結城玲奈は勇者である~友奈ガチ勢の日常~   作:“人”

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……投稿の直前に、さらに二件お気に入りが増えた、だと⁉︎


知らない間にゆゆゆのビジュアルファンブックが重版されてたり、3200円だけ課金したら全く出てくれなかった水着杏さんやら水着風先輩やらが出てきたりと、嬉しいハプニングばかりの今日この頃。そして勇者服ぐんちゃんが+5になってから初めて、精霊にもSSRが存在する事を知った。……コストが重すぎた。


さて、と。今回のお話は。


…………どうして、こうなった?


混沌

「………あなたは、誰…?」

 

小学生の千景は、この場にいるもう一人の少女に問う。

 

 

 

 

 

———世界を滅亡へと追いやり、死を迎えた千景を待っていたのは、二度目の人生だった。

 

しかし残念ながら、一度目の記憶の恩恵は無いに等しい。なぜなら、近くを取り巻く環境は一度目の人生よりも悪化していたのだから。

振るわれる暴力はより過激に。嫌がらせはより陰湿に。教師による虐めの隠蔽はより巧妙になっていく。……しかも、勇者の仲間達と過ごした暖かい記憶があるが故に、虐めに対する耐性は弱くなっていた。

 

暴力を振るわれる度、迫害される度に、どうしても比べてしまう。命の危機のある戦いに赴く義務がありながらも、仲間達と過ごしていた暖かい日々と、平和な世界で人々の悪意にさらされながら生きる今とを。

 

———千景にとって、前者の方が圧倒的に幸せだった。

 

この世界は彼女にとって地獄だ。前の世界よりも虐められ始める時期が早く、その内容も過激。既に千景は二度と消えないであろう傷をいくつも負っていた。擦り傷や打撲は当たり前。付けられた傷の中には、深刻な火傷や骨折など、冗談では済まされない重症すらある。一度目の人生と同じように階段から落とされても救急車で搬送され、治療と入院を経た後は、また元通りの生活だ。どんなに耐えても、それで付けられた傷跡が消えるわけではない。

 

 

 

———一度目の人生とは似て異なる世界。その事実は彼女に『とある疑惑』を抱かせるには十分だ。

 

 

すなわち、『この世界では高嶋友奈と出会えるのか』という疑惑。

 

 

時を経て虐めが深刻化し、家でも治療や入院による出費で父親の機嫌が悪くなる。一度目の人生では手を出さなかった父親も、この世界では少しずつ暴力を振るうようになった。

そんな生活の中で、その疑惑が『高嶋友奈と出会えるのか』から『出会えないかもしれない』に変わり、やがては『出会えないだろう』という悲観的な結論に至ってしまうのも、無理のない話だ。その思考の過程になんの根拠がなくとも、彼女の精神は過度のストレスによってネガティブな思考しかできなくなっていたのだから。

 

———そして、千景にとって、友奈と出会えない世界に用はない。

 

彼女に出会えなければ、千景は決して救われない。ならばせめて、これ以上の苦痛は避けようとするのも道理。彼女は誰にも邪魔されない真夜中の自室で、自害を試みた。

 

 

———そして、今に至る。

 

気がついたらそこは、記憶にある丸亀城の一室。勇者の仲間達と共に学んだ、教室の中だった。そこにいるのは、千景ともう一人。

 

———彼女は、恐ろしいほど特徴的な姿をしていた。

 

白銀の髪に、真紅の瞳。そしてその身を覆う、ミラーシルバーに輝く軽鎧。まるでお伽話から出てきた戦女神の如き姿。そしてなにより、()()()()()()()()。現実にはほとんどあり得ない人物との邂逅に、この世界ではまだ存在しないはずの丸亀城の教室。千景が混乱するのも当然だった。

 

自分の素性を問う千景に、その少女は答える。

 

 

「私は———」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お二人に、見てもらいたいものがあるんです」

 

友奈と風を自宅に呼び出した美森の第一声がこれだった。感情がまるで感じられないその声は、二人に不穏な雰囲気を感じさせる。そして何を思ったか、美森は短刀を取り出し………

 

 

「東郷さん………?」

 

「———ッ‼︎」

 

意を決し、そのまま自分の首に突き刺———そうとした。しかし、それは精霊によって防がれる。美森の精霊は、彼女の死を許容しなかった。

 

 

「ちょっと⁉︎何やってるの⁉︎…もし、精霊が止めなかったら……‼︎」

 

激昂する風。しかし、相対する美森の声音は恐ろしいほど静かだ。

 

「……止めますよ。精霊は必ず」

 

美森が語るのは、これまで自身が行った自殺行為の数々と、精霊達の妨害。

 

「端末が側になくとも、電源を切っても、バッテリーがなくなっても……精霊は勝手に出てきて、私の自殺を阻止しました」

 

物理的な自傷行為による自殺は、バリアを張って阻止する。

服毒や首吊りをしても、どういうわけか意識が戻った時には無傷。後遺症も残らない。

 

それらを経て美森が出した結論を、彼女は目の前の二人に述べた。

 

 

「精霊は今まで、勇者の戦う意志に従って動くんだと思ってました。でも……私には、精霊達が『勇者達をお役目に縛り付ける為の装置』にしか思えないんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———そんな、自分達の運命に関わる深刻な話を美森がしている頃。

 

そうとはつゆ知らず、千景は若葉と遊んでいた。

 

 

「……フッ。どうやら実力差は徐々に埋まってきたようね?」

 

「くっ。そんなバカな………!」

 

というか、ガチのゲーム対戦に勤しんでいた。

 

 

玲奈の承諾を得た千景は、ゲームの特訓をした。………使っているのは玲奈の身体であるので、体調を壊さない程度に夜更かしをして。

その結果、千景本人のゲームセンスと才能によって、若葉との実力差を埋めていたのである。

 

 

「……たった数日で、私の300年に追いつく、だと⁉︎」

 

「……ゲームだけなら、あなたに負けない。地力が違うのよ」

 

 

さらに付け加えれば、千景は既に若葉の操作の癖を見抜いてもいる。前回の対戦では、千景は若葉を相手に大敗を喫したが……ただ負けていたわけではない。若葉の操作を徹底的に記憶して分析し、対策を練っていたのだ。

 

「今日の戦績は、これで15対14。このまま追い抜かせてもらうわ……!」

 

「……させるかっ」

 

その後も若葉と千景は対戦を続け———結果は、58対63。千景の勝利だった。

 

「……今回は、私の勝利ね」

 

「次は、また私が勝ってみせる……!」

 

「いいえ。次もまた、私の勝ちよ」

 

———自然と次回の対戦がある事を前提にしているところを見るに、少なくとも千景は楽しんでくれている。

 

そう考えて若葉は内心で安堵したのだが、千景は知る由もない。

 

 

「そろそろ12時か。……どうせなら、うちで食べていかないか?」

 

「……そうね。たか……妹も、遊びに行くって言っていたし。迷惑でないのなら、是非ご馳走になるわ」

 

 

………そう、そこまでは良かったのだ。少なくとも、この瞬間までは平和だった。

 

大赦本部のすぐ近くに存在する、それなりに大きな屋敷。若葉一人のためだけに作られたというその家屋に入り、若葉に言われた通りに寛いだ。手伝おうとしたものの、「お前のために作りたいんだ」と格好良く言われれば、素直に寛ぐしかなかった。

 

———思えば、その時点で若葉の様子がおかしい事に気付くべきだったのかもしれない。

 

その後、若葉の作った料理を堪能し。そして、現在。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———千景は素っ裸に剥かれていた。

 

「ちょっと、乃木さん……?いくらなんでも、悪ふざけが過ぎるわよ?」

 

「…ふざけてなど、いない……ヒック

 

「……お酒臭い……?乃木さん、まさか飲酒を⁉︎」

 

忘れてはいけない。肉体も精神も十代のままだが、実際に生きている年数は300年以上。すなわち、(肉体が未成年である以上こじつけではあるが)若葉は飲酒が可能な年齢なのだ。……一応。

 

ただし当然、肉体が未成年なのでアルコールを処理する能力も見た目相応だが。

 

(………まずい。まずいまずいまずいわ…………‼︎)

 

千景は冷や汗をかきつつ、大慌て。当然だ。今の若葉は自制が出来ていない。すなわちそれは、何をするか分からないという事だ。

しかもタチの悪い事に、今の若葉の身体能力は通常時でさえ勇者に匹敵するほどに高い。つまり、能力の高い玲奈の身体を使っているとはいえ、抵抗らしい抵抗ができない。あっさり服を脱がされたことがその証拠だ。

 

 

———千景にとって不思議なのは、その事に対してあまり恐怖を感じていない事か。

 

『服を脱がされる』というのは、千景にとってはトラウマそのもの。一度目の人生、そして300年前の虐めによって、そのトラウマは蘇れば発狂しかねないレベルにまで達している。にも関わらず、若葉に服を脱がされても、羞恥こそあれど恐怖はない。……貞操の危機は感じているが。

それは果たして、本当の自分の身体ではないからか。それとも、自分で思っているよりも若葉に対して心を開いているのか。千景は自分の心を判別できない。

 

 

「……よし、ここはいいな…?」

 

「何が⁉︎」

 

若葉はじっくりと千景———厳密には、玲奈の身体———を観察する。何を思ったのか、そのまま抱き抱えてベッドの上に押し倒した。

 

 

「……乃木さん…?流石に、冗談よね……?」

 

「冗談ではない」

 

若葉の無駄にキリッとした顔は、千景には無性に腹立たしかった。

 

 

 

 

 

 

 

———そして、事の顛末を語るなら。

 

 

 

特に何もなかった。

確かに千景はベッドに押し倒され、間近で身体の隅々まで余す所なく観察されたが、禁断の百合の楽園に足を踏み入れる事はなかった。

 

 

「……なんか、馬鹿みたいだわ」

 

「すまない。どうしても確認しておきたくてな。いずれお前の身体になるのだから

 

目を覚ました若葉に愚痴をこぼすと、正気に戻った若葉は短く謝罪した。……最後の台詞は、間近でも千景には聞き取れなかったが。

 

 

現在午後3時。千景をベッドに押し倒し、身体をひっくり返したり腕を上げたり脚を開いたりして隅々までチェックした若葉は、そのままベッドに倒れこんで眠ってしまった。……一糸纏わぬ千景を抱き枕にして。

千景からしたら災難も良いところである。わけが分からないまま服を脱がされ、貞操の危機を覚悟したと思えば何もされずに抱き枕にされる。おまけに抱き締める力が異常に強いので窒息しかけた。しかも事の顛末が馬鹿らしい事この上ない。

 

 

「この身体は結城玲奈のものなんだから、300年前の傷なんてあるわけないのに……」

 

「分かっていたが、どうしても確かめたかった。……300年前、お前は身体の傷を誰にも明かさなかったからな」

 

若葉の目的は、千景の今の身体の状態を確認する事だった。……とはいえ、正気のままではハードルが高いため、酒の力を借りたというわけだ。酒に対する耐性が思いの外弱くて眠ってしまったが。

 

 

「左腕の火傷が深刻だが、それ以外に外傷はないな」

 

「そうね。……左腕を除けば、ね」

 

そんなやりとりをしつつ、千景は若葉にドン引きである。執着心の強さといい、突飛なその行動といい……「本当にそれで良いのか、初代リーダー」と呟きたくなった。

 

 

その一方で、乃木若葉といえば。

 

(………話が違うぞ、園子…!)

 

歴代の子孫達の中でも最も親しいであろう少女に、憤りを覚えていた。

 




……書き始めるとアレンジしたキャラクターやらオリキャラやらが勝手に暴走する不思議。



守護神若葉様: ぐんちゃんを剥きたい。というか剥いた。

ぐんちゃん: 若葉様に剥かれた。高奈ちゃんに剥かれたい願望を抱いている疑惑あり。

堕天使ブラック高奈ちゃん: ぐんちゃんが望むなら剥くし剥かせる。

変態主人公玲奈: 友奈ちゃんを剥きたい。そして何より剥かれたい願望あり。むしろ自分から脱ぎ出す。




……酷い絵面。どうしてこうなった?

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