……つい最近、友奈ちゃんに対して玲奈を上回る変態行為を働く不埒も……主人公を見つけました。しかも男だった。ギルティ。
でも友奈ちゃんがえろ可愛いかったのと、面白かったのでアリ。……あと、羨ましかった。
サブタイの通り、伏線回収回。
———その日、結城友奈はお使いに出かけていた。
小学生が出歩くには少し遅い時間だったが、
———普段と異なる事態が起こったのは、買い物を終え、家に帰る途中だった。
「……ふぇっ……ぐすっ……」
公園の側を通りかかると、誰かが泣いているのが聞こえた。よく見ると、ずぶ濡れになった女の子が震えて泣いている。
「どうしたの⁉︎大丈夫⁉︎」
気が付いたら、友奈は彼女に向かって駆け出していた。
これが出会い。後に姉となる少女、玲奈との遭遇だった。
夜中の一時。中学生が出歩いていては、たちまち補導されるような時間帯に。
砂浜で、2人の少女が対面していた。
1人は、赤髪の快活そうな少女、結城友奈。そしてもう1人は、長い黒髪の少女、結城玲奈。しかし、両者は互いに、目の前の人物が別の人間であると認識していた。
「……本当に、ぐんちゃんなの?」
「……ええ。あなたこそ、本当に
結城友奈———否、高嶋友奈は歓喜の涙を流し。
結城玲奈———郡千景は、罪悪感と喜びが絡み合った複雑な笑みを浮かべた。
玲奈が目を覚ました日に、友奈が手渡したメモに書かれていたアルファベットや記号の羅列は、郡千景が
だからこそ、結城友奈———高嶋友奈は、その暗号を玲奈に渡した。そのメモを見せさえすれば、疑惑の真相が判明する。それに書かれたメッセージによって、二度と会えないはずの友との縁を手繰り寄せる。それが友奈の目的だった。
———そして、その願いは成就した。
たまらず駆け寄ろうとした友奈だったが、それよりも早く、千景が土下座する。
「ごめんなさいっ‼︎」
顔と膝が砂まみれになるのも構わず、千景は謝る。友奈は、訳が分からない。
「……えっと、ぐんちゃん?なんで土下座なんて…」
「………謝って済む問題なんかじゃないのは、わかってるわ。……でも、ごめんなさい。あなたに、あんな最期を迎えさせてしまって……」
『……生まれ変わったら、また友達になれるかな…?』
『……そうね。……できるなら、また、高嶋…さん、と、一緒に……』
———千景はずっと後悔しながら生きていた。
あの最期を迎えることになった原因は、間違いなく自分だと彼女は思っている。自分が暴走し、若葉に襲いかからなければ———そして、若葉が自分を庇ったりなどしなければ、あの後も若葉は生きて、あの世界を救うことができたかもしれない。少なくとも、友奈に大きな負担をかけることはなかったはずだ。友奈が唯一の勇者などにならなければ酒呑童子の力を乱用することはなく、体も心もあんなに傷つかずに済んだはずなのだから。
だから、またもう一度彼女に会えると分かった時、千景は嬉しかった。ようやく、罰を与えてくれる人がいる、と。いくら友奈でも、流石にもう自分の事を許しはしないだろう。
「……頭を上げて、ぐんちゃん」
一方の結城友奈———高嶋友奈は、慈しみの表情を浮かべていた。しかし、一向に顔を上げる気配がない。それどころか、背中が小刻みに震えていた。
(やっぱり、ぐんちゃんは優しい。そんなこと、もう気にしなくていいのに)
単に再会に喜び、抱き締め合うこともできた。なぜならそれは、もう過去のこと。それでも過去のことを水に流して普通に振る舞うには、郡千景はあまりにも繊細過ぎた。
友奈は、理解している。ここで『罰』を与えることは、千景にとって必要なことなのだ。このまま何事もなく過ごしてしまったら、きっと千景が救われなくなってしまう。
千景が恐れているのは、このまま許されてしまうこと。そしてその事に甘えて、過去の罪を忘れてしまう事だ。しかし、その一方で友奈に嫌われることにも恐怖している。
「……ぐんちゃん」
友奈は心を鬼にした。無理やり彼女の頭を上げて、目を合わせる。……玲奈———否、千景の目は涙で濡れていた。
「ちょっと、我慢してね?」
直後、波風の音しかなかった砂浜に、『バシンッ』という鋭い音が響く。高嶋友奈渾身の平手打ち。千景は一切抵抗せず、そのまま叩かれた衝撃で力なく地面に倒れこんだ。
「ぐんちゃんへの罰は、これでおしまい。……もう、いいんだよ。私だって、諦めちゃったんだから」
そのまま千景を抱き起こし、そっと囁く友奈。その言葉は、ひび割れた千景の心に浸透する。
———友奈は意識していなかったが、これは郡千景に対して最高と言える扱いだった。
平手打ちは、『殴る』『蹴る』よりもされた側の精神に大きなショックを与える。それは今まで心の内に溜め込んでいた膿みを押し流す起爆剤になり、千景の心を解放する役割を果たした。彼女が過去に『悪意による暴力』を受け続けたことも大きい。ただ殴るのでは、彼女のトラウマを刺激するだけだっただろう。幼少期、日頃から蹴られ、殴られていた千景にとって、『相手の事を思って』叩かれるという経験は、これ以上ない救いとなった。
そして、その後の『許し』を告げる囁きは、『友奈に嫌われたのではないか』という疑念を押し潰し、彼女の心をケアする。
「たか、しまさん……」
「うん」
「……ごめんなさいッ‼︎」
「いいよ」
その後、千景は友奈の腕の中でわんわん泣いた。友奈は何も言わず、ただ彼女を抱き締め続けた。
「……ごめんなさい。みっともないところを見せたわ。これじゃ、この子の事を悪く言えないわね」
「いいよ、気にしないで。……教えてほしいな。ぐんちゃんが手紙に書いていたことについて」
本音を言えば、ずっとこのまま語り合いたいという欲求が友奈にはあった。しかし、それはできない。千景が表に出ていられる時間に限りがある事を、手紙を通して友奈は知らされていた。
「そうね。………まず、この世界についてから、かしら」
千景は語った。この世界は、友奈と千景が生きた世界とは異なる平行世界である事を。滅びを回避したのではなく、滅んだ世界とは別の世界に来ただけなのだということを。
「目が覚めたら、私はこの世界の私になっていた。———つまり、私はもう一度、人生をやり直しているの」
「……そんな、ことが」
もっとも、千景の場合、人生のやり直しほど辛いことはない。幼少期から虐げられて、楽しかったのは勇者の仲間達と出会ってからなのだから。
勇者の皆と出会ったばかりの頃からやり直せたら、どれだけ良かったことか。しかし現実はそう上手くいかず、千景のもう一度の人生は虐めが始まったころからスタートした。
「細かい話は省略するわ。この世界での私が死んだ後のことは、詳しく知っているわけではないから。……確かなことは、バーテックス達との戦いは西暦時代では終わらず、今も続いているということ。そして大赦は満開のことを含めて真実を隠し、勇者達を戦わせている」
「……満開の、こと?」
友奈は、満開のデメリットについて知らなかった。自分の味覚についても、いつか治るものだと思っている。千景は彼女の希望を閉ざすことを承知で、真実を語った。
「………満開は、代償として体の機能の一部を喪失する。そしてそれは、二度と元に戻ることはない」
「………え?」
その時、友奈が案じたのは自分の味覚についてではなく、玲奈についてだった。最近様子がおかしいと思っていたが……彼女もまた、何かを失っていたのだろうか?
「ぐんちゃん。……玲奈ちゃんは…」
「この子の場合は特殊よ。なぜなら、厳密には勇者ではないから。……満開だって、それっぽく見せているだけの偽物。代償はあるけど、この子の場合は失う機能を私が選ぶことができる」
そして、千景は語る。玲奈が嗅覚を喪失したことと、玲奈と自分が今どんな状態にあるのかを。
———千景が話し終えた頃、時刻は午前2時半を過ぎていた。
「……ところで、高嶋さん。結城友奈の正体は、結局高嶋さんということでいいのかしら?」
それは、千景にとって重要な問いだった。
これまで千景は、結城友奈と高嶋友奈は別人であると認識していた。姿形は似ていても、どこか違う。完全に似ているだけの別人だと、そう思っていたのだ。
その問いに、友奈は困った顔をして、告げた。
「………分からないんだ」
「……分からない?」
「玲奈ちゃんが初めて満開した時、私はぐんちゃんのことを思い出した。……でも、結城友奈が高嶋友奈だって言われると、違う気がする。なんていうか、こう———西暦のことを思い出した途端に、私と結城友奈がごちゃごちゃに混ざって、一つになったような気がして……」
「…………」
「……今の私は、どっちなのかが分からない。結城友奈の人格を塗りつぶして、結城友奈の記憶だけを持ってる高嶋友奈なのか。それとも、高嶋友奈の記憶を持っている結城友奈なのか。自分でも全然、分からないんだ……」
郡千景と結城玲奈は別人だ。身体は結城玲奈だが、人格は二つに分かれている。あるいはそれは、幼い頃の境遇によって形成された、自我の差異がもたらしているのかもしれない。
一方、高嶋友奈と結城友奈。身体は結城友奈のもので、2人の精神は似通っていた。共通項が多いために、人格は分かれず、一つに統合された。
それが友奈から見てどのような感覚なのかが、千景には分からない。ただ、この日に知ることができた事実が、良い事ばかりでないのは確かだった。
ギリギリ4日ペースは守れたか⁉︎