あの宴は忘れられない出逢いの日だった。
特にローはルフィとの『再会』に加え、コラソンと再会し、サカズキに頼まれニューゲートの身体を
さて、ゾロ達賞金稼ぎ一味の1部が中将のモンキー・D・ルフィ率いる海賊支部に入り早くも1ヶ月。シャボンディ諸島は9人の
そんな中、サカズキの指令により新たに海賊支部へ異動した男が居た。
「お前……ッ! ダメだ名前が出てこねェ!」
「ひでェなテメェッ!」
褐色肌でピンクの髪という周囲の目を引く色彩の男が、手に鉄のメリケンサックを付けて笑いながら叫んぶ。
「ははッ! よう、フルボディ。久しぶりだな」
出迎えたルフィの第一声と男の様子を笑いながらモーガンが現れる。
昔ルフィとモーガンが
「よー、モーガン。ふふふ!聞いて驚け!」
「あ?」
グッ、と親指を自分に立て、フルボディはドヤ顔で言った。
「大佐になった!」
「俺も大佐な」
「なん……だと……!?」
「俺は中将だッ!」
「「知ってる」」
3人で何度か呑みに行った仲だ。知らない間柄では無い。
「麦わらァ! 昼飯の準備が出来たからとっとと新しい奴連れて来い! 今日こそは美味いって言わせてやる……!」
サンジの顔がひょっこり出てくる。それを見てフルボディは「あっ」と小さく声を出した。
「バラティエのコック?」
「あー……?常連客の大尉殿か?」
「なんだお前ら、知り合いか」
モーガンの声に頷く2人。
と言ってもサンジはさほど興味を持っていない様だった。恐らくレディなら別だろう。
「それより飯」
サンジの催促にルフィは口を開いて指示を出そうとした。
「じゃあコビーにゾロを……」
「起こしに行かせた」
「ヘルメッポにウソップの……」
「作業を止めに行かせた」
「あ、エネルにナミを」
「迎えに行かせた」
どうやら先手を打たれていた様だ。
ルフィに挑むのはまだ早いゾロは、エネルとの模擬戦でボロボロになっている。倒れる様に眠ってそれきりだ。
ウソップは武器の整備などコビーの手が届かない専門的な知識を用いた作業に没頭している。好きに道具を使えるからこそ改造に燃えていた。
ナミは測量という事でここ数日シャボンディ諸島の地形を把握しようと何時間も歩き通しで、どこに居るのか分からない。
「……実はお前が1番まともなんだな」
「いい子だろ」
モーガンは3人を思い浮かべて料理を作っていたサンジに目を向ける。賞金稼ぎとしての時間で仲間を1番把握しているのはサンジだった。
なんともしょっぱい気持ちになる。
「…───ぃやぁあああああああッ!」
「な、なんだ!?」
突如聞こえてきた女性の悲鳴にフルボディは拳を構える。しかしルフィやモーガンは全く気にした様子を見せない。
「ッ、はァ……こ、怖かった……」
「テメェこの雷野郎ッ!んナミすわんに何してくれとんのじゃゴラァ!」
げっそりといった様子のエネルがナミを俵抱きにして空から降りて来た。どうやら無理矢理捕獲してきた様で、雷に近い移動速度にナミは顔色を青くしている。
ちなみにこの様なやり取りはこれで4回目だ。
「ゴムの小僧、私をダイアル船代わりに使うな」
「俺じゃない」
フルボディはエネルの実力に気付きルフィとモーガンを盾に眺めている。見聞色の覇気を習得しない状態で、エネルに対する警戒心の高さにルフィとエネルは舌を巻いた。
大概の海賊はエネルの外見に油断し舐めてかかり、キレた本人の手でジワジワと恐怖を煽られながら殺される。海兵と思えない所業だ。
「で、そいつがマグマの男の言っていた、新しい奴か」
ジロジロと不躾な視線に怯えるフルボディ。エネルのフルボディに対する評価は
……この支部には、自分に恐怖を覚える人間がほとんど居ない。
ちなみにエネルのお気に入りはヘルメッポだったりする。反応が楽しいのだとか。彼の父親であるモーガンはふてぶてしくてお気に入りとは程遠いらしい。
「モ、モーガン、俺コイツダメだ……」
「ま、飯行こうぜ?お前も腹減ってるだろ?」
「バラティエの副料理長の飯が毎日食えるとかお前らホント……! ばっか! ばーか!」
モーガンに隠れ罵倒するフルボディだが、ルフィとエネルの視線を受けビクリと肩を揺らす。
「ばっかやろぉぉぉぉ!お前ら強過ぎるんだよぉぉぉぉ!」
「……ゴムの小僧、アレを部下にしたい」
「残念な事にお前と同じ大佐だから無理だな。ヘルメッポで我慢しろ」
改めて見聞色の覇気を使ってないのか疑う。
『恐怖』という望む感情にエネルは愉しげに笑うが、目をつけられたという『恐怖』にフルボディは益々身を竦ませる。その悪循環にモーガンでさえ苦笑いを零した。
「サンジぃ……飯……」
「ウソップ、お前どうせ徹夜したんだろ」
「い〜だろぉ〜? ここ、特に仕事無いんだし」
「あーーー……寝た……。コック、飯」
「ゾロ、あんた寝癖」
「気にしねェ」
地下の作業室がウソップが欠伸をしながら出てくる。仮眠室からは腹を掻きながらゾロが。1つ船の上で暮らしていた仲だ、サンジもナミも慣れた様子であしらった。
ルフィは視線をモーガンに向ける。
「そら、飯だ飯!」
号令により慌てて準備を再開した。
ふとフルボディが食堂に向かう道すがら呟く。
「……もしかしてマニュアル無い感じか?」
「「マニュアル?」」
「本部から渡されるやつ。支部を与えられたら必ず配られるぞ?」
咄嗟にモーガンは電伝虫でサカズキに苦情を言ったのだが、『海賊の支部に、わしが親切心を出す必要があるのか?』と言われて切られた。
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「ん゛ッ!? じゃあここはルフィ
「そうだぞ」
美味いと舌鼓を打ちながら食べていたフルボディは、海賊支部の仕組みに驚愕の声を上げる。
「モーガン、お前って2回ルフィと一緒に海賊討伐に組み込まれた事、あったよな」
「ん、クロネコ海賊団とアーロン一味の時にな」
「その時の2人の階級と指揮官、覚えてるよな?」
ルフィの記憶力は当てにしてない為、モーガンは過去を思い返しながらピラフを口にする。そして縦に首を振った。
「1回目は?」
「俺が軍曹で指揮官、ルフィが伍長」
「……2回目は?」
「ルフィが少佐で指揮官、俺が准尉」
「ほら見ろ!それが!正しい支部の編成!」
ビシッと指差しながらモーガンを叱る。
海軍というのは縦の組織。英雄と呼ばれるガープが昇格を蹴るなど例外はあるが、階級が変われば海軍内での地位も変わる。支部という小さな世界では特に。
「ただいまー」
「ただいま戻りました」
巡回から戻って来たロシナンテとヴェルゴの声が聞こえ、フルボディは視線を2人に移した。
「お、アンタが通達があった新入りさん?初めまして、ロシナンテ准将だ、よろしくな」
「自分はヴェルゴ少将と申します。よろしくお願いします」
「あ、フルボディ大佐と言います。先に席に着いてしまい申し訳ありません……」
気にするな、とフルボディの背を叩きながらロシナンテは定位置に座る。ドジってもフォローが出来るようにと、モーガンとヴェルゴの間だ。
モーガンは言いたい事が分かったが納得出来ないと言う顔をした。
「……絶対おかしいだろ!? 真面目そうな少将を差し置いて、なんで大佐のお前が支部のNo.2なんだよ!実力もエネル大佐には敵わないだろ!」
「分かってねーなぁ…」
やれやれと言った様子でモーガンは肩を竦め周囲を見渡す。
「まずその理論で行くと元賞金稼ぎの三等兵4人と息子達一等兵2人は除外だろ?」
「だろうな」
突然、話題に自分達が登場した事に下座に座っていた6人はお互い顔を見合わせた。
「で、次はエネルだが、コイツは常識知らずで思考回路がぶっ飛んでる」
「失礼な」
だからこそ大佐止まりだ。恐らくサカズキの方針的に、エネルの階級はモーガンより上がる事は無いだろう。
「で、次点のロシナンテ准将だが──」
モーガンが視線を向けたロシナンテは熱い緑茶を手にして居た。口に含んだ瞬間後ろに倒れながら傾いたのでモーガンが椅子と身体を支え、ヴェルゴは食べ物を守る。
「──ドジっ子だ」
「どじっこ」
発言の破壊力とコントの様な姿に慄く。
「で、最後にヴェルゴだが」
「ん?」
モーガンは嫌悪感を露わにして少将のヴェルゴに視線を向ける。
フルボディは『少将』と付けない呼び方に違和感を覚えた。
「七武海のスパイだ」
「改めまして、ドンキホーテファミリーの幹部、初代コラソンのヴェルゴだ」
ニッコリと笑う姿に、寸分の違いは無い。しかし乱雑な口調と言葉の爆弾にフルボディは口をだらしなく開いた。なお驚いているのは彼だけで無く元賞金稼ぎの4人もだった。
「もう……七武海は嫌……」
自業自得な部分もあるが、とことん運の無いナミが顔を覆う。もうこれ以上関わり合いが無いように祈るだけだ。ゾロが居る限り無理だが。
「トラ男が盛大に暴露したんだよ。俺、覚えてなかったけど」
「ルフィ中将は自分が初代コラソンと知らない間も警戒してくれましたがね」
「あ、ちなみに俺は2代目コラソンらしい。覚えてないけど」
ガタンとフルボディが立ち上がった。
「いやおかしいだろこの支部ッ!」
「おかしいな」
死んだ目でモーガンが頷く。海軍の厄介事を全て詰め込んだ様な支部だ。
狂ってしまえば楽なのだろうが、それを許されない生粋の海兵。別名苦労人だ。
「分かったか?」
「……凄く理解した」
支部の長官がルフィな辺りお察しだ。
フルボディは己の仕事を理解してしまった。この支部の人間を海兵に留めておく事だと。
「まァフルボディには期待してるぞ」
「つっても俺、クリークくらいしか…──あ、お前らがそこのゾロと出会った時に居た海賊な。そいつ程度の相手しか出来ないぜ?」
「戦闘力は今の所困ってないから大丈夫だ」
ルフィの
「何に使われるんだよ俺は」
「まとめ役?」
「不適合過ぎるだろ!せめて情報関連にしろ!」
適当に言ったルフィの発言にツッコミを入れると懐かしい関係性にルフィとモーガンは笑う。
「……ルフィって人見知りだよな」
ルフィは突然聞こえたウソップの言葉に目を見開く。
寝ぼけ眼で呟いた言葉がルフィに届いたと知って本人の目は覚醒した。
「あ、悪ィ」
「いや、別に気にしてねーけど……」
腕を組み目を閉じてルフィは考える素振りを見せる。そのまま首を傾げた。
「俺、人見知りか?」
モーガンでさえ首を傾げる。
ウソップはこのまま口を閉じるのも悪かろうと言い訳の様に言葉を続けた。
「いや、俺、あんたとコイツらの出会いを何度か聞いて。実際目の前にしてみて、『あー確かになー』って思ったんだ」
上下関係を気にしない人間なので口調などは特に気にしてない様だ。それより、1ヶ月共に生活してきて驚く程関わら無い事に気付いた。
ウソップは視線を1度仲間に向けるとルフィに戻した。
目は合わない。
「…………………あァ、そっか」
ふと納得したルフィが瞼を伏せ気味に机の料理を見た。美味しいのに美味しくない料理を。
「初対面だと全然話さ無いだろ〜? フルボディ大佐達を見てて良くわかる」
ウンウンと頷くウソップを尻目にエネルは含み笑いを向ける。ロシナンテやフルボディは分からない様子だがモーガンは察した。
そしてルフィも分かった。
「────逆だなァ……」
『前』親しかった程、視線を合わせづらい。
自分の滑稽な姿を笑うルフィの表情に、フルボディは息を呑んだ。
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月夜の晩、モーガンの部屋に訪れたフルボディは酒瓶を片手に一人の男について語りかけた。
「モーガン、俺は発言の撤回をしたい」
酒瓶を投げて渡しながら真剣な顔で呟く。
「なんだ?」
部屋に入れた途端言われた彼の言葉の意味を察せず、モーガンは疑問を持つ。
「俺とお前、お互いの見る目なんだけどさ」
酒瓶を受け取ったモーガンがピクリと反応を見せる。思い出すのは、3人で呑みに行った帰りの客船のバーだ。
ゾロと出会ったルフィの様子を、眺めるだけで何も出来なかった頃の話。
守るより支える事を決めたあの夜。
『なんつーかよ。見る目が無いな、お互い』
『まぁな』
フルボディは椅子に腰掛けながら言う。
「──正直有りすぎて怖い」
自分達が
モーガンは釣られてその顔に笑みを浮かべた。
ルフィの『仲間』は自分じゃないと自嘲気味に笑っていたあの頃とは違い、自分はルフィの相棒だという自信に満ちた笑みを。
「そうだな」
なァ、これから世界をどうしてくれようか。
>ルフィに挑むのはまだ早いゾロは、エネルとの模擬戦で……
そ れ で も レ ベ ル が 高 過 ぎ る わ 。
投稿予定日 13(水) 15(金) 17(日)
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