海賊の海兵【完結】   作:恋音

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心と望みの混ざり合い。

 

 

 日の昇る海、平和なある島に一人の剣士が迷い込んだ。

 

「……どこだよ、ここ」

 

 小さく呟いてみかんの香りを肺に取り込む。すると周囲のみかんと同じ髪色の女が声をかけた。

 

「そこ、ウチのみかん畑なんだけど。……どいてくれる?」

「あ、悪ぃ」

「旅人?この島じゃ見たことない」

「人探し中だ、ここ良い島だな」

 

 みかんの籠を背負った女が男に聞くと、畑を荒らさぬよう男はその場から離れた。慣れた手つきでみかんを収穫していく女を見ながら男はその場に座り込む。

 

「いい島でしょ。つい最近まで海賊に支配されてたんだけど…、凄くいい島なのよ」

「ふーん…。海賊なぁ」

 

 時代柄暗い話題が出たりするが、あくまでも興味無さげに聞き流した。

 

「人探しって言ってたわね、どんな奴?」

「んー。憧れた奴、って所か」

「へぇ!そんな奴居るんだ、なんだか意外」

「一番倒したくて、一番守りたくて、一番…───」

 

 ここまで話して男は口を噤んだ。

 初めてあった気がしない女にここまで話してしまう気は無かったのだ。

 

「まぁ、アレだ。気にかかるつーか、探してんだ」

「まさか、海賊?」

 

 男の風貌を見て女は眉を顰める。

 

「さぁ、分からねぇ。麦わら帽子被ったルフィって男だって事は間違いないんだが…」

「麦わら帽子ッッ!?」

 

 ガタン。

 みかんの籠を落として女は目を丸くした。

 

 脳裏に焼き付いて離れない小さくて大きな背中と麦わら帽子、そして解放された事への喜びと八つ当たりした事への罪悪感。

 女はあの日から1度も忘れた事は無かった。

 

「……知ってんのか」

「うん。この島を解放してくれた張本人で、私が一番お礼を言いたい人」

 

 

 真剣な顔で話す。

 お互い考えている事はなぜだか分かった。

 

 

 

 

「私はナミ、海賊の海兵ってのを探してる」

「俺はロロノア・ゾロ。モンキー・D・ルフィを探してる」

 

 

「「──よろしく」」

 

 

 

 剣士は航海士に出逢い、航路を変える。

 

「にしても海賊の海兵って?」

「知らない?」

「おう、海兵服着てなかったし…。言ってた様な言ってなかった様な…」

 

 世界は表情を変えていった。

 

 

 

 ==========

 

 

 

「……私より強い人間はお前だけだ」

 

 そう言うとエネルは空の下へと出た。

 扉の前方で睨むように室内を見る、樽に乗っている男と話をする為に。

 

「番犬か」

「……うるせぇ」

 

 モーガンは不機嫌な様子でエネルに噛み付く。

 エネルが表現した通り、まさに犬の様。

 

「人間とは醜い者だな」

「ハッ、お綺麗な事を。ならテメェは人間じゃねぇとでも言うのか?」

「私は人間であるが神でもある、そこらの輩と一緒にするな」

 

 堂々と言ってのける自信満々の男に呆れが勝るモーガン、彼はそっとため息を吐いた。

 

「それで、何の用だ」

「聞きたいのはお前の方では無いのか?」

 

 エネルが視線を向けると、張本人は驚いた様に目を見開いた後目を逸らした。

 どうやら当てはまる気持ちが有った様だ。

 

「……聞けるかよ」

「聞けばいいではないか」

 

 当然だろう、とエネルが口にする。

 しかしモーガンは青筋を立てた。

 

「……今、支えてやれる俺がッ、あいつの負担になる事だけはしちゃならねェッ!」

 

 噛み付くように吠える。

 ぐらり、と荒れた波によって船が揺れるが気にした様子など欠片もない。

 

「あいつが話さねェのに、お前の口から聞いてやるか!」

「だからと言って、私に敵意を向けるのはお門違いという物だろう?」

 

 ピリピリと張り詰めた空気が、殺気が混ざり、周囲を包み込む。

 

 ──聞いてしまったら、スッキリする。支えになってやれるかもしれない。でもそれは…望んでない!

 

「お前の言ってる事はご最もだ。だが俺は、テメェが心底気に食わねェ事だけは覚えてやがれ」

「あぁ、覚えておこう」

 

 エネルは鼻で笑い逆毛を立てたモーガンを見下ろす。

 

 数分にも渡る睨み合い、その空気を変えたのは一つの報告だった。

 

「モーガンさん!海賊です!」

「……チッ、方角は!」

「9時の方向に!」

「落とすぞ。誰か部屋にいる阿呆を呼んでこいッ!」

 

 サカズキに代わりモーガンが指示を出す。海賊は即殲滅、それがこの船の信条でありルールだ。

 戦闘態勢に入る、しかしエネルが口を出した。

 

「必要無い」

 

 モーガンの苛立ちは更に高まる。

 

「…ッるせェな!部外者は黙ってろ!」

「いや、私もこれから海兵らしい」

 

 ストン、とエネルが船の端に立つと視線を向け、耳を澄ませた。雷の力と見聞色の覇気が合わさった彼の力、盗聴。

 エネルは愉快だとばかりに喉を鳴らす。

 

「恐れているなァ、恐怖だろうなァ…。人が神を恐れるのでは無い…───恐怖こそが、神なのだから」

 

 海賊船の有った所に、大きな落雷が発生した。耳を痛める程の爆音、目が眩む光。大きな海に一つの穴が空き、海を伝った雷の威力のせいで焦げた魚や海王類がそこらにプカプカ浮かんでいる。

 

 しかし、人や船の跡が無い。

 

 ……それごと消し去ったのだ、と理解してしまった憐れな海兵は顔を真っ青にした。

 

「ヤハハハッ!これこそが神の裁き!あぁ、あぁ実に愉快だ!その恐怖に染まる顔も!神の前にして何も足掻けぬ、あの消えてゆく声も!」

 

 エネルは振り返り、海兵たちに目を向ける。

 

「恐れたか…青海人よ」

 

 ニヤリと笑ったその姿には、狂気が混じっている様に感じる。1人の海兵が思わず膝を突き倒れる。

 

 

 ──根本は何も変わりはしない。何度この命が繰り返されようとも!

 

 エネルは心の中で叫んだ。そして恐怖の視線を浴びることに満足した。

 

「………恐れた、だァ?」

 

 取るに足らない者共。その中で、唯一。

 怒りの視線を注ぐ者がいた。

 

「舐めんじゃねェよ天狗野郎…」

 

 不快感、そして期待。

 

「ウチにはもっと恐ろしい奴がいるんだ。何度恐れたか分からねぇ位のな……その高くなった鼻、へし折ってやるから覚悟しとけ」

「期待していようじゃないか」

 

 青海はやはり面白い。

 エネルは笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだ?」

「及第点、だな」

「そっか」

「モーガンがあの様子なら…恐らく」

「上手くやっていけると思うぞ」

「根拠は?」

 

「……俺の勘」

 




「俺の父ちゃん凄いんだからな!」
子供の喧嘩か。
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