結城玲奈は勇者である~友奈ガチ勢の日常~   作:“人”

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就活で第一志望の企業の一つから内定もらって少しは楽になったものの卒業研究の方がヤバくなっていたり、今まで執筆に充てていた移動時間にゆゆゆいをやっていたりして遅れました。



………なぜか、お気に入りの二次作品にアクセスできなくなっている件について(悲嘆)


安らぎ

「……なあ、杏。タマ、何かしたっけ?」

 

「……分からない。私も、なんか怖がられてたし……」

 

 

ひそひそ声で話す小学生二人は、土居球子と伊予島杏。勇者として選ばれた5人のうちの二人である。彼女達の視線は、教室の隅の席で一心不乱にゲームに興じる少女に向いていた。

 

———彼女の名は郡千景。勇者達の中で最も問題視されている少女。

 

別に、人に危害を加えたり、やんちゃに暴れる、というわけではない。むしろ彼女の気性は大人しく、無害な存在だった。

 

………しかし。

 

 

「それを言うなら、私とひなたも怖がられているだろう」

 

「若葉……」

 

会話に割って入ったのは、乃木若葉。勇者として選ばれた小学生の中で、暫定的にリーダーを務めている少女。

 

……郡千景は、人に対してあまりにも怖がりだった。

 

「土居と伊予島はまだ良い方だろう。私とひなたなんか、近づいただけで泣かれたんだぞ」

 

『泣かれた』だけではないが、若葉は全てを話さなかった。

しかし、事実だ。球子と杏は、まだ『避けられている』くらいで済んでいる。詰め寄っても、せいぜいが涙目になる程度だ。ひなたと若葉ほど、怖がられているわけではない。

 

 

 

 

 

 

 

———若葉は振り返る。勇者として選ばれた者たちが、初めて距離を詰めた日の事を。

 

何も知らないまま丸亀城に集められた少女たちには、壁があった。五人の間にはほとんど会話がなく、険悪でこそないものの居心地の悪い雰囲気が漂っていた。その雰囲気を改善したいと思ったのか、高嶋友奈が集められた少女たちで香川のうどんを食べに行く提案をしたのだ。若葉とひなたはそれを快諾し、誰とも打ち解けようとしなかった千景にも声を掛けたのだが。

 

 

「ひっ……」

 

「……郡さん?」

 

千景は若葉が近寄るなり怯え、悲鳴を上げた。その手は震え、遊んでいたゲーム機が落下する。しかし彼女は、それを拾おうとすらしなかった。慌てて席を立ち、若葉から距離を取ろうとした千景は———腰を抜かして転び、尻餅をついた。

 

 

「あらあら。大丈夫ですか?」

 

転んでへたり込む千景に手を差し伸べたのはひなた。自分が怖がられていると察した若葉は一歩後ろへ下がり、自分よりも優しい雰囲気を持つひなたにその場を一任した。———今日はうどんをきっかけに、皆の親睦を深める日だ。無理に近づくと逆効果になると、そう考えて。

 

若葉の考えは半分は当たっていたが、半分は大間違いだった。千景はひなたを、若葉よりも恐れた。

 

 

「……ひっ、……ぃや……あぁ……」

 

差し伸べられた手を取らず———むしろその手を見るなり涙を浮かべ———千景は頭を抱えて蹲った。嗚咽を漏らし、ガタガタと震え、

 

 

 

「…いや…………うそ、そんな……いや、あぁ……」

 

 

 

「「⁉︎」」

 

 

 

しゃあああぁ、と。

床にへたり込んだまま、その股から薄黄色の液体を垂れ流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その出来事もあり、現在ひなたと若葉は千景から距離を置いている。あの時、その場にいたのは千景を除けば若葉とひなた、そして友奈の3人。失禁した彼女を慰め、新しい下着の替えや漏らした排泄物の処理なども含めて友奈が甲斐甲斐しく世話をしたことが功を成したのか、千景は友奈にだけは心を開くようになった。

 

 

(あれほど怖がられる理由は、なんなのだろうな)

 

彼女の対人恐怖症は相当なものだが、自分はともかくひなたに近づかれてあの反応は不自然だと若葉は感じていた。現在、彼女と普通に接することができるのは友奈のみ。

 

———友奈だけが、彼女とまともにコミュニケーションを取ることができる。

 

若葉は、前途多難な今後を憂い、溜息を吐いた。

 

———若葉は知らない。郡千景が、この勇者達の中で最も実戦経験を持つ者であるということを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美森が退院し、数日が経過した。

現在勇者部は、合宿中である。

 

「あち、あちちちちちちっ」

 

 

砂浜の熱でジタバタしながら海へと走る樹。

 

「ホラ見て。砂浜でも、うちの()は可愛い!」

 

「確かに可愛いです。でも、うちの義妹(友奈)には勝てません」

 

「なにおう⁉︎」

 

それを見ながら、妹の可愛さ自慢で競い始める風と玲奈。

友奈と美森は、二人で海に浸かっている。途中で樹が合流し、友奈と樹が『どちらが美森を喜ばせることのできるものを拾えるか』で競争を始め、水に潜った。

 

 

「毎朝、あの子は一人で起きれないのよ⁉︎小さい子みたいで可愛いでしょう⁉︎」

 

「友奈なんて、私が傷ついていると察知して慰めてくれるんですよ!……それに、樹ちゃんの場合はだらしないというのでは?」

 

「それを言うならあんただって姉としてはだらしないじゃない!」

 

「「ぐぬぬぬぬぬ……」」

 

風と玲奈の妹自慢はやがて口論の域に達していた。

犬吠埼風は勇者である。どこに地雷があるかも分からない玲奈を相手に平然と口喧嘩を繰り広げられるのは彼女くらいのものだろう。

……もっとも、このような軽口の応酬くらいでしか玲奈に深く踏み込めないのは事実であるが。

 

 

「風、競泳よ、競泳!もうこっちの体は出来上がってるわ!」

 

三好夏凜は完成型勇者である。彼女達二人の口論の中に平然と割り込み、空気も読まずに勝負を吹っかけられるクソ度胸を持つのは彼女くらいのものだろう。

 

風は玲奈との口論を中断し、その誘いを受けた。———もっとも、口論といってもじゃれ合いのようなものなので、険悪な雰囲気にはならない。「それじゃ、ちょっと行ってくるわね」と玲奈に断りを入れ、風は夏凜と共に泳ぎに行った。

 

その場に残る玲奈はと言えば。

 

 

 

 

 

 

———ああ。友奈……。舐めたい。

 

ただの変態思考を繰り広げていた。

彼女の視界に映るのは、水着姿で樹や美森と戯れる友奈の姿。普段よりも露出度の上がった友奈の柔肌には水滴が付き、太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。それはまるで、とれたての野菜や果物の鮮度をアピールする演出にも似ていて。

 

———あの水滴を舌で舐めとりたい。というかあの肌に思いきりむしゃぶりつきたい。

 

 

 

(………うわぁ)

 

脳内にドン引きする郡千景の声が響いた。

結城玲奈は心が折れた後、友奈から距離を置いたり自分を見つめ直したりした。その結果、友奈への好意やら愛情やら依存度やら執着やら性欲やらが急上昇。変態度が以前と比べ物にならないくらいに高まったことと引き換えに、精神面を立て直すことに成功していた。

 

(……なにか、致命的なまでに選択を誤ったかしら?)

 

これが生前やっていたアドベンチャーゲームならばセーブしたところからやり直しができるものの、残念ながらこれは現実である。一度行った選択は取り消せず、後悔してももう遅い。

 

……下手にマインドコントロールをせず、玲奈の回復を周囲に委ねた結末がこれだった。

 

(………嗅覚をなくしても味覚をなくしても意味がない…。というより、むしろ悪化しているような……)

 

 

郡千景は玲奈の記憶を共有している。それは現実に限らず、眠っている間に見た夢なども同様。

 

(……あんな夢、見る方がどうかしているわよね)

 

最近玲奈が見る夢の内容は、口に出すことも憚られるようなものが半数を占めている。客観的に見て、玲奈はヤバイ奴だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後は、みんなで集まり、スイカ割りをした。

 

「樹ちゃん、もっと前だよ!」

 

「…そう、もっと左に!」

 

「……こっち、かなぁ?」

 

皆の声援を受け、樹はヨタヨタとスイカの方へと歩いていく。

 

「全く、こんな単純な遊びになにムキになってんだか……樹、そこ右よ‼︎バシッと決めなさいっ‼︎」

 

「………あんたもノリノリじゃないの…」

 

夏凜の気合の入った応援に、風は呆れた声を出した。

 

一方、その声援を受けた樹は。

 

「せええぇい‼︎」

 

夏凜の言葉を信じ、思い切り棒を振りかぶった。………イメージするのは、もっとも信頼する姉の姿。姉が戦闘中に行う剣戟のモーションをトレースし、樹は渾身の一撃をスイカに入れる‼︎

 

 

「やった、一撃!」

 

パカっとスイカが割れ、感激の声を上げる友奈。風は樹の振りかぶりを見て笑っていたが、「いやアンタの真似でしょうよあれ」と突っ込まれると、愕然としていた。

 

「私、あんなん?」

 

「あんなん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———今回の合宿は、大赦が勇者に対する労いとして用意したものなのだそうだ。

 

喜ぶ勇者部の面々の中で、私だけは『この程度?』と落胆していた。

なるほど、確かにこの宿は素晴らしい。昼間はビーチで遊べるし、話によると露天風呂もある。そして目の前には豪勢な食事。

 

「すごい、カニカマじゃない!本物のカニ!」

 

「あの、部屋間違えてませんか?なんか場違いっていうか……」

 

「とんでもございません。どうぞ、お寛ぎ下さい」

 

 

———本当に、とんでもない。

 

自己嫌悪を覚えながらも、私は大赦に対する不信を抑えられない。

なぜなら、命を懸けて戦って、世界を守った報酬がこれなのだ。私には、皆が戦った功績をコレ一つで帳消しにされるように感じてならなかった。

 

「……あの、でも友奈さんが……」

 

「…あっ」

 

私が内心で卑屈な思考をしている間に、樹ちゃんがボソッと呟く。それで皆の浮かれた雰囲気が、冷や水を浴びせたように静まった。

 

「う〜ん。このコリコリとした歯応え、たまりませんなあ……。こっちの喉越しも最高!」

 

「……もう、友奈ちゃんたら。いただきます、が先でしょう?」

 

「あはは、そうだった。美味しそうで、つい」

 

 

———このご馳走よりも、友奈の方が美味しそうだ。

 

声には出さず、私は必死に友奈に抱きつきたい衝動を抑えた。……だって、あまりにも健気すぎる。

 

この冷えた雰囲気も、友奈の機転によって和らいだ。……完全に、計算しての言動。自分の辛さを我慢して行動するなんて、友奈くらいに優しい子でもそうはできないだろう。

 

 

「玲奈?どうしたの?」

 

「?なんでもないわ?」

 

「……そう」

 

友奈に聞こえないようにするためか、小声で夏凜ちゃんは尋ねてきたものの、そう答えるしかない。友奈を『食べたい』と思いながら見ていたなんて言えるはずもないからだ。……もしかして、友奈を見ている視線に勘付いたのだろうか。

 

私も食事を始める。……相変わらず味が無くて不味いけど、前よりはマシだ。以前までなら、刺身の生臭さとか、嫌な匂いだけを我慢しながら食べていたのだから。味のなくて嫌な匂いの目立つものより、味も匂いもしない食事の方が良い。

 

———心残りがあるとするなら、生まれて初めて食べる蟹の味を感じられないことだった。

 




何度見ても、勇者の章は泣きたくなりますなぁ…。

でも、BD本編は見れても特典ゲームがまだできていない……。



玲奈さんの見る夢が気になるって?……描写すると大変なことになるので自重します。
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