プロローグ
「ツナさんツナさん!知ってますか?ミア・ヴォーチェっていう有名なバイオリニストさんが、並盛でコンサートをするんですよ!」
学校帰り、たまたまハルと鉢合わせたツナは途方に暮れていた。ツナは他人も驚くほどトレンドや情報といったものに疎い。その女子中学生のおしゃべりや噂話というのがとても苦手だ。
「へっへーそうなんだー。その、みあ?ゔぉー?ちぇ?ってゆう人はどんな人なの?」
ツナが逃げるように答えると、ハルは胸を張って得意気に話しだした。
「よくぞ聞いてくれました!ミア・ヴォーチェは知る人ぞ知る超有名な若き天才バイオリニストなんです。
15歳にして行なわれた初のワールドツアーは大成功。各国での公演は超満員で、チケットを巡って億のお金が動いたという噂すらあります!
ミアさんが17歳になった今年、二度目のワールドツアーが行なわれていたんですけど、先週までそのワールドツアーの最終公演国が未発表でした。
それがついこの前発表されたと思ったら、公演国が日本でしかもその会場が並盛だったんですよ!!」
一息に喋りきったハルは言い終わると大きく息を吸い、そこの掲示板にポスターが貼られています!とビシッっと掲示板を指をさした。さされた先の掲示板には
『イタリアの
ミア・ヴォーチェ 初来日!』と
大きく書かれ、灰色がかったブロンドヘアーを綺麗に編み込み、鮮やかなライムグリーンの瞳を持つアンニュイな美少女がバイオリンを弾いている写真が載っているポスターがあった。
ハルはとても興奮しているようでポスターを見つめる目はギラギラと輝いている。だんだんと上がっていくテンションにツナは少し引き気味だ。
「そそんなにすごい人がどうして並盛に・・?」
「さあ、なんででしょうね?でも、ミアさんがすっごい人なのは話を聞いているだけでわかりますし、今並盛はミアさんフィーバーで大盛り上がりですよ!」
言われてみれば、至る所にハルが指さしたポスターが貼られていたような気がする。ツナにとってはポスターの内容は興味がないものだったのであくまで気がするだけで、内容までは注意深く見ていなかった。
その後、ハルはミア・ヴォーチェの魅力について語りだしたがツナの耳にはまともに入ってこない。帰宅次第、もうすぐやってくる数学の単元テストの対策勉強会が待っているからだ。リボーンとの1対1の勉強会は地獄だ。それを思うと憂鬱で、楽しそうに話すハルの話を真面目に聞く気にはなれなかった。
「・・というわけで、ツナさん!これからツナさんの家にみんなで向かいたいと思うんですけど大丈夫ですか?」
「ええっ、俺の家?!今日はリボーンと二人で外せない勉強会があるからちょっと無理かもしれないなー。帰ったらリボーンに聞いてみるよ」
「そうなんですね。リボーンちゃんとのお勉強会ならハルたちは我慢するしかないですね〜」
しゅんっという言葉がぴったり当てはまるほど残念がったハルに、ツナは思わずリボーンに聞いてみてOKだったら連絡するねと告げた。すると、さっきまでの姿が嘘かのように、はいっ!待ってますね!と元気良くハルは答えて、二人はそれぞれの自宅に帰るために分かれた。
◇
帰宅して息つく暇もなくリボーンによって勉強机に座らせられたツナは、リボーンに1時間以内に解くようにと出された課題を時間内で終わらせられるようにと必死に問題を解いている。
その横でリボーンは手紙らしきものを広げて、考え込んでいた。
1時間が経ち、ツナは死ぬ気にはなってはいないものの、必死になって終わらせた課題を見ながらリボーンは言った。
「ツナ、お前に護衛の依頼が来たぞ。とりあえず、依頼人に会ってみたいからな。これから駅前ホテルに向かう」
「俺に護衛の依頼ーっ?!どうゆうことだよ、リボーン!?」
リボーンは詳しくは語らずに先程広げていた手紙らしきものをツナに見せた。
「なになに、敬愛なるリボーンさんへ・・・ちょっと待って!これ俺じゃなくてリボーン宛の依頼じゃないか?!」
いいから読め!とリボーンに蹴飛ばされながらツナは続ける。
「・・はじめまして。私は今、マフィアに命を狙われているようです。リボーンさんはイタリアでも有名なボディーガードであるとお聞きしました。率直にお願いを申し上げますが、私が日本に滞在する5日間の間、私の護衛を引き受けていただけないでしょうか?駅前ホテルの最上階にてお待ちしております。イタリアの
・・・ミッミミ、ミア・ヴォーチェッ?!?!」
「おっ、ツナがミア・ヴォーチェのことを知ってるのは意外だったな」
「いや俺も丁度さっき知ったんだけど、帰り道ハルに会ったときに紹介されて、超すごいバイオリニストだって。ええっ?!そんなすごい人の護衛だなんて、オレには無理だーっ!!」
半狂乱になるツナに対し、リボーンの態度は辛辣だ。
「うるせーな、この依頼はツナたちの特訓にぴったりだぞ。依頼人に直接会わねーとわからねーとこもあるが、話を聞いてみる価値はある。ホラ行くぞ!」
リボーンはこの依頼を受ける気満々だ。近くに控える数学の単元テストなんかどうでも良くなってきた。
ツナはマフィアのボスになりたくないのに、こうしてまたマフィアの騒動に巻き込まれていくのだ。