光を纏いし少年は漆黒の闇より舞い降りし転生者~もうひとりの王~―fate and destiny―《リリカルなのは編》   作:もぬ

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2話 真夜中に目が覚めて

 

 ――いつの間にか、俺は水中にいた。

 

 なんだこれ、何この状況。いつ俺はジャンパーに目覚めてしまったんだ。よぉし、じゃあここから図書館へジャンプだ!

 やっぱり無理である。意味不明な現状に頭がパニックを起こしてしまったようだ。

 というか馬鹿なこと考えてたら、なんか、息が、くるしい、んだけど。

 ふ……フフ、ついに、この時が来たか……今こそ、幼少時に水泳教室で培った腕を披露する時だ。クロールの速さには定評があった。この技術をいつか役に立てたいと、夏が来るたびに思っていたんだ

 先生、あなたが教えてくれた泳ぎの技で、今こそ僕はこの大海原へと旅立ちます!

 

「!? ガボボボァア!?」

 

 別に水泳の腕を披露することなく、普通に水面に浮上しようとするが、頭上には壁のようなものがあって出られない。周りにも透明な壁がある。どうやら筒の形をした水槽か何かに閉じ込められているらしい。

 ていうか詰んだ。俺の人生。このままじゃ天国へ旅立っちゃう。

 透明な壁……ガラスを必死に叩いてみたが、水中だからだろうか、腕に力が入らず、全く壊れそうに無い。

 もう……ダメだ……。意識が……マジで死ぬ五秒前……

 

《…素体……号が…動しました……培…液…強制排出し……》

 

 父さん母さん……親孝行出来なくて……ごめん……

 ―――ああ。

 TSUTAYAの……DVD……かえ、して……おい…………

 

 

 

 

 

 

「ウルトラの父ぃぃいいい!! ……あ、あれ?」

 

 もしかして今のは夢?

 ……目が覚めた。

 なんだか変な夢を見ていた。水の中で溺れる夢だ。超恐かった。水泳だけなら先生にも褒められたことあるのに、中に閉じ込めるのは卑怯じゃないか! 水中だけでなく、閉所恐怖症にもなりそうだった。

 水で満たされた大きなガラス管に閉じ込められ、溺れかけ、さらには助けに来たウルトラの兄弟たちまでもがヒッポリト星人のガラス管に閉じ込められブロンズ像にされてしまったところで、目が覚めた。全く……悪夢だったぜ。

 

 ところで、ここはどこだろうか。

 俺の家じゃないのはすぐに分かる。目を覚まして最初に見たのが、知らない天井だからだ。

 というのは嘘で、本当は、寝る前にかぶってたはずの暖かい布団と愛用の枕が無いことから、俺の寝床じゃないのが分かっただけである。知らない天井だっていうフレーズをなんとなく出したくなっただけ。

 身体を起こして周りを確認し……痛ッ! 頭が……頭の頭痛が痛い。

 

「目が覚めたようね」

「ぅえっ!?」

 

 人!? びっくりさせるんだからもう!

 聞いたことの無い声。周りを見渡してみると、やはり知らない部屋だ。なにやらよくわからない機械が散在しており、なんらかの実験施設か、病院のような印象を受ける。

 ははぁん……読めた。ここは病院だろう。多分どこかで気絶して運ばれたのだ。全く記憶は無いが。……いや、もしやあの溺れる夢が………さっきの声はおそらく看護婦さんだ。

 

「具合はどうかしら。知識は機能してる?」

「……ああ、はい。問題ありませ……」

 

 そこにいた看護婦さんは、すんごい格好をしていた。

 アニメやゲームのキャラクターのような格好だ。これは、魔女?  魔女っぽい……コスプレだ。そして何より目をひくのは大きく開いた胸元である。これは……す、すごい……。一瞬思考停止してしまった。とんだナースがいたものだ。

 胸元からさらに視線を上げると、その人はおばさん……もとい、妙齢の美人さんだった。なかなか似合ってはいるが、コスプレをするなら歳を考えたほうがよいのでは……いえ、似合ってますよ!

 

「……返事ができるということは、もう自我はある程度出来てきているのかしら……妙に早い……まぁいいわ、ついて来なさい。あなたのテストをするから」

「え? あ、はい……」

 

 看護婦さんに従い、寝台から降りる。

 しかし妙に位置が高いベッドだ。足が地面に届かない。

 

「お? っとと……」

 

 なんだかうまく歩けない。身体がいつもより軽い感じなのだが、フワフワして足元が覚束ない。

 

「……筋力ならフェイトの時と同様、通常レベルに達しているはずだし、歩行の仕方なども一般知識として組み込んだはずだけど……」

 

 コスプレ看護婦さんがこっちを見ながら何か言っている。……ほんとに看護婦だよね?

 ていうかこの人、でかくね? 日本人男性の平均……よりちょっとだけ下の身長の俺と比べてこんなに大きいだなんて、女の人にしてはかなり身長が高いと言っていいだろう。女性に背を抜かれるのはショッキングな体験だが、これだけ差が大きいと逆にあまり傷つかないな。……傷つかないってば!

 ついて行くうちに、徐々に普通に歩けるようになってきたが……ここはどこだろう。あまり病院っぽくない雰囲気だ。というかなんと言いますか、そうあれだ、ゲーム。ゲームのダンジョンみたい。

 延々歩くと、なんと外に連れ出された。今は夜のようだ。建物のすぐ外は平原になっているが、そのさらに先には森が広がっているみたいだ。

 ふと、振り返って先ほど自分が出てきた建物を外から見てみた。

 ……なんじゃこりゃあ? 暗くてよく見えないが、相当の大きさだ。お城か何かか。……なんか変なトゲトゲが生えている。これ、建築物なのか? 少なくとも病院ではあるまい。中もゲームっぽかったし。

 いったい何処なんだここは。何かのドッキリ? あ、ディズニーランドとか。とにかくこんなすごいオブジェクトの心当たりは無い。

 

「この辺でいいかしらね。さぁ、魔法を使ってみなさい。そうね、まずはフォトンランサーあたりから」

 

 ……今、何と言った?

 魔法? 魔法だって? エクスペクト・パトローナム?

 違う。魔法とは、術者の魔力を用いてプログラム化された物理法則などを任意に書き換え、望む作用を世界に出力する技術体系のことだ。かなりの昔から次元世界に根付いて来た技術であり、一口に魔法、魔導と言っても様々な術式、技術が存在するが、現在の次元世界ではミッドチルダ式と呼ばれる術式が主流となっている。

 なんで俺がそんなこと知ってるかって? こんなのは魔法を学ぶ人間の間では常識というか最初に習うことだ。

 ――あれ?

 何で、俺、こんなこと知ってるわけ?

 ついに電波野郎になってしまったのか……。ん? ていうか、ミッドチルダって……

 

「どうしたの、フォトンランサーよ。早く撃ちなさい。それとも撃てないの?」

 

 フォトンランサー。ミッド式の直射型射撃魔法である。前方にまっすぐ進む、槍のような弾丸を放つ。

 そして、その術式は、……こうだ。

 リンカーコアを躍動させ、魔力を発揮する。脳裏に式を展開しつつ手を前にかざすと、ソフトボール大の球体が現れた。目標を前方にある木に設定すると、球体から光の弾が撃ち出され、違えることなくその木に命中した。

 あれ。なんで俺、こんなこと、出来るんだ?

 

「……次は、サンダースマッシャーを」

 

 サンダースマッシャーは砲撃魔法だ。フォトンランサーよりも術式は複雑である。威力が段違いだからだ。

 再び手を前に向け、術式を構築しはじめる。前に向かって伸ばした腕の周りを、光の輪が回り出す。環状魔方陣というモノだ。高位魔法の発動には必須である。

 頭の中に次々と情報が浮かび上がる。……なんだ、これ。俺はこんなの、知らない。知らないはずだ。魔法なんて、現実にあるわけがない。でも……「知っている」。

 今度は前方の岩を目標に設定。目の前に大きな、何やら文字や図形の描かれた円が現れる。ミッドチルダ式の魔方陣だ。術の構成が完了した。

 

「サンダースマッシャー」

 

 魔方陣から光が溢れ出す。けっこうな轟音があたりに響き渡った。内心ビックリした。

 というか、いつから俺は手からビームを撃てる様になったんだ。そっちの方がビックリだよ。幼少期はかめはめ波や波動拳の真似をして遊んだりしたが、まさか本当に撃てる日が来るとは思わなかった。……オラワクワクしてきた。

 ビーム……サンダースマッシャーは岩を粉々にしていた。

 

「……どうやら、成功……かしら。この調子なら他の魔法も使えそうね。あと……私が誰だか、あなたがどういう存在だか……理解している?」

 

 わかる。この人はプレシア・テスタロッサ。プロジェクトFに関連した人造魔導師である俺の、生みの親だ。

 

 ん?

 いやいや、またおかしなフレーズが頭をよぎったぞ。

 ていうか、プレシア? それに、サンダースマッシャーとか、魔法、ミッドチルダって、『魔法少女リリカルなのは』の……

 どういうこと? なにこれ。 ドッキリ? でも、さっきの『魔法』は。

 

「……どうしたの? わからないのかしら?」

「あっ、あ、あなたは……プレシア・テスタロッサで……生みの親です……自分の……」

 

 あと、一期のラスボスです。

 

「……知識の転写は成功したようね。あなたは勝手に生まれたアリシアのクローン……あなたの脳には一般常識や戦闘魔法、戦闘技術をインストールしてみたわ。魔導師としての知識があるはず……。今後は私の……駒として、働いてもらうわ。いいわね」

 

 は? 知識の、てんしゃ? ……アリシアのクローン!? まさか……

 自分の体を見下ろす。そこには見慣れた身体が……違う。おかしい。これは俺の体じゃない。

 まず、地面が近い。超近い。なんだか視界に違和感があると思ったら、身長が縮んでいたようだ。

 それに、この髪。背中まである。こんなに髪を伸ばしたことは無い。しかも金髪。……金髪!! 手にとってじいっと見てみる。染めたようには見えない、毛先から根元まで金色の、マジモンの金髪である。

 手も小さい。肌も白い。顔をぺたぺた触ってみる。

 何もかもが違う。俺のカラダじゃ、ない。

 

「……混乱している? 知識……意味記憶だけを植えつけたから? 自我はどこから……やはり、記憶転写は……うまくいかないのね……。フェイトはこのままリニスに訓練させた方が無難かしら……」

 

 お、おい。おい!

 お、俺のT.N.Kが無い!!!!

 

「眠りなさい。人間の脳は睡眠中に記憶の整理をする……」

 

 優しい台詞を口にしながら杖を向けてくるプレシアさん。何よその魔方陣、何する気!?

 なんだかすごく眠くなってきた。この、展開、何回目だよ……。

 

 

 

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