!信じて待ってくれててありがとう!」
彼女は精神的にまだまだ子供なのだ。しかし彼女は無理やり大人にならざるを得なかった。
拾いそびれた大人へのピースは平和なこの島で掴んで行くだろう。大事な家族と共に。
「……そう言えば、私あの海兵に悪い事しちゃったな。ねェノジコ、アーロンを倒してくれた麦わら帽子の海兵どこにいる?」
「ナミが泣き疲れると私に預けてくれてね、そのまま船に戻っていったよ。そこからは見てない」
「………………お礼、言いそびれたな」
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「ルフィ、風邪引くぞ」
「……ん」
「あー、でも馬鹿は風邪引かないって言うくらいだから平気か」
「なんだそりゃ」
夜風に当たりながらルフィは甲板で海を眺めていた。
「魚人ってさ…
「あ?……あぁ、迫害対象ってやつか」
「おお、それそれ」
頬杖を付きながらルフィは呟く。モーガンは言葉に解釈を付け足しながらルフィと逆を向いて隣に並んだ。
顔を見ないように。
「ま、迫害対象だろうとアレは海賊で弱い市民を食い物にしてる俺達の敵だ」
「……アーロンは許せないけど、魚人は嫌いにならないでくれよ。頼む」
「善処する」
カラカラと笑いながらモーガンが返事をすると、ルフィは口を数秒キュッと閉じれば再び口を開いた。
「……なんで何も聞かないんだ?」
いくらルフィが鈍かろうが、気付く。
特にバラティエでの一件とココヤシ村での一件は誰もが怪しむ程の動揺をしていただろうと自分でも思ってるのだ。
それなのにこの男が気付いて無いわけが無い。
「聞いてほしいか?」
挑発する様な声、ルフィはうっすらと笑った。
「うんにゃ、聞いて欲しくない」
──多分、耐えきれない。
弱い自分が1度口に出すとどうなってしまうか分からなかった。だからこそモーガンの傍にいるのはありがたかったし助かった。
「だろォ?」
「ししし…!モーガンっていい性格してるな」
「そこはせめて性格良いにしとけよ馬鹿が」
「約束したもんな、ぶん殴るってよ」
逆行した麦わらの男の受難はまだまだ続く。
最弱の海には『海賊の海兵』にとって強敵が多すぎた。
ちょっと短いクッションみたいなお話。