結城玲奈は勇者である~友奈ガチ勢の日常~   作:“人”

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感想、評価、お気に入り登録ありがとうございます!……就活終わってからの方が投稿ペースが遅い不思議。
評価もお気に入りも増えてウハウハでございます。そして推薦されていることに今更気づきました。ありがとうございます!



……さて、言い訳を。長いので、読み飛ばして構いません。

すみません。ゆゆゆいにハマってました。ドレスぐんちゃんを重ねたくて、必死に大赦ポイントを貯めています。
もしも私をフレンド登録してくれてる方がいるならお気づきかと思いますが……いくら無課金の恵を消費しても出てくれないので、覚悟を決めて課金して昇段ガチャ5回分を課金した結果……10連1回目で猫耳ぐんちゃんがきた。その場でガッツポーズ。でもパジャマ友奈ちゃんは来てくれないのでもう一回回したらパジャマ友奈ちゃんが出て来てくれた。回せるだけ回したら、ワザリングハイツさんが+3に、勇者服ぐんちゃんが+4になった。

……10連中SSRが三体とか連続で来たのを見て、俺は悟った。「これ、課金すると出やすくなるようになってないか?」と。課金する前はSSRあんまり出なかったのである。




過ちの果て

「……?」

 

玲奈が通学路を歩いていると、前から髪の長い同年代の少女が歩いてくるのが見えた。

凛々しい顔立ちの、美しい少女だ。髪はポニーテールに纏められている。見覚えのない制服に身を包み、肩には竹刀袋を担いでいた。剣道部か何かの帰りなのだろうか。

 

なぜ自分がその少女に注意を向けたのか分からないまま、玲奈は歩みを進める。そして、前から歩いてきた少女とすれ違ったところで、

 

 

「友奈を頼む、千景」

 

「…………え?」

 

 

振り返った時には、少女はどこにもいなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……戦いが、まだ続く……」

 

大赦に回収されていたはずの勇者システムの端末が戻ってきた。敵の生き残りがいたらしい。友奈や夏凜ちゃんは残りの敵を倒せばそれで終わりと信じようとしている。相変わらず、ポジティブだ。私とは違って。

その私は、大赦に対してとある疑念を抱いていた。すなわち、『私と同じで、満開の後遺症は決して治らないものなのではないか』と。友奈の味覚が戻る気配はない。東郷の耳も治っていない。そして、12体倒したはずの敵には生き残り。大赦に対して不信感を抱くのは、不自然ではないはずだ。

 

しかし、それで大赦の本部に押し掛けて問い詰めればよいかと言えば、決してそうじゃない。どうせしらを切るだろうし、警戒されて、……あるいは行動を制限されて動きにくくなるだけ。そう考えるくらいには、私の大赦に対するイメージは悪い。何より私が何をしようと、友奈は止まらない。

もし敵がもっとたくさんいたと仮定して。そして私が泣いて頼み込んだとしても、友奈はきっと戦う。ならば私は、友奈のその行動を計算に入れた上で、今後を考えなければならない。

 

 

結局のところ、私の核はこれなのだ。いくら取り繕っても、それは変わらない。高嶋友奈という邪悪が遠回しに指摘した通り。私にとって、友奈以外は()()()()()()()()だった。

 

確かに、勇者部の皆は好きだ。でも、それは友奈が喜ぶからだ。私が勇者部の皆と接する姿を見て、『私はもう、友奈以外の人間も好くことができる』ことを目の当たりにすることで友奈が安心するから、私は勇者部の皆が好き。

 

友奈を幸せにするのに必要不可欠な存在であるが故に、勇者部の面々を大切に思っている。友奈の所属する仲間達は、きっと友奈の人生においてかけがえのない友人となる。だから、大切。

 

価値の基準が、友奈。だから、友奈抜きで考えたら……なんとも悍ましいことに、友人達の価値は私の中で下落する。好き嫌い以前に、関心がなくなる。

 

以前私は、『風先輩を嫌ってるんじゃないか』と悩んだ記憶がある。確か、そう。あれは、自虐的な幻聴が聴こえる原因を考えた時のことだ。無意識のうちに風先輩に対して嫌な感情を抱いているんじゃないかと疑ったりもしたけど……なんて事はない。そんな気持ちは、カケラもなかった。当然だ。そもそも友奈抜きでは、関心がないのだから。憎悪も嫌悪も、抱きようがない。

 

 

———ああ、なんて醜い。

 

私は、みんなとの絆を冒涜している。事あるごとに心配をかけて、気遣ってもらっているくせに、肝心の私はその友情を踏みにじっているのだ。

今ならはっきり分かる。…………私は、頭がおかしい。

 

この事実を知られてはならないと分かっているくせに、知られてはならない理由が『みんなに嫌われたくない』ではなく、『友奈を悲しませたくない』なのだから。

 

 

最低で、最悪だ。自己嫌悪。でもそれは、『勇者部のみんなに申し訳ない』という気持ちではなく、『友奈の姉に相応しくない』という気持ちで。

 

きっと私は、勇者に選ばれるべき人間ではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、バーテックスの残党に警戒している間に夏休みの最終日を迎えても、戦いは起こらなかった。

 

 

 

———と、いうわけで。

 

「特訓よ!」

 

「………はい?」

 

 

夕方、玲奈は夏凜に呼び出され、砂浜で向かい合っていた。

 

 

「敵の残党はまだいるし、何があっても生き残れるように訓練するのよ。玲奈は剣使いだし、私の特訓相手にはうってつけでしょ」

 

「……ああ、なるほど。ありがとう、夏凜ちゃん」

 

「………いや、なんのことよ?」

 

玲奈は、その訓練が自分のためであることを見抜いていた。———戦いにおいて、現段階で最も負担がかかっているのが自分であるという認識は玲奈にはある。それが不公平であるとも、勇者部がもっと努力すべきであるとも考えていないだけ。彼女にとって、友奈以外は割とどうでもいいし、それ故に自分との比較もしない。友奈さえ無事ならば、自分の被害などどれだけ大きくても構わないのだ。

 

だが、それはそれとして気遣ってもらえるのは嬉しい。『友奈の友達が、気遣いのできる良い子だから』嬉しいのだ。

 

この特訓は、自分のストレス解消と共に、『満開の可能性を少しでも下げるために』行うのだと玲奈は勝手に思っていた。

 

 

「さて、ビシバシいくわよ。ついて来なさい!」

 

(玲奈の心を鍛えて、悪夢なんて見ないようにする。そうすれば、友奈の負担も一気に減るはず!)

 

 

……実際には、夏凜は玲奈の突発的な悪夢をなんとかすべく動いているのだが。それで友奈の負担を減らそうとする打算もあった。

『特訓して精神を鍛えれば、悪夢なんかに悩まされずに済む』という脳筋思考。完成型勇者の気質は、わりと体育会系寄りである。

 

 

そこから、木刀を用いた決闘のような特訓が砂浜で行われた。

 

 

 

木刀を打ち合う音が響く。夏凜は当然二刀流。それに対し、玲奈の木刀は一本。手数では夏凜の方が有利で、両手を使えるという理由から一撃の重さは玲奈の方が有利である。———通常なら。

 

「なんで両手を使わないのよ……⁉︎」

 

「私の武装、普段は片手で使ってるから」

 

玲奈は片手で木刀を振り、応戦していた。………二刀流であるはずの夏凜と、互角に。

夏凜が右手の木刀を振ると同時に、玲奈は右手の木刀で対抗。真正面から打ち合わず、木刀の側面を狙い、力を受け流すようにして逸らす。そして夏凜が左手の木刀を打ち出すも、片手であるはずの玲奈はそれに()()()()()()。必要最小限の動作と、攻撃を逸らすのに必要なだけの力を込めた剣。自身の敏捷性を生かし、時間と力を節約する事で玲奈は夏凜と対等に打ち合っていた。

 

第三者から見たら、訳の分からない応酬だ。その足捌き、剣のスピードが速すぎて目で追えない。どちらが有利でどちらが不利かも分からないだろう。

 

しかも。

 

 

「隙あり」

 

「な、ちょッ⁉︎」

 

 

剣戟の最中に、玲奈は蹴り技を放ってくる。持ち前の反射神経で強引にそれを躱し、夏凜は距離を取った。

 

 

「……普通、あの体勢から蹴り入れてくる?」

 

「実は私、剣なんかより蹴りとか殴ったりとかの方が慣れてるから」

 

「衝撃の事実⁉︎」

 

 

友奈の父から教わった格闘技には、剣術はなかった。勇者として戦っている時は、アニメやゲームのキャラクターの動きを参考にして剣を振っているだけだ。当然、フィクションのものを現実でそのまま使えるほどシンプルではない為、参考にする程度だが。

 

ゲームで例えるなら、玲奈はメインの武器をなるべく使わず、サブの技で戦っているようなものだ。……メインよりもサブの方が威力が高い、というだけで。

 

その事実は、夏凜にとってはあまり面白くない。勇者になるべく鍛錬を積み、剣術を磨いてきた彼女にとって、本来の得物でない剣に拮抗されるなど、許される事ではなかった。

 

その後、日が暮れるまで打ち合ったものの、互いの得物は相手の身体を打ちつける事なく。

その日、最後まで決着がつくことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大赦から戻ってきた勇者システム。そのうち、友奈・美森・玲奈の端末には、新たな精霊が追加されていた。

 

「……やっぱり、妙よね」

 

新学期を迎えてからの初めての放課後。勇者部の部室で、風が厳しい顔で呟く。

 

「妙って?」

 

風の呟きを拾った樹が、この場の面々を代表して聞き返した。

風は少しだけ悩む。この場には玲奈がいる。この話題は、彼女を不安にさせるのではないか、と。

 

(でも、このままにしておいても………良くないわよね)

 

話題に気を遣い過ぎて、距離感を感じさせてしまっては元も子もない。玲奈の精神を過剰に保護するよりも、誠実に対応することを風は選んだ。

 

「満開したのが友奈と東郷と玲奈。身体機能に支障が出たのも、新たな精霊が追加されたのもこの3人。……いくらなんでも、おかしいと思わない?」

 

「……それは、……そうよね」

 

大赦から派遣されてきた夏凜が真っ先に反応する。皮肉にも、巻き込まれた他のメンバーより、初めから大赦と関係を持っていた2人の方が大赦に対する疑念が大きい、と風は自嘲した。

 

「敵に生き残りがいるっていうのもそう。……そもそも、なんで12体のバーテックスがこの時代に襲いかかってくるわけ?それに対する大赦の対応も妙に慣れてるような感じがするのよね」

 

風はこう言いたいのだ。

本当は昔から敵の襲撃はあって、大赦はずっとそれに対処してきたのではないか、と。

 

 

「で、でも、その生き残りを倒しちゃえば、もう平和なんですよね」

 

暗い雰囲気を払拭すべく、友奈が気休めにも聞こえる発言をした。彼女は玲奈との長い生活のせいか、それとも彼女本来の気質なのか、気まずい雰囲気を嫌う。

 

 

「……そうとも、限らないわ」

 

「ぐ、…玲奈ちゃん?」

 

友奈は彼女の中身に気づき、……しかしその愛称を呼ぶのを堪えた。

 

「もしも風先輩の言うように、大赦が嘘をついていたのなら。……私の想像が正しければ、大赦はとんでもない組織よ」

 

「………どういう、こと?」

 

美森は玲奈からいつもと僅かに異なる雰囲気を感じながら、恐る恐る先を促す。

 

「人々にバーテックスの戦いを告げず、私たちのような子供に無理な戦闘を強いて、消耗品のように扱う。大赦は非人道的な集団ではないかと、私は考えているわ」

 

そして、彼女の述べた()()は、この場を凍りつかせるに十分な威力を持っていた。




玲奈が間違った方向に全力で突き進みまくっている件について。

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