俺のデッキの末端価格は840円   作:MrM3

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第12話

 

 

デュエルアカデミアの編入試験から1週間が過ぎた今日。

外が暗くなる時刻。俺は早乙女家のダイニングに在るソファーの上に座っている。

そしてゴロンとソファーに寝転がりながら、ある書類をしげしげと眺め始める。

その書類とは、先日受けたデュエルアカデミアの編入試験の結果なんだが……。

 

『  受験番号2番 坂本惺

  ・国語   45点 × 20% =9

  ・数学   35点 × 20% =7

  ・英語   40点 × 20% =8

  ・DM筆記 65点 × 25% =16.25

  ・DM実技 90点 × 55% =49.5

                計90/140 (切上げ)

 

この度、貴方は合格規定である80点を超え合格となりました。

合格にあたり、これからの編入手続きに―――

           :

           :                   』

 

まさか合格するとは思わなかったなぁ。

実技試験は試験官に勝ったから心配してなかったが、筆記に関してはこの1週間、気が気じゃなかった。主に鉛筆コロコロの解答で、手応えが何も分らなかったのが原因だ。

まぁ、受かったからもう良いが……

 

「案外、何とか成るものなんだなぁ……」

 

口からついつい思った事が出てくる。

だがそれも仕方ないと言えよう。だってホントに受かるとは思ってなかったのだから。

この合格は3教科を捨ててデュエルモンスターズの一点集中が功を奏して、成功したと言えるのかもしれんな。

と、自分で考えた試験の突破方法を評価している時だ。合格通知に人影が差し込んできた。

 

「惺も学校終ってから、何時間も試験勉強してたんだよ?

そんな日々を2週間繰り返したんだから、当然の結果だよ」

 

影の正体はレイだった。

手には俺と同様に合格通知を持ち、ヒラヒラとその存在感をアピールさせていた。

ソファーから起き上がり、その合格通知を手に取って内容を見てみる。

レイも合格したとは聞いていたが、点数までは知らない。そこで、自分の点数とどちらが高いのか、という比べ合いの欲求に忠実に従う。

 

『  受験番号1番 早乙女レイ

  ・国語   82点 × 20% =16.4

  ・数学   78点 × 20% =15.6

  ・英語   65点 × 20% =13

  ・DM筆記 85点 × 25% =21.25

  ・DM実技 85点 × 55% =46.75

                計113/140 (切上げ)

 

この度、貴方は合格規定である80点を超え合格となりました。

合格にあたり、これからの編入手続きに―――

           :

           :                    』

                              

 

「……筆記の合計点数が300点以上だと…」

 

レイの合格通知を見て唖然とする……正直、意味がわからない。

国語が82点? 著書と作者についてや読みすら分らない漢字が多数あったのに?

数学が78点? XとかY、√←こんな意味ワカメなものがあったのに?

英語が65点? もう、何をしていいかも解らない内容だったのに?

DM筆記は俺も65点取れてるし、DM実技にいたってはレイよりも高いから良しとする。

が、やはりこの3教科の点数は意味不明だ。いくらレイが頭良いといってもまだ小学5年、この点数を叩き出すのは至難の業。もはやチートレベルである。

 

「恋する乙女に不可能なんて無いの。

と言っても、流石に今回は夜遅くまで勉強し続けてから疲れたけどね」

 

そう言いながら、レイは隣に座る。

いつもなら『恋する乙女に不可能なんて無い』のセリフに”ドンッ!!”という効果音がついてもおかしくないぐらいの気迫があるのだが、今回はそんな気迫はない。

この編入試験に真剣に取り組んで疲労した証拠というヤツだろう。

 

「夜遅くまで勉強し続けて、よく体が壊れなかったな」

 

「乙女の体は病気になんか負けないから、大丈夫なんだよ」

 

レイの発言に『何だそりゃ?』と言葉を返しながら、手に持つ合格通知2枚を近くにあるテーブルの上と置く。

そして、ふとキッチンの方から胃を刺激する良い臭いが漂ってくるのを感じ取った。

視線を台所へと移すと、愛子さんが手際良く調理している姿が目に映る。既に出来た料理の数々はダイニングテーブルへと置かれ、着々と合格祝いの準備が進んでいた。

そもそも今日俺が何故この場に居るかというと、俺とレイが合格した事を知った愛子さんが『じゃあ、お祝いをしましょう』と言ったのが始まりだ。

誘いを断る理由は無いし、折角のお祝いなので遠慮せずに参加したという訳である。

 

「二人共、あと少しで調理が終るからもう少し待ってね。

あぁ、それとレイ? お父さん、後何分かしたら帰ってくるから出迎えてあげてね」

 

「うん、分かった」

 

早乙女親子の会話を聞く限り、どうやら今日は純司さんも帰ってくるらしい。

純司さんが夕飯時に帰ってくるのは珍しい……多分だが、今日のお祝いに参加する為に仕事を早めに切りやめてくるのだと思う。あの人はこういったお祝い事などには積極的に参加する人だからな。

と、純司さんの事を考えていると玄関の方から『ただいま』と声が聞こえてきた。

成る程、噂をすれば影ありとはこの事か。

 

「あ、お父さんだ」

 

レイはその声に反応し、玄関の方へと走り去ってゆく。

そして、30秒も経たない内に父親を連れてダイニングに帰って来る。

黒髪のブロショート、整った顔立ち、そして知性を象徴しているステンレス眼鏡……この人こそ、レイの父親である早乙女純司さんである。

純司さんはダイニングに入るやいなや、嬉しそうに笑ながら此方に歩み寄り、俺の頭をワシャワシャと撫でてきた。

 

「やぁ、惺君! 編入試験合格おめでとう!」

 

「はい、ありがとうございます」

 

此方も純司さんと同様に笑顔で返す。

そして撫で終えた右手を軽く握って、俺の目線に添えてきた純司さんの拳に自分の拳を軽く”コツン”と合わせる。この拳を合わせるという行為は、純司さんと俺が会ったらやる挨拶みたいなものだ。

因みにこれをやり始めるた切欠は、純司さんが『レイが男の子として生まれたら、こんな風に拳を合わせて男の絆を深める予定だった』と言って俺とやり始めたのが切欠である。

 

「ハァハハ、お礼を言いたいのは寧ろ此方だよ。

惺君には今回の事で色々と迷惑を掛けているからね」

 

「いえいえ、いつもお世話になっていますし。何より困ったらお互い様ですよ。

俺に協力できる事があれば可能な限り喜んで協力します。

それにレイを一人でデュエルアカデミアに送る事に関しては、俺も心配ですし……」

 

心配……と言っても、主にレイが自発的に問題を起こす可能性が高い事への心配だがな。

レイは丸藤亮の事になったら暴走するヤツだ。そんなヤツが丸藤亮と同じ島に居て、告白以外何もしないか? と、問われれば俺は首を横に全力で振る。

あのレイの事だ。丸藤亮の部屋に勝手に入って物を物色するなんてストーカーみたいな行為をしないとも限らない……いや、流石にそんな犯罪染みた事はしないか……しないよな?

自分で考えていて不安になり、自然と視線はレイの方へと向いく。

 

「…………」

 

目と目が合ったのに、レイは露骨に目を逸らして明日の方角を向き始めた。

……おいおいおい。まさか、ホントに丸藤亮の部屋に忍び込む気だったオチか?

そんな不安を払うべく、レイに真相を聞こうと一歩進んだ時だ。

 

「お母さん、何か手伝うよ」

 

レイは逃げる様に愛子さんが居る台所に走り去っていった。

 

「おやおや、惺君が『レイの事が心配です』なんて言ったから照れたのかな?」

 

純司さんが微笑ましい表情で俺とレイを見据え、俺の頭をポンポンと軽く叩きながら言う。

確かに見方次第では、レイが照れ隠しとして逃げたと思っても不思議ではない……が、俺はそうは思ってはいない。

先ほどのレイの行動は、何かがバレそうになった時に使う″逃げ″という名の回避行動に違いない。その方が一連のレイの行動の説明がシックリとくるからだ。

 

はぁ……。自分の考えがあっているのでは? という思考がどんどんと固まっていく。

そして知らず知らすの内に、額からすぅっと冷や汗が流れ始めてきた。

今回のデュエルアカデミアへ俺が編入する理由は、レイが男の子としてバレないようにサポートしてほしいと早乙女家から頼まれたからだ。

そして俺個人が立てた目標の中には、レイに問題を起こさせない、というモノがある。簡単に言えば、レイが暴走した時のブレーキ役だ。

その掲げた目標の難易度がどんどんと跳ね上がっていくのを感じる。

ゲームで言えば、難易度Aランク相当だったものがSSSランクに格上げされた気分だ。

これでは問題が起きる可能性が絶望的に高い……なら、レイに事前にそういう事はするなと警告するべきか?

いや、レイならそんなもの無視して行動しそうだ。警告するだけ無駄と言えるだろう。

なら、レイが変な行動をしないように監視……もとい、見守り続ける事が最良か。

もし変な行動に出たら、止めるか妨害すれば良いのだし。

 

「あぁ、そうそう。

惺君に渡す物があるんだよ」

 

「ん? 渡す物?」

 

デュエルアカデミアでのレイ抑制案を考えている時だ、純司さんはそう言いながら自分の鞄の中から赤い帽子を手渡してきた。

その赤帽子はツバ付きの極々普通の帽子だ。変った点など無い。あるとすればロゴがKCと表記されているぐらいか……で、コレを俺にどうしろと?

 

「惺君は、レイが男装してデュエルアカデミアに行くのを知ってるだろ?」

 

「えぇ、知ってます」

 

「服装は誤魔化せても、レイのあの髪の長さを誤魔化すには帽子は必須なんだよ。

そうなると、デュエルアカデミアに滞在する間は帽子は常に被っておかないといけない。

……でも、帽子をずっと被っていると周りから色々と怪しまれると思うんだよ」

 

純司さんの言っている事を頭の中で想像してみる。

寮にいる時も、授業を受ける時も、何をするにも常に帽子を被っている編入生。

成る程。確かに周りから『何でアイツずっと帽子被ってるんだ?』と思われるな。

 

「そこで、レイだけじゃなく惺君にもこの帽子を被っていてもらいたいんだ。

編入生が二人共帽子を被っていれば、ファッションか何かと勘違いしてくれるかもしれないからね」

 

「成る程、帽子について追求されても『流行です』と言って誤魔化せばいいんですね」

 

そう言いながら、俺は手に持つ赤帽子を被ってみる。

頭にフィットするこの感覚、どうやらサイズはピッタリのようだ。

帽子の色が赤なのは、4日後に届くオシリスレッドの制服が赤色なのを考えての事だろうか。

 

「おぉ、似合うじゃなか悟君」

 

「そ、そうですか?」

 

普段帽子なんて被らないから自分の姿がどんな感じなのか分からないが、似合っているなら問題無いな、と思いながら被っている帽子をはずす。

帽子をはずした理由は、帽子をあまり被らないが故に、頭に違和感を感じてしまうからだ。

といっても、ちょっと気になる程度なので一日中被るぐらいだったら支障は無い。

 

「純司さん、惺君。

料理が出来たから合格祝いを始めましょ」

 

愛子さんの声に反応し、愛子さんの方へと視線を向けるとダイニングテーブルに様々な料理が並んでいた。フライドチキン、ピザ、シーザーサラダ、ショートケーキ、その他にも色々な料理が並んでいる。

これらを一から作れる愛子さんの家事スキルには驚かされるなぁ、と思いながら俺と純司さんはレイと愛子さんが座っているテーブルへと歩き、椅子に座る。

席の並びとしては、俺の隣にレイが座っていて、その向かい側に愛子さんと純司さんが座っている状態だ。

 

「丁度一週間後には二人ともデュエルアカデミアへ旅立つ予定になってる。

荷物の準備や書類の準備が色々と残っているけど……まずは二人の合格祝いだ!

それじゃ、惺君とレイの編入試験の合格を記念して―――カンパ~イ!」

 

「「「カンパ~イ!」」」

 

純司さんの音頭をかわきりに、一斉に手元にあるグラスをカチャカチャと鳴り合わせる。

グラスの中に入っている飲み物は全員オレンジジュースだ。純司さんはお酒を飲んでもいいようなモノなのだが、子供が居るからという理由で飲まない辺りは出来る大人だなぁと思う。

そして乾杯が終り、皆の手がそれぞれ料理へと伸び、食べ、笑合う。

4人で始まったこのお祝い会は、終始楽しげに終るのだった―――

 

 

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