結城玲奈は勇者である~友奈ガチ勢の日常~   作:“人”

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……久々にシリアスを書いた気がする。

また例によってオリジナル設定マシマシです。……今更か。


ユウキレナ

———あの日の事は、今でも鮮明に思い出せる———

 

 

 

 

 

 

『勇者・郡千景様の命懸けの尽力により、神樹様の結界が———』

 

『———少なくとも300年間はバーテックスの襲来を防ぐことができ———」

 

 

「………は?」

 

朝起きてからテレビの電源を入れたら、そんな音声が流れてきた。

 

 

———知らない。

———千景は、まだ目を覚ましていないはずだ。

 

 

一般人に襲われ、ボロボロの重症を負ってから、千景は一度も目を覚ましていない。

だから、あるはずがないのだ、そんな事————

 

 

「……目を覚ましましたか、若葉ちゃん」

 

ひなたがノックもせずに部屋に入ってきたのは、若葉が嫌な想像を振り払おうとしていた、まさにその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひなたが若葉に告げた真実は、先日の友奈との戦いでボロボロになっていた若葉の心を容赦なく叩きのめした。

 

 

「……冗談、だろう?ひなた」

 

ひなたは何も答えない。

 

「………そんな嘘、今はやめてくれ……。疲れてるんだ、本当に…」

 

誰よりもひなたを知る若葉は、こんな状況で彼女が嘘も冗談も言わないことを誰よりも分かっている。それでも、絶対にあり得ない可能性に縋りたかった。

そんな若葉を痛ましく思いながらも、ひなたは真実を告げる。

 

「冗談でも、嘘なんかでもありません。………千景さんは亡くなりました。神樹様の結界を強化するための供物として」

 

「……ッ‼︎」

 

……本来なら、結界を強化するのに最適な供物は高嶋友奈だった。

 

しかし彼女は精霊の瘴気に汚染されて暴走し、勇者の資格を失っている。神樹に必要とされる資質を失ったが故に、奇しくも友奈は生き残った。そこで選ばれたのが、千景。彼女は勇者になる前から神の力を宿しており、神樹の結界を強化するのにうってつけの存在だった。それに、今の彼女は立ち上がることも危険なくらいの重症を負っている。どのみちこのままでは『万が一に備えての』戦力にすらなり得ないのだから、供物となってもらうのが大社にとって都合が良かったのだ。

 

 

「……なんだ、それは」

 

その話を聞かされた時点で、若葉の精神は限界を迎えている。……怒りのあまり、暴走しかねないほど。

 

「……落ち着いて下さい、若葉ちゃん」

 

そのひなたの、あまりにも落ち着いた声を聞いて、若葉は冷や水を掛けられたくらいの衝撃を受けた。

 

(……ひな、た………?)

 

なぜ、そうまで落ち着いていられるのか。ひなたの声には、感情が感じられない。……その事実が、ようやく若葉に思考を許すだけの冷静さを取り戻させる。

そして今まで聞いた話から次々と見つかる違和感。

 

 

(………待て)

 

何か、とんでもない事を隠されているような焦燥感。

ひなたは若葉の異変を感じ取りながらも、話を進めた。

 

 

「…そしてもう、若葉ちゃんは戦わなくて良くなりました」

 

「……え?」

 

続いてひなたが若葉に語ったのは、更なる残酷な真実だった。

 

———奉火祭。複数の巫女を生け贄として天の神に捧げることで、人類の存続を『許してもらう』儀式。天の神に赦しを乞う以上、若葉はもう戦う事は出来なくなったのだ。

 

その話を聞き、若葉は抱いていた疑惑が確信に変わるのを実感した。———奉火祭に掛かるはずの時間を考えれば、違和感が強くなるのは自明だった。

 

 

「……今日は、何日だ……?」

 

その問いに、ひなたは無情な答えを返す。

 

「12月11日です、若葉ちゃん」

 

若葉の認識している日付と、ズレていた。

 

 

———この日の事を、決して若葉は忘れない。

 

自分が知らぬ間に薬を盛られ、長い間眠らされ。その間に千景や巫女が犠牲になった事を知った、この日の事を。

 

———原因は自らの油断と、心の弱さ故であると彼女は認識していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美森から乃木園子の言っていたことが事実であった事を知らされた、その翌日の夕方。

静かな犬吠埼家のリビングに、プルルルルル、と電話の音が響いた。

 

「……はい、犬吠埼です」

 

電話を取ったのは風。その声に彼女らしい覇気はない。1日が経過しても、彼女は昨日聞いた話のショックから立ち直れていなかった。

 

———しかし。

 

「……はい、…え、オーディション?……え、あの子が⁉︎」

 

電話から告げられた喜ばしいニュースで、風は一気に回復した。

 

「樹ー。芸能事務所の人から電話が来てるわよー!」

 

親機の受話器を放っぽり出し、保留ボタンを押すのも忘れたまま風は樹の部屋の扉を開ける。

 

「樹ー?……そっか、今日は友達とカラオケに行くって言ってたっけ」

 

歌のテストがうまくいってから、樹はクラスメイトと度々カラオケに行くことが多くなった。テストで自信がつき、歌うのが楽しくなったのだという。………しかしまさか、歌手を目指す程だとは風は思ってもいなかったが。

 

その後、保留ボタンを押し忘れた事に気付いた風は相手に大慌てで謝罪し(芸能事務所の女性は笑って許してくれた)、樹が不在である事を伝えた。相手は「また後ほど掛け直し致します」と言い残し、通話が終わった。

 

———ところで。

今更であるが、犬吠埼風はシスコンである。毎朝樹の朝食を作り、着替えを用意し、忘れ物を届け、宿題も教える。それを苦に思うこともなく、むしろ楽しんでいる節すらある。その様は、クラスメイトに「ダメ人間製造機」と密かに言われているほどだ。

 

———その彼女が、SNSで勇者部のメンバーに、樹のオーディションの事について伝えてしまうのも無理のない話だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……えっと……れな、れな、……あ、玲奈、か……」

 

私は、ノートに『結城玲奈』と自分の名前を書いた。

 

———ちょっと、まずいかもしれない。

 

最近もう一人の人格に身体を譲ることが多くなってきたからか、私は記憶におかしな症状が出始めていた。自分の名前の漢字が書けなくなるのはしょっちゅう。時々、本当に自分の名前を忘れたり、『郡千景』と書き間違えたりすることもある。そして、時折感じる焦燥感。『思い出さなければならない事があるはずなのに、思い出してしまったら取り返しがつかなくなってしまう』焦り。今の生活を続けたら、きっと私は消えてしまう。そんな確信がある()()()

 

誰にも話せない不安を押し潰していると、端末がメッセージの受信を知らせる。そこに書かれていたのは。

 

 

『樹がオーディションに合格しました!目指せ、トップアイドル‼︎』

 

「ふぇっ?」

 

私の口から、間抜けな声が漏れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———その頃。

 

 

「あっ、来てくれたんだ、わっしー……じゃなくて、美森ちゃん、かな?」

 

「……わっしーでいいわ。私は昔、鷲尾という苗字だったのだから」

 

美森は乃木園子が入院している病室に、一人で訪れていた。……病室と呼ぶにはあまりにも不気味な、神社のような有様だったが。

 

「……すごいね。自力で辿り着いたんだ…」

 

大赦によって徹底的に隠蔽された情報を突き止め、真実を導き出した美森に、乃木園子は心から驚嘆する。

 

 

「…2年前、私はあなた達と一緒に勇者としてのお役目についていた。でも、満開して両足の機能と記憶の一部を失った……」

 

「うん。……鷲尾家は大赦の中でも大きな力を持つ家だけど、勇者のお役目に就ける子供はいなかったからね。2年前は勇者に選ばれるのは大赦の中の有力な家の子供って決まっていたから……。大赦に近い血筋で、勇者適正の高いあなたを養子に欲しがったんだよ」

 

 

美森が語る内容に、園子はまるで答え合わせのように捕捉していく。

 

 

「私の家が友奈ちゃんの家の隣に引っ越したのも、偶然じゃなくて仕組まれたものよね?」

 

「うん。友奈ちゃんは、子供達の中で一番勇者の適正値が高かったんだって。あの子が勇者に選ばれることも、大赦は予想してたみたい。………逆に、勇者適正がないって判断されたのがその義姉の玲奈ちゃん。もっとも、あの子は多重人格だから、勇者の適正がないのは表の子だけなんだけどね〜」

 

「………………え?」

 

美森は、さらっと園子が語った内容を咀嚼するのに、数秒の時を要した。

 

「その様子だと、知らなかったみたいだね〜。ちょっと、悪いことしちゃったかも……」

 

「……教えて。知っているのなら、玲奈ちゃんのことについても」

 

「今日はなんでも教えるよ〜。せっかく来てくれたんだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———美森が園子から重大な機密を聞き出している頃。

 

そうとはつゆ知らず、彼女以外の勇者部メンバーは犬吠埼家に集合していた。

 

「……合格したのは嬉しいけど、打ち明けるより先にお姉ちゃんに知られるなんて………。嬉しいような、悲しいような……」

 

「いいじゃない!目指せ、トップアイドル!」

 

樹本人よりも風の方がハイテンションだった。

 

「…ところで、東郷は?」

 

「それが、家に行ってもいなくて………連絡もつかないし……」

 

「親御さん曰く、『病院にお見舞いに行った』って事だけど。……誰かしらね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは、ご先祖様から聞いた話なんだけどね〜」

 

「……んん⁇」

 

美森はいきなりツッコミたくなった。

 

「ああ、聞きたい事がまたできたと思うけど、話を先に進めるよ〜。まずは、玲奈ちゃんについてね」

 

———そして園子が語ったのは。

 

「……結城玲奈。彼女はね、『結城玲奈』としての人格と、『郡千景』としての人格があるんだよ〜」

 

「郡、千景?」

 

聞いた事のない名だった。

 

「彼女は、かつて人類を滅亡から救った西暦の時代の大英雄。そして———」

 

 

 

 

 

「———2年前、私たちと共に戦っていた勇者の一人」

 

 

 

 

 

 

「……どういう、こと?」

 

「言った通りだよ。玲奈ちゃんは2年前、『郡千景』の人格を表に出した状態でバーテックスと戦った。……彼女は普通じゃないから、毎回の戦い全てに参加できたわけじゃないけど……とっても、強かったなぁ」

 

しみじみと、園子は語る。

 

「———そして、ここからが本題。玲奈ちゃんの正体について。彼女はね……」

 

そして、園子はその真実を告げた。

 

 

———それは、荒唐無稽なお伽話のようで。

 

 

「………嘘」

 

美森は、それを信じることなど到底できはしなかった。

 

 

 

「事実だよ。……わっしーも知っているはずだよ。樹海化が解けた時、戦っていた勇者たちの中で唯一、彼女だけが樹海化前の状態に戻されていたことを」

 

「……ッ⁉︎」

 

「神樹様は樹海化を解く時、祠を目印にして勇者達を現実の世界に送り返すけど………彼女を送り返す事は出来ないんだよ。だって、玲奈ちゃんは無意識に神樹様の力を弾いちゃうんだから」

 

「……待って、じゃあ………」

 

「樹海の中で動けるのは、勇者の適正があるからじゃない。そもそも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんだよ。樹海は、神樹様が人々や街をバーテックスから守るために作る世界だからね。神樹様の干渉を弾いちゃう玲奈ちゃんは、勇者じゃないにも関わらず樹海化に巻き込まれてしまうんだって」

 

 

 

———その後も、園子の話を延々と聞く美森。玲奈の事だけではなく、勇者に少女が選ばれる理由や、この世界の真実も聞き出し。

 

 

彼女は、決断した。

 




勘の良い人は玲奈の正体に気づいたかな?……でも、オリジナル設定ですし……。





課金したい。でもお金がない。200万ダウンロード記念のガチャは見送るしか……。

恵は明日からの絢爛祭にとっておくッ!


でも、結び目が欲しい…。明日からの昇段ガチャにも特典としてついてくることを祈る。
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