寂しそうなその背中に寄り添うのは間違っているだろうか? 作:壊れたオモチャの兵隊
今、僕の目の前には大きな扉がある。
ここに来るまでに見た扉とは少し違い、目を引きつけるのはアストレア・ファミリアのエンブレムだ。長衣を着た鶴のように見える目隠しをした鳥が両刃の剣を携えている様子でそれが扉に煌びやかと装飾されている。この扉をくぐれば、アストレア様とご対面だ。
この扉を抜けた先の世界には何があるかは未知数だ、自分の物語をどのように彩るかは神にでさえ分からない。
「さぁ、行ってこ〜い!ルーちゃん!!」
「う、うん」
「何を緊張しているのですか。大丈夫ですよ、ルカ。」
「ありがとう、リア、リュー。」
リアとリューから勇気をもらって、僕は扉をノックする。
…コンッコンッコンッ…
「どうぞー」
中からアストレア様と思われる女性の声が聞こえてきた。
「アストレア様、琉楓 タチバナ です。お話したいことがあり、参りました。」
「あぁ、聞いているよ、入ってくれ。」
扉を開けて中に入る。
部屋には調度品だけでなく、絵画や置き物、そして多くの書物があり、その中央の書斎机に美しい妙齢の女性が座っていた。
綺麗な金髪の髪にすごく女性らしい身体、落ち着いた雰囲気を身に纏い、その瞳はすべての人を平等に愛しているようだった。
「こんにちは、アストレア様」
「こんにちは、ルカくん、二人からは話を聞いているよ。さぁ、そこに腰掛けてくれ。」
僕は言われた通りにソファーに座る。こうして二人きりの状況になると上手く話せるか不安だ。僕は静かに深呼吸してもう一度、気を入れ直す。
「ファミリアに入りたいそうだね。まずは自己紹介をしてもらおうかな?」
そこから、僕は自分の出自や出来ることなどを話した。これで加入できなかったら、大変なので、必死に頑張る。アストレア様は時折、質問をしてくる。そして、最期の質問、
「じゃあ、ルカくん、これで最後だ、君にとって正義とはなんだ?」
この質問には困った。僕が生きてきた10年間でこんなことを考えたことはなかったからだ、しかし、答えはすぐに出てきた。それは僕が旅立つ前に父上が僕に授けた言葉だ、
『ルカ、武士たるもの泣いている者を見逃してはいけない。例え、笑っていてもその人の心が泣いていたら、寄り添い、力になってあげるんだ。他者を思いやってこそ、真の武士。誠の武士道だ。忘れるなよ、琉楓』
だから、それを答える。
「僕にとっての正義は泣いている人に気づき、寄り添い、力になって笑顔にしてあげることだと思います。それが僕の正義です。」
「うん。君の正義、とてもいいね!この先、様々なことがあるだろう、時には選択に迫られる場面も来るはずだ。その時に何を選ぶのか自分の中の確固たるものを大事にしなさい。」
「私は正義と秩序の神、アストレア。オラリオの治安は私たちが守っている、そんな意識をもって行動してね。それとそんな感じのファミリアだから、敵対するところもある、だから、危険なことも当然ある。それでもいいなら、入りなさい。これが最後の選択よ。」
そんなの答えは決まっている。正義の味方?おおいに結構。とてもいいところではないか。誰かのために、他者を思い、行動するとてもいいではないか。立派な武士になるためにも答えはこれしかないだろう
「私、琉楓 タチバナ 己の正義を貫く所存、アストレア・ファミリアに入れてください。」
進む先には光だけでは決して無く、
深い闇もおぞましい感情も降り注ぎ、
大事なものは失われ、奪われ、冒涜さえ受けるだろう。
だが、夜明けは必ず来る。
夜が明ければ、そこは、眩い光に溢れ、必ず満開の花が咲きほこっている。
これは1人の少年の物語。
こうして琉楓 タチバナ の【眷属の物語】は紡ぎ出され始めた。
琉楓 タチバナ
Lv.1
力 :I 0
耐久 : I 0
器用 : I 0
俊敏 : I 0
魔力 : I 0
《魔法》
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《スキル》