結城玲奈は勇者である~友奈ガチ勢の日常~   作:“人”

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……ゆゆゆいの大絢爛祭ガチャ、回したい……。でもできれば友奈の誕生日まで恵みは温存したいっ!


勇者部、出動!

風先輩曰く。

私たちは、バーテックスと呼ばれる敵から神樹様を守る役目を担う勇者に選ばれたらしい。この空間は『樹海』と言って、神樹様が私たちと敵を戦わせるために作り出した空間なんだとか。

 

「それで、風先輩?まさか生身でこのまま戦え、なんて言いませんよね?」

 

「ええ、もちろん。以前みんなに配ったスマホにインストールされてるアプリがあるでしょ?戦う意志を示してタップすれば、勇者の姿に変身できるわ」

 

「なるほど」

 

私の質問に対する風先輩の答えに、私は安堵した。私も友奈も、一応武術を習っているとはいえ生身の人間。いきなり何の準備もなく戦えなんて言われても、出来るわけがない。私なんてどうでもいいが、もし万が一友奈の体に一生残る傷ができてしまったら世界の重大な損失だ。それに、東郷に至ってはそもそも戦えるわけがない。両足が不自由なのだから。

 

「あの、風先輩。この赤い点って何ですか?」

 

ラブリーマイエンジェルシスターこと友奈が風先輩に問いかける。友奈が示したスマホの画面を見ると、そこにはゆっくり移動する赤い点と、『乙女型』と表示された吹き出し型のカーソル。

 

「早速来たわね。これが、私達が倒さなければならない敵、バーテックス。今回は初めてだし、遅い奴で助かった!」

 

私は視点を友奈のスマホから、遠くの敵に移した。まるで生物を模した人工物のような、無機質な体。あれが、バーテックス。……やはり、どこかで見た事があるような気がする。

 

「……あれ…?なんか、こっちに向かって……」

 

 

 

友奈が言い終わる前に、爆発。足元に衝撃が走り、大気が震える。爆風が吹き荒れ、私は目を開けていられなかった。

 

バーテックスがこちら目掛けて、攻撃を仕掛けてきたのだとすぐに察した。遠くなのであまり良く見えなかったけれど、まるで尾のような器官から爆弾のような物を発射した、ように見えた。

 

「きゃあああっ!」

 

「ッみんな、無事⁉︎」

 

友奈達の悲鳴と、皆を案ずる風の声。

 

……頭の奥で、火花が弾けた。

 

 

 

 

 

 

「……野郎、ぶっ殺してやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有り体に言うと、ブチ切れた。

 

「…ちょ⁉︎待ちなさいっ!」

 

風の警告も聞かず、玲奈は敵に向かって全力ダッシュ。走りながらスマホの画面をタップして変身した。

 

———玲奈の装いが変化する。

 

制服がミラーシルバーに輝く軽鎧に変化し、その手は手袋と見紛うほど薄い籠手に覆われる。右手には刀身の細い両刃の剣が握られ、最後に黒髪が白銀の髪に、瞳がルビーのような真紅に変化した。

 

———その姿は、まるで異国のおとぎ話の戦女神の如く。

 

白銀の勇者の姿に変化した玲奈は、風を纏ってさらに加速。バーテックスが超スピードで接近する彼女に気付き、攻撃を集中させる——が。

 

「らあぁぁぁぁっ!」

 

玲奈は構わず突貫。『ドドドドドンッ』という音と共に、彼女を連続する爆発が覆い隠した。再び吹き荒れる爆風。轟々と流れる風圧は、先ほどの比ではない。

 

「玲奈ちゃんっ!」

 

友奈の悲鳴が響く。その場の一同は、最悪の事態を想定した。……あんな攻撃を食らって、生きているわけがない、と。

風は、勇者システムを知っている。命に関わる大ダメージは、精霊が防いでくれる事も。しかし、それでも尚、玲奈が無事だとはとても思えなかった。

 

(……後輩が無茶しているのに、何をしてるの⁉︎)

 

風は、手をこまねいていたことを後悔した。なぜ、すぐに変身しなかったのかと。

 

……初めての実戦だったから?だが、一番早く突貫した玲奈だって初めての筈だ。

……いきなり玲奈が豹変して驚いたから?そんなの、何の言い訳にもならない。

 

風は変身した。希望的観測かもしれないが、勇者システムがある以上、生きている筈だと、そう信じて。妹の樹もまた、姉に倣って変身した。「ずっとお姉ちゃんについていく」と、覚悟を決めて。

 

しかし、心配は無用だった。

 

 

 

「はあぁぁァっ!」

 

玲奈は無事だった。見た所、怪我を負った様子もない。

敵が発した攻撃の全てを食らい、なお無傷。爆発の際に発生した煙を風で払い、そのまま突っ込んだ。

 

「風牙ァッ‼︎」

 

剣の切っ先に風を集中させ、ドリルのように高速で回転させる。玲奈は一本の槍となり、敵の本体を貫通した。

 

「これで、害悪排除完了」

 

格好つけて、シュタっと着地。その直後、遅れて敵が爆発、その半身が跡形もなく吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は平静を装いながら、内心で頭を抱えていた。

 

(皆がいるのに一人で突貫。……普通、皆を守るために側にいるところでしょう?しかも何、「風牙」って?もしかして必殺技?格好つけ過ぎでしょ、馬鹿じゃないの?)

 

自己嫌悪。自分を罵る声が頭に鳴り響く。この自虐具合、どうやら薬が切れたらしい。

 

(しかも見なさい、あれ。再生してるわよ。全然排除できてないわね。……本格的に痛々しいし、役に立たないし。そろそろ死ねば?)

 

……医者に言われている。こういう時、頭に流れる嫌な思考(音声)を気にしてはいけないと。

 

振り返ると、確かに敵は再生し始めていた。弱点を見つけて、それを壊せば倒せるのだろうか?それとも、細胞一つでも残っていれば無限に蘇るようなとんでも生物なのか。

 

「玲奈ちゃんっ!」

 

その時、友奈が駆け寄ってきた。装いが変化し、髪の色も薄い桃色に変化している。どうやら変身したらしい。

 

「無事でよかったっ!怪我はないっ?」

 

「え、ええ。大丈夫よ」

 

気丈に振る舞うが、私は全然大丈夫なんかじゃなかった。

なにせ、友奈が可愛すぎる。普段の友奈もいいけど、変身した友奈も良い……。格好良さと可愛さの両立。鼻血を堪え、抱き締めたくなるのを堪える。ユウナニウムの禁断症状が出ていた。その恩恵として、自虐思考をする嫌な声も消えていた。

 

「全く、一人で突っ走るんじゃないわよ。まだ倒し方の説明もしていないんだから」

 

「えっと、無茶はしないで下さい」

 

続いてやってきたのは、風先輩とその妹の樹ちゃん。どうやら、きちんと倒すための手順があったらしい。

東郷は、……向こうか。やはり、足が動かないとこういう時不便ね。あの子、結構抱え込みそうなタイプだし。

 

「それで、どうするんですか?」

 

「敵を取り囲んで、封印するの。そうすれば御霊が出てくるから、それを破壊してっ!」

 

言うや否や、風先輩は跳躍。再生が完了する前に再度バーテックスを叩き斬る。私もそれに倣って、再び突撃した。

 

「封印って、具体的にどうするのお姉ちゃん⁉︎」

 

「スマホの説明に書いてあるから読んで!」

 

樹ちゃんが敵の攻撃を掻い潜りながら質問し、風先輩は余裕がなさそうに答えた。

 

「勇者パーンチッ!」

 

その傍らで、敵に拳を繰り出す友奈。再生したばかりで脆かったのか、はたまた友奈の攻撃が相当強力だったのか。再び乙女型バーテックスの半身が吹き飛び、隙を晒した。

 

「っ!今よ!封印開始っ!」

 

今が好機とばかりに先輩が叫ぶ。

 

「……これ、全部読むの?」

 

敵の側に降り立った樹ちゃんが、心底嫌だと言わんばかりに呟いた。

スマホに表示されているのは、古文の教科書に載っていそうな長々とした堅苦しい文章。正直、私も読みたくない。数学は得意だけど、古文は視界に入れたくないくらい大嫌いで、苦手だった。……読むのにつっかえたりするの、恥ずかしいし。

 

私が躊躇する傍らで、友奈と樹ちゃんが敵を囲い、健気にもたどたどしく祝詞を唱え始める。敵が動きを止め、その足元の地面に時間とともに減少する漢数字が現れた。

だが、バーテックスもやられてばかりではない。必死に封印による拘束を解こうともがいた、その時。

 

「大人しくしろぉーっ!」

 

怒鳴り声とともに、風先輩が敵を剣で殴りつけ、バーテックスは四角錐の形をした何かを吐き出した。あれが、御霊?

 

一方、友奈と樹ちゃんは、「そんなのでいいの⁉︎」と呆れと驚きの混ざった声を上げていた。風先輩曰く、「魂さえこもっていれば何でもいい」らしい。私が尻込みする理由、なかったじゃない。

 

その後、私が御霊に亀裂を入れ、そこに友奈の拳を炸裂させるというコンビネーション技を駆使し、敵を仕留めた。最後は呆気なく終了し、私はホッと安堵のため息を吐いたのだった。

 

 

 




……おや?もう一人の友奈ガチ勢の様子が……?
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