結城玲奈は勇者である~友奈ガチ勢の日常~   作:“人”

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サブタイの通り、時系列が途中で一気に飛びます。

………今回、閲覧注意。前半がアレなので、もしかしたら運営に警告されてR18に切り替えるかも、しれない。
このお話はフィクションです。現実とは一切の関係がありません。そしてまたオリキャラが増えることをここに明記しておく。


あと、ツイッター始めました。まだ不慣れで操作方法がよく分からないけれど、そのうちカスタムキャストで作った翼君とかを載せるかもしれない。


西暦2017年 9月 ~ 西暦2018年 4月 “日常の終焉”

「来たぞ」

 

ノックをして、その返事を聞かないままに一言声を掛けて少年は病室に入る。———どうせ、見舞客は彼以外にいない。返事をする者がいないのだから、返事を待つのは不毛な事だった。

 

「う、……あ………」

 

「起きてたのか。……おいコラ泣くな。見捨てないから」

 

少年は、ベッドから動けない少女にそっと歩み寄る。

———入院しているのは、外国人の少女だった。

 

輝く銀色の髪に、サファイアのような青い瞳。肌は白く、全体的に華奢な体躯の美少女。その彼女が、まるで親から引き離される幼子のような顔で少年を見つめる。それを見る度に、少年———赤坂悠斗(ゆうと)の心が軋むのだ。

 

———どうしてこんな事に、という問いが何度も胸中に浮かんでは消える。

 

「今日はアリサの好きなクッキー、持ってきたぞ。好きだろ、これ」

 

スーパーの袋から出したのは、手頃な価格で購入できるバタークッキー。以前、彼女———新村アリサが好んで購入していたものだ。

 

「あ、あー……」

 

「ほら」

 

まるで親鳥が雛に餌付けをするように、赤坂悠斗はクッキーを新村アリサの口元まで運ぶ。……以前のように、彼女は自力で物を食べることすらできない。何をするにも、彼の手が無くてはならないのだ。

 

 

———赤坂悠斗と新村アリサが出会ったのは、三年前。悠斗が小学6年生、アリサが小学5年生の時だった。

 

出会いのきっかけは偶然。偶然、小学校へ行く道のりが分からずに困っていたアリサを悠斗が小学校まで送り届けた。ただそれだけの話だ。

だが、小学生の子供が(一歳とはいえ)年上の『お兄ちゃん』に懐くのは、それだけで十分だった。引っ越して来たばかりで友達もいなかった彼女は、必然的に悠斗について回るようになる。やがてアリサが、『将来は悠斗さんのお嫁さんになります』と言い出すのにそう時間は掛からなかった。

 

 

『私、日本人じゃないみたいなんです。今のお父さんとお母さんは義理の両親で………私、ハーフですらないみたいなんですよ』

 

そう言い出したのは、悠斗が小学校を卒業する直前だったか。悠斗の記憶が正しければ、悠斗は『なんでそんな話をするんだ?』と問いかけ、それに対してアリサは『将来の旦那さんに隠し事はできないでしょう?』と答えた筈だ。

 

悠斗が小学校を卒業しても、アリサとの交友は続いた。そもそもの話、悠斗には友人と呼べる者があまりいない。自分に懐いてくる年下の女の子と同じ時間を過ごすのを、彼は純粋に楽しんでいた。

 

———そしてアリサが中学に入学した直後に、事件は起こる。

 

新村一家心中事件。それは、アリサの義理の父親が行った、毒薬を用いた心中未遂。一酸化炭素と同じように無味無臭、そして強い毒性を持つその毒ガスは、真夜中に新村家の部屋中に撒き散らされ、アリサの義理の両親の命を奪い、アリサの脳を破壊した。

司法解剖の結果、新村夫妻は麻薬中毒に陥っており、金に困った末の一家心中であると結論づけられた。調べが進む内に、アリサに対して行われていた虐待の痕跡や、アリサを撮影した児童ポルノのビデオなどが見つかる。要するに、引き取った外国人の少女を無理矢理辱め、金稼ぎに利用していたのだ。また、アリサの身体からも薬物の反応が検出されていた。

 

———それを知った悠斗は、訳の分からない疑問に支配された。

 

見る限り、仲の良い家族だった。虐待されていた事も、そればかりか両親が薬物に手を染めていた事も全く信じられない。そして何より、アリサはそんな素振りを一切見せなかった。何かの間違いだと、そう思っていたのだ。………入院中、アリサの腕に付いた大量の注射針の痕を見るまでは。

 

仲の良い家族に見えていたのは、世間にバレるのを防ぐための演技。おそらくアリサは、助けを求めたくとも求められないほどに追い詰められていたのだ。———幼少期に虐待されて育つと、親には逆らえなくなる。そうなるように精神構造が歪んでしまう。

 

だから、悠斗が気付くべきだった。義理の両親以外で最も長くアリサと共にいたのは、間違いなく悠斗なのだから。

 

———だから、赤坂悠斗は新村アリサを絶対に見捨てない。

 

 

「ほら、口が汚れてるぞ」

 

「んー……」

 

手持ちのナフキンで彼女の口元を丁寧に拭く様子は、まるで小さな子供の面倒を見る父親のようだ。

———そして、それで良いと悠斗は思う。

 

親に恵まれなかった分、彼女の面倒を見るのは彼の役目だ。それに、脳が損傷して会話も碌にできなくなった彼女の見舞いに来るのは悠斗以外にいないのだ。たとえどんな事になろうとも、一生彼女の世話をする事を悠斗は決意していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ハッ⁉︎」

 

赤髪の残念イケメン男子はしばらく床で悶えていたが、翼と千景の冷たい眼差しに気づき、慌てて立ち上がる。どうやら初対面の人間にお見せしてはならない神経くらいは持ち合わせているらしい。……既に手遅れだが。

 

「これはこれは、初めまして。わたくし、星宮和希と申します。どうぞ宜しくお願いします、可愛らしいお嬢様方…」

 

「私の前で口説くな変態ッ‼︎」

 

「ありがとうございますッ!」

 

やけに紳士的な挨拶をしたかと思えば再び綾音に回し蹴りされ、喜びながら倒れる変態。———明らかに翼の事を女子と認識しているが、翼本人を含めて誰もそれを指摘しない。あるいは変態2人のコントに空気を支配され、突っ込みすらできなくなったと言うべきか。

 

「…………何これ?」

 

「ああ、大丈夫。いつもの事だから。……天童綾音ちゃんと星宮和希君。一応これでも、定期テストのトップ2。見てわかると思うけど、多分付き合ってる」

 

「付き合ってるって……これがいわゆるSMプレイか」

 

ここにやってくる前はどんな中学校かと身構えていたが………なんて事はない。変態が通う中学だった、ただそれだけの話だ。

 

「……もうホームルームが始まる時間が過ぎているけど……先生が来ないわね」

 

ポツリと千景が呟く。綾音と和希の茶番が繰り広げられている間に、ホームルームの時間を過ぎていた。

通常、転校生はまず初めに職員室に呼ばれるのだが……どういうわけか、翼と千景は教室に待っているように伝えられていた。

 

「……この学校、テキトーだからね。先生が時間守る方が珍しいよ」

 

げんなりした様子で雷姫が暴露する。

 

「それって学校としてどうなんだ……?」

 

破綻しているのは学校のシステムだけではないらしい。校則が緩いのはありがたいが、教員が時間を守らないのはいかがなものか。

———結局、先生が来てホームルームができたのは、それから15分後の事だった。

 

 

 

 

 

 

………そして、時はあっと言う間に過ぎていく。

 

前の中学のように虐めや嫌がらせをされる事もなく、千景も翼も穏やかな日常を過ごした。授業時間は50分だが、教員の都合で多少変化する。しかしこの中学の生徒達は、たとえ教員側に不手際があろうとも文句一つなく授業を受け、課題も忘れずに提出した。身なりや性癖はともかく、勉学に関しては学力・態度ともに超一流の学校であると翼が実感するのにそう時間は掛からなかった。

 

少人数であるためか、生徒同士の距離は近い。授業がない日も休日に来る生徒は珍しくなかった。クリスマスの日には(冬休みであるというのに)わざわざ学校に集まってパーティを開き、プレゼントを交換した。流石に正月に登校した生徒はいなかったが、バレンタインデーには女子が堂々とチョコレートを贈ったりもしたし、ホワイトデーにはそのお返しとして男子が菓子を贈ったりもした。

 

———天童綾音が贈った手作りチョコのお返しとして、星宮和希が全身に水飴を塗りたくって『プレゼントはわたくしです』などと宣った挙句に回し蹴りされたのは別の話だ。

 

千景も翼にチョコレートを贈り、翼はホワイトデーのお返しにキャンディを購入した(クッキー、マシュマロ、キャンディを贈ることで何を意味するのか、この時彼は知らなかった)。

 

そして、あっという間に4月になり———事件は起こった。

 

 

 

 

 

 

 

———西暦2018年、4月。

その日は、レナが通う事になる高校の入学式だった。

 

改めて言うまでもない事だが、神崎レナは優等生である。勉学でも運動でも常に学年のトップに位置し、高知に転校してきて初めての試験から卒業に至る試験における順位は全て一位。体育祭では400メートルリレーをはじめとする主要な競技の選手に抜擢された。

それに加え、金髪青目の目立つ美少女だ。告白してくる男子は後を絶たなかった。

 

———当然ながら、告白してきた男子は(女子の中でも特に人気のあった男子含め)全員玉砕。レナは無事に『決して手の届かぬ高嶺の花』の地位を得た。

 

そんな彼女が受験したのは、四国で最も偏差値の高い私立高校だ。高嶺の花と知りつつも、彼女を追うようにして受験した男子の多くは不合格となり、逆にレナは学費が免除される特別進学クラスで合格。新入生の首席でこそなかったものの、レナ本人にしてみれば満足の結果だった。

 

だから、それほどの優等生っぷりを発揮する彼女が入学式を抜け出すなど、余程の事がなければあり得ないことだ。

 

 

 

「翼さーんッ‼︎どこですかーッ⁉︎」

 

息を切らしながら、レナはただひたすらに駆ける。普段翼と千景が乗っているバスが通るルート、以前通っていた中学校の通学路、そして人気の無い路地裏に至るまで。———しかし、どこを探しても見つからない。

 

———工藤雷姫から翼と千景が学校に来ていない旨のメッセージが届いたのは、2時間も前のことだ。入学式が始まる直前にスマホの電源を切ろうとした矢先にメッセージに気づき、彼女は慌てて飛び出してきた。今頃教員が探し回っているかもしれないが、今のレナにとってはどうでも良い事だ。

 

2時間。それだけあれば、何が起きてもおかしくない。

 

 

(どうして、今になってッ⁉︎)

 

既に義理の父———鷹雄も捜索してくれているはずだが、翼が見つかったという連絡はない。翼のスマホにはGPS機能が付いているが、電源が切れているのか場所の特定は不可能。

 

考えられるのは誘拐。だとすれば、起こり得る可能性は二つ。

 

(一つは、翼さん目当てで口封じのために千景さんも巻き添えで誘拐された可能性。……だとすると、犯人は皆目見当もつきません。だったら、虱潰しに探すしかない)

 

(もう一つの可能性は、怨恨でしょう。……千景さんを虐めていた女子を翼さんが懲らしめた結果、消えない火傷の痕が残ったという話ですから。それならば、千景さんもターゲット。千景さんとも連絡がつかない事にも説明がつきます)

 

虱潰しに探すのは効率の面から考えてリスキーだ。……であれば、二つ目の可能性に賭け、翼に懲らしめられたいじめっ子の女子の関係者に当たるのが最も有効であると判断。レナは即座に鷹雄に連絡を取った。

 

 

———この日が、日常の終わりを告げる日だった。

 

 

 




鬱展開だと筆が早い不思議。次回、本章開幕(予定)。
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