アニメでいう1話2話は須美回なので須美多めにしようとした結果オリ描写が少々長くなってしまいました。
次回でともだちを終わりにしたいけど......
乃木長門とは何年も過ごしているが、彼はとても個性的な人だ。
同級生とは思えない落ち着きようで、好奇心が強く、それでいて優しかった。
でも私は彼の本質を甘く見ていた。
もしも私が止められていれば
彼の■■は失わずに済んだのに...
勇者御記 神世紀298年 乃木園子記
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俺たちが1体目のバーテックス―――【水瓶座】アクエリアス・バーテックス(大赦によれば攻めてくるバーテックスは12星座の名を冠しているらしい)を追い返してから一か月。2体目のバーテックスがやってきた。
「これじゃあ...身動きが取れないぞ...竜巻を起こしてるなら上から目を狙えば行けそうだが」
「くそっ!身動きとれねぇよ...」
「でもなっくんの言う通り...上から攻撃するしかっ...」
これは非常に困った。2体目のバーテックス―――天秤座は自分の体を回して竜巻を起こして俺達に攻撃させないようにしている。どうしたものか...すると鷲尾さんが園子を支えていた手を放し、上へ飛び矢を放つ。
「そんなっ!」
鷲尾さんの矢は風に負けて推進力を失ってしまった。普通の矢じゃダメだ。かといってチャージする時間もない。とすると現状を打破できるのは二人だけ。
「...っ!?園子!盾!」
「あぶないっ!」
俺の声にぎりぎり反応した園子が盾を展開しかろうじて防ぐ。がもう限界そうだ。俺が突っ込むか銀が突っ込むか...勿論答えは出ている。それにもう浸食が進んできている。俺は天秤座の真上へ向かって全力で跳躍した。
「長門!」
「銀!俺が動きを止める!その後は頼んだ」
そう言って俺は風の影響を受けない真上まで来る。
「はっ!」
降下しつつ全力で斬りつける。竜巻の勢いが弱まるが、俺は素早く跳躍してひたすら斬りつける。すると風の影響がなくなったのか銀も加勢する。
「うぉおおおお!!!」
「ふっ!」
俺は刀を、銀は斧を振りまわす―――
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「ごり押しにもほどがあるでしょ!」
どうやら安芸先生にばっちりと見られていたらしい。俺たちの戦闘がお気に召さなかったらしい。流石に現実世界への影響を鑑みたからと言って怪我覚悟で突っ込むのはまずかったか......
因みにきちんと天秤座は追い返した。
「これじゃ、あなたたちの命がいくつあっても足りないわ......」
憂う表情で安芸先生はそう呟く。
本当にいい人だ。大人なら現実世界への被害を抑えることを最優先に考えそうなものだが安芸先生は俺たちを心配してくれている。勇者としてだけではなく生徒としても見てくれている証拠だろう。
「お役目が成功して、現実への被害が軽微なもので済んだことはよくやってくれたけど......」
「それは、三ノ輪さんと乃木君と乃木さんのおかげです!」
鷲尾さんはそうフォローしてくれる。けど流石の俺もあれは反省している。
安芸先生も同じことを考えているだろうが、まだ俺たちは連携が甘い。誰が一番上に立ち指示出しするか、などの役割分担もしていない。差しあたってまず役割分担から入った方がいいだろう。
俺の考えていることを察したのか安芸先生はこちらに視線を一瞬向け、また4人全体を見渡し溜息をつく。
「あなたたちの弱点は連携の演習不足ね......まず、4人の中で指揮を執る隊長を決めましょう」
「「「!」」」
「そうね......乃木く「先生」......なにかしら?」
俺を推薦しようとしていたので止める。俺は誰かの上に立つような人間じゃないし、なにより無茶をしすぎる。通常時はまだしも、いざという時のためにはリーダーは俺じゃなくて―――
「俺には隊長は務まりません。少々無茶が過ぎますから。俺は乃木園子さんを推します」
「自覚しているのなら直してほしいのだけれど......でもそうね。乃木君がやらないのなら乃木さん、頼めるかしら?」
安芸先生は呆れた声で俺に言った後、園子にそう聞いた。
「え?わ、私、ですか......?」
園子は自分が呼ばれるとは思っていなかったらしく俺たちを見渡す。 確かに普段の園子はのほほんとしているが、いざという時のひらめきや決断力には目を見張るものがあるし......なにより天才タイプだ。前にチェスをやったときにそういう流れみたいなものが読めると言っていたし、使用人相手に何十連勝かした俺だが初心者の園子に負けそうになった。
園子が銀の方を向くと銀は大してリーダーになりたいわけでもないらしく「アタシじゃないならだれでも」と言った。
「俺はさっき言った通りだ」
「私も、乃木さんが隊長で賛成よ」
鷲尾さんは一瞬だけ逡巡した後そう答える。たまたま席が隣だから分かったがあれは少し不満だが無理やり納得したってところか?まあ確かに俺も普段の園子だけを見ていたら推薦はしない。
鷲尾さんにはどこか自分がみんなをまとめているという自負がある気がする。だがこればっかりはいざという時の園子を見ないと納得できるものでもない。
「決定ね。神託によると次の襲来まで割と期間が開くみたいだから......連携を深めるために合宿を行おうと思います」
「「「「合宿?」」」」
そう来たか......合宿をするのは構わないんだが、一つ念のため確認しておかないと。
「先生。勿論部屋は俺の分1部屋とってありますよね?」
「ええ。けれど食事の時は同じ部屋に居てもらうわ」
「はい。それなら構いません」
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こうして合宿することになり荷物をまとめているのだが。
「そ、園子さん......?今カバンに詰めた臼は一体......」
「向こうでもおうどん作れるように持っていくんよ~」
もう園子のフリーダムさには慣れたので何も言わないが、しかしこれだけは言いたい。
「なんで園子の部屋に呼ばれたの?お兄ちゃんも準備あるんだが」
そう。俺がとりあえず衣類を入れ終わり向こうで読むラノベや鍛錬に使う木刀を持っていこうとした矢先に園子からお呼び出しがかかったのだ。
「今日一緒に寝よ?」
「もう子供じゃあるまいし......」
「だめ~......?」
そうやって悲しげに瞳を揺らして上目遣いで頼まれたら俺にはもう為すすべがない。仕方なしに承諾するとさっきまでの悲しげな表情が嘘のようにハイテンションになり準備を再開した。
仕方ないか。俺も一度溜息をついて準備をとっとと終わらせる。
......朝起きたときに使用人が微笑ましそうにこちらを見ていた。とだけ言っておこう。
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次の日の朝寝ぼけ眼を擦っている園子を連れてバスに乗り込んでほかの二人を待った......のだが。
「すぴー......すぴー」
「......遅いっ!」
鷲尾さんはきちんと余裕を持って到着したのだが銀がいつも通り遅刻している。本人からちらっと家庭事情を聞いた身としては彼女を責めらない......
園子はいつも通り寝ている。俺によりかかりながら。
「悪い悪い。遅くなっちゃった」
「遅いっ!昨日あれだけ張り切っていたのに十分遅刻よ!どういうことかしら!?」
息を切らしながら車内に入ってきた銀を迎えたのはふくれっ面の鷲尾さん。
「色々あって......いや、悪いのはアタシだけど......兎に角ごめんよ~須美」
「この際だから言わせてもらうけど、三ノ輪さんは普段からの生活がだらしないと思うわ!勇者として選ばれた自覚を......」
そろそろ銀のフォローに入ろうとした時。
「ほぇ?......あれ~?お母さんここどこ~?」
「俺はお前のお兄ちゃんなんだが......ここはバスの車内だよ。合宿に行くためにさっき一緒にバスまで歩いただろ?」
「えへへ......そうだった~」
どうやら銀にとってはこのやり取りが助け船になったようだ。全員揃ったバスは合宿地に向けて動き出した。
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「お役目が本格的に始まったことにより大赦は全面的にあなた達勇者をバックアップします。家族や学校の事は気にせず頑張ってね」
「「「「はい!」」」」
讃州サンビーチにやってきた俺たちは早速訓練をするのだが......
「準備はいい?この訓練のルールはシンプル。あのバスに三ノ輪さんか乃木君を無事到着させること。お互いの役割を忘れないで!」
うん。それはいいんだけどね。いいんだけどさ...
「先生、何故俺だけ武器使用禁止で躱すだけなんでしょうか?......」
「あなたの経歴は把握しているもの。武器を持たせたら1人でもクリア出来てしまうでしょうから」
なんで!?それは過大評価だ。流石にあれだけの障害物は少し骨が折れる。このやり取りを聞いていた鷲尾さんが顔を顰めた。まあ今から4人でやろうとしてることを俺1人でも出来ると先生に言われてしまえばそうなるのも頷ける。
「過大評価しすぎです。俺1人では骨が折れます」
「出来ない。とは言わないのね。でもそういうことだから」
まあ先生の指示なので大人しく引き下がる。だが先生も中々考えたものだ。俺が障害物を打ち落とせないとなると必然的に3人に頼るしかなくなる......球自体には威力は大してないので一応1人でも全力になればもしかしたら行けるかもしれないが訓練にならない。大体この訓練にはそういう1人で何とかしようとするのを直す目的もある。
となると実質俺がこなすべきなのは視界が狭まっている園子のフォローと銀の死角を補う。といった感じか。
「いくよ~」
「うまく守ってくれよ?」
「出来るだけな」
「私はここから動いちゃダメなんですかー?」
「ダメよ!」
鷲尾さんは遠距離武器なので俺たちからは少し離れたところで援護するそうだ。俺は園子の視界確保のためもあるので銀と園子の横に並ぶ。
「それじゃあ、スタート!」
「行くよ~!」
掛け声とともに園子が槍を展開して突撃する。銀は「ここからジャンプしちゃダメなのか~?」と言っている。それ、訓練の意味ないだろとツッコミを入れかけたが気配を感じ真正面から飛んできたボールをかがんで躱す。障害物であるボールはかなりのスピードで射出されているが問題なく見える。
鷲尾さんが上から銀に当たりそうな球は打ち落としてくれている。
「銀!上来るぞ!」
「っ!......あ痛!」
「アウト!」
「悪い銀。俺がもう少し早く反応しておけばよかった」
「ごめんなさい!三ノ輪さん」
「どんまいだよ~!わっしー」
「あんまり気負うなよー」
「呼び方も堅いんだよー。銀でいいぞ。銀で」
「私の事はそのっちで~!はい、呼んでみて~」
鷲尾さんは真面目だから気負ってしまっているのだろう。訓練を通して何か変わるといいんだけど。
「はい!もう1回!ゴールできるまでやるわよ!」
え?
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結局今日はゴールできずに終わってしまった。事前に言われていた通り、俺たち4人は基本固まって行動しなければいけないらしい。1+1+1+1を4ではなく10にする。だそうだ。
今は食事中なので俺は3人の部屋へ移動して一緒に食べている。
「わっしー荷物あれだけ~?少なくない~?」
鷲尾さんの荷物は簡素に必要なものだけ持ってきているといった感じだ。他2人の荷物はツッコミどころあるんだが......
「ミノさんお土産買うの早すぎ~」
「そう言う園子の荷物は何だ?......」
「どこからツッコんでいいか分からないわ......」
「臼でおうどん作るんよ~」
「長門はどんな感じなんだ?」
そんな面白いものは持ってきていない。衣類と本と糖分補給用のお菓子と木刀くらいだ。そう伝えると「なんで木刀なんて持ってきてるんだ......」と呆れられてしまった。
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昨日は初日だったのでなかったが、どうやら合宿中にも授業はするそうだ。正直面倒くさい。なにせ4人で横に並んで受けてるから寝るに寝られない。というかこの状況下で寝られるのは園子くらいだ。案の定彼女はすやすや眠っている。これで授業は理解できてるのだから流石だ。俺は使用人に先の勉強を教えてくれと頼みいつも見てもらっている。だから今は高校レベルくらいにはなっていると思う。因みに園子は見てもらっていない。
つまり、何が言いたいかというと暇だ。今は社会をやっているのだが、バーテックスがウイルスから生まれただとか、そのあたりの話だ。
......ただのウイルスの突然変異で生まれた生物に頂点なんて意味の名前をつけるだろうか?昔から考えていたが、お役目に選ばれたことで知り得た情報も併せて、ある1つの仮説を立てた。正直この予想は突拍子もないし、誰かに話したら笑いものにされるレベルだ。それに当たっていてほしくはない仮説だ。だけど、もし万が一この仮説が当たっているとしたらこの世界はもう―――
「ところが何が起こったのか......乃木さんは答えられる?」
「すぴー......ふぇ、はい~バーテックスが私たちの住む四国に攻めてきたんです~」
「......正解ね」
そのやり取りで俺の意識は現実に一気に引き戻される。それにしても園子は睡眠学習でも会得しているんだろうか。
勉強を終えた俺たちは再び昨日の訓練をする。
「おっしゃ!これで......」
「銀!後ろだ!」
「へっ?......ぐはっ!」
今日もダメだった......惜しいところまではいってるんだが、如何せん銀が飛んだあとは無防備に近くなるので難しい。
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朝、いつも通り5時に起きると外はまだ薄暗い。三ノ輪さんと乃木さんはぐっすりと眠っている。
まだ起床時間には余裕があるので私は目を覚ますついでに近くに散歩しにくりだした。私たちがこの合宿中訓練に使っている讃州ビーチの方からする音に誘われ向かう。
「ほっ!ほっ!てやぁ!......ふぅ、まだまだだな」
私は目を奪われた。乃木君が訓練に使っていた射出機を並べて飛んできた球に飛びついたと思ったら、斬りつつ球を蹴りその勢いで次の球へ。まるで空中を舞うかのように球から球へ飛び移る姿はまるで妖精だ。武道を嗜んでいない私でもその洗練された動きはよくわかるほど極まっていた。先生が彼なら1人でもクリアできてしまうと言ったのは嘘ではないと思った。
しかし途中で勢いが足りなくなり落ちてくる。地面に着地した彼はあたりを見回す。
「誰だっ!?......なんだ鷲尾さんかー。話しかけてくれればよかったのに」
見惚れていた......などとは言えず、咄嗟に嘘ではないが本当でもないことを言うことにした。
「いえ......邪魔するのも悪いと思って。これは一体......?」
「ああこれは安芸先生にお願いして朝のこの時間だけ備品を借りたんだよ。この球はかなりの速度で飛んでくからいい練習になるんだ」
「乃木君は何か武術を嗜んでいるの?」
「......居合を基本にして剣術はある程度はね」
「だからあれほど強いのね」
しかし私がそう言うと彼はどこか悲しげな笑顔を浮かべて「俺は強くなんかないよ」と否定する。どうやらこの手の話はしたくないようなので一先ず鍛錬を見学させてもらう許可を取り話を逸らした。
すると今度は射出機を横一列に並べた。いったい何をするのだろう。少し彼のすることにワクワクしている自分がいることに気づいた。球が少し時間差で彼の方へ飛んでいく。
「ふっ!」
彼は自分のところに来た幾つもの球を捌いていく。致命傷となる部分に来ている球に専念しているようで、時々肩や顔を球が掠めていく。それを繰り返すと、もうそろそろ起床時間になる。
「ふう。鷲尾さん、もう起床時間が近いしそろそろ行こうか」
今日の訓練で使うからだろうか備品をそのままに勇者システムを解除してこちらに歩いてくる。
いつも彼の行動はよくわからない。今だって強く、それに頭の回転も速い。なのにリーダーは下りたうえ、何故か乃木さんを推薦した。乃木さんはだらしないからあまりリーダーに向いていないと思うけれど......身内だから?
いずれにしても私がまとめないと!そう決意した私に隣を歩いていた乃木君が呟く。
「銀と園子の事は信じてほしい。もっと頼って欲しいな。鷲尾さんの周りにはちゃんと仲間がいるんだから......まだやり直しのきくうちにね」
助けてくれたあの時のような優しい目。だけれど何かを後悔している、そんな目。真剣な彼の表情も相まって私は頷いてしまった。
長門くんの経歴って何って言うのはもう少し後に出てきます。前書きに書いた通りここら辺は須美重視で進めます。ヒロインは園子ですが。
伏線散りばめるのって難しいですね。まだ流石に行き着くほどの情報は出してませんが、これ出すとバレバレだしってのが結構あって。それなりには隠すつもりでいますがすぐばれちゃうかもしれませんねw