結城玲奈は勇者である~友奈ガチ勢の日常~   作:“人”

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感想、評価、お気に入り登録ありがとうございます!……すまない。もう一つの作品を疎かにして本当にすまない。多分しばらくはこっちの方に注力します。


そして警告。
サブタイから分かるように、読まなくても本編に大して影響しない裏の記憶シリーズ第2弾。書いてる方もダメージを受けるが、なぜか書かずにはいられない呪いのようなお話。今回もやばいので、勇者のみお通り下さい。
……今回は、友奈ちゃんを愛する方がダメージを受けるかもしれない。というか、受ける。

このお話にはみんなの知る純真無垢で天使な高奈ちゃんは一切出てきません。もはや別人。
あと、オリジナル設定が出ます。

再度警告します。………もしかしたら、前の裏の記憶よりヤバいかもしれない。


裏の記憶 《咎と報復の理》

「……みつけた」

 

少女は、笑う。彼女の視界に映るのは、1人の女子中学生。今日見た悪夢の中で、千景の髪と共に耳を切った女子だ。

 

———少女がそう認識した時には、彼女の身体は既に標的に向かって走り出していた。

 

 

勇者の力は使わない。使う必要がない。ただでさえ負担のかかる精霊、酒呑童子を乱用し続けた結果、少女は心だけでなく身体も変質していた。

 

「………あは」

 

一瞬で標的の女子生徒に接近し、悲鳴を上げられないように口を塞ぐ。そのまま周囲を見渡すと、すぐ近くに小学校があった。……千景を虐めていた者達の通っていた、小学校が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………出ないな」

 

「部屋にもいませんし……。どうしちゃったんでしょうか、友奈さん」

 

「千景と一番親しかったからな……。やっぱり、ショックだったんだろう」

 

千景が入院してから3日。丸亀城内の教室で、若葉とひなたは友奈を待っていた。千景が入院し、若葉と友奈の2人にも過度のストレスが掛かっている。今日はひなたの提案で、街を3人で歩き回ろうと集まっているところだ。

 

 

「……しかし、気になるな。あの友奈が何の連絡もなく遅れるだろうか」

 

「………まさか、何か事件にでも………ッ⁉︎」

 

「どうした、ひなた⁉︎」

 

発言の途中で、ひなたは有り得ない神託を受けた。顔色を一気に変えたひなたの様子に、若葉も危機感を覚える。

 

「………急いで友奈さんを探して下さいッ‼︎取り返しがつかなくなる前にッ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———1人目は、髪を抜いて耳を引きちぎった。「鬱陶しい髪だね」と、千景が言われたことをそのまま返しながら。耳をちぎった時、相手はショックで失禁し、失神していた。

 

 

 

 

 

 

「みつけた」

 

———2人目は、殴って痛めつけ、小学校の校舎まで運んだ後、階段から突き落とした。落ちた時に頭でも打ったのか、ピクリとも動かなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

「みつけた」

 

———3人目は、服を剥いだ後、手足を折って身動きができなくなるようにしてから、路上に転がした。恥ずかしい思いをして欲しかったので、下着は破いてから猿轡にした。

 

 

 

 

 

 

 

「みつけた」

 

———4人目は、石をぶつけた。石を投げられる痛みを知って欲しかったので、悲鳴を上げても泣き叫んでも、頭から血を流しても倒れても動かなくなっても、ただひたすら石を投げ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「みつけた」

 

———5人目は、ナイフで滅多刺しにした。二度と消えない傷の悲しみを知って欲しかったので、同じ場所を執拗に何度も刺し、傷を抉った。簡単に傷が治らないように、石の破片を傷口に丹念に埋め込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「みつけた」

 

———6人目は、窒息させた。息ができない恐怖を知って欲しかったので、小学校のプールに落とした後、浮かんでこようとする度に沈めた。

 

 

 

 

 

 

 

「みつけた」

 

———7人目は、ただひたすら蹴り続けた。一方的に暴力を振るわれる理不尽さを知って欲しかったので、身動きが取れないように胴をひたすら蹴り続けた。しばらく蹴り続けると、血の混じった吐瀉物を吐き出した後、動かなくなった。

 

 

 

 

 

 

「みつけた」

 

「みつけた」

 

「みつけた」

 

 

 

 

 

 

 

何人も何人も何人も、少女は標的を狩る。そして、狩った獲物の数が20を超えたところで、大物に出くわした。

 

 

 

 

 

『なあ、なんで俺たちがこんなことしなくちゃなんねーんだ?』

 

『仕方ねーだろ。死体の処理にも金が掛かるんだと。あのクズ親は放置したまま逃げやがったし、誰も弔おうとしねえんだもん』

 

『大社にはキチンと埋葬しろって言われてたらしいけどよ。こんな粗大ゴミ埋めたがる奴なんているわけねーだろ』

 

『……めんどくせ。死んでからも迷惑かけるとか、ほんとゴミ一家だな』

 

 

 

 

「………あははは」

 

彼女の視界に映るのは、鉄パイプやバットを持ってこちらを睨みつけ、歩いてくる3人組。その風貌は、千景の尊厳をこの上なく貶めた男たちのもので。

 

 

「みつけた」

 

 

 

 

 

 

———大物の3人組は、容赦なく殴り殺した。人として弔われるのが許せなかったので、手足を切断してバラバラにした後、崖から海に投げ捨てた。

 

少女は止まらない。なぜなら彼女は人間ではない。人間の身体を乗っ取った、悪意の塊。強力な精霊を使い続け、瘴気に呑まれた、憐れな少女の成れの果て。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだ、これは?」

 

若葉とひなたが千景の故郷の村に着くと、そこには地獄が広がっていた。

あたりに倒れるのは人、人、人。その中には、明らかに住民の通報によって駆けつけたであろう警官も含まれている。

 

 

———2人がここにきたのは、大社に指示されたからだ。大社から連絡を受けるまで、若葉とひなたは香川中を駆け回っていた。

 

 

「……本当に、これを友奈がやったのか…?」

 

俄かには信じられない。あの温厚で、心優しい少女がこんな残虐な行いをしたことなど。

倒れている人間は、誰一人として無事な者はいなかった。ある人は手足がおかしな方向に折られ、ある人は全身をボコボコにされている。胴体に穴が空き、泡を吹いている死体もあった。

 

———バーテックスではなく、人間に殺された人の死体。それはその所業を行った者の憎悪がはっきりと感じられた。

 

若葉もひなたもショックを受けていたが、吐き気を堪えて歩き続ける。村の中は驚くほど静かで、もう生者はいないのではないかと思うほどだった。

………実際には、多くの人間が殺戮者を恐れ、家に閉じ籠っているだけなのだが。

 

 

(……結局、何もかも間に合わなかったのか…)

 

全てが手遅れだった。既に高嶋友奈は何人もの人間を手に掛けている。いくら強大な精霊の力の副作用だとしても、擁護のしようがないほどに罪を重ねていた。

 

 

 

 

「あああああぁぁぁぁッ⁉︎たす、助け……あぁぁぁぁッ⁉︎」

 

「「⁉︎」」

 

遠くから聞こえる、悲鳴と銃声。若葉とひなたは、急いでその場に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———減らない。

 

少女が感じたのは、焦りだった。

 

———殺しても殺しても、危険が減らない。

 

目につく限り、千景を虐げた者を攻撃した。だが、減らない。見渡す限り、千景に危害を加える人間しかいない。

 

 

1人の女が鈍器代わりに植木鉢を持ってこちらに殴りかかってきた。

———倒れる小学生の千景を蹴り続けるその女の映像が頭に浮かんだ。

 

 

警察官がこちらに銃を発砲した。

———その警官が勇者服の千景の頭を撃ち抜く映像が頭に浮かんだ。

 

 

包丁や鉄パイプ、フライパン。日常生活で見かけるあらゆる凶器を持った男たちが集団でこちらに襲いかかってきた。

———その男達が高校生になった千景を集団で犯す映像が頭に浮かんだ。

 

 

 

少女は頭に浮かぶ映像の矛盾に気付かない。ただの妄想であることに気付かないまま、彼女は敵を駆逐する。

………客観的に見て、その少女は悪魔だった。

 

無表情のまま笑い、瞳に殺意を宿し、血塗れになりながら市民に襲い掛かる。渇いた笑い声を出しながら、彼女は人から外れていく。

 

 

 

 

「……ひっ」

 

しばらく駆除作業を続けていると、小さな悲鳴が上がった。悲鳴が聞こえた方を向くと、腰を抜かしてへたり込んだ小さな女の子の姿が視界に入る。

———後ろからナイフで千景を刺すその女の子の映像が頭に浮かんだ。

 

 

 

「…あは」

 

少女は躊躇しなかった。そのまま、へたり込んで身動きの取れない女の子に向かって拳を振り下ろし、

 

「やめろッ‼︎」

 

———しかしその一撃は、間に入った第三者によって防がれた。

 

 

それは、年若い少女だった。青を基調とした装いを身に纏い、手に日本刀を持った少女。彼女がよく知っているはずの、少女。

 

 

「……だれ、だっけ?」

 

思い出せない。その少女に見覚えがあるが、名前も何も、思い出せない。

———その少女が、日本刀で千景の首を刎ねる映像が脳裏に浮かんだ。

 

「……殺さなきゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぐっ⁉︎」

 

友奈の拳をギリギリ刀で防いだ若葉は、その衝撃を殺しきれず、三メートルほど吹き飛ばされた。

 

「若葉ちゃん⁉︎」

 

「離れていろ、ひなた!……()()はもう、友奈ではないッ‼︎」

 

若葉とひなたが駆けつけた時、友奈はまだ小学生にもならないであろう幼い女の子に襲い掛かる寸前だった。若葉の事を視界に入れても、彼女の暴走は止まらない。……既に高嶋友奈としての意識が存在していないことは、明らかだった。

 

「守らなきゃ……」

 

若葉が体勢を立て直す前に、高嶋友奈の姿をした何者かは追撃を加える。繰り出される拳を若葉は刀で打ち落す。刃に触れた時についた傷から血を流しながらも、高嶋友奈は攻撃に一切躊躇しなかった。

 

相手を本気で殺す気のある者と、殺さずに無力化したい者。両者の意識の差は、戦況に大きく影響する。しかし、それを踏まえても友奈はあまりにも強過ぎた。

 

(……勇者の力を失っているのではなかったのか⁉︎)

 

ひなたの神託によれば、一般人の命を奪ったその時点で、神樹によって勇者の力を奪われている筈だ。現に友奈は勇者の装いではなく、私服のまま戦闘を行っている。

 

———よく見ると、友奈の額から、鬼のような角が生えている事に気付いた。

 

「…………ッ‼︎」

 

刀が軋む。神樹の力が宿り、バーテックスを斬り伏せる力を持つ筈の生大刀が、勇者の力を失っている筈の少女の拳に圧倒されている。……友奈の身体が、人間ではない何かになり始めているのは自明だった。

 

 

若葉は悟った。これは、リーダーとしての務めを果たせなかった自分への報いなのだと。

 

———復讐のために戦っているが故に、仲間の事が見えていない。そう指摘したのは、今まさに入院している千景だ。

 

指摘されてから、自分を見つめ直した。杏に街中を案内され、自分達が戦っているのは人々を守る為なのだという実感を得た。

 

———でも、それで本当に仲間の事を理解できるようになったのだろうか?

 

今友奈がこんな状態になっているのは、戦いで酒呑童子の力を使い過ぎた代償なのだと、ひなたは言っていた。精霊の瘴気は、その人間の精神を汚染していく。体にあまりにも大きな負担がかかる酒呑童子は、それ相応に精神への負荷も大きかった筈だ。友奈の性格を考えれば、たとえ平気そうにしていても痩せ我慢している可能性はあった筈だというのに。

 

………本来の彼女ならば、人間相手に戦う時、絶対に全力は出せない。今若葉が苦戦している状況は、明らかに友奈の精神が別物になっている証拠で。

 

 

「……くそおぉぉぉぉーーッ‼︎」

 

 

戦いながら涙を散らして、若葉は絶叫した。

今まで友奈を顧みなかった結果がこれだ。結局のところ、友奈に無理をさせ過ぎたのだ。その結果、彼女は以前の優しさや温厚さが嘘に思えるほどに壊れてしまった。———もう、元通りに戻れるとは思えない。

 

 

戦いは二時間も続いた。若葉は追い詰められるが、それ以上に友奈の身体が壊れていくのが早かった。あるいは、『力の反動が大き過ぎる』という酒呑童子の特性が現れている結果なのかもしれない。

 

決着は若葉が友奈の胸を一突きする事で、あっさり着いた。マスコミが戦いの一部始終を記録し、あるいは中継していた。戦う二人を取り囲むようにして野次馬が集まり、若葉が気がついた時にはまるで格闘技大会の見世物のようになっていた。

 

誰もが暴走した友奈を嫌悪し、恐怖する。そして、彼女を討ち倒した若葉を、まるで英雄のように絶賛した。

 

———しかし、若葉はこれ以上ない程に絶望に追い込まれていた。

 

彼女の手には、友奈を刀で刺し貫いた時の生々しい感触が染み付いている。そして、恐怖と後悔ばかりが若葉の心に残り続けた。

 

 




………友奈ちゃんを大量虐殺犯にした作品、これだけだろうな……。
高奈ちゃんの身体を乗っ取った、別人だけど……。

高奈ちゃんの身体が作り変えられていくのは、完全に独自設定です。
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