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今回はエピローグ。補足のお話。後半は設定資料集のような何かなので、飛ばしてオーケー(多分)。
さて。
某作品を書いている、某日本庭園さんへ一言。
———書いても良いって、言ったよね?(ニッコリ)
———郡千景の朝は早い。
「ん、……ぐっ……んんッ………」
毎朝5時頃には目覚ましの音で起床し、顔面に貼り付いた布で窒息しかけながら目を覚ます。———そして。
「……
この恨み言も毎朝の事だ。目覚まし時計で時刻を確認し、手早く着替えを済ませ、顔から引き剥がした下着や知らぬ間に布団に入り込んでいた友奈の体操着を慌てて紙袋に入れる。………身体を共有している以上、変態の尻拭いをしなくてはならないのは千景なのだ。
その後、部屋の隅々まで念入りにチェック。ベッドの下、タンスの裏側、本棚の隙間まできっちりと調査する。
「……よし」
………幸い、今日は盗聴も隠しカメラも設置されてはいなかった。
平日ならば朝食の準備や友奈を起こす仕事があるが、今日は日曜日。———それはすなわち、朝食から入浴まで若葉と過ごす日である事を意味していた。
「……それで、結局どうしたの?」
「ああ。あの方………結城玲奈に東郷美森の霊体を引きずり出してもらってな。私が彼女の記憶の魄を斬ることで、取り敢えず記憶を封じる事には成功した」
———友奈と美森が退院後。千景と若葉は、二人でゲームに興じる日常を送っていた。
ちなみに、現在千景が5連勝中。ゲームにムキになりながらも、両者ともに会話を止める気配はない。二人とも画面に視線を釘付けにし、目にも留まらぬスピードでコントローラーを操作しながら冷静に話すという器用な真似を行っていた。
「魄……散華する時に、供物として捧げられるものね」
「ああ。………彼女を救うには、もうそれしかなかった」
人間の霊体は、
満開時に供物として捧げられるものも魄だ。例えば結城友奈は満開後に味覚を失ったが、それは舌そのものが壊れてしまったわけではなく、舌に対応する魄が奪われただけのこと。美森が散華して失ってしまった記憶も、脳に記録されている情報が消えてしまったわけではなく、脳細胞に対応している魄が消えてしまっただけ。要するに、記憶そのものがあっても情報にアクセスできなくなっていただけだ。
———そして若葉は、それを利用して美森の記憶を封じた。
『鬼の少女に暴行を受けた』という記憶を持つ脳細胞に対応した魄を斬ることで、トラウマとなる記憶にアクセスできないようにしたのだ。………言ってしまえば、人為的な散華。若葉の力を以ってすれば、他の魄を一切傷つける事なく、トラウマに関わる魄のみを斬り伏せる事は不可能ではなかった。———非常に困難であったのは確かだが。
「魄そのものに干渉しない限り、東郷美森はトラウマを思い出す事はないだろうな。……念のため、しばらくは様子見が必要だろうが」
そんな話をしつつ、『バキッ』という音と共に若葉の手の中にあるコントローラーが割れる。———これで千景の6連勝。悔しさのあまり、若葉は握力だけでゲーム機のコントローラーを割り砕いていた。
———それに千景はドン引きしたが、見なかった事にしてプレイを続行。
「それを聞いて安心したわ。……園子さんはどう?元気?」
「ああ。少し時間が掛かっているが、順調に回復している。包帯が取れるのも時間の問題だろうな」
———乃木園子。彼女は2年前の戦いで満開を繰り返し、身体機能の多くを散華した。手足や視力はもちろん、内臓機能や皮膚の機能に至るまで。
皮膚というものは生体を守るのに非常に重要な機能を持っている。微生物による攻撃から生体を保護し、外界の刺激から内部構造を守る。
———その機能が失われてしまった結果、外見にどのような影響が出たのかは、彼女の顔を覆う包帯が物語っていた。勇者システムによって生命そのものが維持されていても、生体全ての活動を補ってくれるわけではないのだ。
「そちらこそどうだ?……あの方の様子は?」
「相変わらず、うんともすんとも言わないわ。……夜中に活動しているみたいだから、心配はないと思うけど」
———千景が最後に玲奈と会話をしたのは、友奈が目を覚ました翌日だ。それ以降、彼女は突然千景の呼びかけに一切反応しなくなった。
だがしかし、心配をするのは早とちりというもの。……千景が就寝した後、明らかに玲奈の仕業と思われる現象が発生したためだ。
「……本当に、驚いたわ。朝起きたら高嶋さんのパンツが顔に貼り付いているのだもの。危うく窒息しかけるところだったわ」
「その話は前も聞いたな……」
「他にも靴下だのパジャマだの、今朝なんて洗濯前の体操着が布団に入っているのよ?……いくら高嶋さんのものでも、困るわ。……
「似たようなことを前も聞いたな……」
毎週日曜日は、若葉にとって千景と遊べる唯一の日だ。そして千景にとっては、玲奈によって被ったストレスを発散する日でもある。………千景がこのような愚痴を言えるのは、若葉の前だけだった。
「最近なんて、東郷さんが酷いのよ。……脚が動くようになった途端、大量の盗聴器だの監視カメラだのを仕掛けるようになるし。夜中に高嶋さんの部屋から物音がするかと思ったら、なぜか窓から勇者服姿の東郷さんが忍び込んでいるし。参ったわ……」
「それは初めて聞いたな………端末もないのにどうやって変身しているんだ……⁉︎」
以前から聞いていた話を聞き流していたところで、突然の告白。300年の時を生き、大赦の人々から守護神扱いされている若葉ですら驚いた。
———驚きのあまり操作を誤り、若葉は敗北。千景は7連勝した。
「ただいま……」
「お帰り、ぐんちゃん……って、どうしたの⁉︎」
千景が結城家に帰宅したのは、午後11時だった。———結城家の両親は既に眠っている。明日は月曜日。働いている身としては、平日の起床に備えて早めに眠っておきたかったのだろう。必然的に、出迎えるのは千景の帰りを待って夜更かししていた友奈一人である。
「……あれ…?高嶋さんが………3人…?ふふ、ふふふふふふふ……」
「えーと、ぐんちゃん……酔っ払ってる……?」
「……酔って、…ないわ……」
帰ってきた千景は明らかに酔っていた。顔は紅潮し、足元はフラフラ。焦点も定まっておらず、これで酔っていないわけがない。
「………ふふ、ふふふふ」
「……えと、ぐんちゃん?」
不気味に笑う千景に、友奈は初めて危機感を覚えた。それに何より、危なっかしい。足元がおぼつかないまま、靴を脱いで家に上がろうとしている。
「あッ……」
「ッ!ぐんちゃん!」
案の定千景は何もないところで躓き、それを友奈が抱きとめる。………友奈の予想通り、千景からは微かにアルコールの匂いがした。
「……ありがとう、高嶋さん。ふふ、ふふふふふ………」
「なんだか怖いよぐんちゃん⁉︎」
———そして友奈の危機感は的中する。
「……えーと、ぐんちゃん?」
「なあに、高嶋さん?」
「………離れてくれると、嬉しいなぁって……」
「嫌よ。絶対に離さない」
———友奈は千景に押し倒されていた。有り体に言って、貞操の危機である。
………と、思いきや。
「……にゃ〜」
「………………」
絶句。酔った人間の扱いに、友奈は慣れていなかった。
「今日一日、私は高嶋さんの猫になるわ」
そう言いつつ、千景はそのまま友奈の腹部にダイブし、顔を擦り付けながら香りを堪能。行動だけを見るなら、さながらそれは飼い主にじゃれつく犬や猫のようだった。
「……くふっ、ぐ、ぐんちゃん……くすぐったい、ひゃっ……」
そう言いつつも、満更でもなさそうな友奈。———帰ってきた時刻が午後11時であるため、『猫になれる』のはあと1時間もないのだが………千景も友奈も気にしてはいなかった。
(……なんて、羨ましい)
とある変態がぼそりと呟くが、それを知る者はいない。
———翌朝、真夜中の自らの行動を思い出して千景が悶える羽目になるのは、また別のお話。
第1部 “結城玲奈”の章 完
◯設定資料集的な何か
結城玲奈
結城家に引き取られたごく普通の女子中学生である。シスコンだったりちょっと精神的に病んでいたり変態だったりその正体が実は凄かったり変態だったりするが、ごく普通の女子中学生である。
人間としての彼女の誕生日は11月22日。だがその日を迎える前に完結してしまった為、誕生日祝いの話を書く予定は(今のところ)ない。
結城友奈
皆さんご存知大天使友奈ちゃん。今作では『結城友奈は高嶋友奈の転生なのではないか』というかつて囁かれていた考察を採用。今作第1部においては鬼の少女と対峙した際、原作を遥かに上回る戦闘能力を発揮した。そして可愛い。かっこいい。そして美しい。そして可愛い。
郡千景
乃木若葉を庇えず、死なせてしまった世界を出自とする、神様の計らいによって復活した女の子。(今作の設定上に存在する)数多の並行世界では碌な目に遭わずに死亡している。
………玲奈を含む神は知覚していないが、神が友奈の願いに沿って並行世界に干渉する度に神の管理下に無い別の並行世界が複数発生している。この『千景を幸せにする神のいない並行世界』の光景が悪夢や幻覚として高嶋友奈に流れ込む事によって、鬼の少女が生まれる事になった。しかしそれは所詮別の並行世界の光景であり、この世界線においては『何の関係もないただの悪夢』でしかない。
願わくば、平穏な日々を。
乃木若葉
この世界線最強の人。変身前の状態で神世紀300年の勇者に匹敵、あるいは凌駕する戦闘力を持つ。守護者としての力を発揮した際には、満開状態の勇者全員を圧倒できる程の戦闘力を獲得する(あくまで神世紀時点)が、その代償として自分の意志だけでは戦うことができない。
所謂不老不死であり、現在も生き続けている。神樹が彼女を生かし続ける限り、乃木若葉は生の苦しみから解放されることはない。
玲奈の半身
300年前、玲奈が神樹との取引によって提供した半分の神の力が意思を持ったもの。神樹に取り込まれた事で大元の人格とは差異が出ているが、神としての玲奈そのものである。
…………実は、神樹のほぼ全てを掌握しており、決して『郡千景が不幸になる』事態にならないようにコントロールしている。玲奈は300年前、取引を持ち掛けるカードとして自らの神の力を差し出したが———なんて事はない。それすらも罠。そして見事その取引によって神の力を神樹に送り込み、その内側から神樹を制圧・支配する事に成功した。すなわち、全て玲奈の掌の上である。
その気になれば若葉を不死の運命から解放できるが、………その半身は決してその選択を行わない。結城友奈に絆された結城玲奈と違い、この半身には甘えも隙も遊びもない。郡千景の不幸を防ぐべく、使えるものはとことん使い潰し、不要となれば処分する。神としての結城玲奈が『友奈ガチ勢』もしくは『ぐんたか派』であるとすれば、この半身は『千景ガチ勢』である。
ぽっと出の少年
世界線Xの登場人物であり、時間があるなら書きたい作品の主人公。
世界線X最強の人。しかし彼は勇者ではなく、『抗神者』。一言で言えば、『神樹もしくは天の神によって改造された超人』の一人。そして所謂、”ぼくのかんがえたさいきょうのしゅじんこう”でもある。
ネタバレになり兼ねないので明言はしないが、………『千景ガチ勢のやべーやつ』である。
そして見た目は美少女、頭脳は男。その名は———
某作品に、猫のぐんちゃんが猫らしく甘える(?)シーンがあって。
それに対して私は、『人の姿のままでやっても良いのよ?』と感想を送った。そしたら、『書いてくれて良いのよ?』という旨の返信を頂いたので、………やっちゃったぜ。
今回のお話は、当初の予定になかった。完全にノリで書いた話である。………なんて酷い最終回なんだ。
そして、改めて皆さんに感謝を。
評価やお気に入り数の増加でやる気が出て、感想を楽しみに執筆しました。推薦文で『本当に楽しんでくれている人がいるんだ』と実感して救われ、評価の際のメッセージでモチベーションアップ!
そして、誤字報告をしてくれた方!とても助かりました!………何か称賛を得られる訳でもないのに、誤字を見つけて報告してくれて、本当にありがとうございます!陰ながらのサポート、格好良かった!
皆さん、今までありがとうございました!
これから忙しくなって、執筆する時間もどんどん少なくなるけれども!……暇があれば少しずつ書くつもりです。この作品の別の時系列か、もしくは世界線Xのお話を。
改めて、また宜しくお願いしますっ!
10/25 設定資料集に加筆・修正をしました。