海賊の海兵【完結】   作:恋音

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東の海で動き出す。

 

「モンキー・D・ルフィ14歳!赤犬の推薦でここに来た海賊の海兵だ、よろしくな!」 

 

 東の海(イーストブルー)シェルズタウン海軍第153支部。

 麦わら帽子を被った新米海兵がとんでも無い爆弾を投下した。

 

「ルフィ君、だから開口早々その自己紹介は止めなさいと言っているだろう?」

「でも事実だ」

「……色々とややこしいからだよ」

 

 一見すると優男のバトー大佐がルフィに対してツッコミを入れるがルフィ本人は曲げるつもりが無いのか否定の言葉は口にしなかった。

 

「じゃあ皆への挨拶も終わった事だしとりあえずこの基地の中を案内するから」

「おう、ありがとな!……デス」

 

 慣れない敬語を使う少年に思わず癒されたが反発する海兵だっていた。

 

「ふざけるなよガキ…」

 

 隊服的に軍曹辺りだと予想される男が声を上げる。体格は良く、褐色肌で鋭い視線をルフィに向けていた。

 

「テメェみたいなチビが赤犬推薦?嘘つくんじゃねェよ……大体アンタだって何黙認してんだ、この嘘つき小僧を」

 

 アンタと不躾に呼ばれたバトーが苦笑いを返す。

 実際、嘘では無いし電伝虫で言われてしまったのだから認めざるを得ない。何より渋る意見を反対して自分が是非ともウチに!と頼んでしまったのだが普通は信じられないだろう。

 

 だからこそ苦笑いしか出来なかったのだが男はその態度に苛立ってか襟首を掴もうと手を伸ばした。

 

「おい」

 

 その手を掴んだのは話題の人物であるルフィだ。

 

「俺さ、海軍の階級とかよく分かんねぇけど…この人が上司だってのは分かる」

「あ゛?」

「手を上げるのはダメなんじゃねェのか?」

 

 ピリリと殺気にも似た空気が生まれた。

 

「俺の事認められねぇのは分かる、だって海賊と海兵は相容れないって奴だからな」

「んだと…」

 

 男が手を引こうとしてもガッチリと掴んだ手が少しも動かすことを許してくれなかった。

 体格差が1回りも違う子供相手に鍛えられた海兵が敵わないのだ。思わずヒヤリと汗をかく。

 

 その事に気付いているのがバトーとその男本人だけだったので周りはハラハラとやり取りを見守るだけだった。

 

「文句があるなら俺に喧嘩を売れよ、この人は関係ねェ。これは俺の信念で俺の誇りだ」

 

 男は幻を見た、背後に麦わら帽子を被ったドクロマークの海賊旗の。

 

「………離せ」

「ん!」

 

 自分ではどうする事も出来なかったのか男が呟くとルフィは素直に手を離す。その呆気なさに少々驚きながらも未だに腕を締め付ける様な感覚を擦って消そうとする。

 そんな部下達の様子を見ていたバトーは男に一つ疑問を投げかけた。

 

「海賊と海軍の違いは分かるかい?」

 

 唐突な疑問に首を傾げながらも男は口を開く。

 

「……市民を守る者、手を出す者、です、か?」

「ルフィ君は?」

「掲げる旗!」

 

 それぞれの答えを聞いてバトーは何回か頷いた。両方とも正解である、正直間違いなど無い。

 

「私はこれでも長年海兵をやっていてね、時々分からなくなるんだ。海賊と海軍の違いが」

「……は?」

 

 しかし、バトー個人で言えばルフィの意見に近かったのだ。

 

「モーガニアとピースメインを知ってるかな?」

 

 続いての疑問に全員が頷いた。

 無法に略奪するモーガニアとそれをカモに冒険するピースメインは流石に海兵にとってほぼ常識だ。

 

「では、不正を行う海兵とピースメインの違いは、分かるかな?」

 

 その言葉を聞いて思わずルフィ以外全員考え込む。

 所属する物が違う、だが同じ犯罪者。

 明確な差を付けると正直ピースメインの方が後々市民にとってありがたい存在である。

 

 海兵として、答えにくい質問だった。

 

「……正義も、悪も、表裏一体だよ」

 

 だから彼を此処に受け入れたんだ、とバトーは言う。ルフィの様な異質な存在を認める認めないは個人の判断に任せるつもりだが、これから先の時代を担う事になる彼らには様々な角度から世の中を見てほしい、そう願いを込めて。

 

「海軍に良い奴と悪い奴がいるように海賊にも良い奴と悪い奴がいるんだよなぁ。俺はそう思う!」

 

 唯一、広い世界を見てきた男がそう言葉を述べる。

 

「ちょっと話違うかもしれねえけどさ。俺、戦争ってなんで起こるのかずーっと考えてきたんだ」

 

 ルフィはどこか遠くを見つめた。

 反発していた男も思わず聞く態勢に入ってしまう。そうせざるを得ない何かに従った。

 

「『大事な家族を守る為に!』『息子を取り戻す為に!』『兄ちゃんを救う為に!』って戦いを挑むんだ」

 

 まるで経験した事があるかのように話す。

 

「『善良な市民を守る為に!』『悪の血を根絶やしにする為に!』『人々が眠れぬ夜を過ごさない様に!』って負けじと叫ぶんだ」

 

 思い出すのは大きな大きな戦い。

 断頭台で今にも泣き出しそうな顔で家族を見ている一人の男の命を終わらせる(取り戻す)為に何十万もの人々が戦った。

 

「どっちも正義だ。それぞれの立場を思えば譲れない誇りで正義なんだ」

「あんたは、……どっちに味方する?」

「分かんねぇ。でも譲れない命の為に戦う」

 

 ルフィは目を閉じながら兄の死の淵を思い出していた。ずっと、忘れる事など出来なかった、最期の最期まで。

 

 

「正義と正義が争う戦い、それが戦争だ」

 

 

 そう言ってルフィは笑った。男には、どうしても泣いてるように見えてしまったが。

 

「俺は正義を持った海賊になりてぇ」

 

 その言葉に話を聞いていた海兵達は悩んだ。

 『海賊は悪で滅ぼす物』『海軍こそが正義』そう習って来た良くも悪くも模範的な海兵達が多かった故にこう言った型破りな新入りに戸惑っているのだろう。

 

 バトーはこれこそが求めていた物だった。

 

 このまま堅い考えを持っていれば早死してしまうかもしれない部下達のいい刺激となってくれた事に喜びを覚える。大海賊時代という今までに無い時代のうねりに取り残され無い様に、どうか、考える事や見る事を忘れないで欲しいと。

 

「例えば…皆からお金を奪って偉そうにしてる海兵が街を支配し守ってるとするだろ?でも街の皆には耐えられない生活だった」

 

 それ自体は絶対的に悪とは言わないがルフィはもう一つの例え話を持ち出した。

 

「その海兵を倒したのが海賊と賞金稼ぎで、街の皆はヤッター!って喜ぶんだ」

 

 その場合どっちが正しいかなんて分かんねぇだろ?と首を傾げた。組織としてか個人としてか、どちらを取っても区別が着かない。

 世の中は全て善悪を分けれないのだ。

 

「…………………お前、名前なんて言った」

 

 ルフィの言葉に一区切りついた時、最初に反発した男が真っ直ぐに見ていた。ルフィはもう1度名を名乗る。

 

「モンキー・D・ルフィだ」

「───俺の名はモーガン。この腕一つで登りあげた誇り高き()()だ!いいか()()()()()のルフィ、海兵として的外れな行動すれば俺はテメェをぶん殴って止めるぞ…!」

「上等だ!」

 

 男が気合いを入れるように名乗る。

 歳は親子程離れているというのに大人げなくお互い獰猛な笑みを浮かべ、右手で固く握手を交わした。

 

 

 

 かつて、ルフィが『海賊のルフィ』であった頃初めて出会った海軍将校は地位という椅子から転げ落ちた。

 『海賊で海兵のルフィ』と出会い運命が変化する。己の誇りを拳に纏い麦わら帽子の男と肩を並べるのは別の未来の話。




モーガンはクラハドールを倒すまではちゃんとした脳筋海兵だったんです…!原作第1巻みたいに横暴になっちゃったのは『俺が倒したぞ!』という洗脳が歪んで育ったんだと思います。『俺が強い』から支部一番になって『俺が一番強い』そして『俺が一番偉い』みたいに。
大体将校になれるのは武力か頭脳かの主な二パターンだと思うのでモーガンは武力かな、と。だからこそ熱血感が溢れるものなのかな、と。


まぁとりあえず
ル フ ィ 覚 え て な い よ ね 。

(原作でモーガンに今後出番があると予想してる作者花音ですがとりあえずルフィには斧手でもないので忘れてるかな、と)
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