結城玲奈は勇者である~友奈ガチ勢の日常~   作:“人”

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ごめんなさい。忙しくて、4日の投稿ペースが崩れました。
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そして、今回のあらすじ。
決戦が終わり、目を覚ました玲奈。この日、今まで描かれなかった玲奈の真実が明かされる……!(棒)


この話は、ノリで書いたわけではありません。連載を開始する前から既に脳内にあったものです。……少しだけ怖くなったものの、勇気を出して投稿。


喪失

「……失敗、した………?」

 

「………はい。もう、友奈さんは……」

 

ひなたの報告に、若葉は床にへたり込んで呆然とした。

 

「………なんで……成功する確率は高かったはずだろう⁉︎」

 

涙を散らしながら怒鳴る若葉に、ひなたは胸の痛みを堪えながら告げた。

 

「………本来ならそうでした。準備も万全で……ですが、被害者の遺族が儀式場に侵入して大暴れしたらしく……」

 

「……そん、な………それじゃ、千景は一体、何のために………もう、残っている勇者は私しかいないのか……?」

 

 

———杏と球子は、蠍型のバーテックスに貫かれて死んだ。

 

———千景は一般市民に重傷を負わされ、意識不明の重体になった後、奇跡的に回復。しかし仲間には何も告げず、『高嶋友奈を救う』事を条件に自ら供物となり、この世から去った。

 

———そして、高嶋友奈は——————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(………ここ、は?)

 

玲奈が目を覚ますと、視界に映ったのは知らない天井だった。身体を持ち上げ、辺りを見渡す。

 

「あ、友奈……」

 

玲奈は、自分が眠るベッドにもたれかかるようにして居眠りする妹の姿を見て、安堵の溜息を吐いた。どうやら病院、それも入院患者用の病室のようだ。

 

(……ええと、……私は確か、落ちてきた友奈達を受け止めようとして……)

 

———疲労でそのままぶっ倒れた。

 

しかし、今ここに友奈がいるということは、玲奈の努力は無駄ではなかったのだ。友奈がすぐ近くにいる喜びと、友奈の役に立てたという達成感が、彼女の心に幸福をもたらす。

 

(…………?)

 

そのまま友奈の頭を撫でようとして、ふと玲奈は違和感を覚えた。あるはずのものが無いような、何かが足りないようなもどかしさ。しかし、それがなんなのかを覚醒しきってない頭で考えようとして、

 

「……あれ、玲奈ちゃん…?……起きたの⁉︎」

 

友奈が目を覚まし、その思考は泡となって消えた。

 

「ええ。……どうしたの?」

 

返事をするや否や、抱きついてきた友奈に玲奈は感激と少しの戸惑いを覚え、

 

 

(………………え?)

 

 

先程感じていた違和感の正体に気付き、凍りついた。

幸か不幸か、彼女にしては珍しいことに、友奈はそれに気付かない。あるいは、気付けない程に追い詰められていたのか。

 

 

「…本当に、心配したんだよ?玲奈ちゃんだけ意識が戻らないし……東郷さん以外はもう退院してるんだよ?」

 

「え゛?」

 

玲奈はさらに驚愕した。

 

 

 

 

 

「……そう。私も、すぐに退院できるかしら」

 

友奈曰く、私は1日以上眠り続けていたらしい。東郷は脚の検査があるためまだ入院中とのことだが、他のメンバーは特に健康的な被害もなく、無事に退院できたようだった。

 

「できるよ。心配したけど、玲奈ちゃんも特に異常はなかったみたいだし。眠り続けていたのも、疲労によるものだろうって」

 

「……そう。なら、いいけど」

 

不誠実とは分かりつつも、私は本当の事を話せないでいた。こんなに安心しきった友奈の顔を見ると、どうしてもこれ以上は心配をかけたくないと思ってしまう。………それに、今の状態でも大きな問題があるわけでもない。ただ、私が我慢すれば良いだけのことだ。

 

「……そうだ、玲奈ちゃん。戦いの時、話したいことがあるって言ったけど」

 

「……ええ」

 

友奈は一瞬迷い、ポケットから折り畳んだメモ用紙を取り出した。

 

「これ、分かる?」

 

「……?なにこれ?」

 

友奈が広げたメモ用紙には、アルファベットと数字、そして複雑怪奇な記号の羅列が綴られていた。見覚えは、ない。そんな私の様子に友奈は一瞬だけ残念な顔を見せる。

 

「……そっか。分からないなら、いいんだ。ごめんね」

 

友奈が広げたメモを畳み、ポケットにしまおうとする。———なぜか、このまま終わらせてはならないと私は直感した。

 

「………そのメモ用紙、もらっても良い?」

 

「え?………うん、いいよ」

 

友奈の戸惑いと期待の入り混じった表情。……でもその目が、私ではない誰かを見ているような気がして、私は寂しさを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まさか、こんなにあっさり帰されるとは思わなかったわ」

 

「よかった。早く退院できるのは、良いことだよねっ!」

 

玲奈は、目を覚ました数時間後に帰路についていた。検査は玲奈の睡眠中に行われていたらしく、あとは目覚めるのを待つだけだったらしい。……本人の同意なしで検査しても良いものなのか、玲奈には疑問だった。

 

その後、しばらく無言で歩く時間が続く。そのまま家の前まで来たところで、友奈は口を開いた。

 

 

「……玲奈ちゃん、本当に大変だったね」

 

「?退院もすぐにできたし、それほどでもないでしょう?」

 

「……そうじゃなくて、味覚のこと。こんなに辛いなんて、思ってなかったから」

 

「ッ⁉︎」

 

その台詞だけで、玲奈は友奈の異常を看破した。

家族だけに明かしていた、玲奈の味覚異常。それが今度は、友奈に起きているという。

 

「原因は⁉︎元に戻るの⁉︎」

 

玲奈は必死の形相で友奈に詰め寄った。

彼女の行動原理は、妹を幸せにすること。『味覚の喪失』などという『食事の楽しみ』を失う欠陥は、彼女にとって許容できるものではなかった。

 

「そんなに心配しなくても大丈夫。戦いの疲労によるものだろうって。しばらくすれば治るみたいだから」

 

「……よかった」

 

ホッと溜息を吐く玲奈。いずれ治るのならば、問題ない。………もし治らないものだとしたら、玲奈は友奈をこんな目に遭わせた原因の一つである大赦を叩き潰さなければならないところだった。

 

「それより、玲奈ちゃんの方が辛いよ。……もう2年もこんな状態で、今も治ってないんでしょ?」

 

「もう慣れたわ。……それより、早く家に入りましょう?家の前で話していると、何事かと思われるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の晩。

 

「……嘘よ、こんなの………なんて酷い仕打ち……ッ‼︎」

 

友奈が自室で眠っているのを確認した後、玲奈は自分のベッドの上で泣いていた。………妹の下着をその手に握りしめたまま。

もう一度深呼吸をし、手に持つそれを顔に押し当て、思い切り息を吸い込む。………何度やっても、やはり何も感じない。

 

その光景を第三者が見れば、「こいつヤバイな」と呟く事だろう。或いは、「何やってんだこいつ」と言いながら笑う猛者もいるかもしれない。しかし、玲奈本人にとっては決して笑い事ではなかった。

 

 

「………おのれッ!バーテックスッ‼︎」

 

 

(黙りなさい変態)

 

 

敵に対する恨み言に反応したのは、もはや彼女のもう一つの人格となりつつある謎の少女、郡千景。脳内に響くその声には、心の底から湧き出る侮蔑と嫌悪が滲み出ていた。

 

 

「異議あり。変態とは失礼な。私はただ、友奈の残り香が色濃く残っているであろう物品で癒しを求めていただけよ」

 

(絵面を見なさい。変態以外の何者でもないわ。妹の下着が癒しになる姉がどこにいるというの?……高嶋さんのならともかく

 

最後の一言は、玲奈には聞こえなかった。

 

「……そもそも、あなたでしょう?私の嗅覚が麻痺した原因って」

 

(……よく気付いたわね)

 

「ご丁寧に、『代償として、一つもらうわ』なんて言われれば流石に察しがつくわ。………別に、嗅覚を代償にしなくても……」

 

玲奈にとって、これはかなり厳しい。

嗅覚の麻痺にはっきりと気が付いたのは、病室で友奈に抱き締められた時だ。いつもなら感じる、シャンプーや友奈の香りを感じられなかった。目が覚めた時に感じていた違和感も、病院特有の薬品臭を感じなかったことに由来していたのだ。

 

 

(……一応、これでもあなたの為を思って嗅覚にしたのよ。だってあなた、このままだとどんどんエスカレートするでしょう。……味覚を失くす前は妹の使った食器とか、汗塗れになった体操着を舐めたりしていたじゃない)

 

「……なぜ、それを………」

 

(知っているに決まっているでしょう。………もはや気持ち悪いを通り越して通報したくなるその奇行も、味覚がなくなると同時になくなった。なら、嗅覚をなくせば今こっそりやっている所業も収まるんじゃない?)

 

「……くっ…」

 

郡千景は一切の容赦がない。しかし、こればかりはおそらく大多数の人間が玲奈ではなく郡千景の味方をすることだろう。

想像してみて欲しい。自分と全く同じ容姿の人間が、下着やTシャツの匂いをクンカクンカスーハースーハー堪能したり、汗や唾液などの体液が付いた物をペロペロ舐めている様子を間近でずっと見させられるという地獄を。それが、()()()()()()()()()()()()ならば、もはや拷問に等しい。

 

(それに、視覚や聴覚、触覚が無くなるよりは良いでしょう?)

 

「………確かに」

 

目が見えなくなれば、友奈の姿を目に焼き付けることができなくなる。

耳が聞こえなくなれば、友奈の声を耳に響かせることができなくなる。

皮膚の感覚がなくなれば、友奈の身体の柔らかさを記憶に刻むことができなくなる。

 

それに比べれば、確かに嗅覚が無くなるくらい大したことはないと改めて思う玲奈だった。

 

 

———しかし、玲奈は気が付いていなかった。自らに起こったものと同種の異常が、友奈と美森にも起きていることに。

 

気が付いていない最大の要因は、彼女が自分の感覚麻痺を『郡千景によるもの』と錯覚している点だ。確かに、それは正しい。しかし、そもそも代償を必要とした要因は、『満開したこと』である。友奈の味覚麻痺を『治るもの』と玲奈は思い込み、美森に至っては異常が起きている事も知らない。

 

自分の嗅覚が二度と戻らないことを、玲奈は薄々感じている。否、戻らなくても構わないと覚悟を決めている。

しかし友奈の味覚麻痺については、彼女は『治らない』ことなど一切考えていなかった。




友奈ガチ勢のやべーやつ(ド変態)

玲奈のキャラ像が180度回転しかねない暴挙。しかし前書きにも書いた通り、『これが元来の結城玲奈像』である。

……これも友奈ちゃんが可愛すぎるのが悪い。

え、ぐんちゃん?……ぐんちゃんは断じて変態ではないよ。確かに「高嶋さんに、私のハートを食べてもらう……。こんな幸せがあるなんて」なんていう発言もあるけど、断じて変態じゃない。今回のお話で「ぐんちゃんも人の事言えねえ」と感じたあなた。それはね、精霊の瘴気が悪いんだ。つまり全部大赦が悪い。
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