アーシアさん超狂化   作:あるふれーと

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プロローグ

 教会に属する悪魔祓いは、大きく3つに分けられる。

 

 1つは、神への信仰心から悪魔を倒す者。

 1つは、悪魔への敵意から悪魔を倒す者。

 1つは、仕事として金を得るために悪魔を倒す者。

 

 

 その少女-------- アーシア・アルジェントは3つ目に当てはまる。

 

 

 教会の前に棄てられ、教会で育ち、そして神からの祝福を受け取った彼女だが、その心の中では微塵も神を信じてはいなかった。

 しかし、他に生活の術もないために、その祝福で信者を癒すと共に自らが戦場へ出て悪魔を狩った。

 

 

 彼女はまず敵の全員の動きを銃剣(バヨネット)で封じ、巨大な車輪をもって一体一体丁寧に叩き潰す。

 

 

 グロテスクな光景には慣れている彼女の同業者(悪魔祓い)達であっても目を覆いたくなるような、凄惨で確実な殺し方をするのだ。

 

 いつしか彼女は"暴力装置"や"処刑人"や"鏖殺者"などと呼ばれ、悪魔や堕天使だけで無く教会の人間にまで恐れられるようになっていた。

 

 

 ♢

 

「さて、どうするか……」

 

 私…… アーシア・アルジェントは路頭に迷っていた。

 諸事情により修道服一丁で教会を追い出され、聖書一冊と財布、そして70kg程度の重量の武器を担いで宿を探していたが、そんな怪しい出で立ちの女を止めてくれる宿がなかなか見つからない。

 

 そもそも街を歩いているだけで周りの注目を集めてしまう。

 そりゃあそうか、修道服着たちっこい女がデッカい車輪担いで街中ウロウロしてたら誰でも見るわ。 つーか職質喰らってないのが奇跡だわ。

 

 

 ハァ…… クソッタレ、ヴァチカンの連中絶対許さねぇ…… ん?

 

 

 周囲の人間の物とは異質な視線を感じて振り返ると、黒猫が急いで去っていくところだった。

 

 

 ハハーン、半妖半悪魔ってところか? ってことは人間の姿もとれるよな?

 

 ケケッ、丁度良い。 取っ捕まえて金渡してまともな服買って来て貰うゼェ……

 

 

 そうと決まれば話は早い、黒猫を追って走り出す。 ところどころ地面が割れるが無視だ無視。

 

 ♦︎

 

 随分と街から離れてしまった。

 だってあの黒猫、山の中に入って撒こうとしてくるんだもん。 追いかける途中で多少木をへし折ったりしたが、まあ大したことではない。

 

「さぁて、捕まえたぞ子猫ちゃーん?」

 

 右手で首根っこを捕まえた猫を、目の前まで持ってくる。

 

「君、妖怪で悪魔でしょう? ほら、早く正体表してよ、Hurry、Hurry!!」

 

 などと言って見るが、猫は発情期のようにニャーニャー煩く鳴くのみで、一向に正体を表そうとはしない。

 

「私が誰かはわかってるんだろ? 大丈夫大丈夫、もう教会所属じゃないから君を祓ったりはしないから。 ただ、このまま猫の姿のままなら…… 踊り食いとかしちゃおっかなぁ?」

 

 あー、と大口を開けてみせる。

 すると猫は焦った様子でジタバタと足を動かし、観念したようにその身体を霧で包む。 その黒い霧は段々と膨張していき、一気に晴れた。

 

「や、やぁ!」

「やあ、こんにちは」

 

 現れたのは黒い着物を着崩したグラマラスなお姉さんだった。

 私よりもかなり背が高いので、首根っこを掴まれていてもキッチリ足が地面についている。

 

 

「そ、それで何をするつもりかにゃぁ? は、祓うつもりがないならあんなに追って来たりはしないはずにゃんだけど?」

 

 

 ダラダラと汗を流しながら言う悪魔。

 そこまで怖がられるとは、心外だ。 私は仕事以外で祓うことは殆どないと言うのに。

 

「いやね、聞きたいことと頼みたいことが少々あるだけだよ。 んじゃまず1つ、名前は?」

「く、黒歌にゃ! ただの黒歌!」

「OK.OK。 んじゃ黒歌にゃん、君はなぜ私を追っていたんだい?」

「こ、個人的に興味が……」

 

 首根っこを掴んでいた手で頭を引き寄せ、右耳に噛みつき食い千切る。

 

「ニ゛ャッ!?」

「嘘だよなぁ? 次は反対の耳、その次は指、そのまた次は鼻とか目とか? まあ、嘘偽りなく答えりゃその傷も直して五体満足で返してやるからよ、なぁ?」

「わ、わかった! わかりましたにゃ! 私があなたを見ていたのは禍の団(カオス・ブリゲード)の命令にゃ! 追放された処刑人の動向を探れって!」

「へぇ……」

 

 彼女の右耳があったところに口の中の千切れた耳を当て、祝福でくっつけてやる。

 治った後にペロリと耳を舐めてやると、彼女は変な声を上げた。

 

 へえ、これは良いな…… どうせ教会を追われたんだ、変に禁欲的にならずに恋人を作って見るのも良いかも知れない……

 

「それで次の質問、君の種族は?」

「ね、猫又の転生悪魔にゃ!」

「うんうん、OK……」

 

 可愛い娘って、怯えてる顔も可愛いね。

 それもこの娘は結構強い部類に入る。 そのプライドを打ち砕かれた分も含めて、とても良い顔をしてる。

 

「それじゃ、お願いの方なんだけど…… 手、出して?」

「は、はい……」

 

 言うがままに差し出された彼女の手に、財布から札束を取り出して握らせる。

 

「……へ?」

「このお金でさ、私に似合う服買って着てよ! パーカーとかシャツとかGパンとかスカートとか! お釣りはあげるからさ!」

「……え、そんなのが目的で……?」

「ああ、そうだよ! やっぱり修道服でこの武器担いでるのはおかしいからさ! せめて私服なら怪しさも少しは減るんじゃないかなぁ、って思ったんだけれども、こんなナリじゃ洋服屋にも入れないだろ?」

「あ、ああ……」

「んじゃ、よろしくぅ!」

 

 ♦︎

 

 

 失敗した失敗した失敗した失敗した!!

 もう、なんなのにゃあの子!? 予想してた十倍は頭おかしいんだけど?

 

 そもそもなんであんなデカイもん背負って私に追いつけるの? なんで普通に耳食い千切って舐めてくるの? そしてそこまでしてさせたかったことが服のパシリ?

 

 ああもう! 仕返しにめちゃくちゃ変な服を買っていってや……

 

 《フラッシュバックするアーシアの顔》

 

 ……るのは良くないね! あの子のお金だし! 可愛いの買っていってあげないとね!?

 

 

 って言うか私の恰好も相当怪しいよなぁ…… せめて着物はちゃんと着ておこう。

 

 ……ハァ、こんなのが皆んなに知れたら笑われる。 特に美猴辺りには6ヶ月はたっぷり弄られる……

 

 いや、しょうがないじゃん? あんな化け物に命令されたらさ?

 もう"銃口を向けられた"とか"ナイフを突きつけられた"とかそういう次元の話じゃなくて"ギロチン台にセットされて秒読みが始まった"ぐらいのヤバさなんだよ!?

 

 

 ♢

 

「おー、お疲れ様ー!」

「ど、どうにゃ?」

「うんうん良いねー! センスある服だねー? まあ私そんなの全然わかんないけど!」

 

 黒歌にゃんの買って着てくれた服を袋から出し、クソッタレの修道服を脱ぎ捨ててそれを着る。

(多分)シンプルなGパンにTシャツ。

 

「ありがとうね! いやぁ、ずっと修道服だから普通の服に憧れてたんだよ! お礼にそっちに質問があれば幾つか答えてあげよう!」

「じゃ、じゃあウチの組織に入るつもりは……」

「ない! 微塵も! 次どうぞ!」

 

 残念ながら悪の組織に入るつもりは当分湧かないだろう。

 

「じゃ、じゃあ今後はどうするつもりにゃ?」

「んー、日本に行くかな? 君のその服見てたら、日本に旅行行きたかったの思い出してね! まあしばらくは1人で自由にやるけど、必要になったら呼ぶからガイドしてね? 他には?」

「ないですにゃ!」

「OK、んじゃ、また会おうね黒歌にゃん!」

 

 善は急げ、と聖書を広げて転移の奇跡を使う。

 ああ、奇跡ってのは悪魔祓いの一部が使う術みたいなもんで、魔法とは似て非なるものだよ!

 

 

 ♢

 

 

「やって来ました、日本ッ!」

 

 大地を踏みしめ、叫ぶ。

 次の瞬間、私は2つの問題点に気づく。

 

 1つ、日本語わからねえ。 1つ、日本のお金持ってねえ。

 

 ……一先ず教会に泊まろうかな!




ノリで書いた。
後悔してるかどうかって言われたらしてるかも知れない。
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