イタリアの至宝《ペリドット》来る!   作:7733

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ミア・ヴォーチェ

ツナとリボーンは駅前にある高級ホテルの最上階にいる。たった数十分前は自室でリボーンの過酷な課題を解かされていたわけだが、一通の手紙がそれを変えた。

なんと!その手紙の差出人はミア・ヴォーチェだった。彼女はどうやらマフィアに命を狙われているらしい。イタリアでも有名なボディーガードであるリボーンさんの噂を聞きつけ、日本に滞在する5日間ぜひとも護衛を依頼したいと手紙には書かれていた。

ツナは一生入ることのなかった場所だと嘆きながら、このホテルのスイートルームに滞在しているという手紙の差出人に会うためにここまでリボーンと共にやってきたのだ。 

スイートルームの扉の前に立つとツナはだんだん不安になってきた。自分は本当にこんな立派なところに呼ばれていい人間なのだろうか、チャイムを鳴らす指が震えている。

「いいから早く押せっ、ダメツナ!」

リボーンはツナの戸惑いを気にも止めず、ツナのことを蹴飛ばすした。今日は蹴られてばっかりだなと思うと、ツナの指はあっさりとチャイムのボタンを押してしまっていた。ツナの一瞬の心構えも空しくヴーーッとチャイムが鳴った。チャイムが鳴り、スイートルームの扉が開くととびっきりの笑顔を浮かべた美少女が中で待っていた。

「チャ〜オ!お忙しい中、ごめんなさいね。あなたが凄腕のボディーガード、リボーンさん?お会い出来て光栄だわ」

そう言うと、彼女はツナを抱きしめた。少し灰色がかったブロンドヘアに、ペリドットのように輝くライムグリーンの瞳。彼女がどうやら現在、並盛町をざわつかせているという“イタリアの至宝(ペリドット)”こと今回の手紙の差出人、ミア・ヴォーチェのようだ。

「ひっひっひ人違いですーっ!リボーンはこっちーーっ!」

「あら?失礼しましたわ、リボーンさんはそちらの方よりももっと愛くるしいお姿をされてるのね」

クスクスと笑いながら、ミアは可愛いものが大好きなのよ、ごめんなさいね〜。と彼女はにこやかに笑いリボーンに挨拶をした。

どうやら彼女は自身のことを名前で呼ぶらしい。

「ちゃおッス!オレがリボーンだ。お前がオレに護衛を依頼してきたミア・ヴォーチェで間違いねーな?」

「ええ、あなたたちの目の前にいるミアは確かに本物のミア・ヴォーチェで間違いないわ」

「じゃあ、ミア。早速だが依頼について話を聞きたいんだが構わないか?」

「もちろん構わないのだけれど、とりあえず中に入ってお掛けになって?あと、リボーンさんさえよろしければそちらの方のこともご紹介いただけないかしら?」

  

スイートルームの中へと案内されながらミアはツナに視線を向けてきた。先ほど抱きしめられたせいもあるのか、ミアのライムグリーンの瞳がツナの目を捉えると、ツナは顔を真っ赤にして俯いてしまった。

「さっ沢田、沢田綱吉です!よよよ、よろしくお願いしまっす!」

「こいつはツナ、俺の下僕だ」

「ふふっ、そちらの方はツナさんっていうんですね〜。いえいえ、こちらこそどうぞよろしくお願いします」

彼女に中へと案内され用意された席に腰を掛けると、ミアはリボーンの俺の下僕発言には触れもせずに今回の経緯を語りだした。

「それで〜ええっと〜、ああ。今回ミアがリボーンさんたちに護衛をお願いしたのはミアがマフィアに命を狙われているからなんです」

ミアの話を簡単にまとめると、ついさっきミアのマネージャーのもとにミアの殺人予告が届いたらしい。マネージャーはその殺人予告に驚愕し、本国イタリアに問い合わせ、日本にいる優秀なボディーガードの連絡先を聞いたそうだ。その本国に紹介されたボディーガードというのがリボーンで、ミアは取り急ぎリボーンに連絡をとったとのことだった。

ここでひとつ訂正するとすれば、リボーンは護衛(ボディーガード)ではなく暗殺者(ヒットマン)だ。しかし、確かに今、日本にいる誰よりも強いに違いないし、本国がリボーンの連絡先を教えたことは間違っていないと思う。

「それで、オレにどうしてほしいんだ?」

「そんなの決まってるじゃないですか〜ミアが本国に帰るまでミアの護衛をお願いしたいんです。リボーンさん、お願いできないでしょうか?」

リボーンはうーんと唸りはじめ、なぜか彼女の依頼を渋っている。さっき、これはツナを鍛えるいいチャンスだな!とか何だかんだ言って喜んでここまで来たというのに、今さらどうして渋ることがあるのか。

「オレからの質問はふたつある。まず、ひとつめはオレ自身がミアを守ることはできない。だから、ミアを守るのはこいつ、ツナだ。それでもいいか?」

「ツナさんがミアの護衛を?リボーンさんがツナさんを信頼に足る人物だと判断されてそう仰っているのであれば、ミアは一向に構いませんわ」

ミアは大きな瞳を瞬かせて驚きつつも、ツナのことを視界にいれると微笑みながら答えた。

ここで嘘だろーっと思うのは護衛を押し付けられつつあるツナ自身だ。依頼された人物がリボーンである以上、自分がマフィアと対峙することはないと勝手にそう高をくくっていたのだ。確かにリボーンは自分が引き受ける気など毛頭なかったのだ。リボーンの意図を理解すると、ツナは大きな溜息をついた。

「ふたつめは、オレたちになんの見返りがあるかってことだ。護衛っていうのは命賭けの依頼になる以上、オレたちに何らかのメリットがないと困る。ミアはそこら辺、どう考えてたんだ?」

「そうですねえ。提案といえば提案なのですが、今回ミアを護りきってくれたら、ミアはツナさん専属の披露家(パフォーマー)になりますわ。ツナさんがミアを必要とするなら、ミアはどんな場所にでも赴いてミアにしかできない舞台を創ってみせます。この条件でどうでしょうか?」

彼女はほんの一瞬だけ考える様子を見せてから、なんだかもの凄いことを言い出した。つまり、今回の依頼が成功すれば天才バイオリニストと呼ばれ世界各国に名を馳せるミア・ヴォーチェをツナ(ボンゴレ)お抱えの演奏家(パフォーマー)として大々的にスカウトできるということだ。

流石にリボーンもこの条件には驚いたようで、本当にいいのか?と確認していた。ええ、もちろん!と彼女は答えると自信満々に、ミアの力はきっとツナさんの役に立ちますよ?となぜか意気込んでいた。

「ところでジョシュ、どうかしら?リボーンさんに今回の件、依頼してもいいわよね?」

「そうですね。ミアお嬢様がお会いになられてご意向が変わらないのであれば問題ないと思いますし、旦那様からもリボーン様は信頼にたる人物だと伺っておりますので」

彼女は後ろに立っていた美丈夫の方を振り向いて確認をとった。

ツナはこの場に、ミアと自分たち以外に人がいると思っていなかったらしく、彼女の後ろにいる男の存在に酷く驚いていた。

「あら、紹介が遅れてしまったわね、彼はミアのマネージャーなの。ミアはジョシュって呼んでるわ」

ジョシュアです、ミアお嬢様をどうぞよろしくお願いします。と頭を下げている姿はミアの美しさにも負けず劣らない。落ち着いたブラウンの髪は短く切り揃えられていて、端正な顔立ちに琥珀色の瞳がとてもはえる。これだけ美しい顔立ちをしていればさぞ目を惹くであろうに、気配を消し彼女の影に徹しているあたりこのジョシュと呼ばれる美丈夫は一般人ではないのかもしれない。

「よし、交渉成立だな。ミアが並盛に滞在する5日間、オレたちが護衛を引き受けるぞ」

「ありがとうございます!あ〜よかった〜ミア死ななくて済みそうね、安心したらお腹が空いてきちゃったわ」

「今朝焼いたスコーンが少し残ってますね、用意しますか?」

「うん、お願い。あと、それにあわせて紅茶も・・あら?さすがジョシュね。いつの間に用意してくれてたの?」

「先程、ご紹介をいただいた際にお出し致しました。日本はおもてなしを大事にする国だというのに用意が遅れてしまい面目ないです」

マネージャーと紹介されたジョシュアだが、その働きは一見執事とも思える。

少し砕けた言い方で、そんなことないわ。リボーンさんもツナさんもそんな小さなこと気にしないわよ!とジョシュアに言うと、二人は和やかに談笑しはじめた。

そもそもミアは命を狙われているというのに思った以上に平然としていて、緊迫した雰囲気が全くない。どちらかというと穏やかに過ごしており、彼女も本当に一般人なのかと甚だ疑問に感じるレベルだ。

「並盛に滞在する5日間、ミアはどこかに行ったり公演以外の用事はあるのか?」

談笑している二人に向けて、リボーンは今回の依頼についての計画を立てたいと端的に言った。 

「そうでしたわ、大事なことをうっかり伝え忘れてしまうところでした。

 予告状によると、彼らはミアが舞台に立っている間、公演中に誰にもわからないようにミアのことを殺す計画を立てているそうなんです。

 今回、公演があるのは明日の夜と明後日の昼夜、合わせて3回です。公演中の無防備なミアのことをツナさんにガッチリ守ってほしいんですよ〜」

「フム、なるほどな。つまり、5日間のうちとくに公演中が一番危険ってことだな」

「そうですわ。そもそも舞台に立つミアの邪魔をすること自体が間違っていると思うの。ミアに手を出そうとしたこと、絶対に後悔させてやるんだから。リボーンさん、ツナさん、ド派手に活躍してくださって構いませんわよ!舞台の上で起こったことは全部ミアが責任を負いますから」

ミアの目にはメラメラと闘志が燃えている。公演をしている最中にミアを狙うと断言している暗殺者に彼女は相当、ご立腹らしい。

「あのーすいません。ひとつだけ不思議に思ったんで質問いいですか?」

メラメラと闘志を燃やすミアに恐る恐る、ここまで自己紹介以外無言を貫いてきたツナが声をあげた。その場にいた3人が目でツナにOKを出すと、ツナは言った。

「ミアさんがマフィアに命を狙われる理由ってあるんですか?

 オレはその、一応なんとなく自分の命が狙われちゃう理由みたいなのはわかってるつもりだから気になっちゃって。

 ミアさんは普通のバイオリニストでしょ?バイオリニストが命を狙われる理由って・・・」

青い顔をしながらツナが聞くと、ミアとジョシュアはツナの質問に目を合わせて笑っていたが、リボーンはツナがそういった質問をしたことに少し感心しているようだった。

「それはね〜ミアが〜マフィアのボスたちにモテモテだから、かな?」

「マフィアのボスたちにモテモテ・・?」

ニコリとおちゃらけたようにミアが言うと、苦々しい顔をしてわたしが説明します、とジョシュアは続けた。

「ミアお嬢様は天才と謳われるバイオリニストでありながら、演奏できる楽器はバイオリンに留まりません。ピアノ、トランペット、ギターなど様々な楽器に精通し、声楽や作詞作曲なども手掛けています。ミアお嬢様がパーティーに赴けば、そのパーティーに何千もの人々が集まると言われ、その経済効果は計り知れません。どこのマフィアも彼女をお抱えの楽師にしようと必死なのです。しかし、最近ミアお嬢様は心に決めた人がいるから下手なところには所属できないと全マフィアに通達されました。どうやらそれがマフィアたちの逆鱗に触れたようでして・・」

「ミアなりに考えて宣言したつもりだったんだけど・・・だから、ツナさん!ミアの舞台の邪魔をするようなマフィアに遠慮なんか1ミリだってしなくていいからね〜」

彼女は何かと昔からマフィアに因縁をつけられ、追われていたようで、こんなことには慣れっこらしい。なんとなくミアが今回の件を楽観視している理由がわかった気がする。

「公演中に、と宣言してる辺りになんか裏がありそうだな。とりあえず、ミアの周りには必ず誰かを置いておくのがベストだろ。ミアはこの部屋から移動する気はあるのか?」

「え?確かにこの部屋はちょっと広すぎますし、移動するのは問題ないけれどどちらに行けば?」

「そうだな、話を聞く限りこの部屋にさっきの予告状が届けられたっつーうことはオレ的にはこの部屋は危ねーと思うぞ。だから、こっから近い獄寺の家に行く」

「リボーン?!獄寺くんに許可も取ってないのに勝手にそんなこと言って大丈夫なの?!」

獄寺なら心配せずとも大丈夫だろ、リボーンはそういって、ミアとジョシュアに荷物を片付けるよう指示した。

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