光を纏いし少年は漆黒の闇より舞い降りし転生者~もうひとりの王~―fate and destiny―《リリカルなのは編》   作:もぬ

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14話 ジュエルシード

 空が白く霞んできている。夜明けが近いようだ。

 あれから、上空を飛行しながら海鳴市の探索を続けていると、住宅街の辺りで微弱な反応がひっかかった。発動前のブツがそこにある可能性が高い。

 そうして人影が無い場所を探して降り立ち、足での探索に切り替えた。

 

 確か、この辺りだったはずだ。

 住宅街の入り組んだ道を駆け回り、目的のものを探す。

 そして、視界の隅に蒼く光るモノを捉えた。

 

「……!」

 

 思わず息を呑む。滑らかな形状、透明感のある青。ヒトの目を惹きつけて離さない妖しい波動が、ソレが本物であると直感させた。

 ようやく見つけた……! あれこそジュエルシードだ。道の端、曲がり角にポツンと落ちている。今は暴走している様子も無い。カラスにでも拾われたら非常に厄介なことになるが、よくぞ今まで無事でいてくれたものだ。

 今日までのホームレス生活を思い出すと、喜びもひとしお。感極まって涙すら出そうだ。

 回収しようと足早に近づく。

 

「あ、え?」

 

 しかし。

 ジュエルシードを注視していた視界は、何者かによって遮られた。

 

「ん?」

 

 俺より先に蒼い宝石を拾い上げたそいつは、こちらと同じくらいの歳の男の子だった(同じくらいというのは勿論、小学生くらい、ということだ)。

 容姿は黒髪に黒い瞳で、日本人に間違いないだろう。朝の散歩か何かの途中、だろうか。

 唐突な出来事に一瞬、思考が停止したが……これはまずい。ジュエルシードは厳重に封印しなければならない危険な代物だ。人間が持てばその願いに反応し、暴走してしまう性質がある。いつかあの人に頼まれて集めた資料に記されていたことだ。

 管理外世界の一般人をトラブルに巻き込むわけにはいかない。この少年にはすぐに手放してもらわねば。

 ジュエルシードを渡してもらうべく、顔に精いっぱいの作り笑いを浮かべて少年に話しかける。

 

「あの、その宝石……わたしの落し物なんです。拾って下さってありがとうございます」

「……おまえは……」

 

 近くに寄ると、年の割にどこか無気力な印象を受ける表情をしている少年は、眉根を寄せてこちらを見やった。じろじろと無遠慮な視線にさらされるが、子どもとはそういうものだ。気にすることでもない。

 しかしこの少年に見られると、何故か緊張してしまう。どうも子どもと向き合っている感じがしない――そうか、俺も子どもだからか。

 と、空気がなんとなく重く感じてきたとき、不意に、腹の虫が鳴いた。

 

「あ」

 

 昨晩から何も食べていない。小学生の前でこれは恥ずかしかった。顔が紅潮していくのがわかる。

 

「……うちで何か、食べるか?」

「は? あ、いえ……」

 

 ああ。これか。少年の言葉の意味を反芻し、悲しみが俺を襲った。

 以前の街であったことだが、公園に住み着いたりすると近所の子どもたちがこうやって俺に施しを与えてくれるのだ。大人のプライドが音を立てて崩れ落ちたものである。

 そこで俺はひとつ決意した。大人からは恵んでもらっても、子ども達からの施しは受け取らない、と。

 

「結構です」

 

 笑顔を張り付けたまま答える。気持ちはありがたいが。

 というか、早くその宝石を渡してはくれまいか。という意味を込めて視線をジュエルシードに向ける。

 それを汲み取ってくれたのだろう、少年は宝石に視線を投げかけ、言った。

 

「……渡すことで、何かこちらのメリットは?」

 

 かーっ!

 この少年、最近「メリット」という言葉を覚えたに違いない。カタカナ語をひとつ覚えると、使いたくなるものだ。

 面倒な子だ。落ち着いた態度から大人びた子だと思ったが、ただのめんどくさい年頃なだけだったっぽい。

 笑顔を崩さず、適当に宥める。

 

「ええっと、後でお礼に伺います」

「渡さないと言ったら?」

「警察に言います」

 

 たわけたことを言うので、思わず真顔になってしまった。これだから小学生はっ。

 だが、思わぬ態度の急変が功を奏したのか、少年は少し狼狽えたような顔で、ジュエルシードを返してくれた。

 

「そ、そうか。はい」

「ありがとう」

「力づくで奪うとかじゃないんだ……」

 

 何やら小声でブツクサ言っていたが、うまく聞き取れなかった。

 少し悪いことをしたか。もうちょっと少年に付き合ってあげるべきだっただろうか。見慣れない少女に話しかけられて、仲良くなりたかっただけなのかもしれない。

 しかしジュエルシードは危険物だ。早く人の手から引きはがさなければならなかった。

 すまん、いつか会えたら、お礼するから。

 

「えっと……ありがとう。じゃあ、用事があるので、これで」

 

 踵を返し、そそくさと立ち去ろうとした。

 はやく人目の無い所で、厳重に封印をかけた方がいい。

 

「待ってくださーい」

 

 知らない声に呼び止められ、思わず振り返る。

 見ればいつの間にか、見事な赤い髪の女性が、先ほどの少年の隣に立っていた。

 歳は高校生とかそのあたりだろうか。平凡な印象を受ける少年と違って、日本人離れした容姿の美しい少女だ。日本の住宅街の景観から浮いてしまっている。

 

「シャイニングハート……勝手に出てくるなよ」

「いいじゃないですかマスター。困ってる女の子は助けてあげなくちゃ、でしょ」

 

 そういうと、少女はにこりとこちらに笑いかけ、手の中に持っていたもの――蒼い宝石を差し出してきた。

 これは……まさか。

 

「さっき拾ったんですよ。これもあなたの落し物でしょう?」

「え、あ、ありがとうございます……」

「いえいえ」

 

 なんと。ジュエルシードがもうひとつ。

 にこにこと笑う彼女が天使か何かに見える。

 

「………」

「マスターが何考えてたか当ててあげましょうか?」

「ハァ……別にオレはそんなつもりじゃない」

 

 表情がころころ変わる女性と、あまり顔の筋肉が動かない少年のコンビは実に対照的だ。

 何とも非現実的な体験に呆けていると、女性がまた声をかけてきた。

 

「何か用事があったんじゃないですか? 早く行った方が良いですよ」

「あ、そうですね。あの、ありがとう」

 

 深く頭を下げて礼を言い、今度こそその場を立ち去る。

 不思議な二人組だった。二人は親しい仲だったみたいだから、交流のあるご近所さん同士とか? 義理の兄弟? まさか、おねショタカップル……?

 しかし幸先がいい。ジュエルシードが一気に二個だ。

 本当に感謝である。全部終わったら、二人を探してお土産でも持って行くのもいいかもしれない。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――

 

 住宅街を抜け出し、人目の無い場所を探す。しかし、早朝だというのに何人かの出歩いている人とすれ違った。この街の人々は健康的な生活をしているらしい。

 今も、ラフな格好でランニングに勤しむ若い男女が向かいからやってくる。すれ違いそうになったので軽く会釈をすると、女性の方はにこやかに、男性の方は薄く笑みを浮かべて挨拶してくれた。

 美男美女だったなあ。

 

 ラブリュスに案内してもらいながらさらに歩みを進めるが、まだ人影が見える。

 背丈から見て、また小学生くらいの子どもが一人で歩いているようだ。この街の子ども達は早起きらしい。

 近づくと、その子は随分派手な容貌をしているのがわかった。

 背中まである長い髪は、日本ではお目にかかれるはずのない銀色。さらに、その大きな瞳は、なんと左右で色が違っていた。片方が俺やフェイトと同じような赤、片方が澄んだ青色をしている。子ども雑誌のおまけでついてくる3Dメガネ、要らないんじゃなかろうか。

 顔のつくりも整っていて、将来は美人になるだろう、といったところ。

 そんな少女がこちらに向かって軽く会釈をしてきて、すれ違う距離になってまでじろじろと見つめてしまったことに気付いた。

 今日はなんだか不思議な人をよく見かける日だ、なんて思いながら慌てて会釈を返し、そのまますれ違う。

 

 その瞬間。

 懐が、いや、そこに仕舞っていたジュエルシードが、突然眩い光を放ちだした。

 

「なっ――!?」

 

 そのままポケットから飛び出すジュエルシード。

 慌ててつかみ取ろうとする手が空を切る。蒼い宝石はひとりでに浮き上がり、たちまち見上げるほどの高さに達した。

 ドクン、と生物の鼓動のような音が耳朶を叩く。宝石を中心に、何か――空気中のチリや埃だろうか――が渦を巻きながら集っていく。辺りに立ち込める良くない魔力のプレッシャーに息苦しさを覚える。

 この現象は、そう。ロストロギアが暴走している。

 

「なっ、なんで……!?」

 

 ここにきてようやく事態に頭が追いついた。

 封印処理がまだだったからか。知らず知らずに起動条件を満たしてしまった? いや、そんなことを考えている場合ではない。

 管理外世界の街のど真ん中で、こんなものを発動させるわけにはいかない。こういう場合の対処として、空間を切り取る結界魔法などを即座に張らなければならないが、封時結界は試したことがなく時間がかかる。

 したがって、回転の遅い頭で捻りだした答えは、こいつが思い切り暴れ出す前に眠らせること。

 だが――

 

 目の前で起きている嵐から視線をずらすと、少し離れた所から、銀髪の少女がこっちを見ていた。この世界の住民に魔法は見せられない、そんな常識が判断を鈍らせる。

 ――いや、バカだ俺は。もう巻き込んでいる。なら躊躇っている場合じゃない……!

 待機状態にあるデバイスを強く握りしめ、胸の中にある魔力の核を揺り起こす。

 力が、胸から四肢のつま先まで広がっていく。少し気分が悪くなったのは、目の前のジュエルシードから漏れる濃密な魔力をリンカーコアに取り込んだせいか、それとも単なる寝不足か。

 

「ラブリュス、起きろ!」

《Sealing form. Set up.》

 

 杖を大出力モードに変える。ロストロギアの封印、それに適した形態だ。

 鈴に似た音色と共に、アスファルトの地面に淡い紫の光で魔法陣が描かれる。

 ――カタチを得る前に、速攻で封印してやる。

 ウルトラマンが初手でいきなり光線をぶっ放すような真似だが、構うまい。

 

「ジュエルシード、シリアル……っ!?」

 

 一歩、遅かったのだろう。

 最終段階に差し掛かろうというところで、目の前の黒い塊から触手のようなものが伸び、さながら鞭のようにこちらへ襲い掛かってきた。

 それほど速い攻撃ではなかったので、一跳び後ろへ下がり(かわ)す。

 しかし、封印魔法の行使はそこで中断させられてしまった。

 

 黒い塊――ジュエルシードモンスターが咆哮を上げる。青く煌めいていた宝石は、その黒く不安定な輪郭をした巨体の中に隠れてしまった。

 こうなってしまったら厄介だ。確実に封印するためには、核となるジュエルシードを露出させ、そこに封印魔法を打ち込むのが良いと聞いた。

 優れた魔導師ならば大威力の魔法で身体を消し飛ばし、そのまま封印してしまうのだろうが……さて、どうしたものか。ああいうよくわからないロストロギアを相手にするのは初めての体験なのである。

 

「おっと」

《Defensor》

 

 こちらを敵と認識しているのか、触手が唸りを上げて襲ってくる。化け物相手に逡巡している時間なんかない、当たり前だ。

 しなる触手をデバイスで弾き落とす、なんて芸当は自分の腕前では出来やしないので、バリアを張ってやり過ごす。

 しかし俺程度の防御性能でこうして足を止め正面から攻撃を受け続けていると、どうなるか。ラブリュスが張るディフェンサーに入っていくヒビがその答えだ。

 やばい。

 そうして冷や汗が背中を流れだしたところで――攻撃がやんだ。

 モンスターは動きを止めたかと思えば、大きな二つの目をこちらから背け、あらぬ方向へと跳ねていく。

 

「逃げた……?」

 

 何故? 今逃げる必要があったのか。

 黒い化け物の背を視界に収め、その向かう方へ視線をずらし――

 心臓が跳ねる。

 そこには銀髪の少女が逃げもせずに、モンスターと相対するように立っていた。

 胸の方で手を握り締め、表情は強張っているように見える。恐怖で、足がすくんでいるのか。

 

《Blitz Action》

「ぐっ!」

 

 視界が歪むほどの速度で動き、少女とモンスターの間に割り込んだ。咄嗟のことに術式に組み込まれた緩制動のプログラムがうまく作動しなかったか、身体に結構な慣性の力がかかる。無理なブレーキに魔力で編まれたブーツの底が妙な音をたてて削れるのがわかった。

 迫る黒い化け物に向けた右手から、シールドを展開する。

 

「う、ぎ……っ!」

 

 巨体が繰り出すただの体当たりは、十分な衝撃となってこの身に襲い掛かってきた。

 なんとか盾で受け止めたものの、踏ん張る手足が悲鳴を上げている。防御魔法のセンスが無いことがつくづく忌々しい。

 競り合いに耐えながら、背後にいるはずの少女に声をかける。

 

「逃げて! 早く!」

 

 簡潔な要件だけを伝える。口下手なこともあって、この状況ではそれ以外に言葉は出てこなかった。

 少女は戸惑うような表情を浮かべたものの、一つ頷いて駆け出した。聞き入れてくれたようだ。

 

「よし……!」

 

 視界の端でそれを見届け、未だラウンドシールドに重い当たりをくらわせてくれちゃっている奴に向き直る。

 

「見てろ、このっ……ブリ、お願い!」

 

 自身は盾の維持に集中し、ラブリュスがもう一つの魔法を立ち上げる。

 インテリジェントデバイス、しかもリニス印の優秀な子だから出来る、使用者とのコンビネーション。

 やがて、モンスターの周囲に複数の小さな魔法陣が現れる。

 そこから、魔力で作られた鎖が無機質な音をたてて現れ、敵を宙に絡めとった。

 

《Chain Bind, complete》

「よっしゃああっ! いいぞラブリュス!」

 

 思わず拳を揚げた。コアを点滅させて応えてくれる相棒も、心なしか嬉しそうだ。

 この技、実戦で成功したのはこれが初である。

 

「これでフィニッシュ!」

 

 デバイスを振り回して構え、魔力を漲らせる。盾を維持しつつ準備していた封印用の魔法。それで決着だ。

 

「ん……?」

 

 獣の唸り声に気を取られ、作業を止めて訝る。

 ――突然、動きを封じたはずの黒モジャから新たな触手が飛び出した。

 

「は!? い、いやぁーーっ!!??」

 

 封印魔法の発動準備をしていたため、防御は間に合わず。

 今度はこちらの身体が絡めとられ、動きを完全に封じられる。

 バインドでやつの身体は空中に固定されたままだというのに、追加で生えた触手は元気にウネウネしている。

 

「っ、しまった……!」

 

 腕を強く締め付けられ、デバイスを取り落してしまった。これでは魔力をうまく供給することが出来ない。

 なんとか振り解こうともがくが、全然離れない。それどころか新たな触手が次々と現れ、身体を這い進み締め付けてくる。

 このままでは絞殺される。……それだけでなく、生理的嫌悪感を覚えた。

 身体のあちこちを這いまわる触手に、一つのビジョンが思い浮かぶ。このままいけば……

 ――そんなことになってたまるか。

 単独で魔法を起動、四肢から、全身から電気に変換された魔力が流れ出る。

 

「触手プレイの趣味は無い!」

 

 身体を覆う触手に電撃が叩きこまれる。触手を焼き尽くす勢いで、派手なスパークが辺りに閃いた。

 アスファルトの地面に尻もちをつく。個人的な感情からつい威力を最大に設定してしまい、無駄に力を消費してしまった。

 が、これで今度こそ終わりだ。

 ラブリュスを拾い上げ、スピアフォームに変形。地を蹴り、今度こそ動きの止まった黒いヤツの眉間に、思い切り穂先をぶち込む。

 

《Thunder Arm》

 

 電撃を纏う魔法で、ラブリュスからありったけの攻性魔力を流し込む。モンスターの身体が崩壊していき、徐々にデバイスが深く突き進んでいく。

 槍が、蒼い宝石に届いた。

 

「ジュエルシード、封印っ!」

 

 強い光が視界を覆い、獣の断末魔が耳に響いた。

 不意に力が抜け、またも尻もちをつく。痛い。

 座ったまま光に眩んだ眼をこすっていると、すぐそこからラブリュスの音声が聞こえた。

 

《Captured》

 

 目を開け、機能を停止したジュエルシードがデバイスに格納されるのを見届ける。これで、もう今後勝手に暴走することはないはずだ。

 やれやれ、と一息つきながら立ち上がり、尻をぽんぽんとはたく。

 初のジュエルシード封印は、苦戦したもののなんとか無事に終えることが出来たようだ。

 

 ……少し疲れた。

 気付けば辺りは夜明けの光に白く照らされていた。もう一晩中寝ていないことになる。

 どこかで休まなければいけない、そんなことを考えながら防護服を解除しようとした。

 

《Master!》

「え? がっ……!」

 

 呼吸が一瞬止まる。

 背中を壁に叩きつけてしまったからだ。受け身を取れなかったらしい。

 重くなるからだ。脚はそのままへたり込んでしまった。

 何かに弾き飛ばされたのか。顔を上げ、何が起こったのかを、見る。

 そこには、青い宝石が、瞬いていた。

 

 そういえば。

 ジュエルシードはもう一個あったのだ。

 

「は、あ、はッ――」

 

 うまく呼吸ができない。デバイスを支えになんとか立ち上がる。

 先ほどの焼き増しのように、急速に思念体を造り出したジュエルシードは……しかし、動けない魔導師など興味も無い、とばかりに俺を無視して飛び去った。

 どういうことだ。目の前の生物に襲い掛かるはずではないのか――待て、さっきも、似たようなことがあった。それこそ焼き増しだ。

 ヤツの去った方向、それは、あの銀髪の少女の逃げた先、じゃないか。

 

 思い切り地面を蹴る。まだ、限界なんかじゃない。

 高速で空を駆け、いくつかの民家を越え、奴の跳ねた方向へと追随する。

 ――いた。やはり少女を狙っている。

 高度を下げ、敵の頭上へと追いすがる。フェイトより、アルフよりずっと遅いなら、追いつくことだって出来る。

 

《Jet Smasher》

 

 ラブリュスの先端から放たれる光が敵の身体を貫き、その動きを止める。この隙を逃す手は無い。

 

「ああああああっ!!!」

 

 そのまま砲撃を連発する。反動で照準がぶれるが、相手はデカい的だ、加えてここまで接近している。このままあいつが消えるまで撃ちまくればいい。戦術なんてものはない。

 紫の光条が迸る度、身体から力が抜けていくのを感じた。一度に大量の魔力を消費すると、そうなる。リンカーコアも身体の器官の一つ、激しく働かせれば体力をも消耗することになる。加えて残存魔力量が尽きれば、魔導師はダウンというわけだ。

 

 青い宝石がラブリュスに回収されるのが見える。そこで頭と身体はそれ以上働かなくなった。寝不足が、祟ったかな。

 瞼が落ちる。感覚が切り離されていく中で、ひとつ、声を聴いた。

 

「助けてくれてありがとう。良い人だね」

 

 綺麗な、少女か、少年の声色。

 

「しかし、貧乏くじを引いたかな……」

 

 その声は、以前にどこかで聴いたことがあるような、そんな気がした。

 

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