ハーマイオニーの秘密〜17年目のレリオーサ   作:YM

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第2話

その扉が開かれたのは唐突だった。

 

時間はたぶん真夜中で、私は深い眠り付いていた。現か夢か私はフクロウの音を聞いていた。ホーホーホー、ホーホーホー規則正しいそれは、死を覚悟した私に束の間の安らぎを与えてくれた。最近では目も耳も殆ど使い物にならず、何かの病なのか、それともただその儚い人生に終わりがやって来たのか。最後。いや、私の最期の瞬間だけは誰かに側にいて欲しかった。それは殆ど誰でもよく、その温もりをこの砂漠と化した肌で感じる事ができるなら、それだけで幸せだった。

 

だからその扉が開いた時、私は信じられなかった。未だにその夢を見る事があるけど、やっぱり現だとは思いもしなかった。私は11歳になっていた

 

「待たせてごめん。行こうハーミー」

 

 

 

兄弟達がバカにして私の名前を口にしてくれないなか、マルフォイ兄さんだけがハーミーと私の名前を呼んでくれた。誰が付けたのか私の名の発音はとてと難しく、舌が上手く回らない兄さんはそうやって、一生懸命私の名を発音してくれた。誰かに自分の名前を呼ばれる日がやってくるなんて、夢みたいだけど、夢じゃなかった。殆ど骨と皮だけになった屍の私をおぶり、兄さんは夜の街を駆け出した。嘘みたいだと思った。真っ暗だけどどこまでも続く広大な空、私の肺一杯に詰め込まれていた淀んだ空気達が、ヒンヤリと澄んだそれに入れ替わっていった。こんなだったんた。私の頬から何か冷たいモノが零れ落ちた。外の世界はこんなにも素晴らしい、こんなにも素敵な景色で満ち溢れているのだと思った。私は知らなかった。こんな心地よい気持ち、マルフォイ兄さんのお陰で、兄さんがいたから私はホントウの世界を知る事が出来たんだ。

 

「ハーミーごめんよ」

 

ものすごい速度で走る生物達に釘付けになる私を、兄さんはそっとベンチに降ろした。

 

「僕がもっと、もっと早く魔法を使えて助け出せていればこんな、こんな。

ハーミーがこんな姿になる事はなかったんだ」

 

兄さんは今にも折れそうな私の腕に触れながら、温かい涙を流した。それは私に向けての、私の為の、私だけの涙だった。

 

「兄さんあれは何?」

 

そんな兄さんの気持ちを露知らず、私は目の前に現れた三回建の走る物体に目を奪われた。今まで置かれた状況をすっかり忘れたかのような発言に、泣いていたマルフォイ兄さんも思わず笑わずにはいられなかった。

 

「あれはね、knight bus《夜の騎士バス》といって、魔法族専用の乗り物さ。僕達魔法使いにしか見えないだよ」

 

 

僕達?私に初めて疑の念が浮かんだ。私は純血の魔法族から産み落とされ、劣勢遺伝子が顕在化した何の才能も価値も持たない"汚れた血"、所謂マグルではなかったのだろうか?バスの中から見たかもないような、普通の人ではないようなそれが出て来て、私は思わず隣にいた兄さんにしがみついた。

 

「怖がる事なんてない。あの人達も兄さんと同じ魔法族の人間だから」

 

「兄さんと同じ?」

 

私はとても不安気に兄さんを見上げた。そんな私を見て暫く何かを懸命に思案していた兄さんはゆっくりと頷き私を見た。

 

「乗ってみるか、ハーミー?」

 

私は驚いた。魔法族専門のそんな荘厳な乗り物にマグルの私が乗ってもいいのだろうか?

 

「嫌なら無理にとは言わないよ」

 

私が迷っているように見えたのか、兄さんはそう言ってわたしの頭を優しく撫でた。バスには凄く乗りたかった。けれど、あのバスのステップに私が足をかければ何かとんてない事が起きるような気がして不安だった。けれど、私の隣には今マルフォイ兄さんがいる。ずっと一人ぼっちだった私の隣には兄さんが。これほど心強いものはなくて、私は自分の好奇心を信じる事した。ステップに重みをかけ乗り込むと、地上に脚を着けていたときとちがった感動がわたしの身体中を駆け巡った。

 

「すごいよ、すごいよ兄さん」

 

先ほどまで兄さんの手に引かれた私は、今度は逆に私が兄さんの手を引いていた。温かくてとても柔らかい掌。私が暗闇の中でずっと探してたのはこんな手をだったのかな。私は三回建てのバスの屋上、つまり360ど開け切った頂きに腰を下ろした。

 

 

「キレイだな」

 

隣の兄さんがそう呟いて笑った。

 

「うん、とっても」

 

思いの外強く吹き付ける風に私は目を細め、新鮮な空気を存分に味わった。三回建立ての天辺から見下ろす景色はそれは幻想的で、私が暗闇で何度も見た風景そのものだった。私は自身の瞳を瞬かせる。私は今ここにある幸福を噛み締めながら言った。

 

「兄さん、ありがとう」

 

雑踏とモーター音と私の頭を通り過ぎる風の音で、言葉がかき消されてゆく。

 

「ん?風の音が邪魔して聞こえないよ」

 

「だからありがとう」

 

やっぱり聞き取れず、私は一生懸命聞き取ろうとする兄さんを見て吹き出した。伝わってる、言葉にしなくてもきっとこの気持、兄さんに伝わってるよね?

 

「仕方ない。後で教えてくれる?」

 

「ダメ。もう言わない」

 

通り過ぎて行く街灯を数えながら、私は悪戯っぽく微笑んだ。

この幸せが続くようにと静かに願いを込めて。

 

それが街道に突如現れたように、辺りに薄闇が立ち込めたと思った時には私はもうそこに来ていた。

 

見た事もない街。いや、私は今日初めて外の世界を知ったけど、先程とは明らかに異なる雰囲気。怪しい人影と異様に傾いた建物、三角の尖った帽子を被った鼻の高い女性達が屯していた。その時、タイヤの空気が抜けたような音と共に運転手が目的地を告げた

 

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