俺のデッキの末端価格は840円   作:MrM3

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第6話

今の時刻は午後16時過ぎ……。

今俺がいる場所は、昨日遊戯さんとデュエルしたあの公園だ。

公園には砂遊びをしている男の子やスベリ台などの遊具で遊ぶ女の子達が、ワイワイとはしゃいでいる姿が目に映る。男の子は3人、女の子は5人といった割合だ。そんな子供達の姿をベンチに座って一目見た後、俺は自分の手元にある携帯の画面に目を通す。

 

『惺、キミがボクの電話に出ないからメールで知らせておくよ。

今日の16時15分に、東公園でデュエルをするから遅れないで来ること。

デュエルディスクについては、ボクが2個持ってるから1個貸してあげるよ。

ps:電話を途中で切った事とそれ以後電話に出なかった事について、覚えておいてね』

 

これはレイから、一時間前に送られてきたメールの内容だ。

俺はこのメールを見て、今この公園でレイを待っているという状況である。因みにメール内容に『電話を途中で切った』とか『電話に出なかった』とかが書いてあるが、俺に責任は無い。電話を途中で切ったのは電話の充電が切れたのが原因だし、電話に出なかったのは電源がOFのままだったのが原因で、電話に出れなかったのだ。これらの事を総合して考えると、どのつまり俺は悪くないという事である。

 

 

 

―――タッ、タ、タッ、タ!

携帯の画面を見て3分経過したあたりだろうか? 

公園内を走る音が耳に届く……足音が此方に向かってくる事を考慮すると、恐らくこの足音はレイのものだろう。そう思い、ふと目線を走ってくる人へと向ける……やはりレイだった。走ってくるレイの姿をよくよく見ると、ピンク色の大きめの手提げバックを手にぶら下げている。バックの中から機械の一部が見え隠れしている事を考えると、あれは恐らくデュエルディスクなのだろうな。

 

「よう、レイ」

 

レイとの距離が10メートルに差し掛かった辺りで、俺はベンチに座った状態で片手を上げ、その手を左右へ振る。それを見たレイは笑顔を作り、此方に近づいて来る……何とも良い笑顔だ。ただし、目が笑ってないけどな。

 

「やぁ、惺、ッと!」

 

レイは俺との距離が1メートルに差し掛かった時、あるアクションを繰出した。

それは俺の目の前で右回転という、とてもシンプルなものだ。俺はレイの行動を見て『何してるんだ、コイツ?』と考えたが、直にレイの行動の意味が分かった。何故なら、俺の視界にピンク色の手提げバックが接近して来るからだ。

 

「ちょ――」

 

俺は右に倒れることで、迫り来るバックの回避に成功する。

回避の際、ベンチが少し長めに作られてた御かげもあり、俺がベンチから落ちることはなかった。

 

「……チィ」

 

「おい、ちょっと待て!

なぜ今舌打ちをした! そしてなぜ攻撃するんだよ、レイ!」

 

右に一回転し終えた後、舌打ちしたレイに対して、俺はベンチから立ち上がって抗議する。

あんなもの物理攻撃以外の何ものでもない。抗議するのには十分な理由だ。

 

「え? どうしたの惺?」

 

しかし、俺の抗議を聞いたレイは首を傾げる。

レイの今の表情は『何か?』とでも言いたげな表情だ。

 

「お前何、白を切ってるの!?

今俺を攻撃したよね!? 物理的にッ!」

 

「攻撃? ……あ、ごめんね?

ちょっと、石につまずいちゃった」

 

「おい、あれはつまずいたとかのレベルじゃないぞ!

てか、地面見ろ! 地面を! 石なんて一つも無いだろうが!」

 

レイの言い訳を否定するかのように、俺は地面を指差す。

そこには石など無く、ましてや石ころすら無いほどに整備されたサラサラの地面だ。レイがつまずく物など何も無い。レイが嘘を言っているのは火を見るよりも明らかだ。

 

「細かい事は気にしない、気にしない。

ボクとしてはもの足りないけど……さっきので、電話を途中で切ったりした事は許してあげるよ。だから惺も、ボクがさっきやった事は見なかった事にすれば良いと思うよ。

あ、それと……はい、デュエルディスク。貸すけど壊さないでよね?」

 

レイは自分の言いたい事を言って、此方にデュエルディスクを渡してきた。反射的にレイから渡された時に『おぅ、わりぃ』と言って受取ってしまったが、先ほどのレイの発言はどう考えても確信犯の発言だ。この発言には色々と追求しなければいけない。

だが俺の考えとは裏腹に、レイは此方に背を向け距離を取っていく。レイの左腕にデュエルディスクがセットされていることから、デュエルをする為に距離を取っているのだろう。

 

「おい、ちょっと待て。

さっきのお前の発言に対して、俺は色々と言いたいことがあるんだが?」

 

離れていくレイに対し、声を掛ける。

3メートルほど離れた位置で振り返ったレイの顔は……何とも呆れ顔だった。

 

「はぁー。

惺……女の子がやった事に対してしつこく追求するなんて、女々しいよ?

男の子なら、過去の事を振り返らない豪快な性格になりなよ」

 

レイの後半の部分は兎も角、前半部分を聞いて少し胸が痛む。

た、確かに、レイの言ったようにさっきまでの俺は女々しかったかもしれない……。

まぁ、逆にレイは女々しいというより、男らしいと思うが。

 

「くぅ、分かったよ……もう聞かない事にする」

 

「うんうん。

それでこそ惺だよ。ちゃんと男の子らしくなったね。

あ、でもデュエルディスクを壊さないって所は覚えててよね」

 

笑顔で4、5回頷きながら喋った後、レイは此方に釘を刺すかのようにデュエルディスクの事を念押ししてきた。……自分に都合の悪い事は忘れさせ、さらに自分が損害を受けないように念押ししているレイの姿を見て思う。

 

―――この自分に素直な性格こそ、男らしいのではないかと。

 

 

 

小さな小言は終り、今俺とレイの左腕にはデュエルディスクが装着されている。

さらにお互いのデッキも、もう既にセットされている。もはやいつでもデュエルできる状態だ。

 

「デュエルは惺に先攻を譲るよ。

電話では何か自信有り気だったけど、一応デュエル経験浅いからね」

 

5メートルほど離れた位置にいるレイの言葉を聞き、思わず耳を疑ってしまった。

レイが俺の事を配慮している点が信じられなかったからだ。……まぁ、レイのことだから、何かしら裏が有るんだろうけど…。

 

「で、俺に先攻を譲ってくれる本当の理由は何だ?」

 

「ん? そんなの決まってるでしょ?

後から『初心者相手に先攻譲らないとか…』って言い訳されても面倒だし……。

それに僕の方が実力高いのは事実だからね。ハンデってヤツだよ、ハ・ン・デ!」

 

ふ~ん……裏が有るとは思っていたけど、そういう事か。

レイとしては、此方にハンデを与えることによって、少しでも俺に負けの言い訳をさせないつもりか。

まぁ、此方としては勝気できているので気にしないが。

 

「へぇ~負けの言い訳ねぇ……。

じゃあ、俺からも言わせて貰うぞ? 『ハンデあげ過ぎて負けました』てのは無しだ、負けたらちゃんと負けを認めろよ。認めなかったらレイの事を『デュエル初心者に負けて言い訳をした、超哀れなデュエリスト』って学校中に言い触らすからな」

 

「ちょっと! 何よその『超哀れデュエリスト』って!

ボクだって一人のデュエリストだよ! 負けたらちゃんと負けを認めるよ!」

 

そう言ってレイはデュエルディスクを構え始めた。

続いて俺もデュエルディスクを起動させ、構える。

 

「そんじゃまぁ……負けたヤツは潔く負けを認めるって事で」

 

「うん、それで良いよ……勝つのはボクだもん!」

 

「いいや、俺だ!」

 

「「デュエルッ!!」」

 

こうして、俺とレイのデュエルは開幕した。

 

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