気をつけてくださいな
試験5日目の夜中
「どうしたものか…」
端的に言うのであれば遭難した。通常ならば夜中だろうが、迷路のような所だろうが何とかなるが、現在の状況であるならば例え昼間だろうが俺は帰り着くことは出来ない。
なぜなら、俺の最大の弱点…眼鏡が完全に破損し、レンズが使い物にならなくなってしまったからだ。しかも不運なことに両方のだ。
「………どうしたものか」
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独白後から
寛治たちが川とその近くにスポットを見つけ、全員でそこに向かった。そこを拠点とした。そこでリーダーは桔梗の推薦と洋介の後押しで堀北に決まった。
それから各々これからの生活について思案したり、薪を拾いに行ったり、川の方に行ったりと比較的自由行動の時間となっている。
「なあ、洋介」
「ん?どうかした?四月一日君」
「30分くらいでいいんだが、ちょっと離れていいか?」
「1人でかい?あまり、褒められる行動じゃないけど。何をするの?」
「なに、少し辺りを見ておこうと思ってね。上から」
「…そうだね。それは1人じゃないと危険だね。だけど、四月一日君。気をつけて。いくら君でも流石に心配だ」
「ああ、分かってる。気をつけていくよ」
そう断りを入れてから、近くにある中で1番背の高い木を探しそれに登っていく。下ではこの光景を見て驚きの声があがる。まあ、それをスルーして俺は上まで登りきる。
そこから見た光景の感想としてはあまり収穫はない。船から見た景色とあまり変わらない。という感じだった。強いて言うのならCクラスの動向が見やすい事があげられるだろうな。これからはあまり上まで登る必要ないかもな。
とりあえず予定通り30分経ったくらいで降りる。
「おい四月一日!お前すげぇな!」
「ん?ああ、まあな。こう見えてもね運動は得意なんだ」
「ふーん、ムカつくな」
「ハッハッハ、なんとでも言え」
悔しそうな健にわざとらしく偉そうにしてみた。うん、皆の反応も悪くないみたいだ。
そうこう遊んでいたら森の方から清隆達が戻ってきた。その中に1人この場に居るはずのない人物が。
「お?おやおやおや、誰かと思えば澪じゃないか。いつから皆と仲良くなったんだ?」
この言葉に澪は心底嫌そうな顔と鬱陶しそうな顔をした。
「四月一日……」
「へえ、俺の事覚えてたんだな」
「当たり前でしょ。あんだけウザかったら」
「それで?ここへは何しに?Dクラスの友達にでも会いに来た?」
「んなわけないでしょ」
「だろうね。まあ、大方龍園翔と対立でもしたって感じか?」
「ほんとウザイ」
そう言って俺から背を向け完全に拒絶の姿勢を見せる。
伊吹澪という生徒は比較的わかりやすい。人の事を信用しない自分だけというタイプだ。だから今回も単独行動を取っている。
「ねえ、四月一日君」
後から声をかけてきたのは堀北だった。俺は堀北の方を向き爽やかな笑顔を向けながらどうかしたかと聞く。
「あなた、以前何かやっていたの?」
「鬼ごっことかくれんぼ」
「…真面目に答えて」
「何を言う!俺は真面目に答えたぞ!?小さい頃から鬼ごっことかくれんぼをして、気づいたらストリートのパルクール並になっていたんだ」
「……そう、真面目に答えないのならいいわ」
どうやらますます嫌われた。
俺は手持ち無沙汰になってその場で苦笑いをしながら頭をかいてた。
「ねぇ、何なの?あんた」
「聞いてたのか」
「そりゃ、あんだけ力説されてたら嫌でも聞こえるわよ。んで、どこからが嘘?」
「俺は本当の事しか言ってないぞ?恵」
「あんだけ運動神経高かったら凄いトレーニングしてるって普通思うでしょ。それか、凄い天才かのどっちか」
「…じゃあ、恵。ゆっくり考えてみろ。俺の以前までの境遇と俺がさっき言った言葉を無理矢理でもなんでもいいから合わせてみろ」
「はぁ?そんな事言われても……!?あんた!?」
気づいたみたいだ。なら答えなくてもいいな。だから俺はその場から離れた。
さっきも言った通り、俺は1つも嘘は言ってない。ただ、言葉が足りないだけだ。友達と仲良く、何てものでは無い。捕まれば、見つかれば終わりの鬼ごっことかくれんぼ。
しばらくしているとクラスの殆どが集まってくる。俺も途中から食料探しのメンバーに加わり、木の実やら何やらを集めていた。
そして、洋介から1つポイントについて提案が出される。最低限120ポイントを目指すというもの。
内訳としては約1週間分の食料と水で110~120。仮設トイレで20。男子用テント2つで20。残りの30~20で必要不可欠な部分を補うというものだ。かなり理にかなっているし、無理もしてない。しかもある程度のポイントも稼げる。十分な内訳だ。
皆も説明を聞き、不満は無いようだ。それから話し合いは続き、川の水を飲むようにするなど出来るだけ我慢が必要だということも気づき始めたようだ。そして、その他補足で購入される。
ある程度話し合いが終わった頃、澪についての話が上がる。しかし、それもイケメン平田洋介が何とかDクラスの皆と澪を説得し、澪をDクラスで保護することになった。
あれから澪は俺と一切目を合わせようとはしなかったけど。
そんなこんなで1日目が終了する。
おっと、大切な事を忘れていたな。六助は早々にリタイアしたそうだ。
総合すると結構まとまっていると見える。それもクラスのまとめ役である洋介の力があってこそだろう。そして、サバイバル能力のある寛治の力もここで発揮された。落ちこぼれだの何だの言われているDクラスだが、そんな事は殆ど感じられない。個々の長所を活かしていければ苦境も乗り越えられるというものだ。
そう、俺は1人木に登り黄昏るのであった。
2日目
早朝、まだ皆起きるような時間ではない頃清隆が誰よりも早くテントから出てくる。そして、清隆はある1人のバッグをあさる。傍から見ると変態行為を見つけただけだが、違う。
「清隆」
仮に遠くから見ても分かるほどの驚き具合でこっちを向く。俺はニヤニヤして手を振った。顔面蒼白だ。面白い。
俺は降りて清隆の側まで行く。
「千里、これはだな…」
「分かってる。同じ事を考えてたな」
「…いつからだ」
最近言葉足らずだが、清隆はすぐに気づいてくれたみたいだ。今のだったらお互い澪を狙ってる変態共と捉えられても否定出来ない言葉だったな。
「何がってのは流石に気づかなかったが、澪が刺客だって事は最初から気づいていた。翔と対立して別れたと言ってたのも嘘だ。あいつの嘘をつく時の癖も見抜けた」
「…よくそこまで見抜けたものだ」
「よく言うぜ。お前も俺が言わずとも気づいてただろ」
「どうだろうな」
そう濁し、俺から顔を背けた。
わざとらしい。そこら辺で洋介も起きてきた。清隆と洋介で話している間俺は陽射しに照りつけられながら後の構想を考えるのであった。
8時を過ぎた頃
Cクラスの小宮と近藤が襲来してきて挑発して来たが、俺はそっちの方には行かず別の方に行くことにした。
「さてと、ここら辺だろうな」
独り言と共に現れた景色はトウモロコシ畑。船から見ていてある事は気づいていた。
「…先客がいたか」
「やあ、康平。俺が先に来てしまった」
「四月一日か、なるほど。邪魔したな」
「え!?葛城さん!せっかくの食料ですよ!」
「早い者勝ちというやつだ。悪かったな四月一日、気を悪くしないでくれ。弥彦も悪気があるわけじゃないんだ」
気にしないというふうなジェスチャーをしながら笑顔で手を振る。しかし、康平は無表情に弥彦は不満そうな顔しながらこの場を去っていった。
俺は1つの細工をしてからその場を去った。単独行動は褒められた事では無いだろうがこういう収穫はいいな。
2日目は特に問題という問題がなく過ぎていく。俺がトウモロコシ畑の事を話したのが夜だったため次の日に何人かで取りに行くことに決まった。そろそろ俺も皆とも仲が深まったようだ。俺が運動神経良かったり、ちょっとサバイバルに成通している事が判明しそれに関して聞きに来たりも多くなった。だからこそ、今後起こるであろう事は皆受け止められるかが気になるところだ。
そんな今日も俺は1人木に登って過ごすのであった。
この話、最初の方での関係のせいか軽井沢さんとの絡みが多くなります。ただ、私が言いたいのは綾小路と軽井沢さんの絡みが薄くなってしまうのかもしれないので、そこだけは先に謝っておきます。
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結局謝らないというね