その日スモーカーは始まりと終わりの街ローグタウンで散策していた。
目的は治安維持。
カラッと晴れた太陽の下で石畳の上をブーツでコツコツと音を鳴らしながら周囲を見渡す。
慣れた葉巻の香りを身に纏い、じわりとかいた汗を拭った。
──確か名前はポートガスだったか…
何故1人の男にそれだけ警戒し始めたのか分からないスモーカーは謎を抱えながらも日々を過ごしていた。
あまりにも平和な日々だ。多少海賊は現れるが敵でもないし、伝説の中将に連れられて生命力だけは有り余っている子供と取っ組み合いしていた時の方がまだ疲れていた。
まぁ、今では手も足も出ない程レベルの差が開いているが。
自嘲気味に鼻を鳴らすと視界の先に何やらトラブルを起こしている人間が居た。
「……ん?」
4人組の男女と海兵。しかも己の部下であるたしぎとだ。スモーカーは見逃すことも出来ずため息を吐きながら近寄った。
「たしぎ」
「あ、スモーカーさん」
たしぎは眼鏡のレンズ越しにスモーカーを見て笑顔を浮かべた。当のスモーカーはトラブルの渦中に居た4人組を見やる。
緑の髪の男──ゾロは保護者と思わしき男の登場に疲れた表情を見せていた。
「なんのトラブルだ…?」
殺し合いなどをしていないのは明らかだ。しかし何かしらのトラブルがあったことに違いは無いと踏んだ。するとたしぎは苦笑いを浮かべたまま視線をそっと逸らした。……どうやら己の部下に原因があるらしい。
「その子がコイツの持ってる刀を使わないでください、って」
たしぎが答えない代わりにナミが答える。ゾロにとって命より大切な刀を渡すわけにはいかない。たしぎの本音が分からないがお互い譲れなかったわけだ。
睨まれるというより呆れた表情のスモーカーに思わずたしぎも罪悪感を抱き肩を跳ねさせる。ゴニョゴニョと小さい声だが弁明に似た様な言葉を紡ぎ始めた。
「刀が、可哀想なんです…。賞金稼ぎに使われる事が許せないんです。悪い事に使う為に刀が存在しているわけではないのに」
たしぎの刀に対する執着は異様と言われれば異様だ。だがそんな彼女でもスモーカーは部下として手元に置いている。それは彼女の負けん気の強さと信念の通し方が気に入ったからだ。
だが自分に正直過ぎて今回の様に悪手はある。
スモーカーもそれを痛感しているのかたしぎの頭を押さえつけた。
「……迷惑かけた」
「いや、気にするな。無理矢理強奪しようとしてた訳じゃないし敵意を向けられたわけでもない」
「そ〜だぜたしぎちゃぁ〜ん!うちのクソマリモが見た目からして悪いんだからな〜」
「喧嘩売ってんのか、ぐる眉コック」
「あァ?つーか俺はお前のコックじゃねェ、あの麦わら探すために手を組んでるだけだっての。俺は!ナミさん専属愛の料理人!」
「はいはいありがと。……あんた達って海兵よね?改造隊服だからちょっと分かりづらいけど」
喧嘩しだしたゾロとサンジの間から割り込んでナミが無理矢理止める。統率力の無い集まりなのでどうしてもナミがまとめざるを得ない。
そしてその質問に肯定の言葉を述べたスモーカーに対しナミは更に質問をぶつける。
「麦わら帽子被ったモンキー・D・ルフィって男を知らない?」
──ガキンッ!
ナミを後ろにかばい刀を構えたゾロとスモーカーの背負っていた十手が交わった。
突然の出来事にウソップとナミはサンジの後ろに隠れる。たしぎも目を白黒させていた。
「ヘェ、やっと当たりか」
「…有名な賞金稼ぎ一味がアイツに何の用だ」
スモーカーの反応に希望をようやく見つけた。
ゾロはニヤリと笑って目的を告げる。
「俺を強くしてもらう」
「………は?」
同じ目的だと思われたくないのか残りの3人は口々に別の言葉を続けた。
「美味いって言わせるために追い掛けてんだ!その脳筋剣士と一緒にするなよ!?」
「わ、私も!村を救ってくれたお礼言いたいだけなの!」
「俺は会ったことすら無いけど、おかしな発言の謎を知りたくて興味が湧いただけなんだけど…ゾロと一緒にだけはされたくねェ」
「よく分かんねぇが…──」
スモーカーは力任せに押し飛ばしバランスを崩させるとそのまま喉元に十手の先を押し付けた。
慌ててゾロが刀を振るうも、スモーカーは能力によって煙になる。ゾロはルフィも能力者であるがそれを知らず、2人目の能力者に仰天していた。
1人目はバギーであるが、そんな事を知らないスモーカーは険しい顔で告げた。
「アイツは桁違いだ、アイツは今こうしてお前を押さえつけている俺を簡単に投げ飛ばす」
スモーカーに敵わないゾロ。しかもそのスモーカーも、ルフィには敵わない。
その実力差はスモーカーの言う通り桁違い。
ゾロはルフィに『強さ』を求める。サンジは『言葉』を。ナミは『笑顔』を。ウソップは『答え』を。
「ゲホッ、上等だろ」
大剣豪への道を目指すゾロにとって強者との戦いは大歓迎だ。
その笑顔を見たスモーカーはやれやれと言った様子で頭をかいた。
「で、『海賊の海兵』だったな」
4人の表情がパッと明るくなる。
道が繋がった。
光が繋がった。
やっと、欠片を見つけた。
「アイツは今本部に居る。
「あの海域に入らないといけない…ってわけね」
「そういう事だ。船の大きさは?」
「キャラベル船よ」
3本マストの小型帆船、ゴーイングメリー号。
海軍の使用する船とは大きさが全く違う。
「
「是非!」
「なら…──…──」
スモーカーは海賊以外に寛容だ。
優秀な航海士であるナミはすぐさま理解し次々疑問をぶつけていくがスモーカーの知らない範囲まで聞かれては流石にお手上げである。
ナミは残念な表情だったが、得られたものの大きさを再認識して満足げに笑った。
「ありがとなスモーカー」
「助かった」
「運んでくれてありがとねー!」
「またな〜!」
4人はログを辿るよりも
船の上で交流した海兵達に別れを告げて船を動かす。たしぎも仲良くなったナミや交流したゾロと名残惜しそうに別れを告げていた。
あの剣士は部下のいい刺激となってくれた様だ。と、スモーカーはこっそりと笑みをこぼす。
目と鼻の先にある
そしてふと手紙が来ていた事を思い出した。送り主は先程まで話題に出ていた海賊の海兵。
引き出しから取り出して糊付けされた封筒を開けて中を見た。
見る度に、目が見開かれていく。
「四皇とやらかして中将に昇格ッ!?はァ!?」
本人の分かりにくい文章のせいで読み解くことが難しいわけのわからないもの。
それでも唯一分かる部分は『支部を持つ』という事だった。
「ヤベェな…」
現在送り届けたモノ好き達を思い返してスモーカーは1人罪悪感に
孤独から救ってやって欲しい、と勝手な希望を託した彼らに向けて。
「クソッ、アイツに頼むか…!」
スモーカーは急ぎ、彼らの航路の先にある七武海へと連絡を取った。
オシサシブリネーイ。って事で原作とは違い交流を果たしたローグタウン組。代わりにクロッカスさんとの交流は潰えた様です。
時間軸的に原作開始の一年前って所ですね。
いくつかの島で物資補給をしながら海軍本部に向けて出発した人探し組。さてさて、次の島はどこへと行くのか(まだ決まってない)