海賊の海兵【完結】   作:恋音

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我らの名前は海賊支部。

「おー!ここが俺の支部になるのかぁ…」

 

 ルフィ、16の冬。

 四皇エドワード・ニューゲート率いる白ひげ海賊団に単身で乗り込みほぼ無傷で生還、しかも一目置かれたという経緯を得て、最年少中将として地位を確立させた。彼はその頭角を現すとすぐさま支部を持つことにしたのだ、が。

 

 ルフィは自分の支部となる建物を前にしてガッカリといった様子の声を出した。

 

「ボロだな」

「ボロボロですね…」

「嫌がらせレベルだろ、コレ」

 

 相方のモーガンは頷きながら現状を確認していたが、コビーとヘルメッポは顔を引き攣らせていた。それもそのはず、目の前にある建物は海賊の手によって壊滅した支部だったのだ。

 

 シャボンディ諸島13番GR(グローブ)

 皮肉にもぼったくりBARと同じ木の根だ。

 

 この選択に嫌味しか感じない。もちろん選んだのはルフィの上官であるサカズキだ。

 

 同じシャボンディ諸島内でも政府の入口に海軍駐屯はあるが、無法地帯に置かれる駐屯は数十年ぶりの事であり、あまりにも酷い暴挙だ。

 

「無茶さすな〜…」

「何が赤犬の子飼いだ。ただの嫌がらせじゃねェかよ…」

「仕方ねェよ、赤犬って海賊嫌いだしよ」

 

 馴染み深くなってきたが元々サカズキは海賊嫌いで有名な海兵。

 その事実を思い出してモーガンは眉を顰める。

 

「で?まずはどこを潰すのだ?」

 

 青海については詳しくない。そう言いながら建物の天辺で胡座をかいたエネルがつまらなさそうに聞く。

 

「まずは掃除だ、『家』は大事にしないとな」

 

 三階建ての建物は思ったより広々とした様に見えてしまう。襲われても対処しやすいように塔型にしたのか、海兵が逃げぬ様にとこの形状としたのか不明だが、少人数のルフィ達では掃除をするにしても時間がかかりそうだ。

 

 (こけ)(ほこり)、雑草。所々に見える人骨。

 壁には落書きが書いてあり酷い有様だ。

 

「うだうだやってても仕方ないな」

 

 ルフィは掃除をするぞ!とやる気を出して腕捲りをする。

 それに続くのはコビーだ。雑用仕事には慣れているからかやる気に満ち溢れている。

 

「ヘルメッポさん行きましょう」

「〜〜〜っ、分かったよ!」

「つーか中将が自ら雑用仕事やってどうすんだよ…普通俺たちに任せるなりするだろ」

「やだね、ここは俺の拠点だから自分もやりたいんだ。我が家って大事だろ?」

「はぁ…」

 

 分かりきっていた返事にモーガンは思わずため息を吐いた。

 

 この場にいるのは5人だけ。

 最年少中将の部隊は最少人数で固められた。

 

 もちろんそれはルフィが『海賊の海兵』だからであるのが一番の理由だろう。

 

「あ…」

「どうした海賊王」

 

 皮肉混じりのエネルの言葉を無視してルフィは咄嗟に上げた顔をヤルキマンマングローブの方へと向けた。

 

「なぁ、暇なら手伝ってくれよ」

 

 残る4人は首を傾げる。

 覇気を使えるエネルでさえも何か分からない。

 

 当たり前と思えば当たり前だろう。

 木の陰に隠れていたのは──冥王だった。

 

「……やれやれ、気配は完璧に消した筈だったんだがな」

 

「めッ、冥王シルバーズ・レイリー!?どうしてここに!」

「そりゃシャッキーの店がここだからな」

「シャ、ッキー?」

 

 動揺するコビー達と反対にルフィとエネルは静かだ。レイリーは存在がバレた事に一瞬焦ってしまったがそれもまた有り得るだろうと割り切っていた。

 

「…ほう、強いな」

「俺でも流石に嫌ってほど分かる」

 

 立ち姿だけでも強い者は強いと分かる。犬猿の仲であるエネルとモーガンの意見が揃った。

 

 そんな緊迫した雰囲気を気にしないでルフィは掃除用具をレイリーの元へ放り投げた。

 

「レイリーのそれだからな」

 

 その態度に呆気に取られる。

 

 ルフィは『はじめまして』が嫌だ。だが二度目ましては平気だ。違う事と言えば……約2年間日夜修行を付けてもらったか貰ってないか。

 その記憶だけだ。

 

「海兵君。どういう事かね?」

「掃除だけど…?」

「……本当に、か?」

 

 疑り深い海賊は疑問に満ちた眼差しでルフィを見詰めるが、レイリーはその態度で言っていることが本当にそうなのだと分かったのだろう。この人間は自分を利用する気満々だ。流石にこの方法は初めてだったが。

 

「おかしな海兵だ。背中を見せることになるのに何故こうも海賊相手に油断をする」

「…油断じゃねェよ」

 

 チクリ。

 肌に刺すような空気が流れる。余談であるがエネルはこのゾーン─極度に集中した─状態に入り込んだルフィを相手にする事がお気に入りだった。まさに王である、と。

 

「『疑わないこと、それが強さだ』から」

 

 雰囲気を和らげる為にルフィは笑った。

 第三者から見ると、怪我を誤魔化す子供の様だったが、レイリーはそれを全く気にすることが出来なかった。笑うルフィの細められた目を見てしまっただけなのに。

 

「(どこを見ている…?)」

 

 目が合った筈なのに目が合わない。奇妙な感覚だった。

 

 自分の目の奥に何かが存在しているのかと、そう勘繰ってしまうほど不自然な視線だった。

 

「俺はレイリーを疑わない。それが俺の中での強さなんだ。昔、俺の師匠が教えてくれたんだ」

「……いい師だったのか」

「厳しかったけど、仲間の為に強くなろうとする俺を沢山助けてくれた。……最高の師匠(せんせい)だ」

「(……また、だ)」

 

 また見てない。

 まるで、自分の中にその師匠が要るかの様に語っている。

 

「ルフィ…!」

「ッ、わ、悪ぃ」

 

 突然モーガンが名を呼びながら叫ぶ。ルフィは叱られた子供の様に慌てて表情を戻した。

 

「(見た)」

 

 今度は見た。

 

「(何故こうも気にしてしまうのか)」

 

 海賊王の右腕、彼がルフィを見る姿は懐かしげだ。

 『ある筈の無い未来』ではルフィの師であったレイリーだが、彼もまたルフィの出航を懐かしげに眺めていた。その原因は風になびく麦わら帽子だけではあるまい。

 

 ──海賊の王。

 

 もっとも近くで彼を眺めていた。一番理解している存在だった。それが副船長という立場。

 

「(なぁロジャー。私はな、お前の意志を継ぐ者が彼しか居ないと思っているんだ)」

 

 ルフィは不安そうに見上げるコビーの背を叩いて雑な鼓舞をする。

 

「(運命とやらはとんでもなく皮肉だな…)」

 

 風をうけて海兵マントがばさりと(ひるがえ)る。サラサラと流れる様な髪は海風になびいて、まるでさざ波の様だった。

 

「……手伝おうか」

「よろしくお願いしますレイリー!」

 

 ルフィはへにょりと笑った。

 

 

 

 存在する記憶の年数は立派な大人ではあるがルフィは子供だ。海の覇者、海賊王としての器を手にした子供。

 見た目と、中身、そして器。それらのアンバランスさが余計子供の面を際立たせる。

 

 モーガンもレイリーも、ルフィを放って置けないのはそういう所だろう。

 

 

 

 

 新たな世界。

 そこに住まう人々は、自分の希望を叶えることがとても厳しく困難で、夢を追うには何かのカギが足りない。

 

 世界の主人公が変わってしまった以上、元の幸福など得られない。

 

 何故世界が彼らを戻したのか誰も知らない。それでも変わらず『時』は進む。

 

 

 

 

「よぉし、これが俺達の再出発地点だ!」

 

 その噂は世界に広がった。立ち寄る海賊に、まだ来ぬ海賊に、先に進んだ海賊に。

 いや、海賊だけでは無い。

 徐々に世界に浸透してくるであろう。

 

 シャボンディ諸島に新たに現れた海兵に気をつけろ、そこはまるで猛獣の住処だ。

 変わり者の海兵が敵を喰い漁る。

 どんなに名を上げた海賊だろうと怖いもの見たさで触れれば命を落とす。

 

 

 その支部の名は海賊支部。そこに居座る王者の名はモンキー・D・ルフィ。

 異質で変わり者、世界で1人の海賊の海兵。

 

「やれやれ…これは、世界が荒れるな」

 

 しかしそれはほんの少し未来の話。

 拠点に掲げたジョリーマークは麦わら帽子を被っていた。




ルフィもレイリーもお互い別の人間を見ている。

日間ランキングに乗ると創作意欲というか「(これは書かねば……っ!)」という使命感が湧いてくるのでオラスーパーサイヤ人になれるべ。
それでは2曲続けてお聞きください。
『自己満だけじゃ物足りないの』『欲張りなんて言っちゃいやん』
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