結城玲奈は勇者である~友奈ガチ勢の日常~   作:“人”

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……バカな。前回の投稿で、お気に入り数が150件も増えた、だと……⁉︎しかも評価バーの色が赤⁉︎日刊ランキング6位⁉︎ ………想像以上のインパクト。

お気に入り登録してくださった皆さん、そして感想をくれた方々。誠にありがとうございます‼︎


そして、十六夜白金さん、kantamu9さん、輪凛さん、肉盛りさん、GBANさん、やまでんさん、ミキプルーンさん、ブイズ愛好家さん。評価ありがとうございます!

私はどちらかと言うと、書くことそのものよりも『書いた物で人が楽しんでくれている実感を得るのが好き』なタイプなので、皆様の反応は実にモチベーションアップにつながる。

そしてこの作品を楽しんで下さっている皆さん!ありがとうございます!投稿遅くてごめんなさい!
………本当、毎日どころか1日に2回も3回も投稿している人すげえ。





“彼岸花"

「……全く、本当に手間がかかるわ」

 

少女は嘆息しながら、身体を引きずるようにして歩く。———砕けた軽金属の鎧が、地面に散らばった。それに伴い、白銀の髪も本来の黒色を取り戻していく。

 

杖代わりにしていた細身の剣はその形を変え、一本の大鎌に。壊れた鎧の下から露わになったのは、暗赤色の勇者服。その肩には、彼岸花を模した形の満開ゲージがマックスで溜まっている。

 

———鎧は美森の銃や風の大剣と同じように、精霊による武装だった。だからこそ、異常なまでの防御能力を有している。

 

鎧は、玲奈の心の壁の具現。外界の恐怖から心を守り、胸の内を隠す心の壁。それはそのまま、敵の脅威から身を守り、本来の勇者の姿を押し隠す鎧となった。

 

剣は、玲奈の攻撃性の具現。幼い頃の境遇によって育まれ、しかし友奈によって沈静化していた、玲奈本人でさえ気付いていない凶暴性の発露。それは何よりも鋭く、あらゆる物を壊し尽くす武器として現れた。

 

———故に玲奈本人の意識が閉ざされた今、『もう一人』の力の影響が発露するのは道理。

 

 

「……でも。間接的にとはいえ、あなたのおかげで『精霊の瘴気』から救われた。このくらいは無償でやってあげるわ」

 

体の痛みは徐々に引いていく。爆風で吹き飛ばされた際に骨に入ったヒビも回復した。消耗した体力だけはどうしようもないが、少なくとも2年前のように結城友奈を驚かせる事はない、と少女は考える。

 

傷を癒した後は大鎌を消し、音を立てずに疾走。玲奈が部屋を出た窓から部屋に侵入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「37度8分。これじゃ、学校はお休みだね……」

 

翌朝、玲奈は熱を出した。

主な原因は、真夜中に家を抜け出した挙句に勇者の力を使って体力を消耗し、その状態で空高く吹き飛ばされたり自分で散らした水飛沫を浴びたりして身体を冷やしたことだが、友奈は知る由もない。

 

 

「……本当は私も休みたいけど…」

 

「……ダメよ。私の為に友奈を欠席させるわけにはいかないわ。お母さんもいるし、大丈夫」

 

それはまるで、過保護な姉が妹を案じて一緒に学校を休む風景にしか見えなかったが、実際の姉妹関係は逆である。

 

「…きっと、ただの風邪よ。それに早くしないと遅刻するわ。東郷も待たせているでしょう?」

 

「………うん、分かった。行ってくるね」

 

部屋を出る前に、「絶対に無理しちゃダメだよ!」と言いつけ、友奈は出て行った。

 

 

「……さて、と」

 

玲奈は布団に入ったまま、昨夜の光景を思い浮かべる。

幼い頃から、人類はウイルスによって滅亡寸前まで追い込まれ、感染から逃れた人間たちは神樹様によって守られたと教えられていた。神樹の結界から出たら、ウイルスが蔓延する世界が広がっているのだとも。

 

———それは、間違っている。

 

あれが、ウイルスのはずはないと玲奈は確信していた。ウイルスなどよりも遥かに恐ろしく、そして崇高な『何か』。あの灼熱の地獄は、通常の生物の規格で起こせる範疇を優に超えている。

 

 

「……あれは、何?」

 

問いに答える者はいない。薬を飲んだ後は、やはり『彼女』は出てこられないようだった。

 

夢ではない。確かにあの光景を最後に玲奈の記憶は途絶え、気が付いたら朝になっていた。しかし、部屋の窓の鍵は開いたままになっていたし、何より()()()()痕跡がある。そして、髪からはいつも使っているものと違うシャンプーの香り。自分が無意識のうちに勝手に体が動き、シャワーを浴び直してもう一度寝巻きに着替えたとしか思えなかった。……間違いなく『彼女』の仕業だろうと玲奈は推測する。

 

 

「……ああ、だるい」

 

咳もくしゃみも出ない。ただ、全身が重かった。本当ならばこっそり友奈の部屋を物色……もとい異常がないかの確認をし、友奈の写真や音声データを愛でつつ日記を見直そうかと玲奈は考えていたのだが、そのやる気も出ない。結局大人しく寝ているしかなく、玲奈は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんとか、一命は取り留めましたが……。予断を許さない状態です。この状態で息があるのが既に奇跡に等しい」

 

「そん、な……」

 

少女———高嶋友奈は、膝から崩れ落ちた。

 

「……なんとか、ならないんですか?……なんだってします、だからっ」

 

そう医師に摑みかかるのは、乃木若葉。普段は凛とした顔をしている彼女も、血相を変えていた。

医師は心の底から悔いるように、彼女を宥める。

 

「……現代の医療でも、現状維持がやっとの状態です。臓器のいくつかが破裂していて、今もどうして生きているのか分からないような有様で……」

 

それを聞いて、友奈は世界がひっくり返るような錯覚を得た。

今まで、人間を、世界を守るべくバーテックスと戦ってきた。戦いの余波で現実世界に影響が及び、被害が拡大してしまってからはより『人々を守らなければ』という意識が強くなった。大社が情報を隠蔽していたことが一般市民たちに漏れ、勇者に対する態度が一変してからもその覚悟は変わらなかった。

 

———なのに。

 

「……どうして、ぐんちゃんが……。あんなに、頑張っていたのに」

 

 

あまりにも理不尽だった。

郡千景。不器用ながらも仲間を想い、仲間のために戦ってきた少女。彼女は今、意識不明の重体で病院に入院している。

 

 

若葉が怒りで我を忘れ、一般人に摑みかかったのは10日も前のことだ。その時若葉を止めたのが、唯一その場にいた勇者、郡千景。若葉に胸倉を掴まれていた男は千景に感謝し、逃げるようにその場を立ち去った。———しかし、その男との因縁はそれで終わりではなく、むしろ始まりと言って良い。

 

男は、非常に()()()部類の人間だった。あろうことかその一件で千景に好意を抱き、ストーカー行為を始めたのだ。男から見れば、千景はピンチを救ってくれた女神である。好意を向けない理由はなかった。

 

しかし、そのストーカー行為もそう長くは続かない。自分が尾行されていることに気付いた千景は、男に詰め寄る。男は嬉々として千景に話しかけ、自分がどれだけ彼女に心を奪われているのかを語った。それに対して、千景が放ったのは、

 

「……もう、関わらないで下さい。迷惑です」

 

たったこれだけの台詞だった。

当然だ。千景が若葉を止めたのは、ただ偏に仲間を思ってのこと。若葉の世間体を気にしての行動だったのだ。断じて、目の前の勘違いした男の為ではない。———大切な仲間を侮辱したこの男を、どうして庇えようか。世間の目も他の勇者のことも考慮に入れなければ、容赦なく斬り殺す。そのくらい、千景は目の前の男を憎んでいた。

 

しかし、男にとってはその事実が分からない。自分を救ってくれた少女に裏切られた。好意を向けてきた相手に袖にされた。自分の所業を棚に上げた男の慕情が、憎悪に変わるのにさほど時間はかからなかった。

 

———そして、今に至る。

 

具体的な経緯は判明していない。友奈たちが把握しているのは、件の男が逆恨みで千景を襲い、暴行を加えたこと。勇者である千景が男一人に一方的にやられたとは思えない為、複数人による犯行ではないかということ。度を越した暴力行為によって、彼女は顔以外がボロボロになり、命の危機に瀕していること。それだけだった。

 

この事件に関しては分からないことが多い。まず第一に、千景が反撃した形跡がなかったこと。勇者の中でも特に戦闘力の高い千景ならば、一般人が何人束になろうが敵わない筈だ。逮捕された男に大した怪我もなかったことから、千景は無抵抗で暴行を受け続けたと推測されている。怪我の具合から、ただ殴る蹴るといった暴力だけではないだろう。高い確率で鉄パイプなどの鈍器も使われていたと考えられている。

そして第二に、千景の父親と連絡が取れないことだ。事件後、父親はまるで逃げ出したかのように行方をくらませており、天空恐怖症候群の母親は知らぬ間に病院に入院していた。

 

———まるで、全てが郡千景という少女を追い詰めていくように状況が、世界が動く。

 

高嶋友奈という少女の中で、認識が静かに狂っていく。

 

 

———世界を、人間を守らないと。

———ぐんちゃんをこんな目に合わせた人間が憎い。

———勇者っていう言葉に憧れている。

———友達を守れない勇者なんていらない。

———この世界が大好きだ。

———こんな世界を壊してしまいたい。

 

 

今まで持ち続けていた正の感情と、この状況と精霊による瘴気が生み出した負の感情による葛藤。この時から、高嶋友奈は少しずつ壊れ始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、勇者部の部室にて。

 

「玲奈が風邪ね。……大丈夫?」

 

「咳は出てませんけど、熱が38度近くもあって……」

 

「お姉ちゃん、お見舞いに行こうよ」

 

「そうね。……何を持って行けばいいかしら?」

 

「…………」

 

玲奈が欠席していることに対する一同の反応は様々だ。

風は友奈に玲奈の具合を確認し、樹はお見舞いに行くことを提案する。美森は何かを言おうとして言い出せず、新入部員の夏凜といえば。

 

「これと、これ。あとこれも……」

 

鞄を漁り、何かを選別していた。

 

「夏凜ちゃん、何してるの?」

 

「……見ればわかるでしょ。風邪に効くサプリを選んでんのよ」

 

夏凜が鞄から取り出したのは、ビタミン剤をはじめとする様々なサプリメントや健康食品。そして煮干し。

 

「お見舞いに来てくれるの⁉︎」

 

「か、勘違いするんじゃないわよっ。あいつの監視は私のお役目なんだから!」

 

 

 

 

 

「………と、言うわけで来たわ。はいこれ」

 

「あ、ありがとう」

 

勇者部のみんながお見舞いに来てくれたのは、午後6時を回った頃だった。

友奈は一度来たあと、新しい濡れタオルや体温計を持ってくるために私の部屋を出て行った。この場にいるのは友奈を除く勇者部の面々。思い返してみれば、みんなが私の部屋に来るのはとても珍しい事だ。

 

「……どうしたのよ、そんな鳩が豆鉄砲食らったような顔して?」

 

「……純粋に驚いたわ。あなたに対する評価を改めようと思う」

 

勇者部のみんなはお見舞い品を持って来てくれた。意外なことに、一番気合が入っていたのは夏凜ちゃんだ。……仕返しだったとはいえ、もう彼女をちんちくりんとは呼ぶまいと私は心に決めた。なるほど、友奈の価値が分からぬほどに愚昧なれど、人に対する思いやりと優しさは持ち合わせているらしい。

 

ちなみに夏凜ちゃんが持って来たのはレジ袋に入った煮干しと大量のサプリメント。正直、こんなに飲んだら逆に危険だと思う。東郷からは蜜柑。風邪予防に良いと言われる果物。そして風先輩は。

 

「……こ、これは!」

 

「どう?驚いた?」

 

風先輩が持って来たのはうどん。ただのうどんじゃないっ!西暦時代から伝わる、最高級手打ちうどんである。かなり高いはず……っ。

 

「うどんって消化にもいいから、ちゃんと食べなさいよ」

 

「ありがとうございます!……あとで母に作ってもらいます」

 

「玲奈さん、これ……。早く元気になって下さいね」

 

樹ちゃんが持って来てくれたのは御守り。『無病息災』と刺繍がされている。てっきり、外国のおまじないグッズ的な特殊な物を予想していただけに、普通の御守りは意外だった。

 

「ありがと、樹ちゃん。早く元気になるわ」

 

「本当はもっと()()()()()()ものを持って来たかったんですけど……」

 

「ダメよ、あんな不気味なのっ!熱が上がったらどうするの⁉︎」

 

風先輩が顔色を変えて樹ちゃんを叱っていた。———一体何を持ってくるつもりだったのか、非常に気になるくらいに必死だった。




おや、もう一人の友奈ガチ勢の様子が……?(2回目)

以前書いたかどうか分かりませんが、ここで宣言。

この作品は、『とりあえず』一応『最終的には』ハッピーエンドになる予定です。





のわゆ時代の描写がおかしい?矛盾がある?………仕様です。
ただ、私が気づいていないだけで、本当に矛盾がある可能性も…。
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