海賊の海兵【完結】   作:恋音

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朱に交われば染まり行く。

 

 男はその目に灯した殺意を隠し、現れた。

 

「よろしくな、ヴェルゴ少将」

「……よろしくお願いしますロシナンテさん」

 

 海軍…いや、海賊支部として名を上げる、異色の王が居座るその場所で、2人のコラソンは邂逅した。

 

 

 

 

「ロシー!」

「ルフィーーッ!」

 

 再会を喜ぶ支部の長と記憶を失った准将。

 何も知らない第三者から見れば微笑ましい兄弟の様に思うだろう。現にこの支部に駐屯する者は抱き着き合う2人に苦笑いを零しているが止めはしない。

 

 そんな光景を見ながらもう1人の派遣兵、ヴェルゴは冷や汗を流した。

 チャンスの時が巡ってきた筈なのに、と。

 

 

 

 通称〝鬼竹のヴェルゴ〟

 海軍本部に所属している海兵の鑑。

 

 しかしその正体は七武海ドンキホーテ・ドフラミンゴの相棒であり最高幹部の一人。

 

 初代コラソン。

 

 長い年月を掛け海軍に所属し遂に少将にまで上り詰めた男だ。

 

 

 彼の目の前にいるのは己の相棒によく似た金色の髪を纏ったロシナンテ。ヴェルゴが望む王の実の弟、だったものだ。

 

 その男はとある事件により重体になっていた所、周囲を念の為警戒していたサカズキに助けられこうして生きている。彼はサカズキに対していつまで経っても頭が上がらないそうだ。

 

「(あの時、ドフィが始末したと思ったんだが)」

 

 オペオペの実を巡って三つ巴の争いがあった。

 その時丁度海兵として現地に居たヴェルゴはロシナンテ、2代目コラソンと出会い、彼が海軍からドンキホーテファミリーに潜入していると気付いたのだ。

 あの時の屈辱。

 ドレスローザ奪還計画を阻止される所だった。

 

 

 運の良い事に、始末しそびれたロシナンテは変わらず記憶喪失で、国を手にすることが出来た。

 

 今回の異動。海軍本部から離れるのは惜しいと感じたが、支部の場所はシャボンディ諸島。六式の一つである月歩で移動出来る距離だ。

 しかも海賊支部という本部の人間が寄り付かない場所で、異動するのは自分とロシナンテのみ。

 中将は居るが実力経験共に浅い子供。

 あげく2人の大佐と2人の一等兵、計5名しか居ない。

 

 口封じとしてこれ程整えられた機会などそうそう無いだろう。

 

 なのに、だ。

 どう考えてもここに居る人間は地位を間違えている。麦わら帽子の中将は正直大将と言っても過言では無いし、異民族衣装の男は自分と同じかそれ以上……!

 もう1人の大佐は化け物2人と比べるとどうしても見劣りしてしまうが充分脅威となる存在。

 

 見抜けない程盲目では無い。

 

「ヴェルゴ、飯食おう飯!」

「え、あ、はい」

「クソゴム!テメェ少しはセーブしろ!どうせ宴を開くだとか言って倉庫からごっそり食材消すつもりだろ!ここの維持費どんだけ食費に削ってると思ってんだ!」

「だってよォ…腹が減ったら戦えねーだろ?」

「極限に減った状態でも、俺をボコれる奴は戦えないと言わねェんだよ……!」

 

「(気が抜ける……)」

 

 見た目も相まってそんな感想が浮かんだ。

 

 

 

 ==========

 

 

 

「クソ…ッ!」

 

 海賊支部に異動してはや一ヶ月。ヴェルゴは殺したくても殺せないある種生殺し状態にストレスの限界を迎えていた。

 

 日課だというエネルとモーガンの模擬戦の爆発音に紛れながら建物の裏で悪態をついた。

 

 新参者であろうと一週間に一度は必ず行われる模擬戦。そこで改めてルフィの化け物度合いを確認したヴェルゴは踏み出したくとも踏み出せない状態だった。

 

 ルフィとロシナンテの仲は良い。

 なにせ記憶を失ってからの付き合いで言えば1番長い。

 

『俺が記憶無くしてめちゃくちゃ不安だった時ルフィと出会ってな……』

 

 希望なのだ、と。

 

 

 それでも自分の本当の所属がバレる危険性のある男を放置しておく意味は無い。ヴェルゴはなるべくロシナンテと共に行動するがどうしても人目がある。……殺すタイミングが掴めない。

 

 

「よっ!」

 

 脳天気な声変わりもしてない少年の声。

 ここ1ヶ月で聞き慣れていた。

 

「ルフィ中将、どうされましたか?」

「体調悪いのか?」

 

 質問をするが質問を返された。

 性格に似合わず周りをよく見る男だ。思わず固まってしまったがヴェルゴは当たり障りの無い返事をした。

 

「……。」

「なにか?」

 

 こちらをじっと見て来る瞳にぞわりと寒気がした。深淵を覗かれている気がした。

 

 

「ロシーは死なねェよ」

 

 

 なんと言われたのか一瞬理解に遅れる。

 

 ヴェルゴは自分より背の低いルフィを見下ろして何か言葉を紡ごうと口を開いた。しかしそれより早くルフィが言葉を発する。

 

「俺が守るから」

 

 バレている。確実に、バレている。

 その目を向けられるのを酷く嫌った。

 

「ついでに言うとその指で刺しても俺は弾く」

 

 武装色の覇気を得意とするヴェルゴは最早能力者と引けを取らない程の力を纏う。

 指銃で心臓を貫くのは得意だった。能力者をも一瞬にして殺害出来る。

 

 目論んでいた。悟らせようともしなかった。

 しかしこれから自分がやろうと思っていた行動を読まれてしまったのだ。

 ……いや、見えたのかもしれない。

 

 未来が。

 

 

「(未来視の見聞色…──)」

 

 見聞色の覇気の真髄というべきか。

 戦いの世界ではコンマ数秒先を読めているか否かで勝敗がつく場合がある。これは強者になって行けば行くほど重要だ。

 見聞色の覇気を持たぬ者は生存率が下がる。

 すなわち逆も。

 

 だからこそ、未来を見えるというレベルの覇気は脅威なのだ。

 

「お前がロシーを殺そうとしてる理由とか俺には全く分かんねぇ。もしかしたら憎んでるのかも知れねぇしストレス発散かも知れねぇ」

「(バレて……無い……)」

 

 知らずに張っていた肩の力が一瞬抜ける。

 企んでいる事を悟られたのは拙いがドフラミンゴの相棒だと言う事がバレてないだけ良い方だ。

 

「お前も俺の部下だからな!困った事あれば頼れよ!」

 

 バシバシと肩を叩かれ、思わずヴェルゴは表情を歪める。

 

「……未来の為に、貴方が要らない、邪魔だと言えば貴方は死んでくれますか」

 

 酷く似ているのだ、己の惚れ込んだ王に。

 心を掴んで離さない所など特に。

 

「俺、ワガママな海賊の、海兵だから……誰かの為に死ぬのはまっぴらだ」

 

 同じ海賊。

 その漏れ出る覇気は同じ覇王色の覇気。

 

 この男も覇王色の持ち主だったのかと今更ながら気付いた。

 

「(違う、同じじゃない筈だ!俺の選んだ王は今も昔も変わらずドフィで……!)」

 

『ヴェルゴ!行くぞ!冒け……巡回だ!』

『絶対そばにいろよ、でなきゃ守れねェ』

 

「(違うだろ、全く……!違う筈だ!)」

 

 

 何故かこの王は輝いて見えた。




これから約1ヶ月。
海賊の海兵をガンガン更新していきますよろしく。

***エンドまで残り──話。
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