ここは夜のとある公園。
昼間は子供達で賑わう公園だが、夜となればその賑わいはなくなる。当然のことだろう、夜になれば子供達は家に帰ってしまうのだから……。そんな賑わいの無い夜の公園に、今夜は3人の人影が映る。うち二人は5メートルほどの距離を空けて向かい合っている。そして、もう人はベンチに腰掛けてその二人の様子を眺めていた。
「惺君、デュエルディスクの使い方はもう大丈夫?」
「ええ、遊戯さんの説明で大体解かりました。
デュエルのルールもおじいさんからみっちり教えてもらったし、準備OKです」
「そっか。じゃあ、始めるよ?」
「はい! お手やわらかにお願いします!」
「「デュエル!」」
夜の公園に二人の声が響く……。
今ここに初心者対デュエルキングという、普段ではありえない戦いが始まろうとしていた。
■
遊戯さんと自己紹介をした後、遊戯さんにもデュエルのことを色々と聞いて、知識を深めていた時だ。おじいさんから『どれ少年、遊戯とデュエルしてみんか?』と誘われ、今の状況に至る。実力者である遊戯さんに勝てるとは思えないが……まぁ、当たって砕けろだ。
「先攻は惺君に譲るよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて……ドロー」
(手札) (ドロー)
ワイトメア スケープゴート
カードガンナー
魔道雑貨商人
魔法除去
下剋上の首飾り
初めてのデュエルという事もあって、ちょっと緊張するが……きっと大丈夫だ。おじいさんから一通りのことは教わったし、何より自分で考えて作ったデッキだ。回し方は理解している。このデッキは墓地にワイト達が溜まれば溜まるほど、強くなるように構築した。なので最初は取り合えず、墓地を肥やすところから始めるのが重要だ。
「モンスターをセット。
そして、伏せカードを一枚セットしてターンエンドです」
「僕のターン、ドロー!
僕はクイーズ・ナイトを攻撃表示で召喚!」
デュエルディスクに内臓されているソリッドビジョン・システムにより、遊戯さんの出したモンスターがバーチャルとして出現する。
初めてこのバーチャルを見た人は驚くのだろう。それはデュエルモンスターズ初心者の俺も一緒だ……とは言わない。何故なら、俺はこのバーチャルには慣れてる。
デュエルをしている現場を見れば、嫌でも目に付くのだ。慣れるのは当然のことと言えよう。
「それじゃあ、行くよ惺君!
クイーンズ・ナイトで守備モンスターを攻撃!」
クインーズ・ナイト
攻:1500
魔道雑貨商人
守:700
クイーンズ・ナイトの攻撃により、魔道雑貨商人が裏から表側守備表示になった。
遊戯さんのモンスターの攻撃力の前では、魔道雑貨商人は戦闘破壊される……でも!
「魔道雑貨商人がリバースしたので、効果が発動します。
デッキから魔法または罠カードを引くまでカードを引き、それを手札に加えます。
その際引いたカードがモンスターカードだった場合、全て墓地に送ります」
魔道雑貨商人の本領発揮はここからだ。デッキ内のモンスターと魔法・罠の比率を考えれば、モンスターを複数枚墓地に送り込める。そして尚且つ、魔法か罠を手札に加えれる……まさに一石二鳥だ。
「一枚目、終末の騎士。
二枚目、ワイト。
三枚目、カオス・ネクロマンサー
四枚目、エンジェル・リフト
四枚目のエンジェル・リフトを手札に加え、それ以外は墓地へ送ります」
「でも、魔道雑貨商人は破壊される!
僕はバトルフェイズを終了。そして、1枚カードを伏せてターンエンド」
「俺のターン、ドロー」
ドローしたのは、ものまね幻想……コイツはまだ使いどころではないな…。
このデッキの序盤の動きは、兎に角デッキからワイトを落すことだ。なのでここで召喚するモンスターは、墓地肥やしの出来るこのカードだろう。
「俺は手札から、カードガンナーを召喚します。
そして効果を発動させ、デッキトップからカードを3枚落します!
さらに、この効果で落としたカード×500ポイント攻撃力が上がります」
カードガンナー
攻:400 → 1900
カードガンナーの効果で墓地に落ちたのは、ワイト夫人、ネクロガードナー、魔法除去の3枚。そして、カードガンナーの攻撃力は1900となった。これでクイーズ・ナイトを倒せる。遊戯さんの場に伏られた一枚のカードが気になるが……まぁ、一枚ぐらい大丈夫だろ!
「バトルフェイズに移行して、バトル!
カードガンナーで、クイーンズナイトを攻撃します!」
「甘いよ、惺君!
リバースカードオープン! 聖なるバリアミラーフォース!
この罠カードの効果により、カードガンナーは破壊される!」
「え?」
遊戯さんの罠カードの効果によって、カードガンナーが爆殺した……どうしよ。
「ま、まだです! カードガンナーの効果発動!
このカードが破壊された時、デッキからカードを一枚ドローできます! ドロー!」
(手札) (ドロー)
ワイトメア ワイト
ものまね幻想し
魔法除去
下剋上の首飾り
エンジェル・リフト
ドローしたのはワイト……くぅ、この手札では今は何も出来ない。
壁モンスターがいない状態で遊戯さんのターンに移ってしまうが……しょうがないだろう。
「俺はカードを一枚セットして、ターンエンドです」
「僕のターン、ドロー!
そろそろ動かせてもらうよ、惺君。
僕は手札からキングス・ナイトを召喚! さらにキングス・ナイトの効果発動!
フィールド上にクイーンズ・ナイトが存在する時にこのカードが召喚された時、デッキからジャックス・ナイトを特殊召喚することが出来る! 来い、ジャック・スナイト!」
ジャックス・ナイト
攻:1900
キングス・ナイト
攻:1600
クイーンズ・ナイト
攻:1500
おぉ……遊戯さんのフィールドにモンスターが2体も出てきた。これで合計攻撃力は5000。俺のライフは4000ポイントだから、このまま攻撃が通れば負け確定だな。
「バトル! 三体のモンスターで、惺君にダイレクトアタック!」
遊戯さんの掛け声と共に、3人の騎士は俺に向かって突撃して来る。ソリッドビジョンの性能が高い為、なかなかの恐怖感である。このまま攻撃を受けると痛そうなので、俺は最初のターンからセットしておいたカードの発動ボタンを連打する。
「速攻魔法、スケープゴート発動!
四体の羊トークンを守備表示で、俺のフィールド上に特殊召喚します!」
「なら、その羊トークン三体に攻撃!」
モンスターゾーンに羊トークンが出てきたことにより、攻撃対象は羊トークンに移る。
羊トークンは騎士達によって切り捨てられ、今では青色の羊トークンが一匹寂しくフィールドに佇んでいる……何かゴメンな、トークン達よ。
「ターンエンド!」
「俺のターンドロー!」
引いたカードは……ワン・フォー・ワン
おぉ、喜べ羊トークン達よ。今こそお前達の仇を取ってやる。
「魔法カード、ワン・フォー・ワンを発動します!
このカードは手札のモンスターを墓地に送って、デッキからレベル1のモンスターを特殊召喚することが出来ます。俺は手札のワイトを墓地に送り、デッキからワイトキングを攻撃表示で特殊召喚します! さぁ、出て来い! ワイトキングッ!」
フィールド内の地面から唸り声と共に出てきたのは、紫色のローブを纏った骸骨だ。
夜という状況下で召喚したせいか、もろにお化けに見えるしまうが……怖がってはいけない。コイツが俺のエースモンスターなのだから。
「ワイトキングの攻撃力は墓地のワイト又はワイトキングの数×1000ポイント上昇します。
墓地のワイト夫人はワイトとして扱えるので、ワイトの数は合計3体。
よって、ワイトキングの攻撃力は3000ポイントになります!」
「続けて、俺は手札からものまね幻想師を攻撃表示で召喚します
このカードの攻撃力と守備力は、相手フィールド上に存在するモンスター1体の元々の攻撃力と守備力の数値と同じになります。俺はまねる対象をジャックス・ナイトにします!
さらに俺は、守備表示で存在する羊トークンを攻撃表示に変更します」
ワイトキング
攻:3000
ものまね幻想師
攻:1900
羊トークン
攻:0
「え? 羊トークンを攻撃表示に?」
攻撃力3000のワイトキングを見ても表情を崩さなかった、遊戯さんの表情が驚きに変る。それもそうだろう、羊トークンの攻撃力は0。遊戯さんからすれば『何してんだ、コイツ?』と思われても仕方ないことだ。でも、俺の手札にはこの羊トークンを活かすカードがある。
「俺は手札から装備魔法、下剋上の首飾りを発動します。
このカードは通常モンスターにのみ装備可能な装備魔法……そして、羊トークンは通常モンスターの扱いなので装備することができます。羊トークンに下剋上の首飾りを装備!
このカードを装備したモンスターが、自分のレベルより高いモンスターと戦闘する場合、そのレベルの差×500ポイント攻撃力が上昇します」
「準備は整いました……。
バトルフェイズへ移行し、バトル!
ものまね幻想師で、クイーンズ・ナイトを攻撃!」
遊戯LP4000→3600
クイーンズ・ナイト
攻:1500
ものまね幻想師
攻:1900
「続けて、羊トークンでジャックス・ナイトに攻撃!
羊トークンのレベル1に対して、ジャックス・ナイトのレベルは5……その差は4。
羊トークンは4×500ポイント攻撃力が上昇し、2000ポイントになります!」
遊戯LP3600→3500
ジャックス・ナイト
攻:1900
羊トークン
攻:0→2000
「さぁ~て、行きますよ!
ワイトキングでキングス・ナイトを攻撃!」
「……くぅ!」
遊戯LP3500→2100
キングス・ナイト
攻:1600
ワイトキング
攻:3000
これで遊戯さんのモンスターは0。そしてライフポイントを2100まで削ることができた。ここまで遊戯さんのライフポイントを減らせたのは、遊戯さんが手を抜いてくれた事が大きいという事は理解しているのだが、それでも初心者である俺が先制できたことは嬉しい。
そして、嬉しさと同時に高揚感も沸いてくる。このまま勝てるのでは? という高揚感がどんどんと高まっていくのだ。その理由は俺の一枚の伏せカード……エンジェル・リフト。このカードは自分の墓地に存在するレベル2以下のモンスターを墓地から特殊召喚できるカードだ。このカードを使ってモンスターを蘇生させれば、遊戯さんに更なるダメージを与えれる。遊戯さんの場に伏せカードは無いし、やるしかないだろう!
「ここで永続トラップを発動! エンジェル・リフト!
このカードは自分の墓地のレベル2以下のモンスターを特殊召喚することができます!
蘇生させるカードは……カオス・ネクロマンサーです。蘇れ、カオス・ネクロマンサー!」
(墓地≪モンスター≫) (蘇生)
ワイト ×2 カオス・ネクロマンサー
ワイト夫人
終末の騎士
魔道雑貨商人
ネクロ・ガードナー
カード・ガンナー
「カオス・ネクロマンサーの攻撃力は、自分の墓地に存在するモンスターの数×300ポイント上昇します。今の俺の墓地のモンスターは7体……攻撃力は2100になります!」
カオス・ネクロマンサー
攻:0→2100
遊戯さんのライフポイントは残り2100。そしてカオス・ネクロマンサーの攻撃力も2100。カオス・ネクロマンサーの攻撃が通れば、俺の勝ちとなる。いや、これはもう勝ちだろう。
モンスターカードも魔法やトラップカードもフィールド上に無い遊戯さんに、この攻撃を止める術は無いはずだ!
「バトルフェイズ中に蘇生されたカオス・ネクロマンサーには、まだ攻撃権が残ってる。
俺の勝ちですね、遊戯さん! カオス・ネクロマンサーでダイレクトアタック!」
俺の攻撃宣言と同時に、カオス・ネクロマンサーは墓地のモンスター達の屍を糸で操る、その数は7体だ。そして、その7体を遊戯さんに向けて襲わせる。遊戯さんに接近するモンスターの屍は3メートル……2メートルと距離を縮めていく。もう、このデュエルは俺の勝利で終るはずだ……はずなのに…
―――なぜ、この状況下になっても遊戯さんは涼しい顔をしているんだ?
『クリクリィー!』
「そう簡単にはいかないよ、惺君。
僕は手札からクリボーを捨てて、この戦闘ダメージを0にする!」
カオス・ネクロマンサーの攻撃は、突如現れたモンスターによって阻止された。
まさか、手札から効果発動できるモンスターカードが存在したとは……迂闊だった。いや、迂闊というより、俺がカードの種類を把握していないのが祟っだけか…。
「くぅ……ターンエンドです」
「僕のターン、ドロー。
惺君、キミは強いよ……じぃちゃんから教えられたことを活かしたデッキと戦略は、もう一人前のデュエリストだと断言できる。だから、一人前のデュエリストであるキミには、僕の本気を持って相手をするのが相応しい……行くよ、惺君!」
……ヤバイ。遊戯さんの気迫的なものが跳ね上がった。
その証拠に遊戯さんの背後から突風が”ビュンビュン”と吹き荒れている…ちょっと恐い。
「僕は手札から熟練の黒魔術師を召喚!
このカードは魔法カードが発動される度に魔力カウンターが乗り、3つ乗った状態のこのカードをリリースすることで、手札・デッキ・墓地からブラック・マジシャンを特殊召喚することが出来る! 僕はさらに強欲な壷を発動! デッキからカードを2枚ドロー」
「続けて僕は、魔法カード天使の施しを発動! デッキからカードを3枚引き、2枚を墓地に捨てる。僕はこの効果により、混沌の黒魔術師、バスター・ブレーダーを墓地へ。そして、手札から死者蘇生を発動! 墓地から混沌の黒魔術師を特殊召喚させる。さらに、混沌の黒魔術師が特殊召喚に成功したことにより、墓地から死者蘇生を手札に加える」
「魔法カードを3回使用したことにより、熟練の黒魔術師の魔力カウンターは3つになる。僕は熟練の黒魔術師をリリースし、デッキからブラック・マジシャンを特殊召喚する。現れろ! ブラック・マジシャン! そして僕は手札の死者蘇生を再び発動させる。僕は死者蘇生の効果で墓地からバスター・ブレーダーを特殊召喚!」
「さらに、墓地に眠るジャックス・ナイト、熟練の黒魔術師の2体をゲームから除外! 僕は手札から、カオス・ソルジャー開闢の使者を特殊召喚する」
ブラック・マジシャン
攻:2500
混沌の黒魔術師
攻:2800
バスター・ブレーダー
攻:2600
カオスソルジャー開闢の使者
攻:3000
えぇーッ!? 何コレ!? 何でこんな強そうなモンスターが4体も出てくるの!?
遊戯さん、色々とカードの効果を述べてくれたけどさ……俺には全く理解でなかったぞ。
あ、遊戯さんの手がまだ動いてる……ということは……まだ続くんですね…。
「僕はカオスソルジャー開闢の使者の効果を発動! このターン中にこのカードが攻撃できない代わりに、相手モンスター一体をゲームから除外する。 僕が除外するのはワイトキング! さらに僕はここで、手札から速攻魔法サイクロを発動! 破壊する対象はエンジェル・リフト! エンジェル・リフトが破壊されたことによりカオス・ネクロマンサーは破壊される!」
「そして、バトルフェイズに移行!
ブラック・マジシャンでものまね幻想師を攻撃! ブラック・マジック!」
ブラック・マジシャン
攻:2500
ものまね幻想師
攻:1900
惺LP4000→3400
「そして僕はここで速攻魔法ディメンション・マジックを発動! このカードは自分の魔法使い族一体をリリースして、手札の魔法使い族を特殊召喚できる。そして、魔法使い族を特殊召喚した後、相手のモンスター一体を破壊することができる! 僕はブラック・マジシャンをリリースして、手札のブラック・マジシャンガールを特殊召喚! そして、ディメンション・マジックの効果によって、羊トークンを破壊!」
……マジか…。遊戯さんの場にモンスターが増えたと思ったら、今度は此方のモンスターが全滅していた。今遊戯さんの場には攻撃可能なモンスターが3体……墓地のネクロ・ガードナーの効果を発動させても防げない。
「混沌の黒魔術師で惺君にダイレクトアタック! 滅びの呪文、デスアルテマー!」
「ぼ、墓地のネクロガードナーの効果を発動します。
このカードを除外して、その攻撃を無効にします」
「なら、続けてバスター・ブレーダーでダイレクトアタック! 破壊剣一閃!」
「くぅ!?」
大剣を持った剣士が俺を縦に一閃する。ソリットビジョンの体感ダメージ設定が弱に設定されてる為、体に少しばかり衝撃が走る。そしてこの痛みを感じながら思う……あぁ、俺はなんて馬鹿だったのだろうと……。
バスター・ブレーダー
攻:2600
惺LP3400→800
「ブラック・マジシャンガールは墓地のブラック・マジシャン又はマジシャン・オブ・ブラックカオス一体につき攻撃力を300ポイント上げる! 僕の墓地にはブラック・マジシャンが存在しているから、ブラック・マジシャンガールの攻撃力は2300になる」
ブラク・マジシャンガール
攻:2000→2300
遊戯さんに勝てる? ア、アハハハ……まったく、数分前の俺を殴ってやりたいね。
この人は今の俺が勝てるような相手ではない。たかだか自分のデッキを回せるようになった程度の今の俺では、遊戯さんとの力量差は天と地の差がある……勝てる訳が無い…。
「ブラック・マジシャンガールでダイレクトアタック!
金髪のお姉さんの攻撃が自分に向かって飛んでくる。その攻撃は丸い形をしたピンク色の魔力弾だ。その攻撃を見ていて、自分の頭に色々な考えが過ぎる……負けたなぁとか、悔しいなぁとか、様々だ。でも、その中で一番しっくりくるのは……やっぱりコレかな?
―――武藤遊戯を本気にさせると恐い。
―ドッカアァァ――ン!!
ブラック・マジシャンガール
攻:2300
惺LP800→-1500
WIN 武藤遊戯