ハーマイオニーの秘密〜17年目のレリオーサ   作:YM

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Verdimillious Charm《ヴェーディミリアス》 1

私の名はハーマイオニーグレンジャー

 

英国だけでなく、もう世界全国津々浦々、どこに言っても私の名前は知られているわ。嬉しいやら、恥ずかしいやら何だか不思議な気分。こんなに名前を知られて誇りに思うけど、17年経った今私には話さなければならない物語があるの。私がホグワーツに入学した当初からずっと応援してくれていた皆にも是非知ってほしいの。これは学校を卒業した今でも親友の2人(言わなくてもわかるわね?)にも話した事がないとても大事な事実で、ホグワーツから離れ地元に戻った今、決心したの。本当の事を、全世界に知られているハーマイオニーグレンジャーの隠された真実を語ろうと思うの。今まで命を落とし兼ねない冒険を散々してきた私が言うのも変だけど、これはとてもデンジャラスでリスキーな試みだわ。でも、言いたい。語りたいの。私が今ここに無事故郷に降り立つ事が出来たのは全てあの人のお陰

 

そう

 

 

 

スリザリン出身の偉大なる魔法使い

 

 

ドラゴ・マルフォイ

 

 

いいえ、私の双子の兄であるマルフォイ兄さんの事を。

 

 

 

 

スクリーンの中ではあんな風に悪役に徹しているけど、本当は自然を愛し、動物を愛し、出来の悪いマグルの妹を愛してくれた私のたった一人のお兄さんだった。

 

私は産まれながらにして、実父のルシウス・マルフォイに蔑まれ虐げながら生きていた。その理由はとても簡単。私が‥汚れた血‥ つまり長年守り続けてきた純血の繋がりを途絶えさせたいらない子だったから。ルシウスはそんな私を得意の闇魔法で即座に葬ろうと試みたけど、同じ純血主義である母のナルシッサに情けを掛けられ、なんとかこの世に身を置く事ができた。赤ん坊の時は何も分からなかったけれど、魔法学校を卒業した今なら分かる。

 

闇魔法。それは死喰い人《デス・イーター》名前を言ってはいけないあの人の従者が扱うこの世で最も恐ろしい魔法。魔法法律に触れた使用してはいけないそれをルシウスはまだ赤ん坊だった私に何の躊躇いもなく向けた。私はその光景を何1つ覚えていないけれど、やはりその時の自分を想像するだけで怖かった。

 

何とか第一の地獄を生き延びた私は、月数も経たずに第二の地獄を味わうようになった。要領が悪く魔女の素質のない私を両親は殆ど"お仕置き部屋"に閉じ込めて、いないものとして扱ってきた。私にはマルフォイ兄さんも含めて多くの兄弟がいるけど、みんなそんなマヌケな私を見て笑っていた。純血でない子、汚れた血、マグルの子、そんな呼び名で兄弟たちは私を呼んだ。私は他の兄弟達とどこが違うんだろう?

 

微かに漏れる灯取りの窓から私はよく私以外の"純血"の家族達を眺めてきた。私の"部屋"はとても狭く暗くて、そこにはナルシッサが運んでくれる食べ物以外他には何もなかった。初めは暗闇で自分が何処にいるのかさえ分からなかったけど、自分で自分に触れてその存在を確かめ、日が経つにつれ段々その暗闇にも慣れてきた。私は何とかその闇とお友達になろうとしたけど、闇はやっぱり闇で一人ぼっちの私と話そうとはしてくれなかった。漏れ聞こえてくる兄弟達の笑い声や食器と食器がぶつかる音、ルシウスやナルシッサの話し声に私は耳を塞ぎたくなった。本当は私も純血の立派な魔女としてあの中で笑っているはずなのに、何がどうなってこうなってしまったのか、自分でも分からなかった。寂しさはあったけど、私はまだ5歳でこれが当たり前なんだって思った。私の運命は生まれる前から決まっていたんだって。そう思えば全然怖くなかった。埃っぽいし、蜘蛛の巣だってあるけど、これが私のあるべき姿なんだって思うと不思議と勇気が湧いてきた。いつか私もあの人達の仲間になれればいいな。この部屋から出て皆んなと遊べればいいな。そんな楽しくてワクワクする想像を毎日の様に繰り広げていた。目には見えないけれど、暗闇の狭い箱の中いっぱいにキラキラした魔法で輝いていた。だけど、待てど暮らせど一向にその扉は開く事がなく、いつしか私は一番恐れていた諦めの感情に押し潰されるようになっていた。ダメよ、ハーマイオニー。私は自身にそう問いかけた。諦めを認めてはダメ。その先に待ってるのは真っ暗で底のない絶望のみ。今ここにいる暗闇よりももっと、恐ろしくて、無だけの境地。しかし日に日に衰えを感じて、ちゃんとご飯を食べてるはずなのに、私の体が、いや私の頭の中が悲鳴を上げている事に気付いた。出して?今すぐここから出してよ?声にらない叫びがわたしを更なる絶望へと叩き落とし、蝕み始めた。そして絶望の完全なる境地へ足を乗せかけた時、その声が暗闇で彷徨っていた私の耳に届いた。

 

「ハーミー聞こえる?」

 

いつか聞いた事のある優しくて、力強い声だった。

 

「誰?」

 

私は囁くように答えた。

 

「僕だよ。双子の兄のマルフォイだ」

 

その時、毎日のように夜中に聞こえてくる謎の歌声の正体が彼だという事に気付いた。最初は気味が悪くて、見えない恐怖に身を縮めていたけど、その声にだんだん耳を澄ませ、夜眠りに着く子守唄として耳を傾けるようになった。私はその声が好きだった。外の世界から聞こえてくる希望に満ちたその声に私の絶望が遠のくような気がしていた。でも私はその歌声に返す事が出来なかった。何故なら歌は愚か言葉を喋る事もままならなかったからだ。扉の向こうから聞こえてくる兄弟達の楽しそうな会話や、シリウスとナルシッサの喧華の声を頼りに何とかその意味を汲み取ることができたのだが。私は最近覚えた僅かな言葉を駆使して向こう側のマルフォイ兄さんに言葉を届けた。赤ちゃんの頃からずっと"お仕置き部屋"に閉じ込められていたので、私は兄弟の顔は愚か両親の素顔さえ知らない。

 

「ハーミー」

 

私は外側から聞こえてくるその声にひたすらねだった。

 

「お願い。もっと私の名前を呼んで」

 

「ハーミー、ハーミー、ハーミ」

 

「もっと」

 

それから幾度となくマルフォイ兄さんは私の名前を呼び、私はその声に身を震わせた。突然足音がして、その声は最初からそこに存在しなかったように、鳴りやみ、途絶えた。私は悲しくなった。声や涙は出なくとも、この振動する体が物語っていた。これが寂しいという事。

 

「魔法学の授業をほっぽり出して何をしている?」

 

ルシウスらしき重くて冷たい声が響いた。

 

後で知った事だけど、兄さんを含む兄弟達は名前を言ってはいけないあの人、つまりヴォルデモート卿の、配下である闇の魔法塾に通わされていて、純血の魔法族の力を確固たるものとさせる恐ろしい組織だと聞いていた。

 

暫く奇妙な沈黙が続き、そしてマルフォイ兄さんの震える声がした。

 

「忘れ物を取りに帰って来たのですが、階段の隅に誇りを見つけそれを拾っていました」

 

苦しい言い訳だったが、ふむと頷くような声がして、また深い闇を思わせる声がした。

 

「よろしい。今すぐ魔法塾に戻りなさい」

 

それからバタバタと足音が聞こえ、扉の向こうは静かになった。静寂が辺りを包み込み、私は溜息を吐いた。向こうの世界から地の底から這い上がってきたような唸り声がした。

 

「まだ生き永らえておったか。渋とい屍め

お前はあの日死んだも同然だった。どうだ漆黒の闇は?光のない孤独は。底のない恐怖は?死が欲しいか?天から降り注ぐ光が待ち遠しいか?いつかその命の召される日までおまえは2度とこの世に交る事はないのだ」

 

向こうの世界が静かになった。それは永遠とも思えるとても長い静寂だった。

まるでこの世に私一人が取り残されたみたいな、絶望とも呼べる静寂だった。日々の唯一の糧であった食事が届けられなくなり、水がつき、私は真っ暗な箱の中でただ一人静かに息をしていた。何もせず、何も語りかけてはくれない無言の暗闇と共に私はただ生きていた。もうそこまで近づいているであろう死の足音にそっと耳を澄ませながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

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