魔術チートを貰ったらほとんどの魔術を使えなかった件   作:☆彡.。

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歪曲時計を読みましたが、かなり面白かったです。
面白くて筋が通っている話は自分には原作があっても自分には書けないのですごいと思いました


落下系ヒロイン(高度マイナスメートル)

 

 九月八日、早速必要悪の教会(ネセサリウス)から問題解決を請われる。

 請われると言っても実質は強制であるのだが。

 なんでも法の書とかいうとんでも魔導書とその解読方法を知っている唯一の人間が外部組織に誘拐されたとかなんとか。

 法の書は読み取れば天使の力が扱えるらしく、つまり世界を滅ぼせる力を得るってことだ。

 そんな魔導書が盗まれた背景には信者獲得のために歴史的背景が凄い品を一般公開してこの宗教は凄いんだぞーと知らしめたかったからなんとかというものがあるのだが、宗教の発展と世界の滅亡を天秤にかけないでほしい。

 

 ちなみに、その宗教はイギリス清教ではなく、ローマ正教とかいう別口のような組織らしいが、それでも同じ十字教徒なので協力しましょうねって感じではなく、イギリス清教側の問題があるのだ。

 

 その問題とは、魔導書を盗んだ組織は、天草式十字凄教というらしく、神裂さんの古巣であり、現状神裂さんと連絡が取れないらしい。

 

 可能性の話だが、神裂さんが天草式を手伝ってローマ正教の人間を討ってしまえば問題となる。

 

 今回のミッションは神裂さんが下手を打つ前に解決することである。

 方法は天草式と取引をして降伏させるもよし、神裂さんごと天草式を壊滅させてもよしとバイオレンスである。

 そして、今回俺に当てられた役割は交渉が決裂した場合の武力行使で介入してくる恐れがある神裂さんの足止め役である。

 

 聖人の力だけでは圧倒的に練度が足りず、天使の力(テレズマ)を使用しても練度不足で負けることは決まりきっているだろうが。

 天使の力(テレズマ)のほうはミーシャとの戦闘以来使用させてもらえてないので練度上昇の可能性は皆無であるのだ。

 

 それから、今回の問題解決には上条とインデックスちゃんも参加するらしい。

 インデックスちゃんは見た目に似合わず魔導書の専門家らしく、法の書への対応で、上条はその保護者としての参加らしい。

 寮を抜けたすのは少々苦労したが、学園都市の外に出るのには全く手間取らず、指定された建物へと移動する。

 上層部ってすごいなと思う。

 

 廃劇場『薄明座』。廃といっても潰れてからひと月も経っていないのでホコリが積もっている以外は綺麗なままである。

 

 

「その正式なお仕事に、一般人のとうまも巻き込むわけ?」

 

「実は僕も何がなんでも巻き込まないといけないのか少し疑問でね。まぁ、上のご指名というやつさ。その上、これでも僕達は難しい立場にいてね。学園都市所属の上条当麻へストレートに協力を求めると『科学サイドが魔術サイドの問題に首を突っ込んだ』と見なされかねない。あくまで学園都市内で起こったことなら『自衛』と言い訳ができるが今回は違う。彼が首を突っ込むにはそれ相応の理由付けが必要って訳だ。そこの隠れてるやつとは違ってね」

 

 赤髪の神父が咥えたタバコを宙へ投げると、そのタバコはなにかに挟まれたように宙に留まり、そこから何かが剥がれるように一人の人間が現れる。

 

 背は百七十に届かないほどで、乱雑に切りそろえられた白い髪、見た目だけでは性別を判断しにくい中性的な見た目、そしてなにより目を引くのが「生まれてから一度も陽の光を浴びたことがありません」と言わんばかりの真っ白な肌だ。

 それが口を開く前に誘拐された少女が声を上げる。

 

「なんでるりがここにいるの? るりって学園都市の人間だったよね?」

 

「俺の名前はジブリール。今回の問題解決を手伝うことになった。よろしく」

 

 本名ジブリール、学園都市での名前は渋谷瑠璃(しぶやるり)

 聖人ランク暫定最下位の怪物がここにいた。

 

 

 渋谷瑠璃、それは俺が学園都市に入るにあたり作られた新たな名前であり、常盤台中学三年の科学側の人間である。

 ジブリール、それは俺が生まれた時に名付けられた名前であり、必要悪の教会(ネセサリウス)所属の魔術側の人間である。

 

 俺が学園都市に送られた時にはこのような使い方をされるとは思わなかったが、渋谷瑠璃は学園都市を出て十数分で学園都市へ戻ったことになっている。

 

 つまりここにいるのは必要悪の教会(ネセサリウス)側の俺、ジブリールであり、上条のように面倒な理由付けは必要なく、科学と魔術のバランスを気遣う必要も無いってわけだ。

 

「それにしてもどうやって分かったんだ? 割と完璧だと思っててんだけど」

 

 俺の水の膜は戦闘中で意識が上条に向いていたとはいえ何度もちょっかいかけていた魔術師にもバレなかったというのに。

 

「あまり僕を舐めないでほしいね。これでも炎――熱についてはそうそう右に出るものはいないと自負していてね。君のいる空間はあまりにも温度の揺れが無さすぎた」

 

 なるほど。水の膜で見えなくなっていても温度で感知できると思い周囲の温度と同じレベルに膜を調整して中の温度、つまり俺の体温を見られないようにしていたのだがその水の温度が一定すぎたのが問題か。

 

 今回のイギリス清教のメンバーステイルマグヌスから話を聞き、現状を把握する。

 なんでもつい十分ほど前にローマ正教と天草式が激突し、解読者――オルソラ=アクィナスが天草式の手を逃れ逃走したとのことだ。

 なお、ローマ正教とは合流していないらしい。

 そのことを聞き終えるとローマ正教側の協力者がやってきた。

 協力者は見た目、十にいくつかたした程度でしかなく、赤毛の三つ編みで、超絶ミニのスカートを履いた少女だった。

 その少女に話を聞きながら移動をすると、オルソラ、法の書ともに居所は分からないとの事で、オルソラを一度は救出したものの天草式に奪い返され、それを奪い返せばまた奪われてと繰り返されたせいで情報は錯綜しているらしい。

 

 そして問題の戦力差だが、数や武器ならばローマ正教側が有利であるが、地の利を生かせる天草式は奇襲&即撤退でこちらの数を削っているようだ。

 

 日本で暮らしてきたのは俺も同じだが、学舎の園の外、学園都市の内側ですら迷子になりかける俺では外の地の利を生かす天草式の長所を打ち消すことは出来なさそうだ。

 となると、俺が個人であるために武力をちらつかせての降伏勧告は無理そうだ。

 降伏させるのが無理となると、実際に戦うしかない。

 上条やステイルが加わるとはいえそれでも二人だけ、ローマ正教側がフルメンバーで当たって倒せていない天草式との戦いは泥沼となる。

 そしてその戦いが長引けば長引くほど『聖人』神裂火織が現れる危険性は高まる。

 俺は嫌だぞ? 師匠というのもあるが、そもそも勝てるビジョンが思い浮かばない。

 流石に一方的にボロボロにやられる戦いをやるほど変態ではないのだ。

 こうなったら隠蔽術式山盛りでオルソラと法の書を盗み出す方が早いのではないだろうか。

 それが戻れば戦う必要は無いしな。

 

 

 オルソラがどこにいるかとの話になって100人単位でこの周辺を探しているから俺たちイギリス清教側は学園都市内――魔術側が干渉できないためオルソラが避難する可能性がある――を捜索することを頼まれたのだが、それならもう少し早く教えて欲しかったと思っていると唐突にローマ正教の少女――アニェーゼが動きを止めた。

 その視線の先を辿ると、ツンツン頭の少年と、その隣を歩いている漆黒のシスターがいた。

 あのシスターがオルソラ=アクィナスとか言ったりしないよな?

 

 

 上条が劇場内に入ってきてステイルに文句をたれ、ステイルとの口喧嘩になったと思ったら、予想どうり横のシスターがオルソラ=アクィナスで、上条は帰宅を命じられたのだった。

 

 〜完〜

 

 となれば良かったのだが、頭上をふわふわと漂ってきたソフトボール大の紙風船から野太い声が聞こえてきた。

 それはそう簡単に受け渡しをされては困ると言ってからオルソラに問いかける。

 

『オルソラ=アクィナス。それはお前が一番よくわかっているはずよな。お前はローマ正教に戻るよりも、我らとともにあった方が有意義な暮らしを出来るとよ』

 

 瞬間、豆腐を切るような音で上条とオルソラを遮るように地面から一本の刀身が飛び出した。

 上に意識を誘導されていたので奇襲的になっただろう。

 俺はアホな顔をして空を見上げていた上条を見ていたのでいくらか早く反応できたが、オルソラを救出するより早く、追加で二本の刀身が生えてきて三角形を書くような軌道で一辺ずつを直線に移動し、一辺二メートルの正三角形に切り抜かれたアスファルトと共に、足場を失ったオルソラ=アクィナスは穴に飲み込まれていった。

 


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