結城玲奈は勇者である~友奈ガチ勢の日常~   作:“人”

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感想・評価・お気に入り登録、誠にありがとうございます!思っていたよりも早く投稿!

……さて。今回の前書きは少し長いです。
あらすじを追記し、改めて外伝を読み直し、ふと『あれ?これ友奈ガチ勢の方と雰囲気違い過ぎない?』と疑問に思いました。……バッドエンドが確定しているので、友奈ガチ勢のファンの方々が楽しめない可能性を懸念したわけです。『多くの人が楽しんでくれる』ことが、モチベーションに繋がるタチなので。

そこで、活動報告にてアンケートを行っております。現時点で回答してくれた方は2名。今のところはこのまま投稿を進めますが、アンケートの結果次第では別作品として上げ直す……かもしれない。
回答してくれたお二方、誠にありがとうございました!


そして、今回のお話は……妄想を注ぎ込んだせいで、ツッコミどころ満載です。………だって、俺が通ってた中学、虐めも大きなトラブルもなかったんだもの。そこはもう、仕方ない。
何度も繰り返しますが、この外伝は友奈ガチ勢よりもオリジナル設定過多です。お忘れなく。


ところで、今月はぐんちゃん祭り。大赦ポイント増加の対象にプリクラぐんちゃんとハロウィンぐんちゃんが含まれ、大赦ポイントの景品としてお正月ぐんちゃんと一周年ぐんちゃんがいる!これはもう、周回するしかない!(既にお正月ぐんちゃんを交換済み)
……今までのイベントSR、もっと景品に増やしてくれないかなぁ。お正月ぐんちゃんのアビリティを20にしたい……。







西暦2017年 5月 “人を憎む”

神崎翼は美少女———の見た目をした、男子である。

少しだけ青みがかった長い黒髪に、透き通る瞳。肌は白く、全体的に華奢な体躯。顔は中性的というよりも『クールな美少女』といった相貌。声も綺麗なアルトボイスで、彼を知らない第三者が見れば『ややボーイッシュな格好の美少女』なのだが、完全に男である。

 

———だから、昔は苦労した。

 

幼稚園に通う頃は迷子になる度にデパートなどの放送で名前に『ちゃん』付けされ、小学生の時は常日頃から『女男』と呼ばれてからかわれた。その整った容姿や高い子供服を着ていた事からどこかの社長令嬢とでも思われたのか、小学校を卒業するまでに3回も誘拐され、命の危機に瀕している。中学生になってからは『男子に』4回も告白され、頭の悪そうな男子高校生に3回もナンパされるという事件も発生した。

 

———しかし、彼にとって幸福だったのは、彼自身が自らの容姿を気に入っていたという事だ。

 

物心ついた時には亡くなっていた母と瓜二つの容姿。愛情の代わりに、彼はその容姿を母親からもらっていた。見た目も悪くない———どころか、トップクラスの美少女と言って差し支えないレベルだ。見た目はともかく、身体機能に何か障害があるわけでもない。今まで散々からかわれた事を差し引いても、お釣りがくるレベルの母からの贈り物だと彼は考えていた。

 

だから、『人を好きになるきっかけが容姿である』事を、彼は悪だと思っていない。彼にとって悪いのは『容姿だけを好きになる』事であり、相手の内面を蔑ろにする事だった。

 

———きっかけは何でもいい。『容姿に一目惚れした』でも、『優しくしてくれた』でも、『頑張る姿が格好良かった』でも。そこから相手を深く知り、内面も好きになっていくのであればそれが本当の愛だと彼は信じている。

 

神崎翼はある意味ナルシストだ。容姿も運動も勉強も、自分は優れていると思っているし、事実優れている。だからこそ、どのような分野であれ『自分よりも優れている』と判断した相手には敬意を払うし、大切にする。

……だから、自分よりも可愛い女の子が暴力を受けている現状を、彼は絶対に許容できなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……それで、停学になってしまった、と?」

 

「うん。……ごめんね?」

 

「謝るのは私に、ではありません。お父様に謝りなさい」

 

 

午後9時。

翼は自宅のリビングで説教を受けていた。説教をするのは翼の『義理の姉』兼『神崎家のメイド』、神崎レナ14歳である。

まるで金を細く削って作ったかのような繊細な長い金髪に、雪を欺くきめ細かい肌。美しさと凛々しさを併せ持つ細面。14歳にしては大人びたスタイルと落ち着いた精神を持つ才色兼備の美少女メイド。それが神崎レナである。

 

 

———日本人でないのは一目瞭然。何を隠そうこのメイド、両親不明の元捨て子である。しかし捨てられてすぐに翼の父親に拾われ、なぜか娘としてではなく『メイド』として育てられた、なんか無駄に属性を盛った背景を持つ少女だった。

………メイドとして育てた理由が単なる『父親の趣味』である事を、翼もレナも知らない。

 

 

「しかし、叱ってばかりではいけません。私は最高峰のメイドですから、『よくやった』と褒めてあげます。よしよし」

 

そう言って擬音を実際に口に出しながら翼の頭を撫でる金髪白人お姉さん。翼もこのスキンシップは嫌いではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

———時は8時間ほど前に遡る。

 

昼休み、翼は目を付け……もとい、気に掛けていた少女がクラスの女子たちに連れ出されるのを目撃した。当然、翼は気になる。そしてこっそりとついて行き、………途中で道に迷いながら行き着く場所は校舎裏。

 

———本来人気のない場所であるというのに、追っていた女子達以外にも多くの生徒がいる事に訝しむ。

 

その時点で嫌な予感はしていたが、目にした光景は彼の想像をはるかに超えていた。

 

 

———空間そのものが狂っていた。

 

 

校舎裏に集まり、スマホを取り出して一心不乱に何かを撮影をする生徒達。彼らはそれしか能のない機械のように、写真や動画をスマホに記録し続けている。まるで何かをイベントを撮影しているようにも見える彼らの顔は、嗜虐的に歪んでいた。

 

 

「普通のはもう意味ないみたいなので、今度は熱いのいきまーす」

 

「あああ゛あ゛あアァアあアぁぁぁーーッ⁉︎」

 

 

間延びした呑気な掛け声の後に、喉が枯れるのではないかと思わせるほどの悲痛な絶叫が響く。もはやそれは悲鳴というよりも、壊れたスピーカーから出る高い雑音に近い。

 

「どけッ‼︎」

 

その絶叫が聞こえた直後に、翼はギャラリーに突っ込んでいた。撮影に夢中の彼らはよろめき、慌てたように道を空け———翼の目に、信じられない光景が映った。

まず、バットやシャベルなどを持った4人の女子生徒。翼が気にしていた少女を連れ出した女子生徒達だ。

 

———そしてその足元には、気に掛けていた少女が漏らしながらボコボコにされて倒れていた。

 

 

「ッ‼︎」

 

翼は迷わなかった。———生まれて初めて、彼は人に殺意を抱いた。

足元に転がっていた石を躊躇いなく女子生徒に投げつけ、そのまま顔面に命中。「んがっ」という呻き声と共に女子生徒が地面に倒れこむ。その光景に周囲が唖然とする中、翼は倒れた女子生徒の持っていたシャベルを奪い、バットを持っている女子生徒の脚に思い切り叩きつけた。———その時彼が聞いたのは、打ち付けた鈍い音と、「ジュウゥ」という焼ける音。

 

「ぎゃああ゛あ゛あ゛あああぁあぁぁぁあ⁉︎」

 

その熱にもう一人の女子生徒は耐えられず、バットを放り投げて悲鳴を上げる。———翼は知らない事だが、シャベルは焼却炉で熱せられた直後だった。

そこでようやく事態を認識したギャラリーが、我先に悲鳴を上げながら蜘蛛を散らすように逃げ惑う。……彼らはまだ中学生。集団でかかれば容易く翼を拘束できるというのに、彼らの頭には突如発生した危険な暴力から逃げることしか頭になかった。

 

「このぉ‼︎」

 

残り2人の女子生徒が、バットを持って襲い掛かってくる。……そもそもマトモにバットを振った事などないのか、それとも怯えているのか。どちらかは定かではないが、2人の動きは鈍く、竹刀のようにバットを振り上げたせいで胴体がガラ空きだった。

 

「死ねよっ‼︎」

 

普段使わない汚い言葉と共に、シャベルで1人の腹を打ち、もう1人はバットを避けた後に顎を殴りつけた。「ビキッ」と嫌な音が鳴り、殴られた女子生徒が転倒する。

その暴力行為がもたらした結果を確認せず、彼は倒れている少女へ急いで駆けつけた。………ギャラリーは全員逃げ出したのか、翼以外に立っている生徒は周囲にはいない。

 

 

「大丈夫か⁉︎」

 

「……ぁ…」

 

『大丈夫じゃないだろ⁉︎』と心の中で自分に突っ込みつつ、翼は少女の容体を確認し———吐き気を催した。

 

(最悪、だ………警察は何をしてんだ⁉︎)

 

身体の至る所に巻いてある包帯には血が滲み、左腕はあらぬ方向に曲がっている。———所詮は翼の推測でしかないが、折れた骨が皮膚を突き破って出てしまっているように見えた。

———そして、大腿部にできた、真っ赤な火傷の痕。これはすぐに冷やさなければならない。

 

(……これ、無理だ。とても1人じゃ対応できない)

 

神崎翼は温室育ちである。今までトラブルになんて大して巻き込まれはしなかったし、同年代の女子に暴力を振るったのも今日が初めてだ。暴力行為に躊躇がなかったのは(この言い方が正しいのかは別として)一目惚れした少女がリンチされていたからである。決して、喧嘩慣れしているわけでは無いのだ。この状況で何をすべきか、彼は分からなくなっている。

 

———故に、自分よりも頼れる大人の力を借りる事にした。

 

 

「もしもし、お父さん?今大丈夫?助けて欲しいんだけどっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事情を話した翼が父親から受けた指示は、『できる限りの応急処置をしろ』だった。火傷についても尋ねてみたが、『赤く腫れ上がっているレベル』ならば深刻な障害が残る事は考え難いらしい。それでも流水でしばらく冷やし、決して濡れタオルなどを押し付けるような処置はするなと厳命された。

———翼の父は、30分で駆けつけると言った。だから、それまでにどれだけのことができるかが勝負。ここでの翼の頑張りで、少女の怪我の回復に影響すると言っても過言ではない。

 

「……立て……ないか。しょうがない」

 

倒れている少女の膝裏と背中に手を回し、抱き抱える。所謂『お姫様抱っこ』だが、彼女は抵抗どころか反応すらしなかった。

 

———虚ろな瞳のまま、苦しげに喘ぐ姿が痛々しかった。

 

 

「……く、そ……」

 

抱き抱えてみると、思っていた以上に軽かった。それは火事場の馬鹿力で筋力が上がっているわけではなく、少女の体重が異常に軽いが故だろう。普段腕立て程度しか筋トレをしていない彼が持ち上げられたのがその証拠だ。………見た目が軽く、実際に重いのが健康の証。その逆がなんらかの病気を抱えている可能性が高いという噂を思い出し、翼は舌打ちする。

 

 

———少女の事で頭がいっぱいで、彼は周囲の事など全く目に入っていなかった。

 

 

 

 

 

 

「ちょっと沁みるよ?……我慢してくれ」

 

まずは校舎裏から少し離れた屋外の水道で、彼女の火傷を冷やす事にした。———少女の体に全く力が入っていないため、抱きかかえたまま。

 

「……んっ」

 

水を流すと、少しだけ呻き声を上げるが、それだけだ。あとはされるがまま。大腿部、より正確には腰の下の側面が腫れているため、水を患部に当てようとするとどう頑張ってもパンツが丸見えなのだが………それを気にする様子もない。

 

(……この学校、どうなってんだよ)

 

明らかに犯罪として扱われるレベルの暴行を平気で行う女子生徒と、それを楽しげに撮影するギャラリー。ここまで大事だと、学校側も事態を認識していない訳がない。明らかに黙認しているように思える。……そして、その虐めに対し抵抗する意思を見せない少女。あるいは、その意思を持てないほどに彼女は壊されてしまっているのか。

 

———今だって、少女の火傷を冷やす行為に注目する視線は数多くあれど、手伝ってくれる気配はない。多くの生徒が屋外にいる昼休みであるにも関わらず、だ。

 

(……結局、火傷の対応で手一杯か)

 

一度、保健室から救急箱を拝借してできる限りの手当てをする事も考えたが………翼は少女を置き去りにはできなかった。

火傷の冷却を一刻も早くやりたかったという理由もある。だがそれ以上に、置き去りにした少女がどんな目に遭わされるかが不安だった。『隙さえあれば彼女に暴力を振るうのではないか』と疑うくらいに、彼はこの学校に対して不信感を抱いていたのだ。

 

 

(……手当てする前に、傷口って洗わなきゃいけないんだっけ?)

 

20分以上火傷した部位に水を当てていたところで、ふとそう思った。

気が動転して頭がそこまで回らなかったが、傷口の汚れを取り除く事も大切だ。そこから細菌が入れば、傷口の化膿や感染症に繋がる恐れもある。

 

「……洗うぞ?」

 

相変わらず反応がない事を承諾と解釈。濡らしてしまう事を懸念して翼は少女の包帯を取り———目を見開く。

……だが、それだけ。既に少女が酷い目に遭っている事は分かりきっている。だから、包帯の下に化膿した古い傷が隠れていても、驚きは最小限で済んだ。

 

取り敢えず砂のついた擦り傷を洗い、包帯の下に隠れていた傷の膿も洗い流す。……そして、彼ができたのはここまでだった。

突如震えるポケットの中のスマートフォン。父親からのメッセージで、内容は『駐車場に着いた』の一言。一刻も早く病院へ少女を連れて行きたかった翼は、返事を送る時間を惜しむ。急いで少女を抱きかかえ、学校の駐車場へと向かった。

 

———昼休みが終わって授業時間に突入していた事に、彼は気づかなかった。

 





神崎翼
ぐんちゃんの事で頭がいっぱいな少年。なぜ教員が駆けつけて来ないのかを全く疑問に思っていない。
筋力は男子にしては低い方だが、俊敏性があるため足は速い。腕は細く、体重の軽いぐんちゃんを抱きかかえる事はできても保健室まで抱えて歩く事は出来なかった。


神崎レナ
自称『完璧なメイド』。『メイドとして育てられた』といっても、正式な教育を受けているわけではなく、翼の父が勝手にメイド扱いして家事をさせているだけである。戸籍上では翼の父の養子。ちなみに本人は凄くノリノリであり、娘扱いではなく家政婦扱いされている現状に疑問も不満も抱いていない。頭の中は翼君の事でいっぱいな金髪美少女メイド(ロールプレイング)。
………れな………義理の姉………うっ、頭が……。



郡千景
酷い虐めを受けたせいで大変な事になっている。周囲の認識を閉ざしているせいで翼君に助けられた事にも全く気づいていない。翼君が幸せにしたい娘。
……救いは、顔が無傷である事だけである。投稿前はもっと酷い描写があったが、吐き気を催したため多少マイルドにした。


翼の父
正体不明の人。息子のためなら何をしても良いと本気で思っている自称屑野郎。翼君から連絡を受ければ、たとえ仕事をしていても寝ていてもトイレでゆっくり用を足していても全部投げ出して助けに来る。なぜか金持ち。
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