ガンプラ。
それは人々にとって玩具であり、道具であり、友であり、可能性であり、力であり、自由である。
ことガンプラ文化の栄えた現代において、ガンプラは人々の娯楽になくてはならない存在となっている。
そして今もまた。
ガンプラの魅力に取り憑かれた少年が1人………。
それを見たのは何気ない争いからだった。
「ちゃんねるしゅーせい!ばんぐみしゅーせい!これやーだぁー!」
「おおぐいばんぐみー!りょうりとくばんー!おなかすいたーぁー!」
「お前らうるせえ!?」
自分の見たい番組を求めてリモコンを奪い合う双子、紅葉と葵。
紅葉はこの頃再放送を開始した『レッド◯ン』という番組に。
葵は大食い、また料理の特番。
まだ4歳のくせして大量の昼飯をがっついた後にまだ料理番組なんて見るか。
しかもお腹空いたーまで言いやがって。
あと紅葉。
赤いあいつの番組は正直子供には早すぎるとお兄ちゃん思うんだ。
「赤いあいつ!赤いあいつ」
「食べるぅ!食べるぅのー」
「あーうるせー適当に番組変えるか」
「「やー!」」
これ以上騒がれても面倒だ。
双子の手からリモコンを奪ってチャンネルを変えていく。
2人が背中からポカポカ叩いてくるのも知らんぷりしてると、ある番組に行き着いた。
ガンダムのプラモデルを動かしてガンスラプラ同士で戦い合う番組だった。
既存のガンプラをベースに所々アレンジしていたりオリジナルの武器を手に互いのガンプラが壊れようともしのぎを削って戦い合う光景に、俺も双子もいつのまにか身じろぎすることなく惹き込まれていた。
「おお」「「わぁ」」
MCにビルドストライク、エクシアダークマターと紹介されたガンプラ同士が熱くぶつかり合う死闘。
火花が散り、粒子が吹き荒れ、閃光が飛び交う。
ビルドストライクはエクシアダークマターに押されるものの、驚異的な粘り強さを見せて徐々に互角へ押し返していく。
ガンプラを操縦する2人は……いや、3人はガンプラがいくら傷付こうとも戦いを止めるはない。
「頑張れ」
俺を含めた3人のうち、誰がその言葉を言ったのだろう。
紅葉かもしれない、葵だったかも、それとも俺?
「そこだ!撃て!」「頑張れ!」「いけー!」
もしかしたら、俺たち3人だったかも。
俺たちは全員が手を握り、激闘の二機を応援していた。
「あっ」
「終わった……」
戦いは終わった。
ビルドストライクの輝く拳がエクシアダークマターを殴り飛ばしたことが決定打となって。
「ガンプラ、か」
最初はぬるいごっこ遊びと思っていた。
殺し殺される戦いとは対極にあるお人形遊びとバカにして、自分の過去と比べ随分下に見て。
だというのに、一対一という状況下で敵の攻撃を避けきれず被弾していく姿を見るたびに、いつのまにか俺ならと頭の中で軌道を描いていた。
最初こそ下らない児戯と軽んじていたガンプラバトルを、見る側ではなく直に戦いたいと考えていたんだ。
「ガンプラ。これがガンプラバトル」
手のひらを思わず握りしめる。
俺の中の本能が、このままではいられないと主張している。
鼓動が、苦しくも嬉しそうに高鳴りを告げていた。
「あら。今年の世界大会もすごい盛り上がりねー」
母さんが買い物袋を手に帰ってきた。
そのビニール袋の中には見慣れぬ四角い箱も入っている。
「母さん!俺、ガンプラやりたい」
「も、紅葉も」
「葵もー!」
「一体急に何……ははーん。中継を見て間化されちゃったの。まあ分からないこともないけど」
ガサッと取り出した箱は3つ。
箱の表面にはそれぞれギャプランフライルー、ガフラン、モンテーロと書かれていた。
「今年は結構熱いみたいでねえ?ガンダムタイプとか1つもなかったから今はそれで我慢なさい……て、もう聞こえてないか」
母さんが呆れ気味に肩をすくめるが、そんな仕草に気付かないほど俺たちは買ってもらったガンプラに興奮した。
作り方を教わり、3人一列に並んで箱を両手で大事そうに抱え、共用の部屋に引っ込んで作り始める。
これが俺たち兄妹達のガンプラ作りの記念すべき1日だった。
「……ギャプラン足太え。なんだよこれアルギュロスかよ。もっとスマートな……んん?説明文じゃこれが変形時の主ブースターになるのか。いやでもこんな太いのは……あーでも変形はロマンだしなぁ」
「顔は良い。でもなんか違う。修正。腰もこんなダサいの、イヤ。排除。でも変形機能は残したい……組み立てプログラムを変えてみる。色、青はダメ。赤…赤……赤」
「うでにブレードしょーびー!あれ?とれたー!?うええええええーん葵のがんぷらこわれたぁぁーなおしてーなおしてよおおおお」
「うわバカやめろーー!?」
それから毎日ガンプラ作りに勤しんだ。
母の買い物に付き添って模型屋に行き、ショーケースのガンプラを食い入るように見つめては勝って欲しいと駄々をこねる。
俺の場合は「あんたは駄々をこねても可愛げがない」と両断され、紅葉は「あんたに我儘は似合わないわ」と、唯一成功したのは葵で。
「買ってくれないのぉ?(うるうる)」と上目遣いに言ってみれば母親だけでなく通りすがりの中年オヤジまでもがガンプラを葵に貢いでいて正にファルスだった。
年が明け、一人きりの外出令を許されるとすぐさま近所の模型屋へ。
顔見知りの店主に値切りを行うも失敗。
この頃から資金力の乏しさを実感し、
「この株は売れる」
仕方ないので前世で相棒から伝授された株をやることにした。
ところがこれ、結構奥が深く、詳細を知るために新聞を取ろうにも勘の鋭い母親から訝しげな視線を受けるので迂闊な行動は出来ない。
万事休すか、と株取引から身を引こうとした時ーーー。
「情報戦なら得意」
時折意味不明な数字を呟き出す紅葉が虚空を見つめること数時間。
精査完了の言葉と共に告げられた通り、紅葉に指示されたいくつもの株式を買い漁っていくとソレが正に大当たり。
どんどん小遣いと言う名の資金は増えて行き。
手を組んだ俺と紅葉、そして口座開設の駄々こね要員こと葵の3人で等分した金で母親に怪しまれない程度にガンプラを買っては作り買っては作りを続けた。
俺も紅葉も葵も、見えない本能に突き動かされるように。
何もかもが未完成の機体を作り続けている。
俺には1つの目標がある。
前世で、死ぬ時まで乗り続けた愛機を、今度は自分の手で再現してみせる目標が。
まあ、それも母親が最初に買ったガンプラ、ギャプラン・フライルーを一目見た時にイケるんざゃないか?って淡い期待を覚えたからなのだけど。
あれから何年も経って今もなお愛機実現の道は長く、日々が試行錯誤の繰り返しで。
たまに紅葉に「イレギュラーを排除する」と壊された時は凹むし「おいしそー!」と葵に齧られた時はショックで気絶した時もあった。
それでも、俺はあいつを作りたい。
あの機体で、また空を飛べるなら。
今度はどこまで手が伸びるだろう。
今はまだ分からない。
それでも俺は、無くした翼を広げられる日を楽しみに待ち続けるだろう。
アリーヤはギャプランフライルーベースで。
赤いあいつはガフランベースで。
蒼いあいつは遭遇する度にアセン変わるし……んんん゛ッ
※作者はガンプラ製作に関してはトーシロなのでご了承下さい。
あくまでもガンブレとかでアリーヤ再現とか妄想してニヤニヤする気持ち悪い野郎です。