ギリギリで4日ペースを保てた、かな?
独自設定増し増しでいきます。
「玲奈、さん……?」
「……溜め込んだ力を解放する、あれが……」
「……満開…」
勇者部の面々は疲れ切っていることも忘れ、ただ呆然と見上げた。
水球を突き破り現れたのは、今までと異なる装いの玲奈。暗赤色の衣と、柄の先に鎖の繋がった同色の大鎌。白銀に変わっていた髪色は黒色に戻っている。鎧は消失し、今まで隠されていた勇者としての象徴が露わとなっていた。
———その花は、彼岸花。日本では地獄花、死人花などとも呼ばれ、不吉なイメージを持つ赤い花。
しかし、人々に『死』のイメージを抱かせるその花をモチーフとした勇者は、今は人の希望。
そして、バーテックスに対する死神となる———!
「はあぁぁぁぁっ‼︎」
玲奈の視線が融合したバーテックスに向けられ、そのまま大鎌を一閃。その斬撃は深々と敵に突き刺さり、
「ああぁぁぁぁぁーっ‼︎」
玲奈が鎌を振り抜いた衝撃で敵バーテックスは吹き飛び、轟音を立てて地面と激突した。
「………嘘。あの防御を、貫いた?」
刀を弾き折られ、直にその防御力を体感した夏凜が呆然と呟く。
———そして再び、満開の光。
「もう、許さない。———我、敵軍に総攻撃を実施す!」
満開し、まるで戦艦のような武装を纏った美森が、地面に潜伏していた魚座型バーテックスに砲撃を浴びせた。直撃を受けたバーテックスの身体は消滅し、封印の過程を経ることなく御霊が露出。美森はそのまま攻撃を続け、御霊を破壊した。
勇者部の面々は満開の力に慄き、希望を抱いた。———これならいける、と。
そして、その誰もが気付かなかったのだ。勇者部の中で唯一、他のメンバーとは種類の異なる驚愕を浮かべていた者に。
「……ぐん、ちゃん?」
結城友奈は、玲奈の姿を見て呆然と呟いた。
———削る、削る、削る。
風を操り、宙に浮いた私は敵を切り刻みながら、全能感に酔いしれていた。
意識は明瞭。頭は冷静。ただ、『何でもできる』という認識が存在する。でも、
(………ジリ貧だわ。斬っても斬っても再生する。そろそろチュートリアルは終わりね)
もう一人の私———郡千景の声が脳内に響く。確かに、キリがない。むしろ時間が経つにつれて、再生のスピードも上がっているように感じた。
(………火力は十分。なら、手数を増やすしかないわね)
ええ。
私は、精霊の力を借りた。———普段は使いこなせない、デタラメな亡霊の力を。
「力を貸しなさい、七人御先‼︎」
そう叫んだ直後、私の身体が突如、火球に直撃されて炎上する。……それが敵バーテックスの攻撃であると認識した瞬間には、私の意識は消失していた。
「玲奈ちゃん⁉︎」
玲奈が敵の攻撃に呑まれ、炎上する姿を見た友奈の悲鳴が響く。精霊の守りが機能した様子はない。そのまま全身に炎が燃え移った玲奈は地面に落下し、———直後、唐突にその身体が消失した。
「………え?」
そして、轟音。音源を見ると、無傷の玲奈が敵バーテックスを蹴り飛ばしていた。
「……………え?」
否、無傷どころではない。7人の玲奈が、敵バーテックスを蹴り飛ばし、殴りかかり、大鎌による斬撃を見舞っていた。
「………何あれ、分身の術?」
風が呆然と呟く。
精霊・七人御先の能力は、同一存在の分裂。ただの分身ではなく、全てが同一であるという点がポイントだ。
この精霊の力は、他の精霊とは少々性質が異なる。他の精霊が外部に出現して尚、武装という形で力を発揮できるのに対し、七人御先は体内に憑依させなければ力を発揮できない。そのため、無理に力を引き出そうとすれば大赦が仕掛けた『精霊を体内から排除しようとする』リミッターが発動し、玲奈の体に非常に高い不可が掛かるように設定されていた。
しかし今、その制約はない。そもそも、大赦がそのような安全装置をつけたのは、西暦時代の過ちを犯さないためだ。精霊の瘴気に汚染され、誰からも愛されていた少女が忌むべき罪人にまで堕ちてしまった悲劇を、繰り返さない為の措置だ。
そして、今の玲奈———満開状態の玲奈ならば、精霊の悪影響はほとんど受けない。故に、安全装置を解除しての運用が可能。
玲奈が切り刻む度にバーテックスは抵抗し、火球をばら撒いて攻撃する。その幾つかが玲奈に命中するものの———効かない。攻撃の勢いが止まらない。分裂した玲奈は燃え尽きるまで攻撃をやめない。燃え尽き、消滅した玲奈はその直後に復活し、再度攻撃に参加する。
———これが、七人御先の真価。
この精霊の最たる力は、攻撃力でも手数でもない。その生存力にある。生み出された分身は全てが実体であり、それぞれが玲奈の人格と記憶を持つ、本人そのものである。そして、同一存在である以上、彼女を殺すには7人全てを同時に仕留めなければならない。七人ミサキの逸話から派生した精霊の特性によって、七人御先は常に七体存在する。体内に精霊を憑依させ、力を引き出した玲奈本人もまた同様。一度に全員を仕留めない限り、無限に分身は復活するのだ。
玲奈の境遇を考えれば、通常ならば炎に対して過度のトラウマを抱えているのが道理だが、今の彼女には通じない。満開の際に痛覚は遮断された。『自分が死んでも他の分身がいれば良い』と分裂した彼女達は認識している為、捨て身の攻撃が可能。
「よしっ」
「そろそろ再生速度の上昇も頭打ちのようね!」
「封印するなら、今です、風先輩!」
攻撃を仕掛けながら、分身達は風に声を掛ける。———敵バーテックスは再生に精一杯なのか、ほとんど身動き出来なくなっていた。
「よしっ!勇者部一同、封印開始‼︎」
状況が好機と見るや、風は号令を下す。玲奈以外の全員が封印の儀に参加し、御霊を破壊しようと上を見上げて———。
「……な…⁉︎」
その御霊の大きさに、度肝を抜かれた。
「……何よ、これ」
「そんな、…大き、過ぎるよ」
「……ちくしょうっ」
御霊の大きさは、これまでとは比にならない程巨大だった。封印されると同時に攻撃を中断した玲奈も目をむいている。
破壊はどう考えても困難。目に見える範囲は御霊の下部。この大きさからすると、どう考えても御霊は宇宙に出ているだろう。
「大丈夫っ!御霊なんだから、今までと同じようにすれば良いんだよ!絶対に諦めるもんか‼︎」
———しかし、その絶望の中でなお、光を失わぬ者がいる。
言わずもがな、自らを奮起し、立ち向かうのは結城友奈。それに勇気をもらい、勇者部の面々は己を叱咤する。
「行こう、友奈ちゃん。今の私なら、友奈ちゃんを運べると思う」
「うん。よろしくね、東郷さん!……っと、その前に」
友奈は玲奈の方を向き、珍しく真剣な声音で玲奈に告げた。
「玲奈ちゃん。……戦いが終わったら、話したいことがあるんだ」
「……奇遇ね。私も、話さなきゃいけないことがある」
「じゃあ、みんなで無事に勝たないとね!」
そのやり取りを最後に、友奈は美森に連れられ、御霊の元へと飛び立った。
その場に残るのは、玲奈、風、樹、夏凜。
「……友奈さん達、大丈夫でしょうか?」
「信じましょう。……友奈がいないと生きていけない」
樹の問いに、玲奈が答える。分身はいつのまにか消えていた。———唐突に樹の精霊、木霊が現れ、樹に端末の画面を提示する。
「………嘘。神樹様の力が…」
玲奈も端末を確認した。表示されている漢数字が、普段の倍以上のスピードで減少している。封印している敵が強大な分、消費している力も大きいのだろう。
(……なら、その力を継ぎ足せば良いだけだわ)
満開時に玲奈の脳内に存在する知識から、この対処法を模索。その方法に従い、彼女は大鎌を地面に突き刺した。
「玲奈、何を……?」
そして、風は目撃した。力を消費し、枯れた筈の樹海が大鎌の突き刺さった場所から回復していくのを。それに伴い、減少するカウントダウンのスピードも低下していく。
「………ちょっと、なんか落ちてきてるんだけど⁉︎」
一方、空を見上げていた夏凜は悲鳴を上げた。他の三人も上空を見上げ、唖然とする。まるで隕石。しかし実態は、友奈と美森を内包した帰還船。このままでは、地面と激突して二人ともぺしゃんこになってしまう。
「風よ、舞い上がれえぇぇぇぇぇーーーーーッ‼︎」
必死の形相で玲奈が叫んだ。巻き起こった暴風は竜巻となり、落ちてくる船の勢いを減衰させる。やがて落下の速度が目に見えて落ち始めると、玲奈は地面の上に大気のクッションを形成。地面に激突することなく、ふわりと着地した。宇宙空間で無茶をしていなければ、おそらく無事だろう。
「………もう無理。死ぬ」
一方の玲奈は疲労困憊。満開どころか勇者の装いさえも解除され、そのままぶっ倒れた。
精霊の悪影響はほとんど受けない。(全く受けないとは言ってない)
……なんか死亡フラグ積みまくってる気がする。気のせいかな?