結城玲奈は勇者である~友奈ガチ勢の日常~   作:“人”

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勇者要素、今回はほとんど(というか全く)ありません。ご了承下さい。


西暦2018年 4月 “覚醒”

私は、全く分かっていませんでした。

■さんのために生きる。この事実そのものが、■にとって重荷だったというのに。

 

———でも、この生き方を変えるなんて、今更できるはずもありません。

 

だって、好きなんです。頭がおかしくなるくらいに。壊されても穢されても、■■が壊れて記憶が■■しても消えないくらいに、私の想いはあまりにも■■。

この想いを言葉にしても、■を抱き締めても、この■■はずっとずっと強くなるばかり。そしてこの衝動を発散するにはどうすればいいか分からなくて、昔と同じように世話をしたくて、頑張って我慢する。

■さんはきっと知らないでしょう。■さんと離れている状況が、私にとってどれだけ辛い事なのか。

 

———だから、私は■■を許さない。

 

私と■さん以外の全ての全てが、全部全部燃え尽きてしまえばいいのに。

 

 

(西暦20■■年 抗神者序列■■ ■■者の■■より抜粋)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「く、う、ああぁあああああッ‼︎」

 

傷が燃える。切断された腕と脚の断面も、破れた脇腹も。燃えて燃えて、やがてその青白い炎が失った組織の形を成す。

 

———それに伴い、麻痺していた痛覚が回復する。

 

 

「ぐ、うああぁあああ‼︎」

 

普通の人間ならば、とうに意識を失っているであろう激痛。———神崎レナは、それを持ち前の精神力で耐え抜く。

 

 

(……翼さん)

 

想いを強く抱く。———千切れた右脚が、傷跡一つなく再生する。

 

 

(翼さん)

 

もっと想いを強く抱く。———切断された右腕が再生する。

 

 

(翼さんッ)

 

さらに想いを強くする。———囓られた脇腹が修復される。

 

 

「翼、さああぁぁぁあんッ‼︎」

 

想いの丈を思い切り込めて、レナは叫んだ。———無傷に再生した彼女から吹き出るのは、青白い炎。純粋さと禍々しさを併せ持つその炎は、レナの身体を修復し、群がってきた白い怪物を燃やし尽くす。

 

 

 

「くふッ。あは、あはははっ!」

 

怪物の群れが一掃され、後に残るのは無傷の神崎レナただ1人。彼女はこの上ない全能感と、『何か大切な物を永久に失ってしまった』という妙な確信を感じながら、狂ったように笑った。

 

笑って、笑って、そして。

 

 

「…翼さん、どこでしょう?」

 

彼女は自分の根底に刻まれた想いに従って、歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いや、ほんとに何だこれ?建物ぶっ壊しているわりに、脆いな」

 

神崎翼は、混乱の極みにあった。

廃墟の外の地獄を生み出していた元凶たる、白い怪物。奴らは建物をあっさり薙ぎ倒し、コンクリートを噛み砕きながら、千景を抱えたままの翼に襲い掛かってきた。

 

———翼が死を覚悟したのは言うまでもない。

 

しかし、白い怪物の噛み付き攻撃は翼には一切傷をつける事が出来ず(痛くも痒くもなかった)、翼が軽く殴っただけで、白い怪物は小麦粉のような砂と化して消滅したのだ。

 

———勉強がそこそこできる神崎翼の頭脳が出した結論は一つだ。

 

(……うん、夢だな。間違いない)

 

『痛みを感じたら夢ではなく現実』という、誰が言い出したのか分からない言葉を彼は信じていない。痛みを感じる悪夢だって見た事があるし、『現実にあり得ない』と思った現象は大抵が夢なのだ。実際、家に隕石が落ちてきて腰から下がなくなってしまうような悪夢を見た事があるが、頭がおかしくなりそうなくらい痛かったし、結局夢だった。

 

(……しかし、夢だとするなら………。俺の脳は、相当に痛々しい妄想を抱えていることになるぞ?)

 

何せ、建物を破壊する怪物をワンパンだ。———中学生特有の痛々しい『俺ツエー』願望が顕在化したのだとすれば、本当に救いがない。

 

———とはいえ、好都合である事には変わりがない。

 

仮に、———本当に僅かな可能性ではあるが、仮にこれが夢ではなく現実であるとするならば、一刻も早く家族と合流しなければならない。この惨状では家族全員が無事である保証はどこにもないが、無駄に悲観する事もない。———何せ、高い確率でこれは夢なのだ。悲観するのは、これが現実であるという決定的な確信を得てからで良い。

 

 

「……さて、ここどこだ?」

 

辺りは瓦礫と化した建物ばかり。元の地形は分からないし、誘拐された時にスマホも失くしている。日常的にスマホのマップアプリに頼りきりだった彼にとって、この状況はまさしく『詰み』だ。

 

———だが、問題ない。高い確率でこれは夢。それに、自分の居場所が分からないのならば、分かるまで走り回れば良いだけのこと。

 

特に何も考えず、千景を抱えたまま、翼は走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———ただただ、走った。

 

赤坂悠斗は、襲い掛かってくる白い怪物に恐怖すら抱かなかった。

 

「邪魔だ、どけッ!」

 

彼は走りながら、右腕を振るう。———それだけで烈風が吹き荒れ、道を塞ぐ怪物の群れが一掃された。

 

(どうしてこうなるのかが、『分かる』ッ!俺は今、とんでもない現象の最中にいるッ!)

 

悠斗は、自分に与えられた力を正しく理解した。理解した上で、あくまでその力を新村アリサの元へ行く為だけに行使する。

 

———この力を使えば、何千人という人間を救う事ができるのだろうが、彼は()()()()()一切興味はない。

 

彼には、新村アリサ以外何も見えてはいない。悠斗自身は別に冷血漢という訳ではないので、余裕があれば他者を助けに行く。しかし、それによってアリサの身に危険が及ぶのであれば、彼はあっさりと他者を見捨てる。そしてそれを最善であると知っているから、後になって後悔もしない。そのような価値観に基づいて、赤坂悠斗は生きている。それを『薄情』と取るか、『優柔不断よりはマシ』と取るかは人によって感じ方が分かれるところだ。

 

やがて目当ての病院に着くと、彼は『跳躍』した。空気の性質を変化させ、見えない階段を上るかのように空中を駆け上がる。そのまま病院の外側からアリサの病室を特定し、窓を蹴破って侵入した。

 

「……よし、無事だな」

 

他の病室が襲われる中、奇跡的にアリサの病室は無事。生命維持の為に接続されている各種装置も今の所は無事だが、しかし停電によって機能を停止するのも時間の問題だ。

 

 

「……どうせダメなら、試してみる価値はあるか」

 

赤坂悠斗の美点は、よくも悪くも『即断即決』、これに尽きる。現在の状況下で最もアリサの生存確率の高い手段を、彼はリスクを承知で決定する。

 

 

(成功すればそれで良し。失敗したなら、アリサの命が終わる。……だからどうした。このまま時間を無駄にする方が余程危険だ)

 

タイムリミットは、停電で医療機器の機能が止まるその瞬間だ。故にこそ、この時ばかりは彼の決断力が唯一の『正解』だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———雷が、上る。

 

雲から落ちるのではなく、瓦礫から天に向けて雷が迸る。……その瓦礫も粉微塵に吹き飛び、姿を現すのは、少女の姿をした雷神。

 

「ああぁああああぁああ‼︎」

 

雷神と化した工藤雷姫は、全身から白い火花を散らしながら突進。………その余波だけで、周囲の怪物が薙ぎ払われる。

理性は飛んだ。知性はあるものの、そのリソースは全て敵性の排除にのみ注がれる。………すなわち、周囲の人間のことなど、全く眼中にない。

 

———では、近くにいた同じ学校の生徒達はどうなったのか?

 

通常ならば、跡形もなく吹き飛ばされていただろう。———しかしそこには、不可解な『何か』がいた。

 

 

『あまりにも仕事が多い。……我ながら、よくやるものだ』

 

 

飛んでくる瓦礫も雷撃も、決して天童綾音と星宮和希には届かない。なぜならば”復讐者”が、流れ弾を全て打ち落としているからだ。

 

———”復讐者”には彼ら2人を守る義理がない。しかし、義理がなくともそうしなければならない『理由』はある。

 

 

『……だが、所詮これが限界か。どうあっても、私は彼を救う事は出来ないらしい』

 

 

“復讐者”のすぐ側には、下半身を失ったまま倒れている星宮和希と、彼に縋り付いたまま全く動かない天童綾音。”復讐者”がいなければ、天童綾音もまた、流れ弾で星宮和希と同じ運命を辿った事だろう。———彼女自身にとっては、それこそが本望なのかもしれないが。

 

 

『うんざりするな。……仕方がない事だが』

 

“復讐者”の目の前では、工藤雷姫がバーテックスを一方的に殲滅している。周囲の被害など全く気にすることもなく、ただただがむしゃらに力を振り撒いていた。

 

———それもまた仕方がない。工藤雷姫は、そのように作られている。

 

“復讐者”は、決して工藤雷姫の援護には回らない。なぜなら、放置する事こそが『最適解』である事を知っているからだ。

 

 

『面倒だが、ここまでは良い。問題は、愚弟の行動か』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———西暦2018年、4月某日。その日、人類は天敵に遭遇した。

生物は、基本的に環境に適応し、生きていく為の武器を持っている。例えば肉食獣の爪や牙。例えば、草食動物の強靭な脚。昆虫の保護色や、トカゲの尻尾なども、生きていく為の武器だろう。

 

———そして人類の武器は、その頭脳と知恵。人間はあらゆる物事を理解し、道具を作り、使いこなす為の頭脳を武器として持ち、またその知恵を後の世代に引き継がせる事で繁栄してきた。ゆえにこそ、これまでは天敵らしい天敵など、人類に存在しなかったのだ。なぜなら、どんな猛獣でも、その知恵を使えば対策できてしまうのだから。

 

———人類に天敵がいるとすれば、それは知恵も頭脳も通じない存在に他ならない。

 

その理屈で言えば、バーテックスはまさしく人類の天敵だった。なにせ、どんな兵器も通じず、交渉も不可能。ただただ一方的に人が食われる様は、腹を空かせた亀が、小魚を食べていく光景に近い。

 

 

———他の世界からやってきた神々は、何もしない。

彼らは郡千景を救うために、世界を定義するだけだ。例えば、『大勢の人間に愛される世界』。例えば、『父親から愛される世界』。そうやって世界を作った後は、ただ静観するだけ。

 

———そしてここは、『バーテックスが襲来しない世界』。もしも天の神が少しだけ優しければ、或いは力が弱ければ永久にバーテックスは現れなかったのだろうが、現実は甘くない。数年単位で遅れたとはいえ、結果としてバーテックスは襲来し、地獄を作り出している。

 

———だがその遅れが、本来の世界との差異を作り出す。

 

その最も代表的なものが、勇者以外の『天の神』に抗える者の存在。バーテックスが襲来したその日、少なくとも()()()()()の人間が『異能』とも言うべき力に目覚め———そのほとんどがバーテックスに食われ、命を落とした。

 

生き残ったのは、およそ千人。そのうち、人類を脅かす災禍たる『バーテックス』と戦えると判断された異能者は、30人にも満たない。その30人の異能者は後に『抗神者』と呼ばれ、不安定ながらも戦力としてバーテックスとの戦いに駆り出される事になる。

 

しかし、バーテックスと戦う事ができる人員が増えたからといって、人類の生存が容易になったわけではない。———常に悲劇と絶望が渦巻くこの世界だからこそ、”復讐者”たる()()は存在するのだから。

 

 

 

 

———これは、抗う者達の物語。

 

 

 

 

 




ようやく本筋に突入!



………書き始めた当初は、この時期には終盤に突入している予定だった。でも現実は無情。思っていたより忙しかったり、なんかやる気出なかったり、書く体力がなかったりでこんなに時間がかかってしまったのです。(言い訳)


でもまだ大丈夫。『楽しんでくれる人がいる』と実感できている限り、書けるっ!


というわけなので、楽しんでくれる方はこれからもお付き合い頂けると幸いです。
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