外を見ると夕焼けが広がっていた。
「そろそろ夕食の材料買ってこないといけないんだけど、何か食べたいものあるか?」
と聞いた。すると今までとは打って変わって
「ハンバーグが食べたいです!」
とテンション高く返事した。
「お、おう」
と俺は気圧された返事をした。
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「財布よし。スマホよし。鍵よし。マイバッグよし」
と一通り確認して、立ち上がったとき
「私を置いていくつもりですか?」
と後ろからXの声がした。
「ついてこないとダメなのか?」
「当然です。マスターがいつ命を狙われるかわかりませんし」
確かにXの言っていることはごもっともだ。だが普段一人で遊んだり買い物したり、集団で行動するにしても男友達とカラオケいくくらいしかない俺がいきなり金髪の少女と仲良く歩いてたら注目を浴びてしまう。もし友達に見つかりでもしたら一気に広まって学校で囃されるに決まってる。それは非常に避けたい。
「Xの言ってることはわかるんだが・・・な?いろいろ周りから変な目で見られそうだから」
「それならご安心を。消せますので」
というとともにXの体はスゥゥと消えた。
「まぁそれならいいか・・・」
独り言話す変なやつと思われるけどしょうがない。
「あんまり外で大事起こすなよ?」
ウン、とXは軽い笑顔で頷いた。
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スーパーまでは結構近い。信号は1回しか渡らないし、走れば2分でつく。
「この距離ならついてこなくてもいいんじゃないか?」
「何をいいますか!マスターとサーヴァントは常に一緒に行動するべきです!」
「はいはい。わかったわかった。でもプライベートは確保させてくれよ?」
「私は別に構いませんが?」
「俺が困るんだよ・・・」
大きくため息をついたところでスーパーの看板が見えてきた。
「スーパーつくけど、ハンバーグだけでいいんだな?」
「えぇ、お願いします」
「ほんとだな・・・?」
ウィィィィンと自動ドアが開く。中はクーラーがガンガンに効いてて少し寒い。
「おおーっ!これがスーパーマーケットってやつですか!」
「あぁ、まぁここは地域でもでかい方だけどな」
「パンが山積みになってます!美味しそうです!」
「ハンバーグと一緒にパンもよさそうだな。ちょっと買っていくか」
「私メロンパン食べたいです!すごくそそられます!」
「いや、ハンバーグと一緒にメロンパンはダメだろ・・・。あ、店員さんバケット一つください」
「マスター!カレーパンも美味しそうです!」
「いやもうパンは買ったから・・・。ほら早く行くぞ」
「えーもう少し見ておきたかったのですが・・・。仕方ないですね・・・」
「なんでこんなにテンション高いんだよ・・・」
それからはもうひどかった。
人がメニューを考えているそばで「ピザ美味しそうです!」だの「お好み焼き美味しそうです!」だの言ってくるから集中できない。
スーパーを一周することにはもう疲れが半端なく、会計を済ませて家路につくころにはマイバッグが普段より重く感じ、とにかくしんどかった。
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帰宅した俺は疲れながらもXが希望したハンバーグを完成させた。
ついでにスープも作った。
「ほら、できたぞ」
Xは目を輝かせながら
「おおーっ!すごく美味しそうです!いただきます!」
と言い、ハンバーグを口に入れた。
「ん〜〜!!美味しいです!マスターは料理が上手ですね!」
「まぁ世の中便利になったからね・・・」
Xの食事をしている様を見ていると、そういえば久しぶりに人と食事をしてるなと思った。兄弟はいないし、父は単身赴任、母は実家に帰省しているからここ最近ずっと1人で家にいた。自分のために作るのも時間の無駄だなと思って外食も多かったし、Xのためにご飯作るならやりがいがありそうだなとも思った。
「また何か食べたいものがあったら言ってな。作れそうなもんは作るから」
「ほんとですか!それならまたお願いします!・・・まぁ」
突然Xはテンションが低くなった。
「・・・まぁ?」
「言ってませんでしたっけ、サーヴァントって食事いらないんですよ」
・・・は?
あとがき
ヒロは魔術師ではないのでXは霊体化できません。
封印していた気配遮断スキルを仕方なく使ってます。EXランクって世界と一体化するレベルとかなんとか。