魔術チートを貰ったらほとんどの魔術を使えなかった件 作:☆彡.。
「残念ですけどあなたは死にました。はい、これっぽちも
そう言って投げ渡されたのはトイレの個室程の大きさの本。
分厚いしページがかなりでかい。
「さっさと」で決められる量ではないだろう。
「ああ、はい。言葉の綾ですので好きなだけ時間を使ってもらって構いません。ただ、まともな人間では1ページ目程度の簡単な特典しかもらえないと思いますが。過去を含めても2ページ目半ばのしょぼいの迄でしたね」
ふーん。
どういうことなんだろう。
「わたしは割と暇人なので答えてあげますけど、特典はポイント制なんです。死んだ時点でポイントは固定され、この転生の間とでも言いましょうか。ここでの増減のあと消滅するものです。
そして肝心のポイントですが、減点方式なんですよ。呼吸をして二酸化炭素を排出した。マイナス1点、蟻を踏み潰した。マイナス10点。物を燃やして有害物質を出した。マイナス100点と言った感じで。
ちなみに生きてる間に増やすことはできませんのであしからず。そして、生まれた頃は莫大だったポイントをすり減らしてこの場に流れ着いてくる
ただ、わたしは優しいので救済措置があります。本の最後のページのあたりに乗ってるんですけど、あ、これからのものはすべて転生後に影響あるものです。――四肢喪失プラス3万点×喪失部位数。五感喪失プラス5万点×喪失数。このふたつはかなり強力な救済措置ですね。
ふざけてるな。まともな生活をしてきた人間が四肢や五感がなくなってまともな生活ができるとは思えない。
「ええ、ええ。そうなんですよ。ついでに言えば10万ポイントとかそれくらいじゃ五感の一部を代行できる魔法を使用可能みたいなくだらないものしか得られないんですよねぇ。ほんと残念です。さあ、ではあなたのポイント確認と行きましょうか。」
そう言って投げ渡される2冊目の本。
いや、これを本と言っていいのだろうか?
それは表紙と背表紙の間に2枚の紙が挟まれているだけのものだった。
「あれ? おかしいですね……。本来なら減点項を全て書き出されているはずのものなのですが。まあいいです。さっさと開いてください」
開くとそこには――
初期点数÷2(転生者であるため)
とだけ書かれていた。
どういうこと?
「あなた、転生者だったんですか~! 残念でしたね。次の人生では特典なんにもなしですよこれは! 初期点数は莫大ですが、だからこそ除法がきく! さあ早く次のページをめくって生まれてからの減点を見てみましょう!」
そう言ってさぞ嬉しそうに勝手にページをめくられ、2ページ目――1ページ目の裏と2枚目の紙の表面に見開きで大きく書かれていたのは
減点、無し。
これはこれは。赤点全開で来る奴よりかはマシなくらい点数残ってるんじゃないか?
「減点、無し……? 息すらしなかったと言うんですか? ありえません。こんなポイントあってはいけません。転生先の世界にどんな影響を与えてしまうか……。そうだ! はやく最後のページを……! そこになにかあるはず……!」
恐る恐ると言った感じでめくられた最後のページには――
減点無しなど特例なため、全ての特典のポイントを100000倍にする。
と書かれていた。
いや、アリなのかこれ?
一応さ、理不尽な減点制度があるとはいえしっかりしたシステムだったじゃない?
それをぶち壊すようなよく分からないような、例えば――クイズ番組で最後の問題の点数がそれまでの問題すべての点数を足したより高いくらいは理不尽だ。
「ふふ、ふふふふふ。あー良かった! 間に合った! システムの書き換え! これであなたは平均的なものしか選べない! 無駄に説明することで時間を稼いだ甲斐があったわ。はあ……本当によかった」
そう安堵されるとなんかイラッとくるものがある。
筋力自慢が「俺に腕相撲で2連勝出来れば100万円」という看板で賭け事をしていたのに負けた瞬間にペンで0を書き加え20連勝にされるくらいイラッとくる。
だが急の書き換えと言うなら想定外のバグなんかもあるだろう。
たとえに出した紙への書き加えってレベルじゃないだろうし。
少なくともシステムって言ってるんだからこの特典システムの書き換えがあったはずだ。
プログラム関係の知識はほとんどないが、簡単な書き換え方法といえば特典に必要なポイントに一律で100000を掛けるように新しい文を書き加えてそれを適用させるためにちょこちょこいじるくらいだろうか。
なるほどね。じゃあ手始めに――
「表情筋の喪失、一部色素の喪失、一部体毛の喪失、生殖器、性欲の喪失、一部身体機能の制限」
えっと……ほかに何かないかな……?
「え、ちょ。何してるんですか! いくら何でもそんなに欠落したらまともでは無くなっちゃいますよ!? 確かに書き換えであなたに不利な条件を加えましたが別にあなたが憎いとかそういう気持ちは全くこれっぽちもない訳でして、それにそんなにマイナス条件によってポイントを得ても――」
やばっ。気づかれるかもしれん。
焦って書き換えたことによって追加ポイントにも書き換えの倍加が適用されてると睨んでやってみたが、冷静に戻られた今、修正されれば確実に破産する。
足りてるかは分からない。
そもそもそんな選択肢があるのかすら分からないが――
「お前の隷属!」
「あ、ちょ。ダメぇっ!」
そう言って突き出した指の先端から一条の光が発射され縄のように、鎖のように拘束する。
えっろ。
拘束し終わった光がさらに発光し、視界を埋めつくしそれが収まると拘束していた光は無くなっていた。
「どう……なったんだ?」
「ひぇぇぇぇぇぇぇぇん~~~~~!!
なんでわたしが隷属されなきゃいけないのよぅ。こんな特典作ったのだれよ~!!
あ、わたしだった。なんで天使一体の隷属なんて作っちゃったんだろう。作るならわたし以外の天使一体の隷属とかにすれば良かったのにぃ~。
しかも隷属の対象となった天使がそれを跳ね除けられないように上位神をだまくらかして得た限定的命令権なんて組み込んでたから抵抗できなかったし……。あれがなければあんなの簡単に跳ね除けられたのに……」
泣いたと思ったら急に冷静になった天使とやらだが、独り言を聞いてる限りだと成功してるのかな。
「ねえ」
「なによ? 今わたしすっごい怒ってるの」
「書き換えた部分無くしてくれない?」
「わかりました~。はぁ。いつか絶対殺す」
お、やっぱり成功してるっぽいな。
「あ! 戻すついでに
「いや、戻さなくていいぞ」
「だって体の機能が制限されたりしちゃうし特典も本来ならたくさん貰えたのよ?」
「いや、一部制限って言ったけど要は必要以上に脂肪がつかなくなるだけだろ。ぶっちゃけダイエットいらずのマイナスとは名ばかりのプラスだな。
それに戻したらお前の隷属も解けて殺されそうだし?」
「ちっ。でもわたしの隷属でポイントをたくさん使ったのは事実だからね? あなたに許されていた初期ポイントと比べて今の点数は10分の1くらいなんだから」
「いいからいいから。さっさと元に戻しちゃって。100点満点の半分の10分の1でも他の奴らと比べればマシでしょ」
「戻しましたー?」
「本当に?」
「嘘です――うわぁぁぁん。もうやだぁ!」
「疑問符付けて誤魔化したりするのはやめろ。しっかり直したら教えてくれな。それまでメニュー表読んでるから」
目次でまともそうなページを調べてそのページを開いて読み始めてからどれくらい時間が掛かっただろうか。
もう読み終わってしまったし、便利そうなものも見繕ったんだが。
「おーい。そろそろ終わったか?」
「まだ終わってま――終わりました! もうやだ。くすん」
やだ、この天使反抗的。
「まあ、終わってるならいいや。それじゃあ良さそうだと思ったのを挙げてくからアドバイスをくれ」
まず1つ目。
表情筋完全喪失とか真顔すぎて怖いだろって思ったから出生時の欠損などの補填の欄から表情筋喪失の補填、それの4分の1コース。
4分の1ですらデフォルトの喪失とトントンってひどいレートだな。
というか、勢いで色々制限してポイント増やしたけど10分の1になるだけならたぶん制限しなくてもギリギリたりたよな?
完全に自爆している。
ついでに言うなら若干臆病になって一部~とか言うくらいなら最初からやらなければ良かったんじゃないか?
来世が
で半人前の魔法使いだった身としては色々と悲しいぞ。
前世は産まれる前に爆発したみたいだし、三回人生やり直して結局
というか性欲の喪失って具体的にどんなものだ?
前々世はキミは優しいしかっこいいけど性欲丸出しなところが……。
とか言って振られたのがショックで死んだ俺としてはとても気になる。
簡単に来世の属性を上げると、無表情系アルビノムダ毛無しひょろもやしついてない。
たぶんついてない影響で中性的になりそうだし……。
こりゃ恋愛はできそうにないな。
戦闘狂の素質はないと思うけどそっちの方向に意識を持っていくしかないか?
そこまで思考が回ったところでようやく天使が返事をしてくる。
「…………完全復活でもいいんじゃないですか」
拗ねたように返事をする天使だが完全復活のレートわかって言ってるだろ。
4分の1の400倍だぞ。
却下だ。
あとはテンプレというか魔法の才能ね。
これないと魔力があっても魔法使えないとかよくあるし。
「全魔法使用可能でいいんじゃないですか?」
レートを以下略
あとは迷ってるんだが、独力でも努力すれば伸びるってのと教えてもらえば伸びるってののどっちがいいかなって。
個人的な考えだけど教えて貰ってある程度を越せば独力でも伸びるとは思うんだけど。
「さあ。どうなんでしょ。まあ、教えてもらえる人がいなければ無理ですし独力の方にしたらいいんじゃないですか」
「実際はどうなの?」
「その通りだと思います」
もうヤダと喚いてる天使を無視して――
「お前の得意分野はなんだ?」
天使の得意分野を教えてもらう方にしてそうでない、かつ面白そうなものは独力でもできるようにする。
あとはどうしようかな。
即物的な力はやめておこう。
以前の転生の時にそういうの貰ったらこっちの世界で減点される暇もなく死んだっぽいし。
天使の保護的なのに使うか。
「ポイント使い切ったから頼むよ」
「転生先の世界が指定されていないようなのでランダム――」
「たぶん下僕的な天使が気を使って特典がしっかり機能する世界に送ってくれると思うんだけどなぁ?」
「あなた、前々世は詐欺師やそれに準じるなにかですね!?」
失礼な。本職ならもっと上手くやるだろうさ。
多分プラスされるポイントも万倍になっても元から消費がおかしい特典も万倍になってるから足りないと思うんですけど(名推理)