ルフィは海から現れた冒険に心踊らされた。
「で、俺を連れてきた、と」
「連れてきた!」
海賊支部近くの海にはニコニコ楽しそうに笑うルフィと人魚が4人居た。
「なんでだよ」
モーガンは死んだ目で相棒の能天気な顔を見るとため息を吐いた。
その態度に驚いたのは人魚だ。ビクリと肩を震わせて水の中に潜り込む。
「コイツ厳つい顔してるけど大丈夫だって」
海に手を伸ばしてルフィは人魚を呼ぶ。
人魚は警戒心も無く顔を覗かせた。
「にしても……お前に種族差ってのは無いよな」
「俺昔はおかしなヤツら仲間にするの大好きだったからなぁー。喋る動物とか木とか骨とか」
「それはどう考えてもおかしいだろ」
モーガンはルフィの座る諸島の根の近くに腰掛けた。勤務もクソもないが中将である張本人がこうである。特に気にした様子も無い。
「あ、あの……」
「悪いな、コイツ自由過ぎるから困るだろ」
「いえ…そんな事……」
人魚は絶世の美女であった。
年齢的に美少女と言ってもいいが、何せ一般的な人魚の7、8倍はある。
海に溶ける淡い桃色の髪。ぷっくりと色付く唇はゼリーの様に弱々しい美しさ。しかしどこか幼げな雰囲気を残しており可愛らしいという表現も似合うだろう。
涙を溜めた大きな瞳は濁ること無く真っ直ぐこちらを見ていた。
「名前は?」
「し、しらほしと申します……」
巨魚ビックキスの人魚。
魚人島竜宮王国、ネプチューン家の長女。つまりは王女である。
人魚の王女、という名に相応しい美貌。
しかしどこか庇護欲を誘う。
「ルフィ、なんでこうなってるんだ?」
「白ひげのおっさんが俺に客を連れてくるんだってよ。んで、途中で寄った魚人島で…………なんか色々やったらしい」
「いろいろ、と?」
「は、はい!白ひげ様は私を硬殻塔から連れ出してくれました……!バンダー・デッケン様方を捕え私の願い事を聞いて下さいました」
何やら海の底では白ひげ海賊団がやらかしているらしい。
正直、病気持ちの四皇には大人しくしてもらいたいものだったが仕方ない。モーガンは1人心の中でため息を吐く。
「現在白ひげ様は父と宴会中です。数日したらこちらに現れるとの伝言を……」
「なるほどなー、それでよわほしが来たのか」
「は、はい……お兄様が守ってくださいますので安心です……」
シャボンディ諸島は魚人の迫害意識が根付いている。それに人間オークションなども執り行われており、世間知らずのしらほしが初めて外に出るこの時に来る所では無い。
しかしネプチューン王の信頼する白ひげエドワード・ニューゲートは言った。
『俺の認めた王ってのがシャボンディ諸島にいるんだよ……そこはむしろ世界で1番安全だと思うがなァ?』
そして、三人の兄フカボシ、リュウボシ、マンボシは同王国王子にして同王国軍三強。彼らが念の為にと妹の護衛し、海賊の海兵に会いに来たという話だった。
「四皇ってのはどうなってんだ?」
「さァ。でもおっさんが後でこっちに来るって事は分かるぞ。赤犬呼ぶか?」
「やめろ」
モーガンは先に待ち受ける確定された混乱を想像してしまい、頭痛を抑える様に眉間に手を当てた。
「海賊支部として噂が流れてるから無法者は確かにこの
「ご、ごめんなさい」
「いや、あんたが謝るな。悪いのは奴らだ」
ここ最近逆行者の行動が目に余る。
ルフィに続き、サカズキやニューゲート。
むしろエネルが1番大人しいものだ。
逆行者という謎の存在を改めて認識したモーガンは、相棒だけでなく4人全員の暴走が耳に入ってくる。頭の痛い話だ。
「わた、私……。森を、見てみたかったのです」
「よわほしって森が好きだなー。俺も好きだけど雪もおもしれーぞ?」
「ゆき、とは何でしょう?」
何も知らない人魚姫は数ある人間の中でも不思議な事ばかり経験したルフィの話に惹き付けられた。季節の事、植物の事、空の事、雷の落ちる島やお菓子で出来た島、侍や忍者の話。
抽象的で曖昧な表現ばかり。普通の人間は夢物語やホラ吹きだと思っただろうが、彼女達はその話を信じた。
キラキラとした目で冒険の話をするルフィ。
モーガンも改めて聞かされる冒険の話に年甲斐も無く心踊った。
「……。俺さ、魚人島好きだ」
ふと話が止まれば、ルフィは少し考えて言葉を紡いだ。
「まだ時間は掛かると思う。どうやるのか分からないから沢山の奴らに助けて貰わなくちゃならねェけど。決めたよ」
ルフィは真剣な目でしらほしの海の様に透き通った目を見た。
「魚人島、滅ぼす」
「ッ!」
3人の兄は言わずもがな、剣に手をかけたりなど、脅威に対し抵抗の意志を見せた。
話をしていたしらほしは両手で驚き開いた口を隠す。
「でさ!」
モーガンは笑い出したルフィにやっぱりな、と笑みを零した。
「魚人とか人魚!引っ越そう!本物の太陽の下で一緒に過ごそう!」
「それって……」
人間に分類されない魚人族。それでも彼らは人である。通ってる血も、言葉も、同じ。
「おもしれーだろ!色んな種族の奴らがこの諸島に集まるんだ!」
両手を広げて理想を語る。
ただの理想像。実現なんて夢のまた夢。
「本当、ですか……」
「俺ってさ、嘘付けねぇんだ」
大人でも子供でも無い中途半端なルフィとしらほし。同年代だからこそ心情が表情に現れると分かった。
「約束しよう、
その時しらほしは笑った。
「はい!ルフィ様!」
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「んな無責任な約束していいのかよ」
モーガンはルフィの部屋に訪れて問う。
海賊の海兵は、正規の海兵より発言力も弱く政府にとってもいい顔されない。
何故今まで各種様々な所から反発が来ないのか不思議に思う程だった。
「しらほしってさ、弱虫で泣き虫の奴なんだ」
「『前』の、か」
「うん」
ルフィはソファでくつろぎながら背を伸ばす。
初めて出会い、海の森へ連れていき、別れで交わした本物の森へ連れていくという約束。……忘れるはずが無かった。
「『麦わらのルフィ』は曖昧な状態で魚人島を滅ぼした。だから今度は、ちゃんと滅ぼすんだ」
ルフィだって難しい事は分かっていた。
組織に身を置く者として海賊の様に自由は出来ないし、運任せで上手く行く確証なんて無い。
「もじゃもじゃのおっさんに伝えるだろうから多分白ひげのおっさんにも伝わる」
「だろうな」
「……………やるよ、俺。闇を壊すって決めたんだ。暗い海の底で太陽に憧れながら過ごす島を」
モーガンは魚人島に行った事が無い。
だから想像でしか無い。
「そんな暗いのか、魚人島」
「いや、結構明るい。なんで深海に太陽があるんだって驚いたけどさ」
「おい……」
海賊のリゾート地だ。
美しく楽しい、そんな島だった。……表面上だけは。
「白ひげのおっさんが来る時に赤犬も呼ぶよ。電伝虫入れといてくれ。俺は難しい事っての、良く分からねェから遠慮なく頼るよ」
「あのなァ……」
ルフィはある意味他力本願な所がある。そして結局無計画な思い付きだ。
モーガンは呆れて反論しようとしたが、ルフィはニッと笑って言った。
「よろしくな、相棒」
「…………ハイハイ」
結局、海に愛される男には敵わない。
モーガン「最近ため息しか吐いてない気がする」
ルフィは未来に向けて大きく動き出します。
原作では魚人島での信頼が無いルフィだったので回りくどいやり方をしましたが、元から信頼のある大海賊はホーディやデッケン程度………ねェ?
主人公はルフィだけど、物語を動かす
逆行者はあと1.5人居ますし。
【9】