──ドォンッ!
まるで地震の様な地響き。と言っても諸島なので根響きか。
余波を受けた窓はカタカタと小刻みに揺れる。
そんなくだらない事を考えながらレイリーは窓辺でぼんやりと雷光を浴びた。BARの中で顎に手を置いて外を眺める。
やかましい外。おちおち外出も出来ない。そうしたら最後、絡まれる以外無いからだ。
『む、冥王の声か……』
『なっ、おい冥王! ちょっと倒されてくれ!』
『丁度いい、肩慣らしに付き合え』
……絡まれるのだ。
一番厄介と思われる『海賊の海兵』は積極的に絡んでこないが彼の部下であろう2人がグイグイ迫ってくる。
敵からも強さを得ようとする貪欲さと熱意に冥王は逃げ出したのだ。
「厄介なのに好かれたわねぇ、レイさん」
「あれは好かれたと言わん…」
外から『エネルてめぇ俺の体ごと諸島を消し飛ばす気か!手加減しろッ!』などと聞こえてきてため息を吐いた。
「目を付けられた、が正しいな」
エネルの目に写るのは『興味』『関心』『悦び』が妥当な所だろう。レイリーにとってエネルは経験でなんとか勝てる、と言った所。
対してモーガンの目に写るのは『怒り』『切望』『喜び』であり、赤子の手を捻る様に制圧出来るが執拗いだろう。
そして意味の分からない今。
──それもこれもあの麦わらの男のせいだ。
レイリーは再びため息を吐いた。
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それはある日突然やって来た。
「邪魔をする」
「扉が狭いんじゃねェのかァ?」
「……はっ!?」
麦わらの海賊支部のメンバーが巡回という名の冒険に出かけた最中の事だった。
レイリーの住処であるぼったくりBARに現れたのは因縁の男2人。しかも異様な組み合わせだった。
「赤犬に、白ひげ…。夢なら覚めろ」
「非常に残念ながら現実じゃわい」
「夢なら良かったがなァ」
レイリーにとって敵と敵。ライバル海賊団船長と宿敵海軍大将の2人が揃い踏みで訪れたのだ。
「何故ここにいると分かった…」
「麦わらを派遣した人間が誰じゃと思っとる」
その言葉でレイリーは嫌そうな顔をする。
真夜中のシャボンディ諸島で初めて出会ったその時から心の中で確かに生きている男。モンキー・D・ルフィ。
ふつふつと怒りが湧く。
「次の海賊王になれるかもしれない男が海兵」
「ッ!?」
自分の心の中で思っていた事が当てられて思わずビクリとする。そこに居たのは険しい顔をしたサカズキとニヤニヤ笑うニューゲート。
レイリーはロジャーの意思を継ぐ者を、ロジャーの面影を感じる者を探している。その者の味方になり力になりたいと常々思っていた。海賊の海兵などという珍妙な海兵が現れてからは特に。
だが皮肉な事に、求めていた男はその海賊の海兵だとしか思えない。
裏切りにあった気分。
手が震える。
──気に入らない。
あぁ、気に入らないんだ。
「今の世代、生きている海賊の中で海賊王になれる可能性が最も高いのがアイツという事は一番理解しておる。じゃがな、一番海賊王にならない可能性が高いのもアイツじゃ」
「……なんだ、それは」
サカズキは得意顔になってニヤリと笑う。
「教えたくないわい」
レイリーは呆れた顔になるとそれを隠すように手で覆った。
「…………変わったな」
「『麦わらのルフィ』を知れば自然と諦めがつく。以前の儂は変わらん事で、過去を無かったことにしようとしたんじゃ」
よく分からない言い訳に耳を貸す。
この状況はあまりにも予想外だ。海兵が海賊と結託してるなどと思われて損害を受けるのは海兵であるサカズキだろうに。
「で、何故お前らがわざわざ揃って来た」
「警告だ」
ニューゲートは変わらず笑顔で、物騒な事を告げた。
「麦わらの小僧を壊すなよ」
またその話題だ。レイリーは目を見開いた後嫌そうに何度目かのため息を吐く。
「お前は、あの小僧を壊しかねないんでなァ?」
グラグラと笑っているがそこで気付く。ニューゲートの目が笑ってなかったのだ。
「なんなんだお前らは…」
「共犯者」
「共謀者」
違いがよく分からないが、この2人にとって海賊の海兵とは味方ではなく敵でもない曖昧な立場にあるんだろうと考える。
「いや、まてよ、共有者とも言えるなァ」
ニューゲートの思い至った考えにサカズキは納得する。
楽しそうに顔を見合わせる2人に、レイリーは我慢の限界がやってきた。
「訳が分からん!お前らは本当に何がしたい!」
レイリーが叫ぶ。散り積もった鬱憤を晴らすように。それは、海賊王が亡くなってからの鬱憤だったのかもしれない。
「突然、海賊の海兵とかいう中途半端な男は現れるわ、お前らは別人の様に変わっているわ、挙句の果てに『壊すな』だと!?」
覇王色の覇気が若干漏れている。ビリビリとした重っ苦しい空気を切り裂くように、レイリーは変わらず叫ぶ。
BARのバックヤードで聞き耳を立てていたシャクヤクが冷や汗を流す程だ。
「壊れるも壊れぬも本人次第だろう!よく知りもしない私に何故そんな事を言う!」
「それもそうじゃな…」
「それが分かっていながら何故だ!何故私だ!」
器が完成された未熟な王。
海賊王の可能性を秘めた海兵。
受け継がれた麦わら帽子。
自由を背負った将校コート。
「………何故」
麦わらに出会い変わったライバル達。
見定める様な雷の男。
過去。
「……過去?未来?」
ふと、レイリーは思い至る。
何故2人はここまでもしもの行動を考えるのかという謎に。『もしも』なんて物は普通に生きていたら有り得ない、『変える』事など出来ない。
「本当に、もしもか…?」
馬鹿げた推測だ。有り得るはずが無い。
だが、あまりにもそうとしか思えない。そう考えれば考えるだけ、辻褄が合う。
『知らねぇ筈がねェよ』
『ある海賊団が俺を助けてくれたから』
『自由な海賊が海の王者なのに』
『……海賊王が、壊したモノ』
あの男は自嘲気味にズルをしているから、と答えたんだった。疑問とも言えない些細な言葉に。
『───そして実体験の様だ』
気付いていた。心のどこかで。
「今が、お前達にとって『もしも』なのか…」
「ほぉ?」
「嗚呼、分かった。分かったさ。あの海賊の海兵はどこかの時間軸で海賊王になったんだろう?私が望む、ロジャーの後を継ぎし者として!」
サカズキやニューゲートは流石だと感心する。
記憶の共有無くしてここまで察する事が出来る人間はそうそういない。
馬鹿げた冒険を繰り返し、常識の無い馬鹿な男の相棒だったからこそ分かったのだろう。
「はっ、はは…馬鹿だ、馬鹿げてる」
「残念だと言っただろう。夢でなく現実だと」
答えが届いた。
それは否定でもなく肯定とも言えない微妙な返事だったが、混乱した頭でも確かに受け止めた。
「……私が、彼の師だったのだろうな」
落ち着いたのか、椅子に腰をかけてポツリと呟く。レイリーは眉間に寄せた皺を揉みながら馬鹿げた『もしも』を考えた。
「彼が純粋な海賊であったのなら、きっと私は手を貸していた」
「俺ァそこまで生きては居なかったが、手を貸したくなる海賊だった」
ニューゲートは懐かしげに目を細める。背中の記憶が多いのは仕方ないだろう。あの男は他人を気にしない。後ろにどんな大海賊が居ようと自分の進む道を真っ直ぐ走っていた。
「さて、これから海賊の海兵はどう化けるか」
「化け物ではあるけどな」
「ああ、怖い化け物じゃ」
『ある筈の無い過去で未来』はもう少しで確実に未来ではなくなる。運命の時は近付いている。
物語は、ルフィが17になったその時から始まるのだ。まだジワジワと余波を受けているだけで世界がどんな変化を迎えているか明確になど分からない。
だからこそ、サカズキはルフィを壊されては堪らないのだ。絶望した日々の中でようやく見つけた希望の光を。
「『仲間』と『家族』と『冥王』は、成長しきってないアイツには少々早すぎる」
手柄を手に入れてもらう為にと、
海賊の海兵は生きるための大事なものが見えてないのだから、深く関わらせる気は無い。
──…それぞれの『ある筈の無い過去』を乗り越える方法を見つけるまで。
知るはずのないもしもの未来を知った冥王の話。
それでも冥王は海賊の海兵を海賊の括りで見れない。年寄りは未来を変える若者に希望を託す。
それが世界を壊しかねない選択だったとしても。時間とは些細なことで様々な色へと変わる。
だけど、世界は主人公の道を変えようとしてくれなかった。
とかなんとか語ったけどとりあえず言いたいことがあります!沢山の評価ありがとうございますあともう少しで200とか信じられる??
そして、そして!
この度この作品海賊の海兵が推薦されました!いえーいぱちぱち!本編との温度差が激しいな畜生!
本人にお礼は言いましたが言い足りないのでここで自慢します!後で悶えればいいなとか思ってますんからね!!(どっちやねん)