結城玲奈は勇者である~友奈ガチ勢の日常~   作:“人”

40 / 64
お待たせしました!……最近は忙しい。夏休みだけど研究室行ったり論文読んだり研究室行ったり研究室行ったり論文読んだり……はっ!これが青春か(遠い目)

感想お気に入り登録ありがとうございます!
……評価で0が付いたのに気付き、想定以上にショックを受けたけど投稿前にお気に入り数がさらに増えていて持ち直しました。お気に入り登録してくれた方、本当にありがとうございますっ!



さて。
自分で書いていてどうかと思いますが……この作品は人を選びます(今更)。評価バーが赤いのにお気に入り数や総合評価が意外に伸びていないのがその証拠。つまり、多数受けはしないけど楽しんでくれている人はトコトン楽しんでくれている(と、良いなぁ)
…………的外れの予想だったらこの上なく恥ずかしい。

そして、今回のお話も人を選びます。やばいっす。
オリジナル設定的な意味でも、バイオレンス的な意味でも。





終焉の始動

「300年前、あなたが神樹に取り込まれた時———私は、この世界の神樹に取引を持ち掛けました」

 

玲奈は語る。千景が現代に『憑依』という形で存在している背景を。

 

「取引?」

 

「神樹はこの世界を守る為の結界を張る為に、膨大なエネルギーを必要としていました。あなたを取り込む必要があったのも、それが理由です」

 

正確には、取り込む必要があったのは千景の精神世界にいた神の力。あてにしていた高嶋友奈がエネルギー源として使い物にならなくなり、神樹はその代替として千景———正確には千景の中にいた玲奈———を求めた。

 

「しかし、私は抵抗しました。……私が長時間抵抗する事で力を消費すれば、たとえあなたを取り込んだとしてもエネルギーの収支はほとんどゼロになる。神樹はそれを分かっていたから、私の取引に応じたのです」

 

玲奈は、異世界の神樹を構成していた神々の一部の集合体。構成する元の神の数はこの世界の神樹の方が圧倒的に多い。取り込まれれば、たとえ抵抗しても最終的には吸収されてしまう。しかし、その『抵抗』によって神樹は相応の力を消費するだろう。

そして、神樹が人類を守れる結界を張るには、どうしても新たなエネルギーを確保する必要があった。その弱みがあるからこそ、取引を持ち掛けられる隙が生まれる。

 

「無抵抗で私の力のおよそ半分を差し出す代わりに、あなたを未来に蘇らせる。それが私の提示した取引です」

 

「………」

 

「そして、私はあなたの身体を特定の年齢まで管理する為に、なにより人間の心を知る為に、人間として『結城玲奈』になった。……私がただ記憶を失って人として生きていたというよりは、『元の私』の魂というべきものを人間のスケールにまで縮小し、まっさらな状態にする事で、無理やり人間の赤子の魂と同等の状態にしていたといった方がいいでしょう。人の心を学ぶには、他の人間と同じ条件で赤子から成長するべきだと考えた結果なのですが………自然に生まれた人間でない以上、やはり無理がありましたね」

 

普通の人間とは違い、神の精神を改造して生まれた不自然な状態の玲奈は、『精神の不安定さ』という欠陥を抱えることになった。

 

 

「人間の時の私は、てっきり火傷のトラウマで精神疾患になったのだと思っていましたが………いくら親によるトラウマとはいえ、全く関係のない第三者まで徹底的に警戒する、というのは不自然です。きっとそれは、その火傷の事件とは無関係。『階段から突き落とされるかもしれない』『いきなり殴りかかってくるかもしれない』なんて警戒するのは、きっとあなたの記憶による影響です。友奈に会うきっかけとなったあの事件の前まで精神が安定していたように見えていたのは、ただ心を閉ざしていただけ。友奈に出会う事で、ようやく精神の歪みを表に出せるようになった」

 

 

———鬼の少女は、玲奈の状態を『自己洗脳』と評した。玲奈はそれを、普段の生活における自分の心を覆い隠している事だと解釈した。

 

 

「今思えば、彼女は私の事を見抜いていたのかもしれませんね。普段人間の頃の私が隠していた事を敢えて指摘していたのも、300年前のあなたとの共通点を浮き彫りにしたかったから。そうする事で、私の記憶を呼び覚まそうとしていたのかもしれません。……私を人間の状態のまま消す、というのはやり過ぎだと思いますが」

 

 

「……話が、長いわ」

 

千景はうんざりしていた。———重要な話だという事は分かっているし、自分にも密接に関わってくる問題だが、そこまで深く解説を求めているわけではなかった。

 

 

「…人間としての私と、今の私ではまた話が変わってくるので話し足りないのですが………」

 

 

「……今はいいわ。後で話して」

 

「……そう、ですね」

 

 

———その時の寂しげに笑う玲奈の顔が、なぜか千景の胸にチクリと刺さった。『身体を特定の年齢まで管理する』という発言の意味を、彼女は考えすらしていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ、はぁ………良かったぁ…。玲奈ちゃんの呼吸、戻っ……た……?」

 

 

人工呼吸を終えた友奈は、変なものを見た。

骨の露出した、玲奈の左腕の断面。そこから、何かが伸びている。筋肉繊維の中から出てきたそれは、———植物の芽。

 

「ッ⁉︎」

 

やがてズルっとその芽と同じ物が大量に伸びて蔦となり、腕の断面を覆い隠しながらギチギチと絡み合う。そして、

 

 

「えぇッ⁉︎」

 

絡み合った蔦は腕の形を成したかと思うと、その一瞬後には白い肌に覆われた左腕になっていた。———すなわち、腕が再生した。

再生した腕には、欠損していた痕跡は何1つない。幼少期に負った大火傷の跡も、綺麗さっぱり無くなっている。

 

———間違いなくこの上ない幸福な奇跡のはずだが、その場面を目撃した友奈にしてみればホラー感満載だった。

 

 

そして友奈が戸惑いで動きを止めている間にも、事態は急速に変動する。

突如パチっと玲奈が目を開け、その直後に友奈に抱きついた。そして友奈の胸に顔を埋め、玲奈はそのままスーハースーハーと深呼吸。

 

「⁉︎⁉︎!?!!⁉︎??⁉︎?⁉︎‼︎?」

 

事態の急激な変化に対応出来ず、友奈の脳はパンクした。

 

(あぁ……久しく嗅いでなかった懐かしいこの香り………)

 

一時的に戻った嗅覚で玲奈は友奈の匂いを堪能する。制服越しに感じる柔らかい感触を魂に刻み込む事も忘れない。

友奈は友奈で思考が停止していたので、ほぼ条件反射で玲奈の頭を撫でた。

 

(ふわあぁぁぁぁ………)

 

友奈の匂いと感触に満たされながら、友奈に頭を撫でられる事のなんと幸福なことか。

友奈の胸に顔面を埋めているので周りからは見えないが、玲奈は恍惚とした表情を浮かべている。………神としての意識が戻っても変態性が変わらない玲奈に呆れるべきか、それとも神さえも病みつきにするユウナニウムなるものを評価するべきか。それは神樹にさえも分からない。

 

 

(……もう、いつ死んでもいい………我が生涯に、僅かたりとも悔いなし………)

 

 

周囲の状況は最悪だ。星屑は絶え間なく侵入し、鬼の少女は美森を痛めつけているまま。しかしそれでも、玲奈は間違いなく幸せだった。

———ここで自らの存在を放棄()()()と思うほどに。

 

だが、それは今の問題を解決してからだ。

そもそも、ここで全てを投げ出したところで何も解決しない。なぜか壁の外からはレオ・バーテックスが侵入してくる気配すらないものの、依然として星屑達は溢れている。

 

 

だから。

 

 

「……充電、完了。手伝って、友奈」

 

どんなに名残惜しくとも、玲奈は戦う事を選んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あはははッ!喰らえ、バーテックスッ‼︎」

 

壁の外にて。

心底楽しそうに笑いながら、高嶋友奈(鬼の少女)は人類の敵と戦う。———その声だけを聞くならば、高嶋友奈の元の人格が戻ってきたように錯覚するほど、明るい声。

最強の獅子座も、憎悪の鬼も共にほとんど無傷。………しかし、それには要因があった。

 

 

「がぶっ⁉︎」

 

東郷美森という、要因(玩具)が。

 

———鬼の少女は美森を武器として使っていた。

バーテックスからの攻撃は美森を盾にして防ぎ、攻撃は美森で殴るか、美森を投げつける。精霊のバリアがなければまず出来ない遊び(蛮行)。精霊は攻撃から命は守ってくれるが、衝撃を完全に消す事は出来ない。当然ながら、美森をぶつけたところで大した攻撃にはならない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

———バーテックスの攻撃によるダメージよりも、高嶋友奈の遊びによるダメージの方が圧倒的に酷い。なにせ、美森で殴るスピードも、美森を投げるスピードも、音速を超えているのだから。

 

美森の状態は最悪だ。へし折られた腕と脚は振り回された時の遠心力で関節が外れ、筋肉は断裂。バーテックスにぶつけられた時の衝撃で全身の骨にひびが入っている。脳は絶え間なく揺らされて意識が朦朧とし、蹴り飛ばされた時に圧壊された臓器はぐちゃぐちゃに掻き混ぜられていた。

 

 

———それでも、精霊は美森を生かし続ける。

 

呼吸が止まれば酸素を供給し、心臓が止まれば血液を循環させる。臓器が破壊されてもバラけた細胞の破片は壊死する事なく、血液が無くとも栄養分と酸素を補給して無理矢理にでも細胞の生命活動を強制する。

 

 

「ここまでやっても死ねないなんて、悪夢だよね。……でも、まだまだ足りないや」

 

 

———鬼の少女は、美森を徹底的に苦しめてから殺すつもりだった。

死の直前まで痛めつけ、自分のした行動を後悔させ、許しを乞われながら無情にゆっくりと命を終わらせる。そうすれば多少溜飲も下がるだろうと、そう思っていた。

 

 

だが。

 

「……ねえ、なんか言ってよ。このくらいで壊れちゃったの?」

 

美森は、言葉を発さぬ肉塊に成り果てていた。

肉体は生きている。姿形も、ボロボロであるが外見の造形そのものは元の形を保っている。———ただ、精神の活動が感じられない。痛みや衝撃に反応して悲鳴や呻き声を出しても、意味を持つ音声を出さない。

 

………その事実そのものが、鬼の少女を苛つかせる。

 

 

「ねえってば。身勝手に世界を滅ぼそうとした癖に、こんな簡単に壊れたの?」

 

苛立ちのままに、少女は美森をレオ・バーテックスへ蹴り飛ばす。バリアが発動し、まるでサッカーボールのようにバーテックスに激突した。

 

 

「……早く、起きてよ」

 

美森の頭を掴み、ガンガンとバーテックスに叩きつける。

 

 

「起きてよ」

 

 

何度も。

 

 

「起きて」

 

 

何度も何度も。

 

「起きて」

 

何度も何度も何度も。

 

「起きてってばッ!」

 

 

苛立ちが限界に達し、叩きつけた威力に精霊のバリアが耐え切れずに美森の頭から流血する。それにも気付かず、さらに鬼は美森の頭を叩きつけようとして。

 

 

 

「東郷さんを虐めるなぁッ‼︎」

 

「……っ!」

 

 

再度変身した結城友奈が、上空から高嶋友奈へ突撃した。咄嗟の判断で高嶋友奈は美森を結城友奈へと放り投げ、背後から迫る刺突を紙一重で躱す。

 

 

「……記憶、戻ったみたいだね」

 

「私の力を返してください、偽物」

 

 

空中に浮遊しながら、結城玲奈と高嶋友奈が向かい合う。……すぐ側にいるレオ・バーテックスは動かない。否、動けない。神樹の結界の境界上———すなわち壁の上にいる()()1()()()()()()()()()()()()()()がバーテックスを拘束し、締め上げている。移動はおろか、火球での攻撃もままならない。

 

 

「どうして?東郷さんは、殺すんじゃなかったの?」

 

「鬱憤を晴らしたいだけのあなたと一緒にしないで下さい。少なくとも人間としての私は、『殺したくない』と考えています。……ただ、優先順位が友奈よりも低いだけ。苦しめて殺したいあなたのような悪魔と、同じにしないで」

 

 

 

 

 

 

———泣き叫ぶ友奈の悲鳴が響いたのは、その直後だった。

 

 

 




伏線回収回。まだ回収していない伏線は……どれだったか。



……なぜ、東郷さんがこんな目にあっているんでしょうね。天罰にしてはやり過ぎ……。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。