結城玲奈は勇者である~友奈ガチ勢の日常~   作:“人”

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伏線回収回。……あまり話は進みません。

伏線を回収したいがために前回同様説明文多めなのはご愛嬌。


助っ人高奈ちゃんは、出なかった……。
そして結城ちゃん。あなた、ガチャSSRとして出るスパン短くない?この前精霊と戯れているのが出たばかりだよね?

ゆゆゆい新規としては、去年のシナリオは欲しいけど……大赦ポイントが厳しすぎる。なんだ、50000って……。せめて1万、できれば5000くらいにしてくれないとコンプ厳しくない?


“反転”

「お姉ちゃん、大丈夫?」

 

「樹こそ……熱くない?」

 

 

———炎の海の中で、犬吠埼姉妹は目を覚ました。

幸い、炎によるダメージはない。精霊のバリアが2人を熱から守っていた。

 

 

「だいぶ遠くに、飛ばされたわね……」

 

辺りは炎で視界が悪く、そう遠くまでは見通せない。しかし、何者かが戦う衝撃波と音だけで、友奈に似た少女から遠い距離にいる事は判断できた。

 

 

———負っていたダメージは、吹き飛ばされた時の衝撃によるもののみ。気絶はしていたが、風にも樹にも、深刻なダメージはない。

 

「行こう、お姉ちゃん!早くしないと、東郷先輩がッ!」

 

「ええ!早く、この炎の海から脱出しないとっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———神としての玲奈に、本当の意味での自由はない。

なぜなら、彼女は友奈の『郡千景を幸せにしてほしい』という願いによって生まれた神だからだ。たとえ玲奈本人が望んでいなくとも、神としての意識を取り戻した以上は『郡千景を幸せにする為に』行動しなければならない。彼女が行動できるのは『それが郡千景の為になる』と判断できるものまで。もし『郡千景を不幸にする』『郡千景が危険に晒される』と判断した場合は、それがたとえ友奈を守る行動であっても動くことはできない。人間としての玲奈はともかく、神としての玲奈はその制約に縛られる。

 

「だから、たとえあなたの望みでも聞けません。たとえ友奈を不幸にしてでも、私は貴方の魂を守る為にこの身体を譲渡しなければならないのです」

 

 

その言葉に、千景は答えられない。なぜなら、彼女は自分の望みを自覚してしまっている。このまま玲奈に以前と同じ生活を送って欲しいと思う一方で、『その場所に玲奈ではなく自分がいたなら』と夢想してしまっている。

 

———本当は、千景こそが誰よりも穏やかな日常に焦がれていた。

 

 

「あなたが不安なのは、内面の問題ですか?それとも外面?」

 

———一度、千景はあらゆる問題を隅に追いやって考えた。

仮に、千景が玲奈の居場所を奪ってしまったとして、何が問題なのか?

 

 

まず、内面の問題。たとえ身体がそのままでも、中身が違えば別人だ。黙っていれば皆を騙す事になる。そもそも、玲奈本人ではないのだから騙せるとも思えない。必ずボロが出るだろう。……仮に真実を打ち明けても、皆が自分を受け入れてくれるとは限らない。

 

そんな千景の思考を読むようにして、玲奈は反論する。

 

 

「騙そうと打ち明けようと、心配する必要はありません。………こんな面倒な(玲奈)を受け入れてくれた勇者部ですよ。あなたの事も、きっと大切にしてくれます」

 

……………。

 

そして、外面。これは単純に、肉体の問題だ。

そもそも、脳にある記憶や情報は、今まで生きていた玲奈のもの。魂しか存在しない今の千景が乗っ取ったところで、悪影響が出ないとは限らない。

 

 

 

「それも大丈夫です。この身体、遺伝子レベルであなたと同一ですから」

 

 

 

……………?

 

 

 

「………え?」

 

 

千景は思わず間抜けな声を出した。

 

「ですから、遺伝子レベルで同一です。運動による筋肉量の僅かな差異こそありますが、遺伝子は同じ。さらに言えば、脳に蓄えられているのは人間の私の記憶だけでなく、300年前のあなたの記憶もあります。———身体の制御権が変われば、アクセスできる記憶情報が切り替わるようになっているのです」

 

 

「……………は?」

 

 

まるでアカウントを変えれば表示されるデスクトップの画面が切り替わるパソコン。格納されている情報そのものはあっても、アカウントが違えば他者のソフトウェアを使用できないのと同じ。人格の侵食を避けるため、千景が身体の制御権を握っている間、脳の情報は千景のもののみにアクセスできる。———もっとも、遮断される情報は魂に影響を及ぼしかねない『性格』『嗜好』『学習能力』などだけで、今まで玲奈と共有していた記憶はそのまま見ることができるのだが。

 

 

「ついでに言えば、満開の真似事で失った機能も問題ありません。なぜなら、満開によって機能を失っても肉体そのものに異常はないからです。満開で供物となるのは、肉体を動かす霊体の機能。機械に例えるなら、欠損したのはハードウェアではなくソフトウェア。満開で欠けてしまったのは私の霊体ですから、あなたが身体を動かす場合、不具合など一切ありません。

………現に、乃木若葉の手料理の味は感じることができたでしょう?」

 

 

「…………あ」

 

千景は忘れていた。確かに以前、千景は若葉の手料理を口にし、その味を堪能することができたのだ。………その後の出来事がショッキング過ぎるあまり印象が薄れてしまっていたが。

 

 

「私はあなたを幸せにする神ですよ。ですから、何も心配いりません。味覚も嗅覚も、生殖機能も、あなたから失われたわけではないのです。……唯一の欠点たる火傷の痕も、今ではすっかり消え失せています。傷一つない、あなたに相応しい身体です」

 

 

人間の玲奈は、生殖機能を不要な臓器の機能と断じて満開の供物にした。…………それは、自分の興味が友奈にしかなく、将来必要になる事はないと確信していたからだ。

しかし、千景は別。今は興味がなくとも、未来には恋人ができて、結婚するかもしれない。現に、とある世界の千景は生き残ってさえいれば()()()()と結ばれる可能性が高かった。………将来が予測できない以上、どんな可能性も切り捨ててはならなかったのだ。

 

 

 

「長話が過ぎましたね。………では、始めます」

 

 

———肉体の制御が千景に移ると同時に、精神世界の樹海化が解ける。そうして現れたのは、丸亀城の教室。すなわち、千景の精神世界。

精神は魂に根ざすもの。しかし、この精神世界は精神そのものではなく、精神の交流の為に設けられた、肉体に紐付けられた空間。故にこそ、身体の持ち主が変わればこの世界の景色も変わる。

 

 

 

樹海化が解ければ勇者が少女へと戻るように。

結城玲奈という幻想は、この時を以って郡千景という少女になった。

 

 

現実の世界に復帰するのは、玲奈ではなく千景。

—————ごく普通の中学生(結城玲奈)は、もうどこにもいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———さて、ここからが私の戦いです。

既に、肉体の制御権は郡千景へと移った。あの身体を指し示す名は既に『結城玲奈』ではなく、『郡千景』となっている。今後は玲奈が、郡千景の別人格として存在することになるだろう。……300年前と、同じように。

 

———『結城玲奈』として生きてきて、本当に良かった。それなりに人間の感情を学び、人の心を理解できるようになった。………友奈にばかり執着してしまったのは、仕方がありません。完全に普通の人間になりきるなんて、ハードルが高過ぎるというもの。

 

 

 

美森の側で佇む千景の視界を通じ、玲奈は美森の様子を見た。———先程よりも、明らかに顔色が悪くなっていた。

感慨に浸り、想いを馳せながらも玲奈は神の力を行使する。人の心を知りながらも、既に人間としての精神性は消失した。美森の容態がどのようなものであろうと、それに忌避感を覚えることはない。

 

 

———よほど憎まれていたようですね、高嶋友奈に。勇者システムがなければ誇張なしで挽肉になってましたよ。

 

 

………美森の体内は、致命傷を優に通り越した有様だった。ほとんど全ての体組織が通常ならば使い物にならないジャンク。心臓や肺など、生命の根幹を成す臓器さえも甚大なダメージを受けて機能を停止。身体全体に張り巡らされている血管も、およそ6割が破れてしまっていた。

 

———でも、問題ない。精霊の守りによって生かされている以上、私の力を以ってすれば蘇生は可能。

 

破裂した内臓を復元し、切断された筋肉繊維を繋ぎ直し、砕けた骨を元通りに整形する。損傷した脳は念入りに調べ、問題がないことを確認して修復した。皮膚の下でズタズタになった血管を修復し、使い物にならなくなった血液を除去し、足りなくなった血を生成。肺と心臓の機能を回復させ、肉体の蘇生は完了した。

 

 

———後の問題は、精神でしょうか?壊れてなければいいのですが。

 

肉体と違って、精神の修復は容易い事ではない。今の彼女の力でも、人間の心までは治せない。神にとってみれば、人間の心を治せるのは同じ人間のみ。人の優しさや思いやり、そして愛情だけが、心の傷を癒す事ができる。………そもそも、心の傷が神の力でどうにかなるならば、300年前に千景の心の傷で悩む事はなかっただろう。

 

千景の目を通した視界をさらに切り替え、玲奈は視点を美森の魂へと向け———案の定、その大部分が瘴気に侵されている事に気づく。

 

 

 

———鬼の少女は瘴気の塊。それは()の力を借りて実体化しても変わらない。

 

故にこそ、その攻撃には常に『汚染』の危険が付き纏う。高い攻撃力よりも、()()()()()()()()()()()()()()特性の方が脅威だ。

現に、その暴力を一身に受けた美森の魂は瘴気まみれ。———その瘴気を、玲奈は神の力で浄化した。自分の中に高嶋友奈がいた頃、郡千景が無意識にしていたように。

 

高嶋友奈が玲奈の力を使用して実体化している以上、本来ならば神の力の管理権が玲奈に戻った時点で高嶋友奈の実体化は解け、消失する。

しかし、高嶋友奈の力の根底は鬼の精霊・酒呑童子。元来は山神・水神と言われた八岐大蛇の子であるという説もある鬼の頭領。すなわち、神の血を引くと言われる鬼。その酒呑童子であれば、神の力を既に己が物としている公算は高い。玲奈が神の力を完全に取り戻しただけでは、決して止まらないだろう。

 

だからこそ、義妹の結城友奈に足止めを頼んだ。———玲奈に触れただけで、その中にいた千景の瘴気を少しずつ浄化した彼女に。

 

勇者として玲奈が戦い始めた頃までは、千景は瘴気に蝕まれていた。その頃まで玲奈が幻聴として聞いていたのは、瘴気に侵されて負の感情にのみ反応するようになっていた千景の声。千景は無意識のうちに神の力で玲奈に届き得る瘴気こそ浄化していたものの、自分を守る事まではできなかった。玲奈を慰める友奈によって、少しずつ千景の瘴気は取り払われ、ようやく第二の人格とも言うべき状態に戻れたのだ。

 

 

———それなりに力を消費しましたが、まだ余裕はあります。高嶋友奈を討伐、あるいは吸収した後、レオ・バーテックスを倒す。犬吠埼姉妹の捜索はその後になりそうです。……仕事の後始末だけを押しつけるようで、申し訳ないのですが。

 

 

「……問題ないわ。あなた、言うほど人間性をなくしてないわね」

 

頭に響く玲奈の声に、千景は薄く微笑んだ。

 

 





前回のあとがきの、『気づかれていない伏線』は若葉様の料理を堪能した旨を書いた一文。でももしかしたら、『堪能したのは食感とかだろう』と考えていた人もいるかもしれない。

 
『……でも。間接的にとはいえ、あなたのおかげで『精霊の瘴気』から救われた。このくらいは無償でやってあげるわ』

かなり前のお話のこのぐんちゃんの独り言も伏線。その頃の頻繁な友奈ちゃんの入浴とか同衾による癒しによって瘴気の浄化が加速し、ぐんちゃんは正気に戻れたのである。つまりユウナニウムは偉大。
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