二月に入り進路相談が始まった。そして俺にもついにその出番は回ってきた。
「九条君の進路は進学とありますが第一志望はどこでしょうか?」
「皇龍学院大学です。」
「模試の結果としても大丈夫とは思っていますが油断はしないでください。九条君は大学で何かしたいことはあるんですか?」
「学芸員関係と司書を取ろうと思っています。バンドでプロを目指しながらにはなりますが。」
「となると九条君の進路は成績から察すると文学部ですか?」
「はい。」
「わかりました。進路相談は以上です。」
「はい。ありがとうございました。」
俺の進路相談はあっさり終わった。その後湊から六王学園に編入した連絡をもらった当日俺は湊、迅、美鶴をLINEでグループを作って招待した。そこでそれぞれの音源を共有してチューニングを確認したところ全部同じチューニングだったため美鶴、迅に報告した。顔合わせの時にセッションして湊、迅、美鶴が実力的に大丈夫かということや馬が合うか確認しておきたかったからだ。人間関係でバンドが崩壊するということは俺たちの界隈ではざらにあることからそれが一番心配だった。
当日の放課後、全員時間前にスタジオに集合してもらってそれぞれ自己紹介をした。
「今回の大会の優勝校のボーカル木塚湊。今は最近編入した六王学園に通っている。」
「ギターの九条礼二だ。今回は集まってくれたことありがとう。」
「真島恭介。パートはドラム。礼二とは中学からバンドをやっている。」
「内藤迅。パートはベース。そっちの美鶴と同じ高校の凪灘学園に通っている。」
「鷺沢美鶴。九条、ギターのパートなんだが俺がリードでもいいのか?」
「ああ。俺は支えるプレイが得意だからな。」
「そろそろ時間だな。礼二予約忘れたとか言わないだろうな?」
「安心しろ。ちゃんと取った。」
「それじゃあ始めますかね。」
3バンドの曲を合わせた俺たちはスタジオ終了後ファミレスで夕飯を食べながら話をしていた。
「俺としてはこのメンバーでやりたいと思ったんだが皆としてはどうだ?」
「俺はこんなに楽しいスタジオは初めてだった。ぜひこのバンドでやりたい。」
「迅。それは俺も同感だ。」
「湊、お前はどうだった?全国大会優勝バンドのメンバーとして思うところはあったか?」
「最高だ。俺もお前らとやりたい。」
「礼二。満場一致で決まりのようだな。」
「ああ。だが問題は俺たちの軽音部の活動をどうするかだな。」
「それがあったな。小野と顧問に連絡するか。」
「少し待っていてくれ。顧問と小野に連絡する。」
「他校の人とやるのはいいけど部員の名前としては残って欲しい。たまにゲストとして出てくれないか?とのことだ。」
「ならいいか。秋山と里見にも連絡しておく。」
「早くも返信来て応援してくれるみたいだ。」
「なら問題ないか。」
「バンド名はどうする?世界観やコンセプトは大事だが…。」
「湊の言うとおりだな。だがやりたいようにやるのスタンスでいいんじゃないか?ついてきたい奴だけついてこい。我が道を行くのスタンスで。」
「それがやりやすいよな。」
「全員やった音源に好き嫌いはなかったぽいから大丈夫だろ。」
「確かに合わせていた時は全員楽しそうだったから大丈夫だろうな。」
「それじゃあ今日のところは解散か?」
「解散だな。」
「後で進路のことや学校の成績も共有しようぜ。偏差値的には迅と美鶴のところが俺らのところより下か。湊が俺らのところより少し上だったな。どこの大学目指しているかや模試の結果があれば後でグループに送ろう。」
「ってわけで解散!」
俺は恭介と帰っていた。途中から雨が降り始めた。
「いやー折り畳み傘常に持っているのはこういう時に助かるな。」
「ああ。それじゃあ俺はここで。」
「じゃあな。また明日。」
少し歩いていると聖櫻の制服を着た女子生徒が泣いていた。それは俺の良く見知った顔だった。
「美知留?何でこんなところに?」
「レイ?ッ!」
俺は美知留が逃げようとしたので腕をつかんだ。
「離して。今だけはレイに会いたくなかった。」
「んだと?今お前に必要なのは一人で抱え込むことじゃねえ。誰かを頼ることだろ。普段めちゃくちゃ明るいお前がそこまで暗くなるなんて非常事態みたいなものだ。」
「そういう風にレイはすぐ心配する。だから会いたくなかった。レイには心配かけたくなかった。」
「見たところ制服がずぶ濡れの時点で家にも帰らずここでフラフラ。家出か?」
「そうやってすぐ察してくる。そうですよ!家出ですよ!悪いですか!?」
「悪い。親が心配するぞ。一人娘の親は余計に心配するだろうな。」
「親がうざいのなんてこの年頃にはよくあることじゃないですか。もう放っておいてくださいよ。」
「美知留。今からすることに関して謝罪しておく。すまん。」
「え?」
パンッ。
俺は美知留の頬を平手打ちした。
「親の力がなければ何もできねー子供が偉そうにしてんじゃねーよ。何もできねーうちは黙って親に頭を下げておけ。多少理不尽かもしれねーがこういう時の親の言うことは正しいことがほとんどだ。」
「レイまでお母さんの味方するんだね。レイなんて嫌い!」
「そうか。ならお前の愚痴を聞いてやろうと思ったがどうする?」
「それは…。」
「思うところはあると思うがお前の愚痴はここで聞いてやる。俺の奢りでな。」
そう言って俺は喫茶店で美知留の愚痴を聞き続けた。美知留にも思うところはあるんだが母親の言うことが正解だと思った。
そして美知留に諭すように伝えた。
「レイ。さっきはごめんね。だからお願い。アタシのこと嫌いにならないで。」
美知留は泣きながら言った。俺は抱きしめて美知留の頭を撫でた。
「俺も平手打ちして悪かった。彼女に手を挙げた時点で俺も同じだ。」
「ううん。いいの。レイが正しいから。だからありがとう。」
「力になれたのなら良かった。これで大丈夫か?」
「はい。お母さんに謝ってきます。心配かけてごめんね。」
「ああ。なら早く家に帰って謝ってシャワー浴びて体温めておけ。風邪ひくぞ。」
「うん!」
バンドが決まったり彼女が家出したりとドタバタした2月のある日のことだった。
今回はあまりうまく書けませんでした。すみません。