掩護屋さんはハルコンネンとともに 作:瑕疵
ここでハルコンネンを使うにあたってのリスクを説明しよう。超火力で尋常じゃない強さを誇るが、それ相応の代償が必要になるのである。
まず、重さ。一目見れば分かるように、大きいし重い。その分要求されるSTR値が高く、素早さ、つまりAGIをある程度捨てなければならない。
そして、一発撃つごとにHPが4分の1減ってしまう。これがなによりも重要で大きなリスクである。恐らくハルコンネンを撃ったときの衝撃や爆風で、HPを削いでしまっているのだろう。回復アイテムはあるにはあるが、いかんせん回復速度が遅い。全快を待っている間に蜂の巣のごとく穴だらけにされてしまう。
つまりハルコンネンは、無闇矢鱈と撃ちまくってよい代物ではない。あくまで奥の手である。掩護屋のクライアントが「撃ってほしい」て頼んできたときは構わず撃つけれど。
ところ変わってGGO。その世界にある大きな酒場。BoBでは総督府と呼ばれる場所で観戦したりするが、スクワッド・ジャムは個人主催のため、この酒場が使われることになったそうだ。
酒場に入ると、既にSJを今か今かと胸を熱くさせている男たちでごった返していた。しかしまあ男性が多いものだ。ゲームの内容が内容なので女性が少ないのは当たり前であるが。いや別に、女性がいっぱいいた方がいいとかそういうような思考をしているわけではない。断じて。
混雑を避けるのと、話を聞かれないようにするために個室に入る。座席に座り、テーブルを挟んで向かいの座席にれいなが座る。話を聞かれるというのは、つまりこちらの情報を聞かれるということ。聞かれてしまうと対策されてしまう。それはいけない。
現実では、僕は196センチで、れいなは173センチ。身長差23センチだが客観的に見れば高身長の父娘である。GGOでは、僕は160センチ前後、れいなは190センチ前後と、身長的に現実とはまったく逆になってしまっている。見下されるというのはなんだか新鮮な気分である。あと、れいなのアバターだが、髪はロングで、目がタレ目。とても優しい印象を受ける。
現在の時刻は13時半。SJ参加プレイヤーの集合時刻は13時40分。待機エリアに飛ばされるのは13時50分。SJ開始が14時。あと30分したら遂に始まるのだ。実に楽しみである。
「出場チームは?」
「23チーム。1チーム上限6人だから、最大で138人が参加することになる」
れいなが聞いてきたので、それに答える。ふーん、とあごに手を当てるれいな。
「で、装備は?」
「P90、ハルコンネン、フォトンソード」
「いろいろアンバランス」
「特にフォトンソードがな。ハルコンネンはれいなに撃たせるため。そっちは?」
「地雷と
「例の新兵器は持ってきたか?」
「もちろん」
流石は工兵。伊達にSTRやDEXにステ振りしていない。
言うとれいなはストレージから水筒を取り出し、中に入っているものを胃に流す。
「……コンソメスープってお前」
「旨い」
匂いがコンソメスープ。元気の源なのだろうか。ともかくお互いの装備品を確認し、時間まで待つ。
13時50分。薄暗い上に狭い部屋に飛ばされた。ここが待機スペースか。目の前には待機時間を示すカウントダウンが為されていて、1秒毎に減ってゆく。残り10分弱で戦闘開始である。
れいなの前に、サテライト·スキャン端末が配られたことを知らせる画面があり、れいなはその画面に触れる。するとスマートフォンのような端末が現れ、れいなはそれを受け取る。二つあるメインボタンを押すと、端末の画面、または目の前に大きく地図が表示されるという仕組みで、拡大縮小はスマートフォンと同じように指で摘んだり開いたりするだけ。
10分に一回のサテライト·スキャンにより、この地図に白く光る光点が表示される。それは参加チームのリーダの位置である。灰色の点は全滅、もしくは降参したチームの最終位置である。
着替えは済んでいる。陸上自衛隊の戦闘服である迷彩服2型。消防士なのに自衛隊なのか、というツッコミは野暮である。迷彩服の上から防弾チョッキ。そして頭には迷彩柄のヘルメット。ヘルメットの周りにはより隠密性を高められるように草が付けられている。れいなも同じ服装である。
さて、装備だ。画面を操作して武装する。手元に迷彩柄のP90と、両腿の脇に予備マガジンが二本ずつ入ったポーチ。光学銃防止のための、ブローチのような防御フィールド発生装置も装備。胸ポケットにしまう。腰のベルトにフォトンソードをぶら下げ、双眼鏡を首にかける。そしてストレージからハルコンネンを取り出す。
「撃ちまくるつもりはないから、弾は取り敢えず徹甲弾入れといて……と。ほい」
「ん」
弾を装填し、ハルコンネン用予備弾が入った大きな鞄とハルコンネンをれいなに渡す。
れいなもれいなで装備が完了しているようだ。頭を飛び越す大きなバックパック。中には地雷などの罠が沢山入っているのだろう。胸の防弾チョッキにはプラズマ·グレネードが6個ぶら下がっている。いつでもすばやく取って投げられるようにするためだろう。逆に前から撃たれたら誘発して自爆する装備である。撃たれて死ぬなら自ら死んでやる、といった決意の表れであろう。ベルトには僕がぶら下げているフォトンソードと同じ位置にコンバットナイフ。黒くつや消しされておらず、ぎらぎら光りそうである。
「れいなはどこで罠を?」
「森があったら森。なかったら街。それもなかったら適当に」
「了解」
P90の装填ハンドルを操作し、弾丸を薬室に送り込む。その際の金属音が戦意を搔き立てる。
「無線はあるな?」
「言われずとも」
れいなは僕に右耳を見せる。黒色の小さな無線がしっかりと装着されていることを確認する。
「んじゃあ、待つか」
「うん」
戦闘のための準備を終え、カウントダウン終了、戦闘開始まで待つ。その間、僕とれいなは仕事でのこととか、学校でのこと、自分のこと、他人のことで談笑していた。やはり、娘と話すのは楽しいものだ。
そして、カウントダウンが残り10秒を切った。
「父さん、これに勝ったら夕食をもうちょっと豪華にしてよ」
可愛らしいお願いだったので、いいよと答えた。
娘は工作兵。