乃木長門は勇者である   作:月影桜

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初めまして。勇者の章とわすゆに感化されて書き始めました。

時系列はわすゆから勇者の章で書くつもりでプロット自体はすでにあります。ゆゆゆいも今はきちんと考えてはいますがこちらは未定です。

独自解釈やご都合になってしまうことがあるかもしれませんがなるべく気を付けます。

それではどうぞ。

11/21追記 修正


鷲尾須美の章
はじまり


 前から引っかかっていた事がいくつもあった。

 

 例えば【大赦】という名前。一体何から赦しを貰ったのだろうか?

 

 これは疑問ではない。半ば確信めいていて。

 

 ■■が許しを請う相手なんて相場が決まっている。

 

 きっと■に対してなのだろう。

 

 

  勇者御記298年 乃木長門記

 

 

 

***********

 

 

 

 朝4時30分、まだ皆が寝静まっているこの時間に、まさに豪邸というべき荘厳な見た目の家の一室で小さくアラームの音が鳴った。

 

 

「ふぁ......。この時間に起きるのは慣れているとはいえ、眠いのには変わりないな......」

 

 

 そんなことをぼやきながらいつも通り洗面台で顔を洗う。鏡に映るのは、黒髪で右目の右下にあるほくろが目立つ端正な顔立ちだが、周囲からもいじられる程の女顔の少年。その事実に改めて溜息をつきつつ、木刀を持って庭に出る。

 まず走りこみをして、その後木刀を持ち、型の確認をして汗を流す。これが俺——乃木長門(のぎながと)の朝の日常だ。

 

 

 シャワーを浴びたら学校の準備をする。今は6時30分。今起きても余裕で間に合うほどだ。本当は朝食の手伝いをしたいが、この家には使用人がたくさんいるためやらせてもらえない。まあ他人の仕事を奪うのもどうかと思ったから、すぐに引き下がったが弁当だけは自前だ。とはいっても俺の通っている学校は、週一で弁当持参なのだが。

 

 

 やることがなくなって珈琲を淹れて飲んでいると、時間は7時を過ぎる。飲み終わったカップを机に置き、ある部屋へ向かう。

 

 一応起きているかノックをして確認してみる......。しかしやはりというべきか反応はない。彼女はいつもこんな感じだから、もう慣れた。

 

 

「おーい、園子。朝だぞ」

 

 

 そう声をかけながら部屋に入る。女の子らしくぬいぐるみの多い部屋で、部屋の主は今もすやすや寝ている。

 声をかけるだけでは彼女は起きない。彼女の肩に手を置き、揺する。こうすることで、彼女は寝起きは悪くないので起きるのだ。

 

 

「なっくんがサンチョになっちゃった.....。ん? ......何だ夢かぁ~、ふぁ~」

 

 

 意味の分からないことを寝言で呟きつつ、大きくあくびを欠きながら起きた少女は、俺の幼馴染でもあり今は家族でもある乃木園子だ。

 何年も一緒にいるが、今でも時々意味の分からない発言をする彼女の自由さには、むしろ尊敬の念を抱くまである。

 

 

「起きたんなら顔洗えよー、朝食ももう出来てるみたいだしな」

 

 

 俺がそう言うと、彼女は「は~い」と気の抜けた返事を返してくる。なんやかんや意外と余裕をもって学校へ登校できる。

 と言うか車を出してくれるので早く着く。俺は申し訳なくて、一人で歩いて行こうと断ろうとしたのだが、園子がどうしてもというので甘えさせてもらっている。俺は養子として乃木家に入ったから未だに庶民感覚が消えていない。

 

------------------

 

 学校へ行く道中の車内は静けさを保っている。別に園子と仲が悪いわけではない。気分次第で、たまには無言になるときがあるのだ。でも気まずくはなく、そんな無言の時間が好きだ。そんなことを考えていると俺たちが通っている神樹館小学校に着く。

 

 

 神樹館小学校はかなりのお嬢様学校で、それを聞いたときは普通の小学校にしようとしたが、園子に上目遣いで頼まれてしまっては拒否権はなくなったようなものだ。お兄ちゃんたるもの妹には甘くなってしまう。同い年だけどな!

 そんなわけで使用人の人にお礼を言いつつ教室へ向かう。

 

 

 教室に入るとまだ人は少なくがらがらだ。俺と園子は偶然にも同じクラスで席が隣だ。知らない奴と隣になるのは面倒だから助かったけど。

 

 

 彼女は自分の席に着くなり「なっくんおやすみ~」と言っていきなり寝始めた。いつものことなので放っておく。先生が来るまでこうして自分の席でどうでもいいことを考える、この時間が好きだ。ランドセルから本を取り出して読み始める。

 そうしていれば中々声をかけてくるやつはいないと思って前々からやっているがかなり効果がある。......違うな。イヤホンしてるからか。しかしその防衛網を突き破る、凛とした心地の良い声が耳朶を打った。

 

 

「おはようございます。乃木君」

 

 

 礼儀正しい挨拶をしてくれたこの娘の名前は鷲尾須美。かなりまじめな性格をしている大和撫子な女の子だ。

そして何よりも特徴的なのはクラスの中でダントツと囁かれる胸である。......肩凝りとか大変そうだ。他意はない。

 いわゆる優等生だが、ある事情で学級委員ではなく並ばせ係だ。かなり怖いけど。しかし怒った園子に比べたら何倍も優しい。そんなどうでもいいことを考えながら、イヤホンを外して挨拶を返す。

 

 

「おはようさん。鷲尾さん」

 

 

 なんか韻を踏んだみたいになったが、故意じゃない。多分、きっと。それに後々のことを考えたら、少しは砕けていったほうがいいだろう。そんなことを考えつつ彼女を見ていると、逃げるように自分の席へ行った。

 いつもこうなんだよなぁ。理由は察せるけど。おそらく鷲尾さんは、俺の他人との距離の測り方と観察するような目が苦手なのだろう。だがある事情で、それなりには親睦を深める必要があるから困っている......。ま、そんな感じなんだろう。

 

 

「zzz......。あわわっ! お母さんごめんなさい!」

 

 

 唐突に園子が飛び起きて、顔の前で両手を合わせている。俺とは逆側の園子の隣の席に座っている鷲尾さんが、呆れた顔をしている。

 

 

「あれぇ......? 家じゃない......」

 

 

 つくづくマイペースな奴だ。さっき車に乗ってきただろ。と言おうと思ったが、どうやら鷲尾さん家の須美さんが代わりに言ってくれそうなので読書に戻る。

 

 

「乃木さん、ここは教室で朝の学活前よ」

 

「えへへ......。おはよう~鷲尾さん」

 

「おはようございます」

 

 

 うちの園子がすいませんね。と心の中で呟くと、俺たちの担任である安芸先生が挨拶しながら入ってくる。

 

 

「はざーすっ! ふう......。ま、間に合った」

 

「三ノ輪銀さん。間に合っていません」

 

 

 慌てた様子で一人の少女が駆け込んできて、いつも通り安芸先生に名簿で軽く頭をたたかれる。その光景を見ていたクラス全体に笑いが広がる。この子は三ノ輪銀。底抜けに明るく、クラスの人気者であるが何故か遅刻が多い。理由は想像がつく。まあ彼女とはそれなりに話す仲ではあるが、話しているときの周りからの羨望の眼差しは勘弁してほしい。

 

 

「ミノさんは相変わらずだな~」

 

 

 三ノ輪は席に着くと、隣の席の人に事情を聴かれ、小さい声で「6年生にもなると色々あるんさー」と返していた。

 なにそのセリフかっけえな。俺遅刻したら使おう。絶対遅刻しないけど。「教科書忘れた......」教科書なら必要ないから貸すまである。

 と言うか授業めんどいから受け取ってほしい。いけない、本音が出てしまった。いや心の中だから出てはいないか。

 

 

「それじゃあ。今日日直の人」

 

「はい! 起立、礼」

 

『神樹様のおかげで今日の私たちがあります』

 

「神棚に礼」

 

 

 そうこれだ。俺がこの世界について気になっている事の一つ。あまりにも道徳教育が行き届き過ぎている。確かに神樹のおかげで世界は回ってるんだが......。

 ......俺の悪い癖だ。すぐ目に止まる現象や人間に対して懐疑的になる。鷲尾さんの合図で着席しようとしたとき、世界が止まった。ついに始まるのか......。

 あらかじめ聞かされていた俺たち4人は、あたりを見回す。

 

 

「思ったよりも早かったな」

 

「これって......」

 

「来たんだ。私たちがお役目をする時が」

 

 

 すると突如まぶしい光に包まれ、思わず目をつぶる。

 

 

 

 ***********

 

 

 

 目を開くとそこは教室ではなく、どこか神秘的で不思議な空間へと変わっていた。

 

 

「初めて見た~これが」

 

「神樹様の結界......」

 

 

 ここは鷲尾さんの言った通り神樹の結界の中で、実際に来るのは初めてだ......。

 俺たちは、ここであるお役目をしなければならない。3人が色々感想を言っているので、一応周りの警戒も兼ねてスマホを取り出す。

 

 

「私たちが勇者かぁ。興奮するぅ!」

 

「三ノ輪さん、遊びじゃないのよ」

 

「分かってるって」

 

 

 なにやら興奮している三ノ輪さんを、鷲尾さんが窘める。

 

 

「あそこ見て!」

 

 

 園子に言われた通り目をやると、大橋のところに無機質な生物がいた。これがバーテックス......。神樹を狙ってやってくる人類の敵だそうだ。

 

 

「あれが敵か~」

 

 

 そう言いながら、バーテックスを写真に収める三ノ輪。いや、君リラックスしすぎじゃないですかね。同じことを思ったのか、鷲尾さんがなにか言いたそうにしている。

 

 

「あいつが神樹様にたどり着いたとき、世界がなくなる......」

 

「ああ。分かってるって」

 

「私たちで止めないとだね!」

 

「お役目を果たしましょう」

 

 

 鷲尾さんの言葉に全員頷く。そしてアプリを起動し、祝詞を唱える。

 すると鷲尾さんは弓、三ノ輪は双斧、園子は槍と各々武器を持ち勇者装束に変身する中、園子がこちらを見て言う。

 

 

「わ~、なっくんの服かっこいいね~」

 

 

 全身黒づくめなのに? 俺が読んだラノベで確かこんな装備をしていた主人公がいたような......。違う点としては、俺は和風な感じになっている事くらいか。俺としては武器の日本刀のほうをかっこいいと言ってほしかったよ、園子さん。

 

 

「そうか? それより今は敵に集中するぞ」

 

 

 そう言うと園子は引き下がってくれた。あのままだったら、園子の装束の感想を言わされるところだった。園子は可愛いから何着ても似合うんだが、それを口にするのは年頃の男子として恥ずかしいものがある。察してくれ......。

 

 

「お~! 初めての実戦!」

 

「合同訓練はまだだったけど......」

 

「敵がご神託より早く出現してしまったから」

 

「まあなるようになるさ。当たって砕けろ。だ」

 

「砕けちゃダメだろ⁉︎」

 

「まあ、大丈夫だよね!」

 

 

 そろそろいいだろうか。見た目からは水を使うことくらいしか分からない。その為、誰かが一度様子を見るしかない。というのは建前。誰かが傷つくリスクを負い、一番に突撃しなければならないなら勿論その役目は——

 

 

「俺、だよな」

 

「え?」

 

 

 園子が聞き返してくるのをしり目に、俺は全力で跳躍する。

 

 

--------------

 

 

 なっくんが駆け出して行っちゃった......。

 

 

「って、あれ速すぎないか!?」

 

 

 ミノさんが驚いている。鷲尾さんも声には出さないけど驚いているようだった。

 

 

「ちょっと乃木君!?」

 

 

 彼が独断専行した理由はわかる。何年も一緒にいたから。きっと敵の情報の偵察、という建前で本当は私たちを出来るだけ傷つけたくないんだ。彼の不器用な優しさ、いいところでもあるけど、悪いところでもある。彼自身が傷つくリスクを頭に入れていない。彼が私に傷ついてほしくないように私も彼に傷ついてほしくない。

 

 

「なっくん私も~」

 

「じゃあアタシ三番槍!」

 

「三人とも!待ちなさい!」

 

 

 そういって結局みんなで駆け出してしまう。

 

 

 --------------

 

 

 さて、敵の前に着いたはいいものの、どうせそう簡単には近づかせてくれやしない......が俺にはそんなこと些細事だ。迷わず敵に突っ込む。どうせ水だ。当たらなきゃいい。

 すると敵がたくさんの水球を放ってくる。全て躱しきり、胴体を斬る。

 

 

「浅い......!」

 

 

 どうやらただ斬撃を入れただけでは致命傷を与えられない上に再生されてしまう。流石に一度3人のところへ撤退する。

 

 

「みんな、敵は主に水球を使ってくるけど、どうにも左右の丸いのが気になる。あくまで予想だが、水圧で攻撃してくるかもしれない。それに再生力もかなりのものだ」

 

 

 一応さっき感じたことを報告する。

 

 

「なっくん?帰ったらお説教ね~」

 

 

 怖い。園子が少し怒っている。でも結局は誰かがやらないといけないわけでと反論しても絶対勝てない。

 

 

「はい......わかりました園子様」

 

「長門は尻に敷かれてんだな」

 

「うっせ。兄たるもの妹には逆らえないんだ」

 

 

 その時一瞬園子が少し悲しい表情をした気がした。気のせいか。

 

 

「......っ!?みんな!避けろっ!」

 

 

 水鉄砲というよりウォータージェットが飛んできた。俺の声に三ノ輪と鷲尾さんは反応した。

 

 

(園子はっ!?)

 

 

「園子っ!」

 

「これ、盾になるんだった~」

 

 

 あの槍にそんなギミックがあったのか......続けて敵が水球をこっちに放ってくる。

 鷲尾さんが矢をチャージしているが、多分水球に阻まれる。最悪俺がアレを使うか若しくは三ノ輪を敵のところまで運べれば倒せるが......

 

 

「台風のすごいのみたい~」

 

「アタシ、何とかしてくる!」

 

 

 俺が言えたセリフじゃないが闇雲に突っ込んでも無駄だ。それに園子も持ちそうにない......俺はある方向へ視線を向ける。打開策を考える前にやることができたようだ。

 

 

 --------------

 

 

 みんなが敵の攻撃に攻めるに攻められず四苦八苦している。

 

 

「私がやるしかっ!」

 

 

 そう言って私は弓を構える。溜まるのが遅いっ!

 

 

「速くっ!」

 

 

 最大まで貯めた私の矢は水球4つに簡単に止められてしまった。敵はお返しとばかりにこちらに水球を飛ばしてくる。

 

 

(躱しきれないっ)

 

 

 思わず目をつぶる。が予想していた衝撃は来なかった。目を開いてみると私がちょっぴり苦手な彼の後ろ姿がある。そんなことより

 

 

(まだいくつも水球が飛んで来ている!)

 

 

 そんな私の不安を感じ取ったのか、乃木君がこちらを向いて

 

 

「心配するな。このくらいなら......」

 

 

 そう言って刀を構える。構えがすごく様になっていてまるで小さいころから刀を扱っているような感じを覚えた。水球が彼に当たりそうになった時彼の背中がぶれた気がしたと思ったら刀に付いた水を払っている。

 

 

「大丈夫だったろ?怪我もなさそうだな」

 

 

 いつものこちらの心の中まで覗いてくるような、観察する目ではなく、人を安心させるような、優しい目でこちらを見てくる。すると彼はすぐ飛び立ち乃木さんの方へ向かっていった......お礼を言えないまま―――

 

 

 今は戦闘中だ。頭を振って意識を切り替える。

 といっても私の矢ではダメージが足りない。三ノ輪さんは強力だけど近づけない。乃木君は近づけるけど決定打に欠ける。乃木さんは......どう扱っていいかわからない。

 

 

「一体どうしたら......」

 

 

 その時また敵が水球を放ってきた。考え事をしていて反応が遅れてしまった。

 

 

「危ないっ!」

 

 

 いつの間にか戻ってきていた三ノ輪さんが私を押し倒した。

 

 

「動いてないとあぶな......ぐっ!」

 

 

 三ノ輪さんは水球の攻撃を顔に直接受けてしまった。

 

 

「三ノ輪さんっ!」

 

 

 助けようとするが、水の弾力が強く、中々剥がれない。三ノ輪さんも必死にもがくがどうにもならない。

 

 

「ミノさんっ!」

 

「三ノ輪大丈夫か!」

 

 

 二人が戻ってくる。するといきなり三ノ輪さんが目を開き

 

 

 水を飲み始めた。

 

 

 --------------

 

 

 俺と園子は合流した後二人の元へ向かうとこんな状況になっていた。どうしてこうなった......

 

 

「ミノさん大丈夫~?」

 

「全部飲んだ......」

 

「神の力を得た勇者にとって造作もないのだ!......気持ち悪い......」

 

「水とはいえ敵のものを飲むとはなぁ」

 

「ミノさんすご~い!お味は?」

 

「最初はサイダーで、途中から烏龍茶に変化した......」

 

「ドリングバーかよ!」

 

 思わずツッコミを入れてしまった。子供のころみんなやるよなぁ。色々混ぜるやつ。俺も子供だけど。

 

 

「そんなことより、バーテックス!」

 

 

 どうやらこの間にも結構進んでいたようだ。一つ打開策はある。おそらく園子も思いついているだろうが水圧の攻撃をどう凌ぐか悩んでいるのだろう。

 

 

「園子、少しいいか?」

 

 

 --------------

 

 

 確かにそれなら出来るけど~......

 

 

「でもそれだとなっくんの負担が~」

 

 

 私の盾でやっと防げた水圧の攻撃を一人で請け負うなんていくら何でも彼の負担が大きすぎる。

 

 

「大丈夫。1回くらいだったら何とでもなるよ。」

 

 

 その言葉を聞いてしまった上で反対するのは彼を信じていないことと同じだ。だから私も。

 

 

「わかった~、気を付けてね~」

 

 

 彼を信じているから。そして私たちのやり取りを遠巻きにそして不思議そうに見つめている二人の元へいく。

 

 

「ぴっかーんと閃いた~!」

 

 

 彼女たちにも作戦を話す。勿論なっくんの事で大丈夫なのか?と言われたけれど、彼が大丈夫だって!と言うと引き下がった。

 

 

 4人で敵の前までいく。あの水圧の攻撃をしてもらわなければならない。すると隣から濃密な殺気が漏れてきた。

 

 

(なっくん?)

 

 

「バーテックスも殺気に気づくかなと思ったんだけど。どうやらその通りみたいだな」

 

 

 これは新しい発見だ。などとつぶやく彼の方からバーテックスの方に目を向けると確かにバーテックスはなっくんを危険と判断したらしく、こちらを向きながら攻撃の予備動作をしていた。

 

 

「じゃあ手はず通り、頼むよ園子」

 

 

 彼は刀を鞘に納め、目を瞑った。

 

 

「ミノさん、すみすけ、私たちも位置に着くよ~」

 

「え?なんか長門が刀を鞘に納めちゃってるけど大丈夫なの?」

 

「大丈夫だよ~。あれがなっくんの本気だから~」

 

 

 そう言って二人を連れてなっくんから離れる。

 そしてチャージを終わらせた敵がなっくんに向かってウォータージェットを放つ。

 なっくんは当たる直前に目を見開き。

 

 

「はぁっ!」

 

 

 すみすけが心配そうになっくんのほうを見つめているが。大丈夫。すみすけが見つめる先には無傷のなっくんが立っている。

 

 

「うっわー!すっごいなあれ!かっこいい!」

 

「え?いったい彼はどうやって......」

 

「簡単だよすみすけ~。水を斬ったんだよ~」

 

「は?」

 

 

 そう、彼は何も特別なことはしていない。ただ飛んでくる攻撃を刀で斬っただけのことだ。

 

 

「でもそんなことって......可能なの?」

 

「可能か不可能かで聞かれたら、可能だよ~。流石になっくんでも生身の身体能力じゃ無理だけどね~」

 

 

 彼の勇者システムは私たち三人のそれと比べて明らかに弱い。でも彼はそれを補えるだけ、元から強い。それを弱めとはいえ底上げしてくれるシステムが加わったら......戦闘面では私たちの中ではミノさんと同じくらいじゃないだろうか。もっとも、彼は対人戦のほうが優れているけれど。

 

 

 2発目がこっちに飛んでくるけど何とか3人で押し返すと、私とミノさんは高く跳躍して敵に突撃する。飛んでくる水球はすみすけが対処してくれている。私は槍の持ち手に掴まっているミノさんを敵に投げた。

 

 

「うぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

 ミノさんが連撃を浴びせる。そしてその勢いでミノさんが吹き飛んでいく。

 

 

「ミノさん!!!」

 

 

 そのまま地面に衝突しそうになる。

 

 

 ------------------------------

 

 

 敵の攻撃を防ぎ切った俺はあいつらの加勢をしに行こうとしたところで三ノ輪がこちらに吹っ飛んできてることに気づいた。

 

 

「たくっ。無茶をする」

 

 

 三ノ輪を抱えて受け止める。するとバーテックスの周りで花弁が舞う。

 

 

「これって......」

 

「鎮火の儀......?」

 

 

 園子がこっちに駆け寄ってきた。

 

 

「ミノさん大丈夫~?」

 

「ああ。長門が受け止めてくれたからな......なぁ長門、そろそろ降ろしてくれないか?少し恥ずかしい......」

 

「お、おう。すまん」

 

 

 三ノ輪が頬をわずかに赤く染めてそう言ってくる。慌ててすぐに三ノ輪を降ろす。よかった樹海化していて。こんなところクラスの連中が見たら、俺吊るされるまである。

 

 

「だけど、三ノ輪のおかげで撃退出来た。流石だな」

 

「やったー!」

 

 

 三ノ輪と園子がはしゃいでる中、俺たちは元の世界に戻された。

 

 

「そっか~。学校に戻るわけじゃないんだ~」

 

「まあ多少なりとも傷があるからいきなり教室に戻っても驚かれるだろうし」

 

 兎に角、みんな無事でよかった。もう自分の目の前で人が死ぬのを見るのは嫌だからな......そんなことになるくらいなら俺が―――

 

 

「なっくん~すみすけ~?」

 

「おわっ。園子か。どうした?」

 

「さっきから何回も呼んでたよ~。どうしたの~?」

 

「......良かったなと思って」

 

「そうだね~」

 

 

 園子の合図でみんな解散する。勿論俺と園子は同じ家なので一緒に帰る。

 

 

 園子も頑張っていたし帰ったらデザートでも作ってやるか。俺は大丈夫だが、3人は初戦闘でしかもただの女の子なのだ。勇者システムで能力が底上げされ、多少訓練したとはいっても精神面はそうもいかない。鷲尾さんは特に自分を追い詰めてそうだから。明日イネスにでも連れてってやるか。

 すると不意に左手に柔らかくて温かい感触がした。隣を見ると園子が俺の手を握っている。

 

 

「もう無理はしないでね?」

 

 

 それは、普段の彼女の雰囲気とは遠く瞳が悲しそうに揺れている。だから俺もぽんっと園子の頭に右手を置き撫でながら真剣に言葉を紡ぐ。

 

 

「ああ。分かってる。無理はしないよ」

 

 

 そう言って手を握り返すと園子は満足そうに微笑んでいる。

 

 

 確かに無理はしない。だが園子に、園子たちに何かあれば俺は......

 

 

「それでなっくん。忘れてないよね~?」

 

「え?......あっ」

 

 

 家に着くと俺は2時間正座させられ園子に怒られた。勿論デザートは作った。

 

 

 足が痛い......

 

 




なるべくアニメの1話分の話を固めて話と話の間は2日くらい開けるかもしれませんが投稿したいと思います。

長門くんの素の能力が高いのは後々理由が明かされます。

因みに園子は銀の属性攻撃をまだよく知らなかったためああいってますが対人戦だったら確かに銀よりも強いですがバーテックスになると火力の高い銀のほうが強いです。バーテックス相手で長門くんほどの機動力が必要な相手少ないですしね。当たらなければどうということはないタイプなので勇者の中では紙装甲です。武器もただのバーテックス用のよく切れる日本刀です。いまのところは...


銀が赤面していますが、ただの羞恥心です。
ヒロインは園子です。園子です。園子です。
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