俺のデッキの末端価格は840円   作:MrM3

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第5話

遊戯さんとのデュエルはやっぱり俺の負けで終った。

たかだかデッキを回せるようになった程度では、遊戯さんには遠く及ばないことを思い知らされた。やはり当たって砕けろの如く、此方が砕かれた形だ。まぁ、この結果は極々当たり前のものだろう。俺みたいな今日デュエルモンスターズを始めたばかりのポット出のヤツが勝てるほど、このデュエルモンスターズは単純ではないのだから……。

 

『デュエルモンスターズは数千枚以上のカードから自分のデッキに入れるカードを選択して、デッキを構築する。どのような戦略を立てるかによってそのデッキ内容は大きく異なっていく。多くのデュエリストに使用されているのは、相手のモンスターカードより強いモンスターを出して、相手のライフポイントを削っていくというスタンスだ。この戦略はデュエルモンスターズのルール上、相手のライフポイントを0にすれば勝利となるのだから当たり前の事だ。だが、この戦略とは違った方法で勝利する方法も存在する。相手のデッキを0にして勝利するデッキ破壊。モンスターカードを使用しないで魔法カードによる直接系バーンカードの使用で勝利するなどがある。なお、後者であげた魔法カードによる直接系バーンカードの使用はプロデュエルの世界では禁止指定されている。その影響を受けてか、通常のデュルにおいても魔法の直接系バーンカードの使用はタブーとする傾向が強いようだ。因み―――』

 

「へぇー。そうなんだ……」

 

今俺は自室のパソコンの画面と睨めっこしている。

あのデュエルの後、俺はおじいさんと遊戯さんにお礼と別れを告げて家に帰ったのだ。本当ならもう少し、おじいさんと遊戯さんにデュエルモンスターズの事について質問したかったのだが、時間がそれを許さなかった。というのも、デュエルが終った時刻は23時を回ろうとしていたのだ。この時刻で小学生が町中にいれば、補導される危険性がかなり高いので、渋々帰ったのである。

で、帰った後はインターネットでデュエルモンスターズ関連の知識を深めようと奮闘中…。

ルールなどはおじいさんに教わったので調べる必要は無いが、今画面に表示されているような情報を調べることも重要なことだろう。

 

「重要なことだが……ふぁ~」

 

眠い……眠気がはんぱない。

パソコンに表記されている時間を見ると1時を回っていた……どうやら集中しすぎたようだ。そして、かれこれ2時間近くディスプレイを見続けていたせいもあって目も若干痛む。これはもう寝た方が良いだろう。

 

「よし……寝よ」

 

俺はパソコンと部屋の電気を消してベットに潜り込む。

明日はレイとの決戦(デュエル)があるのだ、体調を万全なものにする事が望ましい。

まぁ、1時過ぎに寝ようとしてる時点で、体調管理うんぬん言ってもしょうがないが……。

 

「……すぅ……ふぅ…」

 

目を閉じる……。

呼吸をする……。

この一連の動作をしただけで、意識が遠のく……お休みなさい。

 

 

 

 

夜の次に来るのは朝だ。

月が沈めば太陽が出てくる。

これは自然界に存在するサイクルだ。恐らく惑星規模の超常現象が起きない限り、このサイクルは壊れない。壊れてしまえば世界は滅亡するだろう……。そして、俺は思うんだ。

この世界……いや、宇宙規模での話しは、人間にもあてはめることが出来るのではないかと……。

人間の日常は起きる→食べる→寝るのサイクルによって成り立ってる。どんなに不規則な生活をしていても、このサイクルの根本を止めることは出来ないだろう。もし、このサイクルの根本を覆せるというのなら、その人は病人か、もしくは人を超越した神であると…。

つまりだ、俺が最終的に言いたいのは……

 

「レイ、俺は神になった」

 

『……ねぇ? これもう切っていい?

そろそろ3時間目が始まりそうなんだけど……』

 

今の時刻は午前10時前……もう学校が始まっている時間帯だ。

俺はあのサイクルの超越を見出した。それは寝る→寝る→起きる(にどね)……人間誰しもがやったことのあるものである。

 

……馬鹿げた暴論はこの位にして、そろそろ本題に入ろう。

 

「何故今日、起こしてくれなかった?」

 

『いや、ちゃんと昨日みたいに起こそうとしたよ?

でも、何か今日はインターホンの調子が悪くてさぁ……。

ボクが8回ぐらい連打したら、音が鳴らなくなっちゃったんだ』

 

なるほど、器物破損か。

だがまぁ、俺を起こそうとして壊したようだし……今回は俺が悪いか。今回はな。

 

『あ、でも安心してね。惺は今日休みってことにしたから、ボクは遅刻してないよ』

 

「おい、俺はその言葉をどう受け止めればいいんだ?

俺的にはズル休みできて嬉しいが、後半の言葉を聞くと見捨てられた感がするのだが?」

 

『いやだなー。ボクが惺を見捨てる訳ないじゃないかぁー。

だから、惺はボクに感謝の言葉を言うべきだと思うんだ』

 

あぁ、携帯から聞こえてくるレイの言葉が棒読みだ。

これは見捨てられたな、うん。つまり感謝する必要はないと…。

ていうか、感謝以前に此方としては、昨日の盗撮の件について謝罪して欲しいぐらいだ。

 

「感謝の言葉が欲しいのなら、昨日の盗撮の件について謝罪をしてからにしろ。

そして謝罪した後に盗撮動画を消せ、そしたらレイにお礼を言うわ」

 

『んーヤダ。

だってアレがないと惺、今日のデュエルから逃げるでしょ? だからダメ。

それに昨日ちゃんとメールで送たよね? 要は惺がデュエルで勝てばいいんだよ』

 

レイの言葉が時折、何かを堪えるようにして喋っているのが携帯越しに伝わってくる。

『クスクス』と声が聞こえてくる以上、笑を堪えながら喋ってるなコイツ……。大方、俺がまだデュエルモンスターズのやり方を知らない初心者だと思っているのだろう。

だが残念だったな、早乙女レイ。俺はもう、初心者ではないのだよ!

 

「ハッハハ! そうだったなぁ……勝てば良いんだもんなぁ!」

 

今の俺はデュエルモンスターズのルールを知ってる。デッキも持ってる。

昨日と違うこの状況の変化は、自分への自信に繋がる……思わず笑ってしまうぐらいに。

 

『…………(やけに自信ありげなこの感じ……もしかして…)

ちょっと、惺! デュエルは真剣勝負だからね! 卑怯な手を使ったら負けだよ!』

 

携帯からレイの声が響く、その音量は思わず耳から携帯を離してしまうほどだ。

レイからしたら、俺がこのような対応をするとは思っていなかったのだろうな……。

というかレイ、俺はお前にだけは卑怯者呼ばわりされたくないぞ。

 

「お前じゃあるまいし、卑怯な手なんぞ使わんわ。

正々堂々と正面から、お前にデュエルで勝利してやるさ」

 

『な、何よその自信は……は、張ったりもいい加減にした方が良いよ!』

 

おぉ、焦ってる、焦ってる。

あ、そうだ……昨日散々いいように脅されたからな、こっちも脅そう。

 

「いや、勝ってやるさ。

あ~後、レイ、気づいているか?」

 

『な、何がよ』

 

「もし俺がデュエルで勝ったら……お前、相当哀れなヤツになるぞ?」

 

『はぁ!? ボクがまけ―――』

 

――――ピィー、ピィー。

何かレイが反論しそうになったが、タイミングよく携帯の充電が無くなってしまった。

もはやこの時点で哀れだな、レイ。そして、俺にとっては実に良いタイミングで通話が切れたと思う。御かげで、昨日の鬱憤が一気に晴れた。流石は我が携帯だ、褒めてやる。

 

さて、取り合えずレイへの宣戦布告は終ったとして……これから何をしようか?

デッキの調整はカードが40枚しかないから、調整もなにもないし。パソコンでデュエルモンスターズの事を調べるのもなぁ……何か、違う気がする。

 

―――ぐぅ~。

何をしようか? と悩んでいたら、何処からともなく野獣の咆哮が聞こえてくる。

その咆哮の発信源たる自分のお腹を軽くさする。そういえば、起きてから何にも食べてない……なるほど、俺の今すべきことが分かった気がするぜ…。

 

俺は向かう、キッチンへと。

 

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