この素晴らしい世界で2周目を!   作:ぴこ

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懐かしのマイホーム

「僕と勝負だ、サトウカズマ! 僕が勝ったら、アクア様を譲ってくれ! その代わり、君が勝ったらなんでも一つ言うことを聞こうじゃないか!」

 

 面倒臭いことになった。

 何が面倒臭いって、室内だから前みたいな不意打ちが出来ない。

 これ、下手したら負けるんじゃないか?

 王城で戦った時は変なテンションだったからあんまり覚えてないし……。

 

 

 

 ミツルギに連れられてやってきたのは、街はずれにある空き地だ。

 道すがら不意打ちしてやろうかとも思ったが、流石に後ろから思いっきり一撃入れるのは気が引けた。

 

「ねえ、カズマさん。こんな勝負引き受ける必要ないわよ。カズマが負けるとは思わないけど、あんな男のパーティーに入るのなんてごめんだわ」

「そうですよ! なんなら勝負は私が引き受けます! あのスカした顔に、爆裂魔法を撃ち込んでやりますよ!」

「あいつ、黙って聞いていれば好き勝手ばかり……! 受け専門の私だが、一発かましてやりたいくらいだ!」

 

 小声で俺に不満を爆発させる三人。

 あいつ、俺の仲間には本当不評だな。

 俺に勝ってこいつらを仲間にしても、絶対うまくやっていけないと思う。

 

 荒ぶるアクアたちを落ち着かせ、俺はミツルギに勝率を上げるために策を弄した。

 

「なあ、勝負の方法はどうするんだ? 流石に高レベルのお前と、貧弱ステータスのうえただの冒険者の俺とじゃ勝負にならないだろ」

 

 少しでも俺の有利な条件にしようと、下手に出てみる。

 これで油断するか、勝負を取り下げてくれればありがたいんだが……。

 

 俺の言葉に良心が痛んだのか、ミツルギは少しの逡巡の後、一つの条件を提示した。

 

「じゃあこうしよう。君が一撃でも僕に入れれば君の勝ち。君に参ったといわせれば僕の勝ち。それなら公平だろう?」

 

 まじか。

 いくらなんでもなめすぎだろ。

 若干腹が立ったが、勝つためにその条件を受け入れる。

 

「じゃあ、この石が地面に落ちたら勝負開始だ」

 

 ミツルギはそういうと、石を空高く投げ上げた。

 俺は石の軌道を見つめるミツルギにばれないように、小さく『クリエイト・アース』を唱え、両手に砂を用意する。

 

 そして、石が落ちた瞬間に、俺は大声で叫んだ。

 

「『ウインドブレス』っ!」

「うわっ!?」

 

 開始直後に目に大量の砂が入ったミツルギは、視界をふさがれ、武器を手に取ることすらままならない。

 俺は念のため『潜伏』スキルを使いながら、大周りでミツルギの背後へと回る。

 俺の接近に気付いた様子がないミツルギの、無防備な頭に店売りの安い小剣で軽く一撃を入れてやった。

 

「勝負ありだな。いくらなんでも、油断しすぎだろ」

「「…………」」

 

 あっさりと負けてしまったミツルギを見て、絶句する取り巻き二人組。

 地力では到底及ばない俺だが、チート特典の魔剣に物言わせて強くなったような奴に後れは取らない。それになにより。

 

「お前は知恵のないモンスター相手には強いんだろうけど、相手が悪かったな。俺はイケメンが相手だとやる気が出るんだ」

 

 慕ってくれる美少女を二人も侍らせてるやつになんか、死んでも負けたくない。

 

「さてと、勝ったらなんでも言うこと聞いてくれる約束だったよなミツルギ君。君の魔剣グラムでも頂こうかね?」

「そ、それだけは……! 他ならなんでもいいから、それだけは勘弁してくれないか!?」

「……今、なんでもいいって言ったよな?」

 

 言質は取ったぞ。

 

 

 

「悪くないわね! 女神である私が住むに相応しいと言えるんじゃないかしら!」

 

 ミツルギに要求したのは、懐かしの我が屋敷だ。

 体感時間にして、一ヶ月ぶりくらいだからだろうか、えらく懐かしく感じられる。

 

 悪霊騒ぎ前なのでかなり高かったが、俺たちが新進気鋭の冒険者パーティーだと知ると、何故か不動産会社の人が大幅に値引きしてくれた。それでもそれなりの値段はしたが。

 流石に全額ミツルギに支払わせるのも気が引けたので、代金は半々にしてやった。

 

「こんな屋敷に、私たちも住んでいいのですか? 今まで馬小屋暮らしでしたから、正直凄くありがたいのですが……」

「この前のクエスト報酬の大半を使っちまったんだから、当たり前だろ? 何をそんなに遠慮してんだよ」

 

 住む気満々のアクアと対照的に、めぐみんとダクネスはやや遠慮気味だ。

 俺としては、ここはみんなの家という意識が強いから、住んでくれないと逆に落ち着かない。

 

「それより、早く中に入って部屋割り決めようぜ」

「ふふん! 私は日当たりのいい角部屋を貰ったぁ!」

「はいはい、好きにしろよ。俺は引きこもりのプロだからな。日当たりなんぞ逆に要らないまである」

 

 俺とアクアが屋敷に入ると、二人も顔を見合わせ、笑顔を浮かべながらやってきた。

 

 

 

 その日の夜。

 荷物の荷解きも終わり、もう寝ようかという時に、来客が現れた。

 

「カズマ、まだ起きてますか?」

「めぐみん? 起きてるけど、どうかしたのか?」

 

 今回はまだウィズと出会ってないから、幽霊が怖くなったというわけではないだろう。

 俺が扉を開けると、赤い寝間着に包まれた美少女が立っていた。

 

「実は、カズマにお礼がしたくてですね……」

「なんだよ、屋敷のことか?そのことなら気にすんなって。みんなで貯めた金なんだからな」

 

 実際には半分しか支払ってないわけだが、それは今めぐみんの頭にないようなので指摘しないでおく。

 

「それもそうなのですが……。カズマは、私のことを仲間として受け入れてくれました。爆裂魔法しか取り柄のない、口だけ魔導士である私を」

「なに言ってんだ、お前は……」

 

 と、言いかけて慌てて口を閉じる。

 数多くの魔王軍の幹部や、デストロイヤーを始めとした大物賞金首との死闘。

 それらのすべては、めぐみんの爆裂魔法無しでは切り抜けられなかった。

 

 しかし、それは俺にとっては過去の出来事でも、めぐみんにとっては未来の話。

 俺が話したところで納得なんて出来ないだろう。

 

俺は恥ずかしさを押し殺し、めぐみんの目を真っ直ぐに見つめながら言った。

 

「俺は、めぐみんのこと尊敬してるよ。周りからバカにされても、爆裂魔法を極めようとするなんて簡単に出来ることじゃないと思う。実際凄い威力だし」

「でも、私が他の魔法を覚えればクエストももっと楽に……」

「らしくないな。他の誰でも出来るような魔法なら俺が何とかする。お前はお前にしかできない、百二十点の爆裂魔法をこれからも見せてくれ」

「カズマ……」

 

 俺らしくないことを言ってしまい、顔が熱くなるのが分かる。

 俺は潤んだ瞳でこちらを見つめるめぐみんに背を向け、ぶっきらぼうに言った。

 

「わ、分かったらアホなこと言ってないでさっさと寝ろよな。明日もクエスト行くんだから」

「……ええ! 明日も私の二百点の爆裂魔法で、敵を消しとばしてやりますとも!」

 

 恥ずかしいことを言ってしまったけど、めぐみんに元気が戻ったようなので良しとしておこう。

 

 

 

「カズマさんカズマさん!いつまで寝てるの!早くクエストに行くわよ!」

「……今何時?」

「朝の六時前よ」

「……おやすみ」

 

 屋敷を買ってから数日が経過したある日。

 珍しく早起きのアクアが、これまた珍しく俺のことを起こしに来た。

 

「お願いだから起きてよカズマ! クエストに行かないとやばいのよ!」

「……お前、まさか酒場に借金でも作って来たのか?」

「だってだって、キャベツ狩りで儲かると思ったんだもの! それが、あんなレタスばっかり引き当てるなんて……」

 

 半ベソをかきながらアクアが訳を話した。

 つい先日、久し振りのキャベツの収穫でまとまった金を手に入れた俺たちだが、例のごとくレタスばかり収穫したアクアは俺に金の無心をしに来た。その時の分は、金に余裕のあった俺が立て替えてやったのだが……。

 

「少しだけど、小遣いもやっただろ? それはどうしたんだよ?」

「・・・…テヘッ」

 

 こいつ使い切りやがった。この世界に無理矢理連れてきた負い目もあって、今回は優しく接してきた俺だったが、少し甘やかしすぎたかもしれない。

 

「お前のお得意の宴会芸でもやって、おひねり貰ってくればいいだろ?」

「おひねりは受け取らない主義なの! ……ねえお願いカズマさん。私たち仲間でしょ?」

「……ったく、しょうがねーなぁ」

 

 必死に懇願するアクアに、渋々引き受ける。

 それに、そろそろあいつのせいでクエストが少なくなる時期なので、丁度いいかもしれない。

 

 今度は借金作らずに倒してやる。

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