…………あれ、これあとがきで書く事じゃね?
俺が編入してきて数日、今日は終業式だ。何とも早い。まあ、しょうがない。朝、登校しようと寮を出て歩いていると後ろから聞き覚えのある声がする。
振り向くと洋介と恵の2人だった。付き合っているらしい2人は今日も仲良く一緒に登校している。
「やあ、おはよう洋介、恵」
「おはよう四月一日君」
「おはよー」
「今日で一学期が終わり、数日しか俺はいなかったけど」
「それでも四月一日君は既にみんなの輪に入っているんだから凄いよ」
「確かに、他のクラスの子からも話を聞くし、もしかして他のクラスにももう友達いるの?」
俺はその恵の質問にピースをしながら答える。
「もちろん!流石に全員は無理だったけどな」
特に龍園翔には挨拶ひとつできてないしな。
「充分すごいよ」
「そうか、ありがとな。あ、そうだ、2人ともさ今日の夜…大体8時頃かな、空いてる?」
「8時頃?多分空いてるよ」
「私も空いてると思う」
「じゃあさ、ちょっと俺の部屋に来てもらえないかな?だめ?」
「僕はいいよ。軽井沢さんは?」
「うーん…まあ、平田君が行くなら行くかな」
「ありがとう!それじゃあ8時頃になったら来てくれ!」
そう言ったあと軽い雑談をしながら学校へと向かった。この2人は中々に面白い。もちろん多重の意味でね。
そして、終業式も終わり、HRも終わった。つまりここからは夏休みも始まる。
そして、俺がそろそろ席を立とうとする時声をかけられた。
「なあ、四月一日一緒に飯でも食わねぇかー」
かけてきたのは寛治と春樹の2人だった。その後ろには健と清隆がいる。
「あぁ、いいよ。学食?」
その問に2人は頷いて答えた。それから4人と共に学食へと向かい適当に定食を頼み5人で席についた。
そして、雑談をしながら食べ始めているとこんな話題になった。
「なあ、四月一日って色んなやつに話しかけてるみたいだけどさ、誰か気になるヤツでも見つけたか?」
「気になるヤツ?そうだな…あ、1年Aクラスの坂柳有栖かな」
「え?!マジで!?」
「あぁ、まだ1度も会ってないからな。すげぇ気になる」
「だぁ…そういう意味じゃねぇよ!!好きな奴とか出来たかって話だよ!」
「なんだ、そういう意味か。それなら今はいないな。全員まずはお友達からでって感じ」
「…その言い方、告られでもしたか?」
「いいや?」
嘘だ。フランクで親しみやすく、しかも結構顔もいいと評判な四月一日君は結構おモテになる。何回かある。だけど、『もっと君の事を知ってから考えるよ』という謳い文句で終わらせる。
つまり、簡単に振って関係終わりではない。というちょっとだけ希望を持たせるのが今後どう転ぶかは知らないけどな。
「それとさ、今更気づいたんだけど四月一日の眼鏡って何か普通と違くね?」
「あぁ、今更だな。俺って極端に目が悪いからなちょっと特殊なんだ」
そう言ったらふーんという明らかに興味のない風の返しが来る。じゃあ聞くな!!
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そして、夜8時前頃俺の部屋のチャイムがなる。
「こんばんは、待ってたよ」
訪ねてきたのは清隆だった。
「どうしたんだ?こんな時間に呼び出して」
「まあ、ちょっと話があってね。さあ、上がってくれ」
「さて、まあ、清隆を呼び出したのは他でもない。今後の事について話そうと思ってね」
「なぜそれを話し合うのが俺なんだ?もっと適任がいると思うぞ。堀北とか平田とか」
「まあ、お前を選んだのは色々と理由があるけど決定的な事がある」
「…それは?」
この言葉を発するのに少しだけ不自然な間が生じた。恐らく何を言われるか何となく察したのだろう。だから俺は単刀直入に切り出した。
「それは、お前が『ホワイトルーム』での最高傑作だからだよ。綾小路清隆」
「………」
清隆の視線が鋭くなる。威嚇…いや、ちょっとだけど殺気か?そんなものを色々含ませた視線。その中で1番大きいのが。
「何で知っている?と聞きたそうだな」
「…そうだな。普通の一生徒…いや、普通の人間が知っているような事じゃないからな」
「そう。今清隆が言った通りだよ。俺が普通の人間じゃないからだ」
「どういう事だ」
「そうだな…いや。これを話すにはお客さんが足りなすぎる」
「ますます意味がわからないな。お前は何を考えているんだ」
「まあまあ、これからお客さんが来るんだ。お前はちょっとクローゼットにでも隠れててくれ」
「は?」
そして、チャイムがなる。
「ほら来た。早く隠れて隠れて」
そう言って俺はクローゼットに清隆を仕舞ってお客さんを迎える。
「やあ、いらっしゃい。悪いね2人ともこんな時間に呼び出しちゃって」
「いやいいんだ。気にしないでくれ」
もちろん来たのは洋介と恵の2人だった。2人を中に招き入れ、コーヒーを用意してからテーブルに置いて座る。
「さて、2人を呼んだのはね今後の事についてなんだ」
「具体的に言うと?」
「そうだな。俺らがAクラスに上がるための事だな」
「なるほど。君はAクラスを狙うんだね」
「まあな。ちょっとした目的がね」
「ちょっと待って。Aクラスに上がるための話し合いなら平田君はいいとしても何で私?普通堀北さんとか櫛田さんとかじゃないの?」
「いいや、恵。君は今の2人に負けないくらいの力はあるよ。それにね…」
一口コーヒーを飲み、口を潤してからその続きを話す。
「軽井沢恵。君には人には言えない過去があるね」
「っ!?」
「四月一日君」
「平田洋介。君にもあるよね過去が」
「……」
「洋介。君の幼馴染はいじめられていた。そして君はそのことに気づいていながら、その助けに応じなかった。そして、彼の最後の助けにも応じず目の前で自殺未遂。彼は今も脳死状態。その事が君のトラウマとなり、罪悪感から周りの皆を助けようとしているね」
「…………」
「恵」
「っ…!?」
「君は酷いいじめを受けていた。それはそれは本当に酷いね。特に酷いのは脇腹にある傷だね。それでもういじめられまいとクラス内の地位を確立させるために洋介と付き合っている振りをしているんだろ?」
「ど…どう…して……?」
恵は洋介と違い完全に怯えている。完全なるトラウマになっている。恵にはこれを知っている俺を恐れている。この情報だけで、このいつもと違う雰囲気だけで彼女を完全に掌握できるのだから。
「なぜ、か…簡単に言うのなら、俺が普通の人間じゃないからな」
「…どういう事だ?」
さっきまで沈黙を通していた洋介が口を開いた。
「そうだな…なら、少し俺について語ろうか」
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俺、四月一日千里はおよそ普通の人間とは呼べるものではなかった。小さい頃から親からは嘘を…いや、人を欺く術を教えられていた。両親は詐欺師であるという事も要素の1つだ。
その両親はとある仕事に失敗し、負債…借金を抱えた。故に両親は俺を取り残し何も残さずに消えていった。
いや、1つだけ残したな。莫大な量の借金を。
それからは毎日のように借金取りが来たさ。朝だろうが、昼だろうが、夜だろうが。それが3日くらい続いていた時俺は行動に出た。
『僕の両親は僕を捨てた。つまりは僕に取り立ててもそれはあの人たちのお金じゃなくて僕個人のお金だ。僕は何の署名もしていない、僕からお金を取るのなら出る所に出る覚悟が必要ですよ』
そう言った。そうしたら借金取りは家族である事は覆っていないから君はまだ家族である両親の借金を返す義務があると言った。
よく分からない理論だけど、これが法律に冠するかとかは当時の俺には分からなかったが、こう答えるというのは予測できていた。なので俺は
『ならばこれを見てください。昨日僕が取った僕の戸籍です』
その戸籍には俺の名前しかのっていない。それを見たその借金取りは動揺する。頭の悪い借金取りだった。これは俺が作成した偽物だった。よく見れば違うというのは少し注意深く見れば気づく。
これが俺が詐欺師としての初めての仕事であり、一歩だった。
そして、借金取りはその偽の戸籍を持っていこうとした。
『他人の戸籍を無断で奪う…この意味分かりますよね?』
それを言った瞬間借金取りは強行手段を取ろうとしたのか、俺に対して恐喝をし、俺に殴りかかろうとした。そこで俺はポケットからあるものを取り出した。
携帯だ。つまりはこのやり取りを録音していたという脅し。それにはかなり青ざめていた。そして俺はこう持ち出した。
『両親の居場所だと思われる場所が記された手帳を差し出します。なので、今後僕には関わらないでください。さもなければこの録音を出す所に出さなければならないので』
その次の日から俺の家に来なくなった。もちろんの事だが差し出した手帳も録音したという言葉も全て嘘だった。
当時11歳の子供が大人相手にここまでの行動と言動は明らかに普通ではない。小学生とは思えないような知識量、嘘を嘘とは思わせない度胸と態度、ポーカーフェイス。これは天才とかそういう類のものではない。ただの異常者としか思えないだろう。
それから俺は1度四月一日千里という名前を捨てた。何故そんなことが出来たかというのは、当時の小学校の校長を丸め込み取り込んだからだ。上手く利用させてもらった。その生活の中で詐欺行為は数知れず。かなり貯蓄も溜まっている。およそ未成年の子供どころか、そこら辺にいるサラリーマンの年収をも軽く超える程の貯蓄がものの半年で集まった。
それからは独り立ちした。たまに校長とは連絡を取り戸籍を変えていた。そして、俺は1つ大きな仕事をした。それが両親が失敗した仕事だった。これは両親の仇とかそんな心温まる理由じゃない。両親よりも俺が優れているという歪んだ感情が生んだ悲劇だった。
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「俺はその仕事の電話の最中、かなりその電話に集中していたんだろうな。交差点、車通りの多い道だ。信号待ちで止まりながら電話をしていた時、後ろから押されて体勢を崩したことに気づいた時にはもう遅かった。乗用車がかなりのスピードで走ってきた。その車は俺をかわすことなく突っ込んできた。その事故で俺は脳の一部を損傷し、視力の低下とほとんどの色が見えなくなった。それは今も続いている。眼鏡を外すとほとんど視界がない」
そう、極端に言うと俺は眼鏡を外すとボヤけているものがモノクロと重なってほとんど視界が真っ黒か、真っ白のように感じている。
「…俺がAクラスを目指す理由が分かっただろ?俺は大罪人でこれからの人生を確立させるような決められた進路を得るためにAクラスを目指すんだ」
2人は呆然と俺の事を見ていた。無理もない、明らかに住む世界の違う話だ。
「……それで、何故君が僕達の過去を知っているかの答えが出ていないが?」
洋介が平静を保ちながら聞いてくる。本当にこいつは優秀だな。
「俺が編入してきた理由だ。俺は元々普通に入学する筈だった。だけど、事故のせいで予定が狂い別の高校に1度入学してから予定を遂行した。その予定がこの高校の1年の情報を全て集める事だ」
「「!!?」」
「その為に理事長には無理を言ってしまった。だけど、それすらもチャラに出来るような取引をした。その詳細は流石に話せないがな」
「つ、つまり君は1年生全員の情報持っているということなのか?」
「そういう事だ」
「君が皆の連絡先を欲しがっていたのは」
「もちろん、情報を集める一環だ。ただ、友達を作りたいっていう理由も無かった訳では無い。今まで作れたことも無かったからな」
「その言葉は、本物かい?」
いつもの洋介の目とは違う。俺の本性を徹底的に暴こうとしている目だ。だから俺は最初に話しかけた時のような笑顔で答えてあげた。
「あぁ、もちろん本物だとも。だけど、信じられるかどうかは分からないけどね」
「あ…あのさ…」
恵だ。さっきまでの動揺がある程度収まり、話せるような精神状態まで戻っていた。
「な、何でその事を話すの?普通さ、わ、私達の事を利用するならさ、自分の弱みとかって隠しておくものじゃないの?」
「恵。君はここまで話した俺の言った事を信じれるの?詐欺師であり、大罪人のこの俺の言葉を」
「分かんないけどさ…でも、理由はあるんでしょ?頭の良いあんたなら」
「………」
「僕は信じるよ四月一日君の言っていること。確かに君はかなり危険な人かもしれないけど、今は同じクラスの仲間だ。僕の過去は消えないし、今やっている行動も罪滅ぼしかもしれないけど、今やっている事に後悔はないからね」
「…お前らの言いたいことは分かった。腹を割って話したんだ俺たちでグループを作らないか?」
その問に2人は1度顔を見合わせてから俺に向けて頷いた。
「そうか…恵」
「な、なに?」
「何かあったら俺にも言ってくれ、俺もお前の事を守る。約束しよう」
「え……」
「さて、悪かったな2人共、遅くまで付き合わせて。今日はこれまでにしよう」
俺がそう言って立ち上がると2人もつられて立ち上がり、一言、二言交わした後に2人を見送った。
「さあ、出てきてもいいぞ」
そう、クローゼットに向かって喋りながら開け放つ。
「…何分閉じ込めている気だったんだよ。暑すぎるだろ」
「夏だからな。でも、聞く価値はあっただろ?」
「お前が言っていることが本当だったらな。平田と軽井沢の事は反応からして本当らしいが」
「まあ、それを信じるかはお前次第だよ。俺はそれについての答えは出さない。出した所でどれが本当かもっと疑心暗鬼になるからな」
「それもそうだ…だけど、1年の情報を集めるために入学を遅らせた。これ、少し嘘を混ぜてるよな?」
「へぇ、どこ?」
「…他の2、3年の情報も集めていたんだろ?」
「……」
「沈黙は肯定と受け取っていいんだな?」
「お好きにどうぞ。俺が喋ると混乱するだろうから黙ってただけだ。まあ、少なくともAクラスへ上がりたいってのは紛れもない真実だ。これだけは完璧に信じてもいい」
「…そうか」
「それと、俺は俺の過去や罪が露呈しようと構わないと思っている。だから、俺は自由に動く。清隆」
「なんだ」
「お前が何か考えついて、俺が行動に移せるような状況なら俺を傀儡に使っていい。堀北や櫛田だけじゃなく、俺という駒も増やした。これでお前の望む目立たないを遂行すればいい」
「…そうか、なら考えておくよ。今日は帰る」
「あぁ、遅くまで付き合わさせて悪かったな」
「気にするな。有用な情報も聞けたしな。お前の弱点は目だってな」
俺はその答えに自然と笑みが零れた。そして、清隆は部屋を出ていった。
………悪いな清隆。俺はお前の傀儡には喜んでなるが、ただの傀儡にはなるつもりはないぞ。
俺は…お前すらも利用する。
もしかしたら今回の話で気づく人がいるかもしれませんが
私は軽井沢さんの結構好きです!